年末年始特別企画 ぐだ子とダヴィンチちゃんの聖杯戦争 作:雪希絵
原作:Fate/Grand Order
タグ:R-15 オリ主 Fate 軽い百合 キャラ崩壊 ぐだ子 アルトリア マシュ ギルガメッシュ
「こうなったら、正々堂々勝負だ!」
「望むところだ!」
二人は3対3のサーヴァント同士の決闘をはじめ、勝負を決めることとなった
果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか……!
そして、喧嘩の理由とは……!
なんて軽い考えから書き始めたら、予想外に楽しかったのでこんなことに
ぐだ子のキャラはもう跡形もありませんよね
少しでも笑えれば、作者はそれで幸せです
ごゆっくりどうぞ
※この小説は作者が連載している『もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?』のアフターストーリーです。そちらを読んでいなくても充分理解は可能だと思います
「いーや!絶対に、ダヴィンチちゃんが間違ってる!」
「いーや、古い概念を捨て去ってこそ、新しい変化があるものさ」
「魔術師のセリフじゃないでしょぉ!?」
ある二人の言い争いが、そろそろ一時間にもなるほどの間、カルデアに木霊していた。
一人はカルデア唯一のマスターこと『詩島 ライカ』。
もう一人はカルデアの頭脳こと『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。
二人はあることについて、先程から議論もとい口喧嘩を続けていた。
マシュとアルトリアもいつも通りライカのそばにいるが、彼女達はどうせライカの言う通りにするので、傍観に徹していた。
「もー!怒った!こうなったら、正々堂々勝負だ!」
「望むところだよ、ライカ!」
しびれを切らしたライカが、ダヴィンチを指差して叫ぶと、ダヴィンチは即座に承諾。
かくして、二人の聖杯戦争が始まるのだった……。
──── カルデア訓練室 ────
カルデア訓練室。
そこはサーヴァントの訓練にすら耐えうる、カルデア最強の施設の一つ。
日頃様々なサーヴァント達が、思い思いに訓練するその場は、今だけは訓練ではない本物の戦場と化していた。
「ルールは簡単、先に相手のサーヴァント三騎を倒した方が勝ち!」
「うん、単純でいいじゃないか。さーて、盛大に行こうか!」
「泣いて謝っても遅いんだからね!」
ルールを確認し、ライカは右手を突き出してサーヴァントを呼び出す。
「頼むよ、みんな!サーヴァント『アルトリア・ペンドラゴン』!『マシュ・キリエライト』!」
「「はい!」」
ギャラリーの想像通り、ライカの最も信頼するサーヴァントである二人が呼び出され、ライカの前に躍り出る。
だが次の瞬間、ギャラリーどころか、対戦相手のダヴィンチも、モニターで観戦していたロマンさえも凍りつく、驚くべきことが起こった。
「任せたよ!『ギルガメッシュ』!!」
直後、眩いばかりの黄金の閃光が、訓練室を染め上げる。
思わず全員が目を細める中、渦中に立つのは最強のサーヴァントの一人。
逆立った光り輝く金髪に、爛々と輝く真紅の瞳。
髪と同じく、黄金に染められた甲冑を纏い、悠々と歩みを進めるのは……。
「……ふん、仕方ない。他ならぬライカの頼みだ。力を貸してやろう」
最古にして最強の英雄王『ギルガメッシュ』その人だった。
「「「「マスター(ライカ)が、男のサーヴァントを呼んだ!!!?」」」」
瞬間、その場全ての人物の感想が一つに揃った。
ライカは美少女にしか興味がない。
話し相手はもちろん、自分とともに戦うサーヴァントも、全て美少女で固める徹底ぶりだ。
男性サーヴァントや職員の中で、ライカの部屋を見たことがあるものなど、それこそ片手で数えるくらいしかいないだろう。
そんなライカが、今初めて、自分の意思で男性サーヴァントを呼び出した。
