ハイスクールD×D 奇跡の天使   作:瑠夏

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遅くなり大変申し訳ございません。




第8話

奇跡の天使 8話

 

十香の様子がおかしい。

一早く気づいたのは、十香の母親であるジブリールだった。

いつも笑顔を絶やさず天界を明るく照らしていると言っても過言ではない十香。しかし、人間界から帰ってきた十香の笑みは、影が差していた。

無論、十香は帰る途中にあんな事があったと悟られないよう普段通り皆んなに接していた。天使たちは十香の笑みに違和感なく挨拶を交わすだけ。だが、ジブリールだけはどこか普段と違うと感じ取っていた。

十香の繕いは完璧だ。なのに、その変化に気づくのはやはり、母親だからこそなのだろう。

ジブリールは台所で夕餉の支度を始めている愛娘を観察する。僅かに感じた違和感の正体を探るため。一挙一動見逃すまいとじっくり、じっとりとーー。

 

「な、なに?」

 

そんな視線に気づいたのか、十香が一歩後ろに下がり戸惑いがちに問うた。

十香を不安がらせるわけにはいかないと、ジブリールは同性すら虜にする甘い笑みを向ける。

「何でもないわよ」

「ッーー!!」

 

その妖艶さに十香が頬を赤らめそっと顔を逸らした。可愛らしい仕草に心洗われるようだが、ジブリールはそれを見逃さなかった。

光の当たり具合で偶然見えたもの。しかし、ジブリールにとっては見逃すことのできないもの。

十香の目尻から、頬に伝って一筋の跡がーー。それが意味するのは様々。だが、いつもより暗い十香を見ると、自ずと答えが出る。

 

ーーーー…………それは、

 

(私の十香ちゃんが、誰かに泣かされたーーーー?)

 

そんな確証はない。だけど何故か確信できた。自分の最愛の娘が誰かに泣かされたと言うことに……。

心の中でプツンと何かが切れる。

 

刹那。

 

ジブリールの体全体から眩い光力が弾け出した。あまりの眩しさに十香が腕で目を塞ぐ。しかし、今のジブリールにそれを気づくことは出来ない。

眩い光。それと同時にジブリールと十香の二人にしか見えない精霊まで集まりだした。

まずい……っ!

十香はジブリールの突然の豹変さに驚きはあったが、即座に危険と判断し止めに入る。

ただ光力が集まるだけならよかった。しかし、ジブリールと十香しか持たない精霊回路を用いた精霊な吸収、それだけは見逃せない。

ジブリールの背中からは十二枚の純白の翼が精霊を吸収することによって力が蓄えられ金色に輝く。

 

「十香ちゃん……あなたを泣かせなどはどこのゴミでございましょうか?」

「…………え?」

「あなたの頬に泣いた形跡が見られました。私の十香ちゃんを傷つけたゴミはどこにおいでで?」

 

ジブリールは嘗てない怒りを覚えていた。ここまで激情を抱いたのは生まれて初めてなほどに。十香を泣かせた人物は、ジブリールの逆鱗に触れたのだ。殺戮天使と呼ばれ、最も多くの敵を屠ってきた大天使の……。

そこで十香は気づく。今のジブリールが母親としてではなく、熾天使として降臨しているのだと。口調の変化が何よりの証拠。ジブリールは十香と接する時とミカエル含め天使と対面する際は口調が変わる。熾天使モードとでも言えばいいのだろうか、兎に角いまのジブリールに詳細を話せば間違いなく、その人物は……人間であれ殺されるーー。

そして、それが悪魔や堕天使ならーーーー、

間違いなく戦争が再発するっ!

