やっと執筆の時間が作れました。
それではどうぞ。
鞠莉さんと善子と三人で買い物に行った翌日、俺は千歌達と海の音を聞きに行くために海に潜ることになっていた。
「えっと…九時に千歌の家の前の船着き場に行けばいいんだよな。三十分後か、やっぱり早いな」
集合時間は九時だ。少し早いような気がするが遅いよりはいいんじゃないかという千歌の意見により、この時間になったのだ。言い出しっぺのやつが遅刻しなければいいんだけどな。
「よし!そろそろ行くか!」
俺は簡単に身支度を済ませ、待ち合わせ場所の船着き場へと向かうために家を出た。
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「あっ!龍ちゃん、おはよう!」
「龍くん、おはヨーソロー!」
「海藤くん、おはよう!」
「おはよう!みんな早いな。まだ集合時間まで十分もあるのに」
「うん!楽しみだったからね!」
千歌は珍しく早く来ていた。他の二人も既にそこにいたからどうやら俺が一番最後だったみたいだな。
「龍ちゃん、今日もカッコイイね!」
「え?お、おう、ありがとな。」
千歌は俺の方を見つめながら言った。服とか髪型はいつもとあまり変わらないのだが。
「おやおや?龍くん、顔が赤くなってますねぇ」
「べ…別になってねーし…」
「うふふ、海藤くん可愛い!」
「梨子さんまで?」
なんかさっきからみんなにからかわれている気がする。
梨子さんまで言ってくるのは少し意外だったが。
「そ…それじゃ行くぞ。果南姉さんを待たせたら悪いからな」
「あ!龍ちゃん、ちょっと待って」
「なんだ?忘れ物か?」
「ううん、違うよ…えい!」
千歌は急に俺の腕に抱きついてきた。今までよくわからなかったが、こいつの胸は意外と…って俺は何を考えているんだ!
「ちょ、離せって!重いから!」
「ダーメ!このまま行くの!」
「曜!梨子さん!助けてくれ!」
「……ヨーソロー!」
「あべし!」
俺は二人に助けを求めたはずなのだが…曜まで俺の空いている腕に飛びついてくる…というより激突してきやがった。つーかマジで痛いわ!
「………」
「梨子さん?」
「私も…二人みたいに…ダメ?」
梨子さんは捨てられた子犬のような目でこちらを見つめてきた。辞めてくれ。俺はその目に弱いんだ。
「…仕方ないな。ほら、おいで」
「…ありがと」
そのまま俺は梨子さんを抱きしめてやった。女の子特有の甘い香りが鼻を擽ってきた。千歌ほどではないが梨子ちゃんも意外と…
「早く行くぞ!道草食ってる訳にはいかないぞ!」
「はーい!」
「しゅっぱーつ!」
「うん!」
俺は三人の美少女を両手に抱えて、船へ乗り込み、果南姉さんの実家のダイビングショップへと向かった。なんかもう疲れたな…
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「おっ、来たか」
「おはよう。朝早くから悪いね」
「気にしなくていいよ。私は普段から早いからね」
果南姉さんは既に準備を終えて俺達のことを待っていてくれていた。
「果南ちゃん、今日はよろしく!」
「誘ってくれてありがと!」
「今日はよろしくお願いします」
「みんなよろしく!それじゃ梨子ちゃんはウェットスーツのサイズを測るから水着に着替えてきてね。三人は前のやつを着てね」
「あ、はい」
海に潜るためにはウェットスーツが必要になる。最初はサイズを測ったりするので時間がかかるが、安全のためだから仕方がない。しばらくすると梨子ちゃんが水着姿になって出てきた。
「お…お待たせしました…」
「おお!梨子ちゃん可愛いねぇー」
「うーん、似合ってるぅー」
「ちょ、ちょっと二人とも!恥ずかしいよ…」
水着姿になるのが慣れてないのか彼女は恥ずかしそうにしていた。そんな姿も悪くないかもな。
「ねえねえ、凌ちゃんも梨子ちゃんの水着姿いいと思うでしょ?」
「なんで俺に聞くんだよ…でも、俺はとても可愛いと思うぞ」
「ううう…」
梨子さんは急に顔が真っ赤になった。やっぱりこういう仕草も可愛いなぁ…