この事実に驚愕しない者は、この場には一人もいなかった。
それを目の前で叩きつけられたダヴィンチの衝撃は、いくら万能の天才であろうとも、計り知れないものだった。
「そんな……!どうして、ギルガメッシュが……!?」
「ふっふっふ。聞いて驚け、ダヴィンチちゃん!」
得意気な笑顔でそう言い、片手で自分の顔を覆いながら、ライカは語る。
「たしかに、私は男に興味はない。そう、全くもって!!!」
((((うん、知ってる……))))
全員の心の声が揃うが、そんなことはつゆ知らず、高らかに続ける。
「けどね……私は、わかりあえる人に出会ったんだ……。そう、同じ『アルトリア教』のギルガメッシュと!!」
((((ああ、なるほど……))))
ようは、アルトリアが好き同士だからこそ、二人はわかりあったのである。
「今では『ライカ』『ギル』と呼び合うマブダチなんだよ!」
「そういうことだ!」
「「はーはっはっはっは!!」」
世の中、何が友情のきっかけになるかわからないものだ。
「くっ、まさかアーサー王に加えて、英雄王まで出てくるなんて……!マシュの耐久力も一級品だし。でも、譲れないものがある!」
そう言い、ダヴィンチは右手に特別に現れた令呪をかざし、サーヴァントを呼び出す。
「サーヴァント『スカサハ』!『クーフーリン』!『エミヤ』!」
ダヴィンチが選んだのは、ケルトの師弟コンビに、究極の複製士。
「うーわ……えげつない選択」
「勝ちに来てるからね」
「だろうねぇ……」
納得したように呟き、そして少しだけ寂しそうな笑顔を浮かべる。
「……ダヴィンチちゃんとは、もう少し女の子の魅力について語り明かしたかったな」
「私もだよ」
だが、もう後戻りはできない。
「マスター、お任せ下さい。必ず勝利を掴んでみせます」
「私は常に先輩の味方です。だからこそ、私はここにいます!」
「ライカよ。この我がいるのだ、敗北などありえん。ライカはただ眺めているだけで構わん!」
頼もしいことを言ってくれる、ライカ陣営。
「マスター、さっさと始めるとしよう。うちの馬鹿弟子は血気盛なんでな」
「おい、バ……師匠。まるで俺が戦闘狂みたいな言い方すんなよ。まあ、楽しみだけどよ」
「こういった催しは、極力裏方に徹しているのだがな……。指名されたからには最善を尽くそう」
やる気満々な三人を従える、ダヴィンチ陣営。
かくして、役者は揃った。
「「さあ、勝負だっ!」」
二人の宣言が、ゴング代わりだった。
「アルトリア!マシュ!突撃ぃ!!」
ライカの指示により、二人が勢い駆け出す。
「スカサハ、クーフーリン、迎え撃つよ!」
それに対し、スカサハがアルトリアに、クーフーリンがマシュに躍りかかる。
「貴様とは一度、本気で戦ってみたかったのだが……まさかこんな形で叶うとはな!」
「ええ。実は、私もですっ!」
槍の柄の中程で剣を防ぎ、二人は至近距離で言葉を交わす。
一度飛び下がり、鋭い突きを放つ。
アルトリアはそれを流すように受け、その場で回転。
時計回りの回転で繰り出した斬撃に、スカサハは素早く槍を戻して受ける。
だが、それは想定内。
アルトリアは魔力放出であえて前進し、背後に回り込む。
「ふっ!」
さらに魔力放出で無理やり後退し、強引に剣を振る。
魔力放出を活用した、スカサハも予想外の攻撃だ。
「ちっ────!」
舌打ちしながらスキルを発動、紙一重での回避を実行する。
「はあっ!」
即座に攻撃に転じ、槍をもう一つ呼び出して猛攻を仕掛ける。
「くっ────!」
槍二本による攻撃は慣れないのか、アルトリアの顔に焦りの表情が浮かぶ。
しかし、
「図に乗るなっ!」
怒号と共に、スカサハの頭上に無数の刀剣類が顕現する。
ギルガメッシュの得意技だ。
「っ……!」
強引に槍を振り、アルトリアを弾いてから、スカサハは槍で武具を弾きながらその場から脱出。
「甘いわっ!」
しかし、さらに横からも刀剣が射出される。
これは、回避のしようがない。
(せめて、何発かは弾く!)
