Fate/promotion【完結】   作:ノイラーテム

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ガリアスタの野望

「竜殺しねえ…確かにワンサカ竜牙兵出て来たし、退治した牙を地にまいてるのかもなぁ」

 クーフーリンは素直に色々と喋っているが、ボクは少し首を傾げた。

「なんでそこまで教えてくれるの? そりゃ、いつか石油王とも戦う事になるだろうけど」

「間桐さんの言う通りね。誘導するにしてもベラベラ喋りすぎだわ」

 ボクと遠坂は同じ疑問に差しかかったようだ。

 同盟を組んでる訳でもないのに、茶飲み話のように情報が出て来るなど、信じられない。

 

 それに対しクーフーリンは他愛なさげにウインクを返す。

「単にこっちの都合だよ。裏切り気が付かなかったのはバセットの未熟だが、俺たちの戦いを食い物にしようって言うあいつも気に入らねえ。それに……」

 ニヤリと笑ってとんでも無い事をサラリと付け加えた。

「資格ある相手に嘘をついてはならぬ、沈黙や誘導によって結果的に嘘を付くのも許さず。そういうゲッシュを俺たちは結んだのさ」

 ボクらは絶句した。

 おいそれと話して良いものではないし、冗談めかして話せるような内容でも無い。

 

 ケルトの戦士たちが結んだ偉大なる誓いゲッシュ。

 クーフーリンが死んだ理由の一つでもあるはずなのに…。

「ちょっ! 自分が何を言ってるのか判ってんの!? 情報一つが重要な聖杯戦争で、嘘を付くのも結果的に嘘になるのも駄目って……信じられない」

「じゃっ、じゃあ。キャスターの能力以外に、バーサ-カーに近い能力持ってるんだろうと聞いたら、素直に答える訳?」

 遠坂とボクは交互に質問…というか、絶叫を繰り返した。

 それほどまでに重要なことを告げられたのだ。

 二の句が言えずに黙るか、さもなきゃ矢継ぎ早に喋るしかない。

 

「生前に偽るところなんてねえよ。それに資格ある奴にはって言っただろ。その能力に気が付ついてるなら、その通りだと頷くのになんの問題もありゃしねえ」

 まあ、マスターが指示すりゃ別だがな。

 クーフーリンはいっそ清々した表情で頷いた。

 それは英雄としての矜持であり、戦士の生き様だろう。

 遠坂は溜息ついて居るが、ボクは思わず恰好良いと思ってしまった。

 

「それに、なんだ。ゲッシュってのは難しければ難しいほど、得られたモンが大きいと誇る甲斐があるってもんだ」

 それはまあ確かにそうだろう。

 本来は結ぶ気のない相手への同盟条件にしたり、怒り狂った相手へ差し出す対価と考えるなら、不可能を可能にする事も出来る。

 だが、その対価は決して小さなものではない。

 婉曲的に誘導され、他のゲッシュを自ら破棄するようにしたり、大切な武器や防具を奪うことすらできるのである。

 例えば、この漢の最後がそうであるように…。

 

「はあ…。もういいわ。疑うのが馬鹿馬鹿しくなってきた。最後に確認するけどバーサーカー陣営の目的って?」

「そういえば食い物にしようとしてるって言ったわよね。どういうこと?」

 遠坂とボクで納得するレベルこそ違うものの、最後の質問も同じところに行きついた。

 引くに引けなくなる、とんでもない話とは知りもせずに。

 

「奴は早い段階で勝ち逃げしようとしてんのさ。……持ち逃げ出来る限りの情報や、儀式に必要な中味を奪って、どこかで亜種聖杯を作り上げる算段だ」

「なっ……」

 その話を聞いた時、ボクらは今度こそ絶句した。

 万能の願望機たる聖杯を捨てて、もっと小さく俗物的な亜種聖杯を世の魔術士たちに売りに出す……。

 とうてい信じられる物ではなかった。

 

 