十香の脳裏には夕方に出会った、悪魔に転生したアーシアと赤龍帝、兵藤一誠の姿が浮かぶ。

本当のことを言うわけにはいかない。しかし、熾天使として前に立つジブリールに嘘は通用しない。だから本当のことを話しつつ、不自然のない話に組み替える。

 

「さぁ、教えてくださいますか? その死にたがりな輩。望み通り塵にしてございますから」

 

ジブリールの瞳に質量を感じさせる程の殺意がギラッと覗かせる。十香に向けられた訳ではないにも関わらず、体が竦みあがる。翼を広げ、いつでも殺しに行けると伝えて来る。金色に光る翼に十香には見える精霊がジブリールに集まる様子はただただ神々しく、美しかった。

 

ーーこれが天界の超越者ーーーー。

 

 

十香は無意識にごくっと喉を鳴らす。

尊敬し、目標にする天使は遥か先にいる。

その事実を再確認した十香は、ジブリールを落ち着かせるために泣いた訳を話し始める。

あったことを正直に話すのではなく、少し変えて、違和感ないように。

 

「……今日の帰り道の途中で、アーシア・アルジェントに、会った、の」

「ーーーーッ!?」

 

ジブリールは思わず眼を見張る。まさかここでその名前を聞くことになるとは思っても見なかったのだ。

《トワイライトヒーリング》を有し、教会に『聖女』の名で通っていたシスター。悪魔や堕天使すら癒せてしまう力を持ったと言うことで追放された『魔女』。

 

そしてーーーー

 

七星十香の親友だった子……。

ジブリール含め全ての熾天使が最後の最後まで頭を悩ませた案件。

数少ない十香の理解者であり、友人だった彼女。

神が亡き今、不安要素はそばに置いておく、ギリギリでバランスを取っていた天界には余裕はなかった。

しかし、『聖女』は十香の理解者……。

どちらも大切だ。しかし、世界の平和と十香の理解者ーー天秤にかけた結果……前者となった。

ジブリールは最後まで反対した。娘一番を信条とするのだ、娘が大切な親友と言った彼女を追放など選択できる訳なかった。

しかしどの種族であろうと多勢に無勢は変わらない。ジブリール以外の熾天使が反対に回れば結果は必然的に数の多い方へ流れた。

そんな彼女と再会した。それを聞いて冷静になれた。ジブリールは光力を抑え、精霊の吸収を止める。翼も直してジブリールから母親に戻る。

十香の表情に、嬉しさの色が浮かぶ。

 

「久しぶりだったけど、何にも変わってなかった。あの頃の……優しかった頃の彼女まんまだったよ」

声が震えていた。ほんのりと赤らむ頬に雫が一筋。涙に一瞬反応したが、十香を見れば大丈夫だと思った。

 

だってーーーー

 

 

 

涙を流していても、嬉しそうに満面の笑みを浮かべているのだから。例えそれが、少し改変された話だったとしてもーー。

 

 

☆☆☆☆☆

 

夕食を終えてお風呂から上がった十香はベットに腰を沈めて先ほどの出来事を振り返っていた。

あの時、十香が流した涙は演技でもなく本物だ。本当にアーシア・アルジェントとの再会が嬉しかった。そこに嘘偽りはない。あの公園とでは涙の意味は違ったがアーシアの件で泣いたと言うのは同じなためジブリールを騙した事にはならない。

十香は身体を投げ出し横たわる。ふかふかの布団に身を包まれ力を抜く。

(本当は気づいているんだろうなぁ)

 

あの見透かした表情は間違いなく気づいている。十香は確信していた。

 

(それでも怒りを抑えてくれたのは私が真実に基づいて言っていたから)

 

あそこで思いつきの言い訳を述べていたらどうなっていたか……想像するだけで恐ろしい。答えるまで問い詰められた後、イッセーが消されていたかもしれない。

悪魔の一人……とは言うけれど彼はアーシアの友人らしかった。その彼が死んだとなるとアーシアは悲しみに暮れるだろう。そんな最悪の事態にならず人知れず安心した。

一先ず、今のアーシアが誰かに愛されて安心して暮らせているを知れたのは良かった。

 

「欲を言えば、その誰かは私が良かったなぁ……」

 

そんな十香の呟きは誰の耳に届くことなく静かな部屋に浸透していった。

と、不意に部屋のドアがノックされた。この家には十香とジブリールしかいない。であるなら誰が来たかは自ずとわかった。

十香がどうぞと声をかけるとドアノブが下がり開く。そこには十香同様、お風呂から上がったジブリールがいた。上がったばかりなのかほんのりと肌が赤らんでいる。

突然入って来なかったと言うことは真面目なお話なのだろう。

 

「どうかしたの?」

 

「ええ。食事のときに言おうと思っていたのだけれどすっかり忘れていたわ」

 

