Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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マキリ陣営の御話ですが、他のfateネタや、ちょっと気分の良くない話題も混じりますので
ここでそっと閉じるか、飛ばされて次回に進まれても構いません。


トランス・トランス・トランスフォーム

 気だるさから、中途半端に目を覚ますと、自分は獣の姿をしていた。

 これは夢なのだと自覚するが、夢だからこそ自由に動けない。

 

 大きな遠吠えが聞こえたので、耳を傾ければ…。

 強く大きな獣が、自分や、他の獣たちを圧倒している。

 時に独りで、時に仲間の獣と共に歯向かうが、相手にもならない。

 

 倒され朽ちて行く中で、大きな獣が狼であることを理解した。

 あれほどの狼ならば仕方あるまいと、死に逝く寸前に、自分も仲間も狼であったと自覚する。

 

 そして狼たちは大地に帰り、虫に、鳥に、草花に。

 大自然の中に還って行く。

 

 やがて大きな大樹が育ち、様々な虫たちが樹液をすすり、葉を食む。

 虫たちは健やかに育ち、蛹になったり寄生虫や鳥に食われ…。

 やがて、蝶や蛾、カブト虫に成って飛んでいく。

 

 …ああ、これが生命のサイクルなのだと。

 他愛ない夢に描いたイメージなのだと。自覚して…。

 日の眩しさと、鳥の囀りに起こされて、目覚めの時を迎えた。

 

「…ああ、最低限の治療だけしたら疲れて眠ったんだっけ。気持ち良さそうに寝てるよ、まったく」

 声の主は欠片も色っぽくない欠伸を浮かべて、眠い目をこすった。

 ようするにボクの事だ。

 

 体を起こして周囲を見渡すと、そこに二人とも転がっていた。

 衛宮の体についた傷は大半が治って居るが、大火傷や腹を裂いた傷は、うっすらと残っている。

 宝具の影響とは言え、流石に完全治癒とは行かなかったのだろう。

「さっきのは共感魔術の影響…だよな。ライダーの奴は抱き枕にしてるだけだろうし、衛宮やセイバーの影響でも受けたかな」

 体に残る体力的な気だるさと、火照るほどの魔力の残響。

 そして意味の無い夢。

 それは共感魔術を使用した影響であり、半ば、パスを繋いだような状態にあったせいだろう。

 

 すり減った衛宮の生命力を補うべく、ボクの体力と共感させ。

 有り余った衛宮の魔力を排出するべく、ボクが魔力と共感した。

 果たして体力と魔力は平均化され、補い合う。

「ははっ。なんだ、簡単じゃないか。魔力回路と術式さえあれば、あとは発想の転換だけで何でもできる」

 自嘲めいた苦笑を浮かべ、脱いだシャツを着直して電話の方に向かった。

 こんなことなら、なんで魔力回路をゼロからでも増やそうとしなかったのだろうかと…。

 殆どゼロからスタートしたという衛宮を眺めながら、我ながら自己嫌悪に陥った。

 

 そんな馬鹿なことをする奴が居ると知らなかっただけだし、知って居ても自分でそんな自殺行為をするわけがない。

 知って居たのは、もっと別の代用手段。

 取ってしまった…取らされてしまったのは、もっと馬鹿馬鹿しい代用手段だった。

「あ、桜? ボクだよボク。赤毛の人形師は見つかった。だから心配は要らないし、危険だからお前は暫くこっちに来るな。御爺様にもそう伝えておいてくれ」

 電話相手の意見は無視する。

 予め伝えておいた用件の確認だし、今から来られても修羅場るだけだ。

 とても見えるに堪えられない三文芝居、するだけ体力の無駄と言う物である。

 

 ただ、自主的な魔術アレンジの成功と、才能への自覚で気分が良いので、ほんのちょっとだけ仏心を出す事にした。

「衛宮の面倒はお前の代わりに見ておいてやるから心配するな。だから、全部終わったら離すんじゃないぞ。ボクはこの町を出て行く気だけど、連絡先は1つの方が楽だからな」

 やはり電話相手の意見は無視する。

 さきほど違い、困惑よりも明るい反応なのは、自分が善人に成った気分で居心地が良い。

 別に自分がやってしまった事の尻ぬぐいにもならないが、する気も無いので気にするまい。

 

 

「そりゃ魔術師であることを望みはしたさ…。だからって、こんなに『成る』のを望んで居たわけじゃない!」

『いや、だってそれが一番簡単だもの。それに、キミの願いは全部叶えたから問題ないでしょ? 魔力回路も術式の知識も、召喚用の触媒も、礼装一式も』

 数日前のやり取りを思い出す。

 意気投合した赤毛の女が、たまたま探していた人物らしく、たまたま必要としていたアイテムを持っていた。

 楽しく一晩を過ごし、気が付いたら運命が螺子曲がって居たわけだが…。

 

 よくよく考えなくとも、そんなたまたまがある訳が無い。

 よくよく考えなくとも、そんな業界トップの女と仲良く一晩なんて都合良い話がある訳は無い。

 ようするに、最初からボクは狙われていたわけだ。

『英霊を召喚できる人形を作ったら面白いんじゃないかと思い付いちゃってね。試したくなっちゃったんだよ。誰でも良かったんだけど、物色してたら確定ガチャを見つけちゃって』