相手が宝具の原点であるため、全てを弾くことは恐らく叶わない。
ならば、少しでもダメージを減らすまでだ。
そう考えたスカサハが槍を握り直した時、横から何かが飛来してきた。
さらに、
「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」
その場で爆発した。
それによってスカサハは弾かれ、多少のダメージは負ったが、ギルガメッシュの武具に串刺しにされるよりは随分マシだった。
「ふう、間に合ったか」
もちろん、普通なら禁じ手である『壊れた幻想』を使用する者など、一人しかいない。
黒い弓を握る、エミヤだ。
「やってくれるではないか」
「まあ、これぐらいはな」
「面白い。貴様とは、いつか決着をつけねばならんと思っていたところだ」
二人は口元を歪めて笑い、向き合った。
「さあ、受けるがいい!『王の財宝(ゲートオブ・バビロン)』!!」
ギルガメッシュの周りを、膨大な数の刀剣が囲い込む。
全てが光り輝くそれは、まっすぐにエミヤの方向に剣先を向けると、次々に射出される。
「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」
対するエミヤは、自身の持てる最強の防御幻想を呼び出した。
数に任せたギルガメッシュの猛攻をどうにかしのぎ、エミヤは攻撃に転じる。
「I am the bone of sword
(体は剣で出来ている)
Steel is my body,and fine is my blood
(血潮は鉄で 心は硝子)
I have created over a thousand blades
(幾たびの戦場を超えて不敗)
Unknown to Death
(ただの一度も敗走はなく)
Nor known to Life
(ただの一度も理解されない)
Have withstood pain to create many weapons
(彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う)
Yet,those hands will never hold anythig
(故に生涯に意味はなく)
So as I play,unlimited blade works
(その体はきっと剣で出来ていた)」
瞬間、訓練室から場所が移される。
そこは、エミヤの持つ心象風景。
エミヤの代表格である固有結界。
宝具『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』。
エミヤにより、彼のための戦場に、ステージは移されたのだ。
さらに、エミヤは多数の刀剣類を投影。
さながら『王の財宝』のごとく、ギルガメッシュに叩きつける。
「舐めるなっ!」
ギルガメッシュはそれを予想して、あらかじめ呼び出しておいた刀剣で相殺する。
二人らしい戦いを繰り広げ、辺りにはその爪痕が次々と穿たれていった。
一方、マシュも善戦を続けていた。
「せいやっ!」
クーフーリンが気合いとともに、槍を横凪に振る。
「っ────!」
手に持った盾で危なげなくガードし、続く連続突きも器用に盾を動かしてガードしていく。
「やあぁぁぁぁ!!」
気合いとともに全力で体当たり。
「ふん!」
クーフーリンは槍を横向きに構え、正面からそれを受け、はじき返す。
マシュはその衝撃をジャンプすることで流し、着地した。
「……嬢ちゃん、真名解放前から筋はいいと思っていたが、真名解放した途端に化けやがったな」
「ありがとうございます。ですが、まだまだ未熟者です」
「はっ、いいね!だったら、とことん付き合ってもらうぜ!」
「はいっ!」
金属同士が衝突する音が、あちこちから重なり合って響く。
戦況は互角。
その様を、ライカは歯噛みしながら眺めていた。
(マズイな……。一見互角だけど、ここはエミヤの固有結界の中。タイムラグのあるギルガメッシュじゃ、押されるかもしれない。マシュも強いけど、経験不足は否めないし……)
そう考え、ライカは一つの決断を下す。
右手を突き出し、令呪を一画消費し、叫ぶ。
「真名解放!『ギルガメッシュ』!!」
「……!いいだろう、宝物庫の戸を開けてやろう!」
「!? マズイ!全員ギルガメッシュに攻撃!」
焦ったダヴィンチが指示を出すが、もう遅い。
ギルガメッシュは既に、準備を終えている。
「裁きの時だ。天地を裂くは我が乖離剣!受けよ、『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!』」