部屋に入って私のベッドに座るジブリール。十香もそれに合わせて起き上がった。

「それで。何を言おうとしていたの?」

 

十香はジブリールが世間話を始める前に本題に入る様に催促した。案の定、先に釘を刺されたジブリールが不満そうに口を尖らせていた。

その子供の拗ねた様な行動が可愛らしくてクスリと笑う。

 

「あっ、笑ったな〜」

 

「きゃっ! 急に抱きついて来ないで……!」

 

仕返しとばかりにジブリールが身体を密着させて来る。十香の腕にジブリールの豊満な胸が押し付けられムニムニと気持ちのいい感覚が襲って来る。それに伴い石鹸のいい匂いと混じり合った大人の女性特有の香りが十香の鼻腔をつんッと刺激し、胸打つ鼓動が早まり体温が上昇する。

ジブリールに変化を気付かれたくなかった十香は誤魔化すように身体を捩り少しでも離れようとした。

しかし、それを目ざとく察知したジブリールはニヤっと笑みを浮かべて更に十香に身体を寄せる。

 

「あらぁ。十香ちゃんの心臓、すごくドキドキしてる……それに顔も凄く赤くて熱い……」

 

「ひゃ、あああ……!」

 

熱っぽく耳元で呟かれ、ゾクッと背筋がむず痒くなる。十香は耳が弱い。少しの刺激だけで先の様に悲鳴を上げるほどに。

当然、その事をジブリールが知らないはずが無い。

可愛らしい悲鳴をあげる十香の姿はその気がなくても嗜虐心を刺激され、もっと虐めたくなる。

当の十香は必死に逃れようともがくが、がっしりと腕を固定しているジブリールは中々離れない。

もう一瞬だけ天使の力を使って逃れようと考え、実行に移そうとしたが考えを読まれていた。

 

「……天使の力を使おうなんていけない子。これにはお仕置きが必要ね」

 

そう呟きながら息を吹きかけられ、体から力が抜ける。

 

「ひゃうぅぅ……っ! ……このぉ……っ!」

 

顔を恥辱に染め、瞳にたっぷりと涙を溜め込みながら、精一杯の力を振り絞って抵抗しようとしたがーーーー、

 

「うひゃああぁっ!?」

 

「ふふふ、ふぁいかわらふみみがよはぁいわねぇ」

 

耳を甘噛みされて、抵抗虚しくジブリールに好き放題された。その後も何度か脱走を試みたが、完全に主導権を握られて尚且つ弱点を刺激され続けた十香に既に抵抗の意思などポッキリ折れていた。

 

「はぁ、はぁ……、んくっ、はぁ……はぁ……」

 

「んっー! たっぷりと十香ちゃんを堪能できたし、今日はここまでにしておきますか」

 

 

そう言って漸くジブリールが離れた時には、十香は完全に蕩けきっていた。

先ほどの攻防ーー一方的にジブリールが攻めただけーーで服が乱れ、真っ白だが可愛い装飾の入った下着が露わになっていた。肌も何処と無く赤みがかり、汗がツーと流れる。瞳には涙をためて、切れた息を整えるために漏れる吐息がとてつもなくエロい。

完成された美、とまで言われる十香の艶姿……他の天使が見れば一発で堕天は免れないだろう。

呼吸を正した十香は、自分の今の姿に気づきジブリールに背中を向けて乱れた服を直した。

最後に深呼吸を一つして、キッとジブリールを睨みつけた。

 

「と、十香ちゃん……? そんなに睨んでいたら可愛い顔が台無しよ……?」

 

「…………」

 

今更になってやり過ぎたことに気がついた様で、ジブリールが慌てて取り繕う。

が、

 

「…………明日の晩御飯抜き」

 

「ごめんなさぁぁぁぁああいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリールの言い忘れたことというのは、近々駒王学園で三大勢力の会議が行われるから一緒に来て欲しい、との事だった。

 

ーーーーどうしてそんな重大なことを、私で遊んでないで早く伝えなかった……。と、思うのも仕方のないことだったーーーー。

 

 

 

 

 

 





就活で忙しかったんです!(唐突
真面目に就活が忙しくて執筆できていませんでした。申し訳ないです。

ですが、今年最後に間に合わせれてよかったです。

良いお年を
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