本家とは違いますので、ご理解いただくか、このままそっと閉じていただけると幸いです。
「さてと…全体像が判ってれば、見付けるのはそれほど困難でも無いのよね」
私は学園に向かいながら、途中にある小さなルーンを砕いて行く。
それは連立してない単独の物なのか、あっさりと消滅した。
アルスターサイクルにフィニアンサイクルと彼らの伝承を詠うように…。
今回の結界のイメージソースは、樹と輪…より正しくは光などを含めた、天の恵みを示している。
だから、衛宮くんたちのように探索に特化して居なくとも、魔術師の視点で自己判断すれば、自分ならどこに仕掛けるかというポイントを抑えるだけで十分だ。
加えてクーフーリンの異質さは、バロールやスルトのような巨人をイメージさせる活火山。
だから下手なことをすると森の結界を破壊してしまうから、結界自体は閉じて無い。
もし、最初から二つの貌を持つ…名前を付けるなら、二重召喚で呼んだのなら、こうはなるまい。後から付け加えようと失敗した結果とすり合わせようと、無理をしているから整合性を保つ位置だと、どうしても特定し易いのだ。
何せ、閉ざすべき場所にはルーンが設置できず、代用を他で補わなければならない。
「となると本陣は校舎内じゃなくて屋外でしょうね。屋上は例外にしても、外回りだけ潰せばいいならあっという間よ」
とはいえ、疑問が無いわけではない。
ここまで厳密に昼と夜を区分する理由があるのだろうか?
確かに時間をまたがり、第四次元にも存在するなら壊れ難くはある。
だが、光の御子たるクーフーリンならば別に一面特化にしても問題あるまい。
もし私が彼と組んで居たら、教会を占拠して、ステンドグラスを全て宝石相当のルーンに替えて居ただろう。
「夜…夜には別の意味があるのかしら。多面召喚は実質失敗に近いみたいだし…」
新たな一面を呼び起こし、ランサーの能力を?
そう考えた私だが、考えた瞬間に否定する。
二面であの体たらく、三面となれば制御できるレベルを越えるだろう。
結界内のサーヴァント全てに、別の側面を押しつけるにせよ、もう十分なはずだ。
「まったく、アサシン陣営の調査も終わってないってのに、面倒な事をしてくれるわ」
学園が近くなった事もあり、私は独りごとによる考えの整理を中断した。
さて、ここで視点は一時的に学園内に移る。
僅かな間だけ、真実を垣間見る事にしよう。どうせ意味は無いのだから?
「ちっ。また誰かルーンを壊しやがった。えらくスムーズだし、あの嬢ちゃんかな」
「こちらを狙うつもり…? いいえ、それならばもう確実な手段を取るでしょうね」
男は最初だけ苦笑したものの、女の回答に微笑みを返した。
「それが判るなら上等だ。せっかく育ったルーンだが、壊れた甲斐があるってもんだ」
男…クーフーリンがキャスターとして召喚された場合、導く者としての面が強くなる。
だから女の成長を喜んでいる訳だが、師が弟子の成長を見守るには、奇妙な光景だった。
男は女の膝に頭を載せ、愉快そうに女の顔を見上げて居たのだ。
「クーフーリン、すみませんがナチュラルに口説くのは止めてください。その…そういう場合でもありませんし、結界に影響は出ませんか?」
女は膝の上に乗る頭を撫で付けた。
時に優しく、時に荒々しく。
こんな事をした覚えが無い彼女にとって、男の世話などラチ外の事だろう。
「俺のブランクルーンは植物と同じだからな。株分した芽が摘まれても、親樹には何の影響もでねえよ。ただ、バセット。てめえに一つだけ聞いて起きてえ」
「っ…」
女…バセット・フラガ・マクミレッツは、クーフーリンの問いに少しだけ目を泳がせた。
自分でも馬鹿な事をしている自覚はあるのだろう。
問われずとも言い出さねばならないと判って居たし…。
本当の事を言えば、そうすべきではなかったのだ。
「そこのマグロをなんで助けた? 頼られたと言っても、所詮は別陣営。いずれ敵になるし、時計塔に帰りつけなきゃ恩を売ることもできねえぞ?」
「…判っては、理性では判っては居るのです。別に窮鳥を見離せない訳ではありません」
二人の視線は、傍らで眠り続ける繭に移った。
ドクドクと命動するソレには、一人の少女が眠っている。
そう、この結界における夜は、星を司る一族である、彼女の為の物だ。
蘇生の為だろうか? 森の結界に合わせて蝶魔術の真似ごとをしているようだが、どう見ても中途半端。
良く見積もっても、治療装置というよりは、延命装置にしか見えない。
「この子…。アサシンのマスターが最後に告げた一言が、私の耳から離れないのです」
バセットは自分には似合わないなと、思いつつ、歌を詠う様に言葉を綴った。
その言葉は、他ならぬ彼女。
アサシンのマスターが呟いた、哀れで悲しく、それでいてバセットの心を震わせる一言だった。
「まだ誰にも褒められて居ない。まだ認められることを何もしていない。まだ私の聖杯戦争は始まってすらいない…」
こんな所で私は終わるのか?