王の財宝から引き出された、ギルガメッシュ最強の宝具が、今力を解き放つ。
乖離剣の三つの円環が別々に回転し、暴風と次元断層を発生させる。
竜巻にも見えるその力は、螺旋を描きながら天に登る。
その必殺の一撃を、彼は躊躇なく振り下ろす。
耳障りな壊音が轟き、エミヤの固有結界が音を立てて崩壊する。
「よしっ……!」
目論み通り。
だが、代わりに令呪を一つ失った。
仕方ないことだが、少し惜しい。
(この先、上手く進めばいいけど……)
───── 一時間後 ─────
戦いは苛烈を極めた。
令呪はお互いに一つのみ。
無傷のサーヴァントは互いにいない。
「はっ…はっ……!」
「……うぅ……!」
「ふっ……!」
全員が肩で息をし、それでも全力で戦っている。
「くっそ……!しぶといな、嬢ちゃん!」
「当然です……!諦めるわけには……いきません!」
「……仕方ない、そろそろ決めよう」
消耗戦となっている状況を破るべく、ダヴィンチは最後の令呪を行使する。
「真名解放!『エミヤ』!」
「承知した!」
エミヤが二回目の宝具『無限の剣製』を放つ。
さらに、
「行くぞ!馬鹿弟子!」
「オーライ、師匠!」
マシュとアルトリアの攻撃を振り切り、ケルトの師弟コンビまで宝具を使う。
「しまった!」
ライカの顔に焦りが浮かぶ。
だが、
「スキル『奮い立つ決意の壁』!!」
マシュの声が、響き渡る。
「マシュ!?」
瞬間、全ての宝具がマシュに集中する。
「いい根性だ!嬢ちゃん!『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』!!」
クーフーリンの必殺の槍が、マシュに直撃する。
必ず心臓を穿つその一撃を、マシュは強引に盾を当てて逸らす。
「かっ……はっ……!」
しかし、それでも腹部に直撃を受ける。
さらに、背後にはスカサハが迫る。
「問題ない。これで決める!『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ・オルタナティブ)』!!」
二本もの魔槍が、マシュに襲いかかる。
「っ……!」
どうにか、本当にギリギリ、盾を真横にすることで軌道を逸らす。
「いっ……ぁ……!」
肩と脚に直撃する二つの槍。
だが、それでも彼女は倒れない。
まだ、一つだけ残っているから。
「……この状況で使うのは、罪悪感しかないがな。容赦はしない!『無限の剣製』!!」
固有結界の発動とともに、無数の刀剣がマシュに迫る。
「マシュ!もういい!やめて!」
「ぐっ……ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ライカの静止すら振り切り、マシュは盾を叩きつけるように置き、詠唱する。
「それは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷。顕現せよ!『いまは遥か理想郷(ロード・キャメロット)』!!!」
背中にいる全てを守るため、彼女は全力で自身の宝具を放つ。
マシュの意思を汲み、顕現した宝具は全ての刀剣を防ぎ、そして、
「マシューーー!!」
力尽きた。
「マシュ!マシュ!」
「せん……ぱい……。すみ……ません……」
「ううん、謝ることなんかないよ!痛かったでしょ……!ごめんね……!」
「へいきです……これくらい……。お二人とも、先輩を……お願いします……!」
残ったアルトリアとギルガメッシュを見据え、最後にそう言って、マシュはゆっくりと目を閉じた。
「マシューーーーーー!!!」
動かなくなったマシュを抱き、ライカは叫ぶ。
「……マスター、指示を」
「こやつの努力に報いねばならん。立て、ライカ」
両肩にそれぞれ手を置き、二人がそう言う。
「……うん」
ライカは涙を乱暴に拭い、自身の魔術礼装を切り替える。
カルデア戦闘服。
彼女が本気で戦う時の勝負服だ。
「一つ手がある。力を貸して」
「もちろんです!」
「ふっ、述べてみよ!」
ライカは作戦を伝え、二人の動きを指示する。
「頼んだよ……!」
直後、アルトリアは弾かれたように敵の渦中に飛び込む。
「来いっ!アーサー王!」
「ケリをつけてやるぜ!」
「浅からぬ因縁がある中だ。いざ勝負!」
空気を読んで動きを止めていた三人も、同時に動き出した。
「「はあ!!」」
両サイドから迫り来る魔槍。
「甘いっ!」
アルトリアは自身の鎧を解除。
激増した魔力放出で、槍を強引に防ぐ。
