Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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捏造が多め、さらに本家のシーンを圧縮する為、いろいろ無茶なこじつけがあります。


ブラックナイト

「イリヤ…なのか」

 俺が知っているイリヤとあまりにもかけ離れた傲慢な表情。

 思わず漏れた呟きを拾って、実感が籠って居ると理解したらしい少女は、一瞬だけキョトンとした顔に成る。

 

「もしかして、キリツグから聞いてたの?」

 何度か見たことのある、年相応の表情は僅かに一瞬。

 冬のイメージを思わせる、暗い視線と濁ったトーンで、俺の心を切り捨てた。

「そうよ。おにいちゃんがキリツグと楽しく親子している間に、私やアインツベルンは捨てられていたの。もう…別にいいけどね」

 どこまでも沈みそうな陰鬱な声は、無理やり作った弾んだ声で打ち消される。

 

「裏切り者のキリツグが私を携帯していても、ママみたいに使い捨てられるだけだもんね。だからいいのよ? 私の代わりに装填されたおにいちゃんも、気にしなくていい…」

「それは違う!」

 思わず、口から言葉が突き出ていた。

 少女の騙るキリツグは、確かに俺の元の世界の知識で知るジイサンの一面ではあった。

 

 だが、それは一部分でしかないし、何よりそう思ってしまった過去があることを知っている。

 それよりもなお、この世界の俺は、燦然と輝く温かい思い出として、歪な親子関係を受け入れていた。

 そして…、俺が元の世界で異世界から来たと語るイリヤの語る、不器用な衛宮切嗣とはかけ離れていた。

 

「な、何よ。おにいちゃんが何を知ってるって言うの!?」

 全てを理解できるほどには知って居ない。

 全てを理解できるほどには聞いて居ない。

 

 だが、それでも。

 俺の知るジイサンの真摯な姿と…。

 俺のイリヤの明るい表情とかけ離れていたから、こっちのイリヤが語る衛宮切嗣の冷酷さが奇妙に浮いて居た。

「ああ、俺が知って居ることは多くないさ。だけど、これだけは確実に言える」

 ガランドウの衛宮士郎より、もっとガランドウで空虚な衛宮切嗣の情報。

 その違和感を、ハッキリと口に出した。

「その衛宮切嗣の話はどこかオカシイ。もしかして、イリヤは嘘を聞かされたんじゃないか?」

 それが違和感に対する、最も判り易い回答だった。

 

 俺だってそれほど頭は良くないし、ジイサンの事を知っている訳でも無い。

 いつもだったら、気が付くことも無く、言い返す事もできないままにショックを覚えていただろう。

 

 もし…、言峰に心の疵を開かれていなければの話だ。

 あいつが語ったジイサンの話は、実に熱っぽく実感が籠って居た。

 聞いてはいけないと理解してなお、惹き付けられるほどに。

 それに比べて、イリヤの語るジイサンはとても空虚で、ガラスの人形に色やラベルを張り付けたようなウソ臭さがあった。

 

「何が嘘よ! おにいちゃんこそ上辺の笑顔で騙されてるんじゃないの? …それとも、心を入れ替えたキリツグに救われたら、そう思ってるだけなんでしょ!」

 イリヤは激しく、俺の言葉に言い返してきた。

 まるでそうしないと、自分が保てないとでも言わんばかりに。

 

 誰かから聞かされた嘘を、俺だけが嘘だと言っても聞いてくれるわけがない。

 だから俺は、決定的な話術礼装を持ち出す事にした。

「じゃあ、俺たちより知ってる奴に聞いてみたらどうだ? そこの言峰教会に居るマーボー…。じゃなくて、冬木教会に居る言峰ってエセ神父なら良く知ってると思うぞ?」

 どうも、ライバルだったみたいだからな?

