今回は少し本編から外れます。
「明後日だな。暇だし行けるぞ」
「ホントに?ありがとう!じゃあ日曜にね!」
孝至達との話を終えて家に帰ってしばらくたった時に千歌からの電話がかかってきた。日曜日に梨子さんと海の音を聞きに行くから一緒に来てほしいらしい。
「よし、明日は暇だし買い物でも行くか」
約束の日曜は明後日だ。暇な明日は久しぶりに買い物をしに沼津へと行く事にした。すると、俺のケータイにもう一本の電話がかかってきた。
「もしもし」
「ハァイ!私よ!元気かしら?」
「鞠莉さんか。俺は元気ですよ」
俺に電話をかけてきたのは鞠莉さんだった。彼女とはこの前会ったときにお互いの連絡先を交換していたのだが電話をかけてくるのは初めてだった。
「それで、何か用ですか?」
「そうそう!明日は空いてるかしら?ヒマだったら私とショッピングに行ってほしいのよ!」
鞠莉さんからのお誘いだった。俺はもともと買い物に行く予定だったので、すぐに返事をした。
「はい、いいですよ。俺はもともと買い物に行くつもりでしたし」
「サンキュー!それじゃ九時に沼津駅で会いましょ!また明日ね。」
そう言うと、鞠莉さんは電話を切った。明日は早起きをしなければならないな。そう思いながら俺は少し早めに床に入った。
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朝の九時、沼津駅前。
(眠い…それにしても九時って早くないか?)
そんなことを考えながら俺は鞠莉さんのことを待っていた。俺は朝は得意ではない。寧ろ苦手だ…
(もうちょっと集合時間を遅くしてくれると助かったんだけどな…ん?あの顔…見覚えがあるな…)
俺の目線の先には厚手のコートに身を包んでいる青みがかった黒髪の女性がいた。あの顔は…もしかして…
「おい、もしかして善子か?」
「……何者ッ?それに善子じゃなくてヨハネ!ってあなたは確か…」
やっぱりだ。こいつは津島善子。入学式の日に出会った子だ。そういえば、学校では見なかったけど何をしていたんだろう…
「久しぶりだな。元気だったか?」
「うん…元気だったわよ…」
「学校ではお前に会わなかったけど何をしてたんだ?」
「そ…それは…実は色々あって学校には行ってないのよ…でも、大丈夫よ!」
そうだったのか…何か複雑な事情がありそうだけど、本人が大丈夫そうなら心配はいらないな。
「あなたは何をしにここまで来たのかしら?」
「ああ、実は…「シャイニー!」
俺の言葉は何者かに掻き消された。何者かって?シャイニーなんて言葉を使う人は俺の知り合いには一人しかいない。鞠莉さんだ。
「鞠莉さん、遅いですよ」
「ゴメン!色々あってね…あら、その子は?」
「ああ、こいつは津島善子、浦の星学院の一年。」
「だからヨハネ!あっ…よろしくお願いします…」
「Oh、とっても可愛いじゃない!よろしくね!」
善子はまた自分がヨハネとか言っていたが、鞠莉さんはあまり気にしていないようだ。
「それじゃ、行きましょ!ヨハネちゃんも一緒に行くかしら?」
「…行ってもいいですよ。貴方も!このヨハネがせっかく付き合ってあげるんだから、もっと嬉しそうにしなさい!」
鞠莉さんはむしろ楽しそうに見えた。善子もなんだか安心した表情をしていた。
「行くわよ!ついてきなさい!」
「フッ…このヨハネから逃げられると思っているのかしら?哀れな子羊ちゃんね…」
「ちょ…待ってください!」
俺と善子は鞠莉さんの合図とともにショッピングモールへ向かって走りだした。今日は騒がしい一日になりそうだな。
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「ついたわ!ここに行きたかったのよ!」
「ここは…ジュエリーショップですか?」
俺達は鞠莉さんが行きたいという店にやってきた。見た感じジュエリーショップのようだ。
「何か買いに来たんですか?」
「そうよ!パパの誕生日にブレスレットをプレゼントしたいの!よかったら選ぶのを手伝ってもらえないかしら?」
「もちろんいいですよ。善子はどうする?」
「私は…もう善子でいいわ…私も手伝うわよ」
「嬉しいわ!それじゃこんなのはどうかしら?」
「シンプルでいいですね。あ、この色はどうでしょうか?」
そんな感じで俺達は鞠莉さんのプレゼント探しを手伝った。最終的には銀色のブレスレットを渡すことに決めたようだ。
「これにするわ!二人ともありがとう!」
「どういたしまして」
「気にしなくていいですよ」
「さてと、善子は行きたい所とかあるのか?」
「わ、私は別に…」
「遠慮しなくていいのよ!」
「それじゃあ、ちょっとあの店まで…」
善子は自分が行きたいという店に向かっていった。俺と鞠莉さんも善子の後に続いていった。
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「…ここよ」
「アニメショップか。ここには俺もよく行くな」
善子が行きたかったという店はアニメショップだった。この店は色々な種類のグッズを取り扱っているのだ。
「え、そうだったの?」
善子は少し驚いた表情をしていた。俺はアニメとかは好きなのでこの店には普通に行くけど…
「そんなに以外だったか?」
「そりゃそうよ。こんなところに来るのなんて私ぐらいしかいないと思ってたし…」