さらに、タイミングを合わせてきたエミヤの双剣を、自身の剣で受ける。
「まだまだ!」
クーフーリンは一度かがみ、低い位置から槍を突き込む。
アルトリアは身体を横にして紙一重でそれを躱し、魔力放出で上に飛ぶことで続くスカサハの攻撃を回避。
エミヤに向かって剣を振り下ろし、彼はやむを得ず後退。
だが、着地と同時にアルトリアはエミヤに距離を詰める。
「なにっ……!?」
「ふっ……!」
驚愕するエミヤに、容赦なくアルトリアは斬りかかる。
エミヤは片手の干将でどうにか防ぎ、直後に偽・螺旋剣(カラドボルグ)を投影し、大上段に振り下ろす。
しかし、それをも魔力放出ではじき返す。
「そんな……まさか、一人で三人のサーヴァントと戦うなんて……!でも、そう長くは持たない!」
たしかに、いかにアーサーのといえど、自身と同等クラスの三騎を相手にし続けるのは無理がある。
もちろん、ライカの目的は、そこではない。
「もう充分だ!いけるぞ、セイバー!」
真の目的は、ダヴィンチ側のサーヴァント三騎をアルトリアの元に集めること。
先ほどのような令呪ではなく、今度は自身の魔力で、ギルガメッシュは乖離剣を呼び出した。
「『天地乖離す開闢の星』!!」
無数の螺旋を持つ次元断層が、四人向かって振り下ろされる。
「かいっ……!」
「『ガンド』!!」
ダヴィンチの回避命令に重ねるように、ライカのガンドが炸裂。
集まっていた四人に直撃し、スタンさせる。
再び壊音を響かせ、包み込まれた四騎を蹂躙する。
まるで世界が滅んだかのような衝撃。
その破壊の後には……、
「無茶……やってくれるぜ……!」
「どうにか……生きてるか……」
戦闘続行でどうにか生き残ったケルトの二人。
それと、マシュによるダメージカットで生き延びたアルトリアが立っていた。
「なるほど……見事だよ、ライカ」
これが、ライカのデザインした状況。
3対2から、自分たちに有利な2対2へ。
こうすれば、自分の仲間は負けはしないと考えたのだ。
しかし、ライカ達は一つ忘れている。
「けどね、忘れてはいけない。この私自身も、サーヴァントであるということを!」
高らかに言い、ダヴィンチはズカズカと歩みを進める。
「ま、まさか……!」
嫌な予感とは、よく当たるものだ。
「東方の三博士、北欧の大神、知恵の果実。我が叡智、我が万能は、あらゆる叡智を凌駕する!『万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)!!』」
左手に備えた巨大な腕から、紫に輝く球が放出される。
そして、甲高い音を上げて爆発。
部屋は閃光に包まれ、途方もない衝撃が身体を揺さぶる。
しばらくして、ようやく消えた閃光の中……。
「えっ……」
アルトリアが見たのは、自身に覆い被さるように立ったギルガメッシュだった。
「ギルガメッシュ……なぜ……」
「……美しいものを守るのは、王の義務というものよ……」
ニヒルに笑い、ギルガメッシュは倒れ込む。
元より、彼は武具を絨毯爆撃のごとく放つのが得意戦法のため、耐久力はそう高くない。
にも関わらず、彼はアルトリアをかばったのだ。
「ギル!」
親友の痛ましい姿に、ライカは思わず駆け寄ろうとするが……。
「来るなっ!ライカ!敵を倒せ!」
ギルガメッシュが最後の力でそう叱咤激励する。
「……! わかった!」
ライカは決意を固め、駆け寄ることをやめて思案する。
戦況は厳しい。
ボロボロとはいえ相手にはクーフーリンとスカサハ。
さらにダヴィンチまで反則レベルで参戦してきている。
それでも、ライカには策がある。
「行くよ、アルトリア」
「はい!」
自身に残った最後の令呪で、アルトリアの体力を回復。
全快したアルトリアは、決戦へと臨む。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」
クーフーリンとスカサハを振り切り、狙うはダヴィンチ。
「いいね!手合わせ願おうか!」
アルトリアの振るう剣を、巨大な杖で次々と防いでいくダヴィンチ。
しかし、彼女(彼?)のクラスはキャスター。
多少はダメージを受けてしまう。
それでも、時間を稼ぐだけで充分だ。
「背中がお留守だぞ!」
「アーサー王!」
抜群のコンビネーションで、背後に迫る師弟コンビ。
「ぐあっ……!」
回避が間に合わず、背中に一撃を受ける。
しかし、すぐに立て直して、魔力放出を乗せた大回転。
「うっ……!」
「ちっ……!」
「いったぁ!」
(チャンスはここしかない!)