何もせずに、無為に、実のならぬ穂の様に朽ち果てて行くのか?
誰からも褒められず、認められず、嫌われたままで?
「ようするに同情で?」
「はい…いいえ。そうとも、そうでないとも言えます。私はもう一人の私を放置できない。したくない」
もし、状況が違えば、ソレはバセットの番だったろう。
もし、呼びつけたのが、アトラム・ガリアスタではなく、もっと親しい人間。
たとえば、言峰だったのならば、きっとバセット自身も騙されて居たことだろう。
だから気が付けたし、最後の最後で避ける事も出来た。
必死の罠ではあったが、必死ならば、設定次第で蘇生のルーンを使って対応できる。
だが、逃げ切る間に、あの言葉を聞いてしまったのがいけなかったのだろう。
「ようするに、私は我慢するのを止めたいんです。それに気が付けずに死に掛けてるもう一人の私を救って、生きるにせよ死ぬにせよ、晴れがましく自分の人生を活き貫きたい」
それはただの代償行為だ。
少女のころから、殻を被って良い子で過ごして、何もできなかったバセットが、何もできなかったアサシンのマスターを助ける事で試したい。
体が不自由な人間が、小動物で代用するらしいと何処かの小説であった。
ようするに、ソレと同じで、バセットは自分が満足する為にやっているのであって、同情ではないのだ。
だから、男は女の決断を笑いはしなかった。
「自覚してるなら構わねえよ。それになんだ、女の為に命を張るのが男の甲斐性ってやつだ」
「だからナチュラルに口説かないでください…それとですね…」
バセットは顔を赤らめながら、クーフーリンの頭を撫で続けた。
僅かに首を傾げながら…。
「ところで、マグロってなんですか? 海洋魚だとは知って居るのですが。他の女の事を指しているのであれば…」
「……さてな。どこかで聞いた単語さ。まあなんだ、こんな状況で他の女の話をするなよ」
もしそうなら、最後の令呪は自害せよキャスターと言わざるを得ませんね。
そう言おうとしたバセットの唇を、顔をあげたクーフーリンの唇が奪った。
/人物紹介
・バセット・フラガ・マクミレッツ
時計塔の封印指定実行者であり、その中でもエース級である。
脳まで筋肉と言われるブルファイターであるが、やったね、今の彼女は恋する乙女である。
撲殺魔から、深窓の御姫様にクラスチェンジしクーフーリンと佳い仲になって、ラブラブな空間を拡げようとしては、女たらしぶりに苦労している。
蘇生のルーンを自分だけに使えば今もピンピンしているはずだったが、中途半端にアサシンのマスターに影響を与えたため、体力が50%どころか20以下に落ちて居る。
現在は身動きとれないので、ライバルたちに負けないよう、戦略やら政略やら恋の駆け引きを勉強中。
・アサシン陣営
時計塔の名門の出で、とある研究成果を試す為にやって来ていた。
アトラム・ガリアスタに呼び出された時に殺害され、バセットが持つ蘇生のルーンの影響を受ける形で、なんとか生きては居る状態。
彼女は結界の中に設置された繭の中で、夢見ながら死んでいると言って差し支えないだろう。
張られた結界のうち、夜を示す部分は、星を司る一族である彼女に合わせた物。
/二重召喚のメリットと多面召喚のデメリット
この話の解釈に置いて、
二重召喚が召喚前に行い、対象は二面が切っても切り離せない相手に限られる物とする。
縛りは多い代わりに、能力の整合性が取られ、自分の能力で自分がペナルティを受けたり者しないし、魔力消費もそれほど変わらない。
多面召喚は適合さえしれいれば召喚後でも呼び起こせる代わりに、魔力消費が増大するほか、能力の整合性が取られないとする。
この話におけるクーフーリンのように、自分が張った結界の恩恵を、自分が得ることが出来ない。
仮に対軍使用のゲイボルクを使ったら、棘は自分にも落ちてきかねない。もしどこかに居る毒の女王様に使った場合は、毒が自分を侵すこともあるだろう。
と言う訳で、バセットさんと最後の陣営をついでに紹介。
バセットさんは人間らしい感情に目覚め、戦闘力は減ったものの、人間として女として幸せな真っ最中。もはや敵はハーレム展開であり、アトラムを倒すのはもはやついで!
そしてアサシンのマスターが少しだけ登場。本家では出落ち以前で誰なのかも語られて無かったので、それなりに可能性のある人から、違和感のない範囲で。