 俺は致命的な言葉を叩きつけた。

 誰よりもよく知る、あの暴力的な説教師ならば、言わなくても良い事まで告げるに違いない。

 正直、あんなのをイリヤに会わせたくはないが、嘘を打ち砕けるならば言峰という劇薬の使いどころもあるだろう。

 

「おにいちゃんを倒して、私のサーヴァントにしてからそうさせてもらうわ! どうせ…私のサーヴァントには勝てないんだから」

「俺が負けたらサーヴァントでも執事にでもなってやるさ。だけど、俺が勝ったら衛宮家のイリヤになってもらうからな!」

 それはもはや、ただの口喧嘩だった。

 売り言葉に買い言葉、まさしく家族同士の無意味な争いだ。

 

 こんな馬鹿騒ぎなら…まあいいかな。

 そう思いつつ、俺は置いてけぼりの部外者に、セコンドをお願いすることにした。

「悪い慎さん。そっちに付き合うつもりだったけど、俺は俺の都合で参戦させてもらうっ」

「別に構やしないけど。ただ、ボクらを路傍の石扱いした小娘には、タップリおしおきしないとね」

 言いながら慎さんは、笑って許してくれた。

 まあ、予感はあった気もする。

 自分の実力を証明し、優れている事を証明したい慎さんにとって、無視は一番こたえる挑発だろう。

 

「という訳で、お嬢ちゃんには悪いけど、二体一で良い? 先に冬木教会へ逃げ込むなら、ハラスメント神父被害者の会に入れてあげてもいいけど」

「色んな意味で結構よ。どこの誰か知らないけど、どうせ私のランスロットには勝てないもの」

 二重の意味で、慎さんが動きを止めた。

 それはそうだろう。

 自分を無視した相手がオマケ扱いしたらプライドの高い者には大きなダメージだ。

 だが何より、平然と隠すべき真名を口にした自信…いや、ゆるぎない優位性が慎さんを縛りつけていた。

 

「ランスロットだって…」

 円卓でも最強と呼ばれ、アーサー王すら自分以上と言わしめたキャメロット最強の騎士。

 特に欠点らしき欠点を持たず、確かに隠す必要はないが…。

 まさか、こんなにも簡単に真名を晒すなんて。

 

「三流の魔術士でも最強の騎士の名は知ってるでしょ? …やっちゃえランスロット」

 ガシャリと音を立てて、夜の闇から黒衣の騎士が現われた。

 イリヤが呼ぶまで気配すら感じられなかったソレが、戦闘状態に突入すると同時に、恐るべき武威をまき散らした。

 

 判る。確かにアレは、最強騎士と呼ぶに値する存在であろう。

「■■■■!!!」

 雄たけびが周囲を震わせる。

 手にした黒き長剣に、銀の光を宿して…。

「なにやってんだ! ボケっとすんな。とっととセイバー呼んじまえ! この不貞野郎に遠慮なんざ要らねえぞ!」

「助かった! 少し抑えててくれっ」

 突き飛ばされながら、俺は恐ろしい業モノを二つ見た。

 一つは黒衣の騎士が携えた、ダマスカスブレード。

 今では再現不可能な刃には、独特の木目調と、強化しているらしき銀色の鋼線が巻きつく。

 

 そしてもう一つは、鉄塊という程ない巨大な大剣だ。

 恐ろしい事に、鉄塊は全て黄金で出来ており、それが硬度を保っている事が信じられなかった。

 尋常でないレベルの強化魔術、現代どころか中世でも実用不可能なレベルだ。

「マスター、許可をくれ。こいつが本物ならいつか押し切られっゾ」

「あ、ああ、判った。封印礼装”女王の楯”の25%限定稼働承認。場合によっては、任意のタイミングで稼働上昇率を許可する…わね」

 おっしゃー!

 慎さんがキーワードらしき言葉を発した瞬間に、フランシスさんが戦場を駆けた。

 

 黄金の剣に取りつけられた鞘らしき外装が変形していく。

「行くぜ相棒! 小難しいのは任せた!」

『イエス・マイロード。ブリックス開始。EUを離れ大英帝国に逆行。女王の加護を世界へ』

 フランシスさんの言葉に、機械音声のような平面的な声が応える。

 そこから先はまるで、ねずみ花火がロケット花火に変身したかのようだった。

 高速で回転するような斬撃から、相手が受けた瞬間に猛烈な魔力で推進を始める。

「おらおらおら!」

 チャージは騎馬によって全力疾走して放つ結果だが、途中から全力を出せる馬など聞いた事も無い。

 ましてやそれを放っているのは、フランシスさん自身であり、制御しているのは黄金の大剣だった。

 