「そんなことはないぞ。俺だけじゃないし全然気にする必要はないぞ」
「…そうね!ありがと!」
「おう、どういたしまして」
善子には笑顔が戻っていた。元気になったようで本当に安心したよ。
「ちょっと!マリーのことを放っておくつもりなの?」
「あ、なんかすみません…」
「もう!まったく仕方ないわね…」
ずっと善子と会話をしていたので、鞠莉さんは退屈そうにしていた。悪いことをしちゃったな…
「それじゃ、入るわよ」
「はいよ。鞠莉さんも行きましょう!」
「ええ!」
俺と鞠莉さんは善子に続いて店に入った。善子はなんだか楽しそうだ。やっぱり連れてきて本当によかったな。
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鞠莉さんと善子の買い物は終わり、次は俺の行きたい店に行く番になった。俺の行きたい店はあそこだ。
「リューゴの行きたいところはどこなのかしら?」
「あの店ですよ。」
「あれは、スポーツショップかしら?」
俺の行きたかったのはスポーツショップだ。久しぶりにシューズとかTシャツを見たくなったからなのだ。
「リューゴってスポーツやってたの?」
「はい。バスケを少々…」
「そうなの?確かうちのバスケ部は去年の県大会で準優勝だったわよね?」
「……そうですよ」
あの試合のことはもう忘れたい。出来れば掘り返したくはないのだが…
「それで、あなたは何を買いに来たの?」
「うーん…特にアテはないな」
「じゃあアレをやりましょ!」
善子が指さしたのは3on3用のコートだった。久しぶりにバスケをやるのも悪くないかもな。
「…いいぜ。やってやるよ!」
「そう来なくっちゃ!それじゃ、行きましょ!」
俺達はコートに行き、入口でボールを借りた。すると、すぐに背の高い男性達が声をかけてきた。
「そこの兄ちゃん、ちょっと俺達の相手をしてくれないか?お嬢ちゃん達も一緒によ」
「いいですよ。やりましょう!」
そして試合は始まった。ルールは簡単だ。最初に俺達がオフェンスをしてシュートが決まればディフェンスと交代。外してもリバウンドを取れればもう一度オフェンスが出来る。
「いくぞ。善子!」
「わかったわ!」
「善子ちゃん!こっちよ!」
まずはパス回しから始める。相手の様子を見ながら隙があればすぐに攻めるのだ。
「鞠莉さん!」
「ええ!」
俺の手にボールが渡る。相手との距離は充分にある。これなら確実に狙える!
「させるか!」
相手のディフェンスが手を伸ばしてくる。でも、届かない。俺はそのままシュートを打った。
(この手首のかかりに縫い目の角度…外す気がしねぇ!)
俺の手から離れたボールは綺麗な弧を描いてゴールへ吸い込まれていった。
「よし!」
「ナイスシュートよ!」
「やるじゃない!」
それからの試合展開は一方的だった。そして、相手チームに一本もシュートを決めさせずに俺達は勝利した。
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「ありがとうございました!」
試合が終わり、お互いに礼を言った後に相手の男性達が俺に声をかけてきた。
「そういや少し気になったんだが、兄ちゃんは浦の星学院のプレイヤーじゃないか?」
「…なんでそれを?」
「あの試合見てたぞ。惜しかったな…」
「そ、そうでしたか。ありがとうございます」
「次は勝てるぞ。頑張れ!」
そう言うと男性達は去っていった。なんだかあの人達に勇気づけられたような気がする。
「お疲れ様!カッコよかったわよ!」
「鞠莉さんも善子もお疲れ様」
「お疲れさん」
鞠莉さんと善子はドリンクを飲みながら疲れを癒していた。俺も二人のとともに休養をとることにした。俺は明日も用事があるから疲れを残すのはよくない。
「楽しかったわね。そういえば思ったんだけど、リューゴはバスケ部なのかしら?」
「いえ、今はバスケ部ではないですよ。色々あって今はやってないんですよ」
「色々ねぇ…でも、もう一回やってみたらどうかしら?絶対に活躍できるわよ!このマリーが言うんだから間違いはないわ!」
「このヨハネもそう思うわ。あなたがバスケしている姿はカッコイイし…」
俺はまだバスケを再開するかどうかで悩んでいたけど少し悩みが軽くなった気がする。それにバスケはやっぱり楽しいな!
「二人ともありがとう!もう少し考えてみるわ」
「どういたしまして!」
「気にしなくていいわよ…」
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俺達がコートを後にすると日は殆ど沈んでいた。遠くには星空も見える。
「だいぶ暗くなってきたわね」
「そろそろ帰るか」
「そうしましょ」
「それじゃ、二人ともまたね!」
「またな!」
「また会いましょう!」
俺は二人に別れを告げると帰り道を急いだ。既に空には月が浮かんでいる。明日も早いからすぐに帰らなくてはな。
「今日は少し騒がしかったけど、楽しかったな」
また三人で集まりたい。俺はそう思っていた。すごく居心地がよかったからかな。
「よし、明日に備えて早く帰るか!」
俺は明日のことを思い浮かべながら家まで走り始めた。心地よい海の風に吹かれながら…
To be continued…
鞠莉は善子のことをなんて呼んでたのかわからなかったので、自分が予想したのを使いました。
それではまた。