「亜種聖杯なんて、本当に可能……なのかしら」

「根源に至る物は無理でも、それぞれの家が当面の目標にしてる術式や礼装を作るレベル……なら無理じゃないと思うけど」

 去り際に遠坂が聞いて来たので、思わず頷き返した。

 疲れた表情で首を傾げるので、ボクは簡単に説明する。

「マキリ単独だと…英霊級の使い魔や超人を設計するシステムは組めても、確かな礼装もマナも確保できない。でも聖杯級の礼装を使うなり報酬に提示できれば…」

 必要なのは魔女の釜として、自分の家の目的に転用できるか、あるいは転売すれば力が手に入るか…だ。

「例えばタロットやトランプを参考に術式を組むとして、呼び掛ける事も力も無いけど、…聖杯があれば可能ってこと」

 例としてタロットカードを上げたが、御爺様が蟲を使っているように、マキリには人格を移して超人化する概念がある。

 だが、それでずっと意識を綺麗なまま保てないし、ボクには到底無理な術だ。だが、聖杯ほどの礼装があれば話は違ってくるだろう。

「あー。確かにうちも条件揃えば、『アレ』が製造できるか」

 どうやら遠坂の家にも似たような概念だか礼装があるらしく、自分なりに納得したようだった。

 

「ひとまず今のところはあんた達を後回しにしてあげるわ。冬木から聖杯を奪って行こうなんて連中を野放しに出来ないものね」

「了解。同盟でないのが残念だと衛宮くんは言うだろうけど、休戦でも十分よね」

 遠坂とボクはそう言って笑いあうと、別れてそれぞれの道を辿ることにした。

 

 そういえば、ボクらが面倒な話に巻き込まれている間、衛宮の奴が何をしていたのかと言うと…。

「おかえり。俺が苦労してる間に、どこで何してたんだよ…」

「何よこれ、竜牙兵じゃない…。なんでこんなに…」

 学校の入り口で、衛宮は無数の骸骨に囲まれてグッタリしていた。

 それほど強くないとはいえ、これほどの数を倒すのは骨が折れただろう。

 そういえば、遠坂から逃げ回っている間や、クーフーリンと話していた時に、駆け付けこなくておかしいとは思ってったけど…。

 

 だが、悠長に考えて居れたのは、そこまでだった。

 骸骨が砕けて行く中、最後に残ったのは、なんの変哲もない物だったからだ。

 竜の牙でも何でもなく……。

「小さな、歯…?」

 そこにあったのは、砕けた普通の歯。

 サイズからして、ただの子供の歯であった。

 





・キャスター陣営
 何かの条件を叶えるために、『資格ある相手に、嘘をつかない』というゲッシュを結んでいる。
(ゲッシュは厳密な物なので、沈黙や誘導で嘘を付くのも厳禁)
ゲッシュは難しい物ほど、沢山結べば結ぶほど得られる物も大きいが、レベル的にはそれほど大きなものではないので、他の項目に繋げる前提条件だと思われる。
陣営の長はバセット・フラガ・マクミレッツ。身動きできない大怪我ではあるが、第一級の封印指定執行者である。

・バーサーカー陣営
 どうやら得られる物を得た段階で、勝ち逃げを目論んでいる模様。
前回の最後に出て来た、ロード・エルメロイの遺産込みで、術式・戦闘方法、究極的には聖杯や召喚システムなどを狙っているとか。
それによって亜種聖杯を作り上げることを目的としており、一体二体倒して、聖杯を手にしたら小さな願いを叶えて今回は御仕舞にする予定である(負けても仕方ない)。
 陣営の長であるアトラム・ガリアスタはこう言った事に関しては天才的らしく、魔力を大量に確保する方法も既に開発している。
竜殺し(またはドラゴンテイマー)である大英霊をバーサーカーにしたのは、確保した魔力の裏付けがあってのことであり、戦力を確保しつつ、裏切られないようにする為。


・『遠坂家のアレ』
 言わずとしれた宝石剣。
亜種聖杯があれば、凛一人でも完成させられるかもしれない。
聖杯による根源探索には及ばないが、中間目標というイメージとして思い付いた。

『マキリの秘術』
 ゾォルケンの魂が宿ってる蟲をイメージしたでっち上げの秘術。
とはいえ完全に不可能なことではなく、やはり亜種聖杯があれば可能と思われる。
(なお、参考にしたのは、蟲よりも、運命のタロットシリーズというラノベです)

と言う訳で、強大な敵相手に一時休戦。
クーフーリンの味方になったのではなく、大前提を横取りする勢力に気が付いて、闘いを中断した格好になります。
このお話では、アトラムさんは普通にfakeの黒幕勢並に強化されてますので、共闘ではないものの、敵の敵は一時的に味方状態。
(ちょっと強化し過ぎな気もしますが、このままだと終わらないか、本編をなぞるだけなので)

次回こそバーサーカー陣営の御話と、凛の召喚時の話にしたいものです。
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