久々に書きながら恐怖を感じました。
セシリアと別れて、陽の光が燦々と降り注ぐ砂浜で準備体操をする。
体操をしながら遊んでいる皆を見る。
ビーチバレー、焼いている子、ビーチフラッグ、カバディ、遠泳。
…カバディってなかなか激しいスポーツだよね。
「い・ち・かぁぁぁぁ!」
「ふっ」
背後から僕の名前を叫びながら跳び蹴りを仕掛けてくる鈴。
もう声で誰かわかるよ。
奇襲するなら覚られないように近づいてからしないと。
「プールに入る小学生や年寄りじゃあるまいし、何しっかり準備体操してるのよ!」
「若くても海をなめちゃいけなよ」
「そんなの気合いよ!気合い!!」
「気合いでどうにかなるほど世の中甘くないよ?」
「あたしは気合いで何とかしてきたわ!」
「……そうかい」
世の中って気合いだけでどうにか出来るのかな?
僕に気合いがあれば聖杯戦争もどうにか出来たのかい?
……どう考えても無理な気がする。
「ちょっと一夏。あんた監視塔になりなさいよ」
「は?」
「大丈夫あんたは突っ立てるだけでいいから」
「お断りするよ」
「幼馴染が可愛くお願いしてるんだから、叶えなさいよ!」
「……」
どこが可愛かったのだろうか?
と言うか何時お願いされたんだろう?
サッカーしようぜ
お前ボールな
的な感じで言われただけでお願いされた感じではないと思うんだけど。
「まぁいいわ。あたしは泳ぎに行くけど、あんたはどうするのよ?」
「とりあえずは、ゆっくり準備体操をするよ。終わったらまたその時考えるさ。それより泳ぐなら準備体操をしてからにしないか?」
「あたしはいいわよ。きっと前世は気合い入ってる人魚だから海どころか陸地もどうにかしてただろうし」
それは人魚じゃなくて魚人じゃないかいっていう疑問は胸にしまっておくよ。
「じゃあ、あたしは行くわ」
「気をつけてね」
「ふふっ、ありがと」
そう言い残して海に向かう鈴。
古き良き鈴の姿を見たような気がする。
気合いだとか、姉御だとかいう前の素直な鈴が。
準備体操を終わってからよくよく考えると水分を持って来てないのに気づいた。
水分がないのは、きついかな?
泳ぎに来て脱水症状になるっていうのは、珍しくないし気をつけないと。
「あ、一夏こんなとこに居たんだ」
「どうしたんだいシャル?」
「はい」
「ん?」
シャルの手にあったのはスポーツドリンクだった。
「助かるよ。でもなんで持って来ていないってわかったんだい?」
「勘、かな?(イチカノコトハナンデモワカルヨ?ダッテズットミテルカラネ♪)」
「女の勘ってやつかな?」
「もしくは一夏と僕はどこかで繋がっているのかな(カラダモハヤクツナガリタイナ、イチカニアイシテモラエルナラナンデモスルヨ)」
「以心伝心って事かな」
「そうそう、一夏!一言言ってあげてよ!」
「何がだい?」
「ほらっ、いつまでも隠れてないでこっちにおいでよ!」
「ん?」
シャルが少し大きな声で少し遠くの木の陰からこっちを覗いているナニかがいる。
少しもごもごして、こっちに来ることもなく木の陰で揺れている。
「もう!ラウラ!こっちに来ないなら、こっちから行くからね!」
そう言って僕の手を引いて、ナニかがいる木に近づく。
って今ラウラって言ったかい?
なんて考えていると、目の前にバスタオルのお化けがいた。
「えっと、ラウラなのかい?」
「ふごふごふごふごふう」
「え?」
なんて言っているのか全く分からない。
顔すらも覗いていないから、黒い聖杯に覚醒した桜ちゃんの影の白いバージョンになってるんだけど。
……黒い聖杯に覚醒した桜ちゃんとは一体何なんだろう?つい口走ったけど僕の記憶には一切ない。
まぁいいかな?
「可愛いんだから、しっかり一夏に褒めてもらわないと損だよ」
「ふごごん」
「もう!」
シャルがバスタオルに手をかけて一気に投げ捨てる。
中から出てきたのは、黒の水着を着て髪型をツインテールにして、顔を赤くしながら自分のツインテールの先を指で遊びながら上目づかいでこちらの事をうかがっているラウラだ。
背伸びして大人になろうとするラウラに和んでつい頭を撫でててしまう。
「~~~~~~っ」
「ほら、一夏!頭を撫でるだけじゃなくていう事言わないと」
「ラウラ、似合ってるよ」
「ほんとうか?」
「ああ」
「ほんとうにほんとうか?」
「本当に本当だよ」
言いながら頭をもう一度撫でる。
その言葉を聞いてシャルに抱き付くラウラ。
「シャルロット!一夏が褒めてくれたぞ」
「ふふっ、良かったね。ラウラ」
ラウラを抱きしめながら僕に何か目線で催促してくるシャル。
「シャルも水着、似合っているよ」
「ふふっ、ありがとう一夏」
穏やかな空気が流れる。
するとシャルの抱擁から抜け出したラウラが何かを思い出したかのように僕の事を恨めしそうに見つめてくる。
「ラウラどうかしたのかい?」
「プレゼント」
「?」
「ふぁんしょんせんせい、ぷれぜんと」
目に涙を浮かべながら、単語だけ並べて訴えかけてくる。
「あれは水着を選んでもらったお礼だよ?」
「うぅ~」
今にも零れ落ちるぐらい涙を増やして、自らのツインテールを胸元でギュッと握りながら泣き声に近い声を出しながら僕をまっすぐに見つめてくる。
どこをどう見ても僕が悪者の構図じゃないかい?
「くっ、誕生日にプレゼントするからそれで許してくれないか?」
「あと、ぎゅってしてなでなでしてくれたらいい」
腕を広げて待っているラウラ。
「ごめんね」
「にゅ~、これでゆにゅす」
少しの間抱きしめて頭を撫でていると、正気に戻ったのか「にゃー」と泣き声を上げて走り去っていくラウラ。
後姿をただただ見つめるしかない僕達。
「もう、ラウラったらいきなり幼児退行するからびっくりしちゃったよ」
「僕は二回目だから驚きはしなかったけど、困りはしたよ」
「ふ~ん、そうなんだ。僕も何か欲しいな、プレゼント」
「誕生日祝いでお願いするよ」
「ん~と、ジャアコドモデ(じゃあアクセサリーで)」
「子供?」
「あはは、冗談だよ。一夏が精いっぱい選んでくれたものなら何でもいいよ(アァアブナカッタデモボクノイチバンホシイモノハイチカトノアイノケッショウダヨ)」
「ああ、びっくりしたよ。」
「誕生日楽しみにしてるね?」
小首を傾げて聞いてくるシャル。
「精いっぱい頑張るよ」
「織斑楽しそうな話をしてるな?」
僕の選んだ黒い水着を纏った姉が降臨した
お読みいただきありがとうございます
一夏の明日はどっちだ