照りつける日差し。
荒野をまっすぐ貫くハイウェイを、1台のバイクが走っていた。
1人の少年、1匹のポケモン、
それとまとまった荷物。
見渡す限りの荒野に重低音を響かせながらバイクは走る。
ウォウ!ウォウ!
ウォウ!ウォウ!
「?」
「ブイ?」
ポケモンの吠える声。
気のせいとも思ったが、イーブイも聞いている。
バイクを止め、周りを見渡す。
(・・・あれか)
声は遠方を走るデルビルのものだった。
必死の形相で走る少女、それを追いかける5匹のデルビル。
後方には指示を出す様子のヘルガーが1匹。
さらにその後方に6人の人間まで見えた。
「ブイ!」
「ん?」
さて、少女に視点を戻すと、追いつかれ既に囲われ始めていた。
眼前にそびえる背より高い大岩を、回り込んで避けようとする少女。
しかし、大岩を回り込もうとした先にデルビル。
逆側から回ろうとした先にデルビル。
気づけば大岩を背に、5匹のデルビルに包囲されている。
そして少女が惑う内に、ヘルガーと人間まで追いついてきた。
5人の小汚い男と黒いスーツを着た男。
「~~~~~」
「~~~」
男の方が何か話してかけているようだが、ここからじゃ聞こえない。
だが、どうもただならない様子だ・・・。
距離もあって、こちらに気づいていないのは幸いか。
「ブイ!」
「・・・イーブイ?」
「ブーイ!ブイ!」
「お前・・・、あの子を助けたいのか?」
確かに、一方的に少女を追い回す怪しい男の集団。
見るからに奴らは悪党だ。
そして少女はあわれ、追い詰められている。
・・・しかし、常ならぬ世の中。
もしかしたらあの女の子も、悪者かもしれない。
怪しげな男どもに、正義があるのかもしれない。
・・・だが。
「お前の勘はよく当たるしな。
このまま見捨てるのも寝覚めが悪そうだ。」
「ブイ!」
いざ助けに行こうとアクセルを回し、バイクの向きを変える。
見れば5匹のデルビルが、少女にほのおわざを放とうとしている。
これは急がないとな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ひゃはっ!追い詰めたぜ~!」
「ひゃはっ!この女どうする?」
「ひゃはっ!変態に売ってやろうか!」
・・・汚い恰好の男たちが、ぞろぞろ近づいてくる。
岩とデルビルに囲まれて逃げ場は無い。
頼るべきポケモンは、奪われている。
これは、万事休すか・・・。
「弱らせておけ。」
「へい!デルビル!《かえんほうしゃ》!」
「デルビル!《かえんほうしゃ》!」
「デルビル!《かえんほうしゃ》!」
後ろに控える黒スーツの指示で、
男たちはデルビルに《かえんほうしゃ》を打たせた。
・・・しかし、その炎が届く寸前。
ヒュ〜・・・
ゴオォン!
わたしの目の前に箱が落ちて来て、その身で炎を受け止めた。
「ひゃはっ!?な、何だあ!?」
箱からもやのようなものが出てきて、本来の姿をとる。
・・・箱ではなく、棺桶?
このポケモンは・・・!
「デスカーン!?」
「デース!カーン!」
「キャウン!?」
正体不明のデスカーンが、姿を現すついでとばかりに、
近場のデルビルに《シャドーボール》を叩き込む。
威勢よく炎を吹いていた姿から一転、デルビルは無様に転がっていった。
「ああ!デルビル!
てめえなんだぶっへぇい!!」
「ああ!ピラオ!」
汚い男の1人にも《シャドーボール》。
容赦のない・・・。
まあ、あれくらいならなんともないだろう。
・・・しかし、このデスカーンはどこから?
「・・・あのバイクは貴様らのところの者か?」
「へい?バイクってのは・・・?」
「な、なんだあいつは!?」
汚い男が指さす方から、重低音を響かせ大型バイクが走ってきた。
こっちに向かってくる。
「《あくのはどう》。」
「ガァオッ!!」
「カーン!」
黒スーツがヘルガーに、バイク目がけて《あくのはどう》を撃たせる。
躊躇なし。即断即決の早業だ。
しかし、わたしの前にいるデスカーンが、
《あくのはどう》に素早く《シャドーボール》を撃った!
2つのわざが空中で相殺、
いや、《あくのはどう》が競り勝ちバイクに向かう!危ない!
「《アイアンテール》!」
「ブイ!」
バイクからイーブイが飛び出し、今度こそ《あくのはどう》を相殺する!
バイクに攻撃は届かず、そのままわたしとデスカーンの横に滑り込んできた。
ポカンとしていた汚い男たちが騒ぎ出す。
「な、なんだてめえは!」
「なにしてんだコラ!」
「なめたマネしてんじゃねえぞ!コラ!」
男たちに目もくれず、バイクの主はゴーグルを外し一息ついていた。
見ればわたしと大差ない少年だ。
いったいこの人は、なにをしに・・・?
「この子を助けに来た。」
「・・・ハア!?」
「なに言ってくれてんだあ、てめえ!」
「おれたちが誰だと思ってやがんだあ!ああ!?」
「チョーシくれてっと殺すぞ!」
おどろきの発言だった。汚い男たちも声を荒げている。
しかし、またも脅しをかける男たちに一瞥もせず、
少年はバイクの計器パネルを操作した。
するとバイクの前輪横についた箱型のパーツから、
ドシュッ、っと音を立てなにかが飛び出す。
少年の手元に飛んだそれは、・・・モンスターボールだ!