「はーい。終わったよ!それじゃあなたはこれを着て」
「ありがとうございます」
梨子ちゃんの採寸が終わって彼女もウェットスーツに着替えてきた。これで最初の準備は終わり。あとは海に出るだけだ。
「それじゃあ行くよ!忘れ物はないよね?」
「はいよ。みんな行くぞ!」
「「「うん!」」」
俺達は果南姉さんの操縦するボートに乗って、海に潜れる場所へと向かった。
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十数分後、俺達は果南姉さんオススメのダイビングスポットに到着した。これから海へと入るのだ。
「水中では音は届きにくいからね。でも景色はこことは違うから、イメージすることは出来ると思うよ」
「はい、わかりました」
「梨子ちゃん!行くよ!」
「うん!それじゃ行ってきます」
「はいよ。気をつけてね」
俺達はゆっくりと海に入った。最初は海水の冷たさが身に染みたがしばらくすると慣れて心地よく感じた。
「みんな、耳をすませてみて」
曜の声が聞こえる。俺は海の音は聞いたことがないからよくわからないが何も聞こえてこないので、おそらくここでは聞こえないのだろう。
「聞こえないな。場所を変えるか」
「そうだね」
俺達は移動を開始した。移動とは言ってもあまり遠くには行かない。
「…やっぱり聞こえないね」
「そうだな」
結果としてここでも音は聞こえなかった。海の音を聞くのはかなり難しいようだ。少し梨子ちゃんの顔を見てみると、彼女は俯いていてどんな表情をしているのかはわからなかったが多分残念に思っているのだろう。
「梨子さん、どうしたんだ?」
「…あっ、ごめんなさい。少し考え事してて…」
「何か悩みでもあるのか?」
「まあ、そんな感じだけど…」
「いや、無理に話さなくていいからな。強引に聞き出すつもりもないし」
梨子さんに何か悩みがあるということはすぐにわかったけどはそれ以上は何も聞こうとしなかった。無理に聞き出すのは良くないし何より後味が悪いからな。
「海藤くん、心配してくれてありがとう!」
「ああ、どういたしまして!」
「あ…でも一個だけお願いがあるんだ…」
「なんだい?」
「私のこと…さん付けじゃなくて名前で呼んで欲しいなって。千歌ちゃんや曜ちゃんみたいに…!」
お願いって言うから何かと思ったよ。そんくらいならお易い御用だ。
「わかったよ。梨子」
「えへへ…ありがと!」
そう言って笑う梨子は本当に可愛かった。
「二人とも!あれを見て!」
急に千歌の声が聞こえた。千歌のいる方を見てみると海面から日の光が射し込んでいるのが見えた。
「それがどうしたんだ?」
「それだけじゃないよ。何か聞こえない?」
俺達は耳をすませてみた。すると微かにピアノのメロディーのような音が聞こえてくるのがわかった。もしかして…これが海の音?
「何か聞こえたよね?」
「聞こえた!」
「私も!」
「俺もだ!」
俺達は水面から顔を上げ、互いが聞いた音がどんなのだったかを確かめている最中だ。全員が同じ感想だった。みんなが聞いていたのは同じ音だったのだ。
「聞こえたね!海の音!」
「目的達成であります!」
「本当によかったな。おめでとう!」
「みんな…ありがとう!」
この海での出来事を通して俺達の絆は更に深まった気がした。いや、深まったに違いない。
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「聞こえたって?海の音」
「ああ、聞こえたよ」
果南姉さんは俺達がボートに戻るとすぐに出発させた。あの三人は疲れが出たのかボートが出てからすぐに寝てしまった。
「お疲れ様。大変だったでしょ?」
「まあな。でも楽しかったよ。それに…」
「それに?」
「…いや、何でもない。気にしないで」
「ふーん…わかった」
俺は何か心に暖かいものが生まれたのがわかった。果南姉さんには恥ずかしくて言えなかったけど。俺はこの暖かさを感じながら三人と同じように心地よく眠りにつくのだった。
To be continued…
出来れば評価等をよろしくお願いします。
それではまた。