 俺は気に成るのを可能な限り無視して、カードに意識を向けて呪文を唱え始めた。

 その時、慎さんから発せられる言葉を、まさしく他人事のように聞き流しながら。

「インス…」

「そ、そうよ。気をつけてライダー! 御爺様の資料では、ランスロットは手に触れた武器を奪えるって言うわ!」

 俺の耳に飛び込んで来たのは、何やら慎さんには敵の能力に心当たりがある事だけだ。

 トランス状態に入った俺には、後から聞こえてくる結果でしかない。

 

「夢幻召喚!」(インストール)

 カードを基点に、俺の周囲で入れ替わる虚数と実数。

 煌めくような閃光は、俺の姿を俺では無い他者に描き替える絵具も同然。

 魔法少女ならば変身バンクの一つもあるようだが、今の俺たちにそんな余裕はない。

 

「ふうん。ランスロットの事を知ってるってことは、マキリの縁者みたいね。それとおにいちゃんは自分に直接降ろしたんだ? 器用なことをするものね」

 イリヤはどこ吹く風で、平然としていた。

 強いて言うならば、あのキャスターでも見抜けなかった事を一瞬で見抜く眼力は、少し奇妙だった。

 だがそれよりもオカシイのは、()()、そんな解説者の様な事を口にしているかだ。

 

「知ってるなら話が速いわね。まさかアインツベルンほどの大家が、敗退したサーヴァントを使うとは思わなかったわ」

「それはマキリの前マスターの魔力が低かっただけでしょ? それで生き残れたんだし、もっと強力な魔力でバックアップがあれば、差分値を出せるというものよ」

 慎さんの挑発を受け流して、イリヤが涼しげな笑みを浮かべる。

 自らのサーヴァントに絶対の自信を持っているようでもあったし、まるで、学者のような冷徹な観察を行っているかのようだった。

 

「どっち道、無名のサーヴァント二体じゃ、私のランスロットは倒せないわ。ただ勘違いしてるのは、奪わなくても武器何か幾らでも用意できるってこと」

「無名だと!? 言うにことかきやがって!」

 イリヤの言葉を挑発と受け取ったのか、むしろフランシスさんの方が激昂する。

 戦場を魔力で強化した強烈なジャンプで横断し、ランスロットを置き去りにした後で、今度は最初から全力で突進し直した。

 先ほどのソレは奇襲と言う意味で効果があったが、威力という意味ではやはり助走があった方が強力だ。

 

 だがその動きはあまりにも直線的、合わせるのも容易なら、迎え討つも容易だった。

 二つの影が、間に割って入った。

「■■■■!!」

「もうちょっと冷静になった方がいいんじゃないかな? まあ俺が言うのもなんだけどさ」

 ランスロットの剣が黄金の大剣を片手で抑え、残るもう一方の手が俺が呼び出した剣を握り込んで居る。

 恐るべき手並、そして恐るべき実力だった。

 

 武器の所有権を奪うそうだが、それは能力同士の押し合いで決まる様だった。

 気を抜いたら剣が持って行かれそうな雰囲気があるが、それでも両手で掴まれていたら危ない所だと思わせる。

「ハン。おまえが動き出すのが見えたから、ワザとやったんだよ。どうやら正解だったみたいだな」

「実地で試さないで欲しいなあ…。こっちは凄まじい剣捌きについてくのが精一杯なんだからさ」

 陽気な笑顔を浮かべるフランシスさんに、俺は苦笑を浮かべた。

 今も気を抜いたらどうなるか判らないのだ。

 これで武器を奪われたら、どうしようもない。

 

「奪われないう状態を維持して、このまま押し込むぞ。二人まとめてで良いって言った事を、後悔させてやる!」

「…もしかして話を聞いて無かったの? 奪わなくても良いって言わなかったけ? まあいいわ、こっちも礼装を起動するわね」

 フランシスさんは力任せに動いているようでも、戦場をコントロールしているような所があった。

 それに対して、イリヤは力押しだけでなんとか出来ると思っている様だ。

 

 だが、それはただの勘違い。

 まずは力押しから『試して』いるだけだと、後に成って気がついた。

「■■■■!!」

「なっ!?」

 ランスロットは俺の剣から手を離すと、甲冑の厚い部分で剣を受けつつ…。

 黒剣に巻いてある鋼線に手を伸ばす。

 

 その銀糸が強化用の礼装ではないとしたら…。

「危ない!」

 咄嗟に俺の体が動いて居た。

 魔力で強化を掛けて、あらん限りの速度でフランシスさんを突き飛ばす!