「アルトリアぁぁぁぁぁぁ!!」
ライカの叫びを受け、自身の魔力を全て流し込むような全力魔力放出。
先ほどとは比べ物にならないほどに跳躍し、眼下に三人を捉える。
「今です!マスター!」
「令呪!」
「「「「なっ……!」」」」
二人を除く、その場全ての者が息を飲む。
これで、四回目の令呪行使だからだ。
「ギルがね……宝物庫から出してくれたんだよ!真名解放!『アルトリア・ペンドラゴン』!!!」
そう、宝物庫には令呪さえもある。
どさくさに紛れて、ギルガメッシュはそれをライカに譲渡していたのだ。
アルトリアの聖剣が、『風王結界(インビジブル・エア)』を破って姿を表す。
「遍く星の息吹よ、輝ける命の奔流よ。受けるがいい!『約束された───(エクス─────)」
振り上げた剣が眩い閃光を放ち、解放される────!
「勝利の剣(カリバー)』!!!」
レーザーの如き斬撃が、空気を切り裂いて光り輝く。
三人は、なす術なくその光に飲み込まれ……。
「令呪四つは卑怯でしょ────!」
盛大なブーメランを投げるダヴィンチともども、全員を戦闘不能にした。
静寂の降りる訓練室。
そんな中、ライカはアルトリアの元に走った。
「アルトリア!」
「マスター!」
二人は抱きしめ合い、勝利を確認する。
「勝った!勝ったよ!アルトリア!」
「はい、勝ちました!」
かくして、ライカVSダヴィンチの聖杯戦争は、ライカの勝利で終わった。
───── 数時間後 ─────
「というわけで!年越しは蕎麦で決定!!」
マシュ達サーヴァントも回復し、改めて勝利宣言をしたライカの第一声はそれだった。
これが、二人の戦っていた理由。
『年越し蕎麦にするか、はたまた年越しうどんにするか』
聖杯(丼麺)をめぐる戦争の発端は、まさかのこれだった。
「絶対うどんの方がいいと思うんだけどなぁ……」
「はっ!敗者の戯言など聴きたくありませんわー!」
「先輩がブラックモードに……」
結果はライカは勝利。
というわけで、エミヤや清姫をはじめとした家庭的サーヴァント達の作った蕎麦を、今みんなで食べているところだった。
「ねえ、アルトリア。それ何杯目?」
「? 12ですが?」
「ねえ、アルトリア。これ、わんこそばじゃないよ?普通の蕎麦だからね?」
アルトリアは次々に丼を空にし。
「うむ、これは酒に合うな」
「師匠、俺にも日本酒くれよ」
スカサハとクーフーリンは日本酒を片手に箸を進め。
「この七味とやらは面白いな。宝物庫に加えようか……」
ギルガメッシュは七味唐辛子の小瓶を片手に思考し。
「マシュ、あーん」
「あ、あーん」
ライカとマシュは『あーん』などをして、思い思いに年越し蕎麦を楽しむ。
そんなのどかな空気の中、ダヴィンチは今更話を蒸し返す気にもならず、
「ま、仕方ないか」
と言って、自分も箸を手に取った。
パーティーのように盛り上がる中、唐突に鐘の音が響いた。
「あ、除夜の鐘だ」
「なんですか?それは」
「人間の百八の煩悩を祓うために、百八回鐘を鳴らす……まあ、願掛けみたいなものかな?ってか、鳴ってるってことは、もう年越したんだ……」
どうやら、騒いでいるうちに年を越してしまったらしい。
ちなみに、どこで鳴っているのかというツッコミは誰もしない。
「先輩」
「マスター」
呼ばれたライカが振り返ると、
「「「「明けましておめでとうございます」」」」
と、サーヴァント全員で声を揃えていた。
いつの間に集まったのか、最初より数は膨れ上がっていた。
「うわっ!……もう、びっくりしたなー」
苦笑いして一拍置き、改めて、
「明けましておめでとう!今年もよろしくね!」
と、満面の笑顔で言うのだった。
なんか楽しかったです……
できれば、来年もやりたいなぁ……