魔法少女リリカルなのは~魔法使いな蒼い死神~   作:ヤトガミ・レイナ・マリー・エクセリア

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ゆりかご

 

 

 

 

 

「みんな、準備はいい?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 出撃の準備を終え、格納庫に集まったフォワード陣、なのちゃんとヴィータ、ボクの前に並んで立っていた

 

「今回の出撃は、今までで一番ハードになると思う」

「あたし等も、お前らのピンチになっても助けてやれねえ」

「でも、目を閉じて、今までの訓練を思い出してみて?」

 

 なのちゃんの言葉に従い、目を閉じる5人

 

「何度もやった基礎訓練、嫌って程磨いた、それぞれの得意技。

 痛い思いをした防御練習、全身筋肉痛になっても繰り返したフォーメーション。

 いつもボロボロになるまでやった、私達との模擬戦」

 

 なのちゃんの言葉とともに、みんなの顔がどんどん青ざめていった

 

「目、開けていいよ」

 

 なのちゃんは目の前に立つ5人の姿を見て、苦笑する。

 

「訓練メニュー考えた私が言うのもなんだけど、皆きつかったよね?」

「それでも、ここまで5人ともよくついて来た」

「5人とも誰より強くなった……とは、ちょっと言えないけど。

 だけど、どんな相手が来ても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた」

 

 なのちゃんとヴィータは、そう言いながら笑みを浮かべていた

 

「守るべきものを守れる力、救うべきものを救える力。

絶望的な状況に立ち向かっていける力。

 ここまで頑張ってきた皆は、それがしっかり身に付いてる」

「夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間」

 

 言葉を続けながら、なのちゃんは拳を握りしめて前に出した

 

「どんなに辛くてもやめなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。それだけ、忘れないで」

 

 最後にそう言って、締めくくる。

浮かべていた笑顔は彼らの知る、なのちゃん……いや、なのはの、強くて優しいエースオブエースの顔だった

 

「キツイ状況を、ビシッとこなして見せてこそのストライカーだからな」

 

「「「「……はいっ!」」」」

 

 ヴィータは不敵な笑みを浮かべながらフォワード達にそう告げ、フォワード達も自信に満ちた顔で答えた

 

「じゃあ、機動六課フォワード隊、出動!」

「自分を信じて」

「行ってこい!!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 今までで一番の敬礼をボク達に返して、ティナたちは踵を返して走り出した

だけど、スバルとイリヤだけその場に残っていた

 

「先、行ってるぞ」

「うん」

「ああ……」

 

 ヴィータは何かを感じとり、一言いうと出て行ってしまった

 

「イリヤ、少し離れようか」

「うん」

 

 ボクのイリヤもなのちゃんとスバルの邪魔をしないように少し離れた

 

「それで、どうしたんだ?」

「うん…えっとね、お兄ちゃん……サヨナラはいわないから」

「ッ……」

 

 サヨナラは言わない……ボクはその言葉でイリヤが気がついていることを悟った

 

「そうか……いつから気がついたんだ?」

「はやてさんがお兄ちゃんへ命令したとき…変だなって思って少し考えていたら気がついたんだ」

 

 イリヤは勘が鋭い、それはイリヤの〝オリジナル〟が持っていたのかはわからないが、身に持つ才能の一つだ

 

「ごめん、初めからボクはこうなると思っていた。いや、もしこうならなくても何れは死ぬ。だから、二人には一人でも生きてられるように鍛えてきたつもりだ……いや、だったろ?」

「うんん、お兄ちゃんが私達を助けてくれて、もしもの時に備えていろんな魔法を教えてくれていたのはわかってた…それにね。ミユもいたし、お姉ちゃん達もよく見に来てくれたからいやじゃなかったよ」

「そうか……ボクはいい兄貴でいられたか?」

「うん!お兄ちゃんは……うんん、私達の()()は最高のパパだよ!」

「イリヤ……」

「だから、心配しないで。私はパパの娘だから、ミユと一緒に強く生きるよ!」

 

 イリヤは……いや、イリヤと美遊は優しく、強く育っていたみたいだ

 

「無限に信じたいから、信じない」

「え……?」

「ボクが昔、仲間達に言った言葉だ。昔、あることがきっかけでボクは人が信じられなくなった。それでも、仲間の大切さはわかっていた。だから、ボクは無限に信じたいから確信したくないんだ…信じていると言ってそこで終わらせたくない、だからボクはもう信じない。今でもそれは変わらない。」

「信じたいから、信じない」

「うん。多分、ボクがイリヤに送れる数少ない言葉だ。意味はわからなくてもいい、それでも、覚えていてほしい。ボクの最後の言葉だ」

「うん、わかった……ずっと覚えてる、ミユにも伝えておくよ」

 

 これでイリヤとの別れは済ませられな

 

「さあ!みんなが待ってる。だから、行ってこい!そして美遊を連れて帰ってこい!」

「うん!行ってきます!」

 

 イリヤは元気よく頷くとヘリに走って行った

 

「頑張れよ、イリヤ。」

 

 

 

 

 

 

「ほな、私達も行こうか」

「「うん!!」」

「おう!」

「はい!」

「……」

 

 アースラの下層、ハッチの前にボクとはやて、なのは、フェイト、ヴィータ、ティア、ユイちゃんの7人が集まっていた

 

「ソウくん、もう一度なんやけど……ソウくんは今回の戦闘に参加しないで、ほしい」

「……はやての気持ちはうれしい……だから、今回ははやての命令に従う」

「それなら……」

「だけど、それは何も起こらなかった場合のみだ。みんなが戦っているのに何もしないのはいやだからな。ピンチになれば出るし、勿論、ユウキが出てくるようなことがあればボクはでるよ」

「そやから、それをやめって……」

「もういいよ、はやてちゃん」

 

 はやてがボクの言葉に怒鳴りそうになるとなのちゃんが止めた

 

「もういいんだよ、はやてちゃん。ソウ君は何を言ってもきっと戦場に出てくるよ」

「なのはちゃん、そやけど……」

「うん、はやてちゃんの考えてることはわかるよ。私だって、ソウ君とお別れしたくない……でも、ソウ君。小学生の時に言っていたの……[私となのちゃんはいつか必ず違う道を歩いていくでしょう。その日までなのちゃんの笑顔を守ってやりたいんです。]ってこの言葉がとうとう来たんだと思うんだ……」

「「なのは……」」

「なのはちゃん……」

 

 あの時は死別の意味で言ったわけじゃないんだけどな……まあ、いいか

 

「だから、私はソウ君にもう何も言わないよ。ソウ君、時々頑固でもあるから」

「それはなのちゃんもだろ?」

 

 ボクの言葉で暗かった雰囲気が吹き飛び、ボクとなのちゃんは笑い合い、ユイちゃん含めて、呆れていた

 

「なら、この話はおしまいや。ソウ君は一応待機ってことで」

「ああ、わかっている。みんな、気をつけて」

「「「うん!」」」

「ああ」

「はい、にぃにぃ!」

「……うん」

 

 ボクは6人がハッチから飛び出していくのを見届けた

そして、そのすぐに、体にかかっていた能力限定が解除され体に魔力が満ちる

 

「頑張れよ」

 

 ボクはそれだけ言うと管制室に歩き出した

 

 

続く


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