「いけっ、オコリザル!」
「ブッキャー!!!」
ボールから出されたオコリザルが、
猛然と4体のデルビルに突っ込んでいく!
1番近かったデルビルに右のパンチ!左のパンチ!右のキック!
蹴られたデルビルが宙を舞う!
「ギャウンッ!?」
「お、な!?」
「か、《かえんほうしゃ》!」
不意を突かれた男とデルビルが、
慌てて攻撃態勢に入る。
しかし・・・。
「《しんくうは》!《クロスチョップ》!《クロスチョップ》!」
「ギャウン!?」
「ギャワン!?」
「ギャオン!?」
《かえんほうしゃ》を指示されたデルビルは《しんくうは》、
残りの2匹も《クロスチョップ》に一蹴された。
気づけば、わたしを囲んでいたデルビルは、1匹残らず倒されていた。
・・・いったい何が何だか、
突然のこと続きで混乱するわたしをよそに、
少年は黒スーツの男に目線を向けていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、ひとまず女の子を囲んでいたデルビルは倒した。
だが1番の障害になりそうなのが控えている。
黒スーツの男と、ヘルガー。
デルビルにせよ、他の男にせよ、
首領のこいつらを倒せば勝手に逃げるだろうが・・・。
俺の奇襲にも全く動じていない。
それどころか、こちらを見定めようとしているようだ。
・・・ならば追加で。
ドシュッ
「いけっ、オノノクス!」
「ノークッ!」
「!?ウォーーッ!!」
手持ちで1番戦闘力のあるオノノクスだ。
こいつには相手のヘルガーもようやく危機感を持ってくれたか、
威嚇を一吠え。すぐに臨戦態勢に入る。
この素早い一連の動きを見るだけで、
相手のヘルガーが鍛えられていることが分かる。
・・・この男とこのまま戦うべきか?
相手は他の手持ちをまだ見せていない。
このヘルガーを見るに、弱い方に期待はできない。
ヘルガー1匹なら、まだ容易いだろうが・・・。
まあ、このままでは戦う以外にない。
まずは1匹!
「・・・《シャドーボール》!」
「《あくのはどう》。」
「《しんくうは》!」
デスカーンから撃ち込み、ヘルガーの返し技を
オコリザルの《しんくうは》とで相殺。
そこに隙ができる!
・・・ズボコォ!
「ブイ!」
「グゥォッ!?」
ハンドシグナルで指示をした、イーブイの《あなをほる》がクリーンヒット!
ヘルガーが目を白黒させ・・・。
「《カウンター》。」
「ウ、ォオウ!!」
「ブイィッ!」
「イーブイ!?」
このコンビネーションも躱すのか!?
イーブイは、戦闘不能。
詰めの一撃を狙い、前に出たオノノクスも、
ヘルガーへの攻撃のタイミングを計りかねている。
こいつら、やっぱり強い・・・!
「グルルルル・・・。」
「・・・。」
ヘルガーも《あなをほる》のダメージによりひんし寸前。
だがしかし、先にこちらに戦闘不能が出た以上、
このまま倒しあえば先に全滅するのはこちらだ。
大勢は、若干だが俺の不利に傾いている・・・。
・・・と、考えていると、黒スーツから声をかけられた。
「・・・貴様。名はなんと言う?」
「・・・ルロウ。」
「・・・。」
数舜の沈黙。乾いた風が吹いた。
そして・・・。
「貴様ら。引き上げるぞ。」
「え!?」
「な、なんで!?」
突然の撤収宣言。
小汚い男たちがどよめく。
が、黒スーツがヘルガーをボールに戻すと、
それにならうように、デルビルをボールに戻していった。
「ドンカラス。」
黒スーツが別のボールから、ドンカラスを出す。
移動用と見えるドンカラスも、予想通りと言うべきか。
くちばし、翼、こちらを警戒する視線、
観賞用ではない、戦闘要員としての迫力を感じる。
黒スーツがドンカラスに掴まり空を行くと、
小汚い男たちは荒野を走って、やがて見えなくなった。
・・・ひとまず、危機は去ったか。
デスカーン、オコリザル、オノノクスをボールに戻し、
前輪のボックスに入れる。
それからバイクを降りて、少女に声をかけた。
「あんた。大丈夫か?」
「ブイ?」
「・・・あ・・・。うん・・・。」
気の抜けたような返事だ。
とりあえず目立った外傷はないようだが・・・。
「なんで・・・。」
「ん?」
「・・・なんで、たすけてくれた、んですか?」
少女からの疑問。答えは、まあ。
「こいつが助けようって言ったからだな。」
「ブイ。」
足元にいるイーブイを抱え、見せてやる。
「・・・ありがとう。」
「ブイ~・・・。」
少女がイーブイの頭を撫でた。
イーブイは目を細め、そのまま寝てしまった。
優しい、穏やかな手つきだった。
「俺の名前はルロウ。旅をしている。
あんたの名前は?」
「・・・わたしは、チホ。
助けてくれて、ありがとう。」
一陣の風が2人と1匹の頬を撫でた
少年と少女とポケモンの冒険が始まる
クリスマスに間に合わず、
正月に間に合わせようと急ぎ書き上げ。
間に合わせるなら先に連載した方にしろと・・・。
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