「それで確定ガチャを思い付いた者同士、物々交換しようって? 馬鹿なんじゃないか? おたくも、ボクも…」

 ギチギチと鮫のような歯を重ねて、赤毛の女は笑った。

 

 呆れて怒るどころか、苦笑して現実を受け入れる辺りで、自分がどうしようもなく欠陥品だと自覚するべきだった。

「さて…ボクは誰なんだ? 本物か偽物か…聖杯戦争に生き残れたら、自分を取り返しに行かないとな」

 倫理・モラル・危機感・採算性その他もろもろ。

 自分からゴッソリと、色々な物が欠落している事を、今に成ってようやく悟る。

 

 そして、英霊を召喚した時に、狙いの人物じゃない判った時のこと。

 多少悪くても…とキッチリと詰めたはずなのに、何故か良い方にずれこんだ事に、本当に馬鹿馬鹿しい幸運に、人生塞翁が馬だと思う事にした。

「マスターと認める前に聞きたい、望みは何だ?」

「自分を認めなかった連中に、自分を認めさせる。見返してやりたいってだけさ。呆れたろ?」

 召喚したサーヴァントは、狙いよりもずっと古く強力な英霊だった。

 殺されるのを覚悟で、くだらない望みを口にしたのだが…。

 

「そうか。仲良くは無理かもだが、それなりには上手くやれそうだなマスター」

「はあっ?」

 何が気に入ったのか判らないが、ライダーのクラスで召喚された影響なのか…。

 伝承で知って居る人物像からすると、思いのほか朗らかな笑顔が返って来た。

 

 その後に宝具の内容を聞いて、とまどいながらも冬木に戻る。

 真名がばれても困る訳でもないが、隠しておくために偽名を考えながら。

「テムジンにフランシス? どっちにするにしてもあんまりピンと来ねえ偽名だな。ライダーでいいんじゃないか?」

「テムジンってのは英霊の方じゃなくて…まあ、途中でゲーセンに寄ればわかるさ。もう片方はなんだ…ボクをこんなにした愛しの御姉さまからいただいたんだよ」

 片方はチンギスハンではなく、単に宝具の使用方法から思い付いただけ。

 もう片方は、人形師だと名乗ったあの赤毛の女。

 黒幕の名前を広める為の、ただの嫌味である。

 

 

 シャワーを借りるついでに、つまらない回想を終える。

 終わったことを後悔しても仕方無いし、自分の目的を果たすには十分な能力は在るのだ。

 あとは出来るだけ楽しく、踊り切ることにしよう。

「あ、衛宮くん。傷は治せるだけ治しておいたのと、見ての通り御風呂借りたから」

「それは良いんだけど…。フランシスさんどうにかならない? 速く何とかしないと藤ねえ…親代わりの女教師が…」

 そういえばそうだと思い出し、ボクは藤村を丸めこむネタを考え始めた。

 

「ふうん。女教師と随分仲が良さそうで、てはただならぬ…。冗談冗談。そっちはなんかしておくから、学校の方で慎二くんとか私の関連でフォローお願いできる?」

「ま、まあ。その辺は一成…生徒会長に話を入れとけば、なんとかなるかな。できれば美綴っていう弓道部長にも話ししたいんだけど…」

 そんな馬鹿馬鹿しい話をしながら、朝のミーティングを始めることにした。

 

 




/登場人物
・ライダーのマスター:間桐慎
 その正体は、人格移植された人形…と思われる。
問題なのは、制作者が制作者なので、元の人格の持ち主かもしれないし、『人形の素材』の人格かもしれないし、はたまた二人が融合した人格かもしれない。
感情や考え方に大幅な欠落が見られ、かなりやっつけ仕事というか、それなりに優秀な才能をでっちあげた為の反動であろうか?
ライダーの偽名は、もし想定通りならフランシス・ドレークが現われたことと、黒幕がフランソワという名前だから嫌味で付けた。

・赤毛の人形師:フランソワなんとかさん
 第一の介入者であり、間桐慎を渦中に放り込んだ黒幕。
一級の魔術師かはともかく、一級のトリックスターであることは確か。
なんで赤毛なのかって? そりゃ、工作がやり易いからなのと、嫌味だからと本人に聞いたら答えるだろう。
冬木に介入する方法を探り、できれば適当な魔術士をマスターに送り込みたいと思っていた時。
ほぼ確実に令呪を得られる、確定チケット的な誰かさんがオークションに触媒探しに来たので、ホイホイしたらしい。

・ワカメ
 スタッフが美味しくいただきました

 という訳で、伏線という程の伏線ではありませんが、マキリ陣営強化のタネ明かしになります。
慎の正体を長引かせても面倒なだけなので、この辺で公開しつつ、士郎にもその内ばれる?予定。
セイバーの真名も、次回くらいで判明する予定です。まあ、こちらもバレバレな気もしますが。
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