 

 その結果は無残だった。

「あれ…、なんで斜めに…」

 腹を断ち切られ、俺の体が傾いて一度、動きを止める。

 背骨のお陰でかろうじて繋がっている下半身も、意識を失うことに合わせて、ゆっくりと…。

 

 気を失うのも、今日何度目か。俺の記憶はそこで途絶えた……。




登場人物

真名:湖の騎士ランスロット?
クラス:バーサーカー?
 欧州最強の騎士。
一騎打ちに勝利する事、数百回に及び、当時の王たちも口を揃えて当代第一の騎士と褒め称えた。
王妃と不倫関係だと問い詰められ、宮廷を追い出され…。

能力:
『無窮の武錬』
ランク:A
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。いかなる精神的制約の影響下でも、どんな武装であろうとも、十全の戦闘力を発揮できるという。

『騎士は徒手にて勝敗を決せず』
ランク:A
 一騎打ちの結果、勝者は敗者の武具を奪う権利を持っていた。
無双の騎士であるランスロット?は、桁違いの勝利で財産を築いたとも、持ち主に気前よく返却して友誼を築いたとも。
この逸話により相手の武具を奪って自身の宝具として利用できる。ただし、ランクはAなので対抗判定で勝利した場合に限られる。

『黒騎士の銘は、己が栄光の為だけでなく』
ランク:D
 あまりの隔絶した強さに、一騎打ちはともかく決闘裁判の類は拒絶されるほど。
ゆえに名前を隠し勝利を重ね、あるいは他者に勝利を譲り…。王の代理人として裁判を見守ったとか。その結果、自身の銘を黒騎士として僅かながら、隠蔽・変装する事が出来る。
とはいえ、彼の生誕の前と後で、ランスロット?と言う名前に別の意味が宿るほどであるので、あまり強力な隠蔽は出来ない。

また黒騎士の名前自体が複数の騎士の持ち回りであり、名指しを避けることから、単体の呪い・デバフ系の魔術を避ける効果もあるが、対魔力が機能しなくなるほか、味方が使う強化系のバフも掛けられない欠点を有する。

『王妃の加護』
ランク:A
 王族の中で随一、欧州一と呼ばれた王妃の庇護を受け、サーヴァントとしても最優のマスターを引き当てる運命を示す。
生前は権勢、サーヴァントとしては霊基を向上させるが、名前を隠している間は機能しない。

『■■■■■・■■』
 詳細は不明。
ただし名前を隠している・他人の武器では使用できず、基本能力とは別に、特定の対象に対してダメージを増強する。



礼装:
封印礼装:『女王Aの楯』
 とあるライトノベルを参考に、触媒の選定時に間桐慎二が考案し、召喚前までに間桐慎が構築した合体礼装。
ブリテン島および連邦を築く王家が、代々任じた将軍・宰相・暗殺者を渡り歩いた代理人の証を一つに束ねており、誰を召喚しても王家の代理人を任された優秀な英霊がやって来るという。
士郎の解析では、優良サーヴァントを引く為のガチャとして優秀だが、本来の機能を隠す以上にあまり意味は無く、ライダーの魔力放出を手助けするくらい。
機能を解放するごとに、大剣・火砲・大盾・■へと、魔力放出の使い方に幅が出て行くとか。
また、どこかの魔法少女のようにAIぽいのが喋るが、筆者の趣味なのでこれもあまり意味は無い。

礼装:『ドゥリンダナ』
 けっして刃零れしない剣をモデルに、切れ難いとされる女の髪を元にして作られた銀線。
元が自身の髪なので、イリヤの魔術も通り易い加工品。
ファンタジー武器の鋼線であると同時に、刃を形成して剣にもなる特殊武装。当然ながら刃零れしないし折れもしない。

と言う訳で、イリヤと御供の黒騎士が出てきました。
アインツベルン陣営は神秘を捨てて、対人最強キャラを用意しつつ、ガチ学習モード。
ついでに一戦目も捨てることで、二戦目以降に勝利を求める、堅実さ重視になっております。
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