今回の話は本編とは関係ありません。別の物語だと思ってくれるとありがたいです。
果南ちゃん誕生日おめでとう!
俺の初恋の人は幼なじみのお姉さんだった。それは今でも変わらない。
静岡でもまだまだ寒い2月某日、龍吾はとある人物に会いに行くために淡島へと向かっていた。
「それにしてもなんだろう?急に来てくれだなんて」
彼はその人物に急に呼び出されたのだ。普通だったら驚くだろう。だが彼の幼なじみは三人いて全員が用事を唐突に言うような性格をしているから彼は急に呼び出されることに対しては慣れっこだった。
「まぁ、会いに行くのは全然いいんだけどな。俺は毎日でも会いたいくらいだし…」
そんな淡い気持ちを抱えながら彼は目的の人物との待ち合わせ場所に向かって行ったのであった。
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「あっ、きたきた。おはよう龍吾!」
「おはよう!果南姉さん、それで用って何なんだ?」
十分後、俺は目的の人物と待ち合わせをしている場所に来た。俺の目的の人物というのは幼なじみである果南姉さんだ。
「ふっふっふ、よく聞いてくれたな」
「果南姉さんってそんなキャラだったっけ?」
「細かい事はいいの。これだよ!」
果南姉さんは懐から2枚のチケットを取り出した。
「これって…」
「淡島マリンパークのチケットだよ!龍吾と行きたいなって思ってね…」
それは淡島マリンパークのチケットだった。俺達が昔からよく行っていたお気に入りの場所の一つだ。
「なんでいきなり?」
「それは…だから龍吾と行きたかっただけだって!迷惑だった…?」
「そんな訳ない。俺だって果南姉さんと行きたいよ」
「……ほんとに?」
「もちろんだよ」
やっぱり俺はこの人には敵わないようだ。昔からそうだったな…
「それじゃ行きますか!」
「…そうだね!」
俺達は待ち合わせの場所から淡島マリンパークへと向かって行った。
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俺達がゲートを潜ると、イルカ達が出迎えてくれた。
「なんか懐かしいね…」
「そうだね。最後に行ったのいつだっけ?」
「この前PVの撮影で行ったじゃん!」
「ああ、そうだったな」
そんな思い出話を二人でしているうちに水族館の中に入っていっていた。
「わぁ、綺麗だね」
「…ほんとだな」
果南姉さんの方が綺麗だよと言いたかったのは内緒だ。俺にはキザなセリフを言えるだけの勇気は全くと言っていいほどないからな。
「うーん、龍吾はこういう時にお前の方が綺麗だよとか言えないの?ほんとにシャイだねー。」
「い、言えるか!」
表情にも出していなかったつもりだが、果南姉さんに心の中を読まれていた感じがした。これだから俺はこの人には敵わない。
「そ、それよりもさ、果南姉さんは他に行きたいとことかないの?」
「…私は龍吾と二人でここに来れただけで嬉しいよ。」
果南姉さんは俺が言いたかったようなことをさらっと言ってしまった。心なしか果南姉さんの顔が赤いような気がするが。
俺も果南姉さんに負けてはいられない。俺も勇気を出して言ってみた。
「あ、ありがとう…俺も果南姉さんと来れて本当によかったよ…」
「……うん」
そこからはお互いに無言になってしまった。やっぱり無理はするもんじゃなかったようだな。
しばらく水族館内を楽しんだ後、俺達はカエル館へと足を運んだ。ここは俺達が幼い頃に何度も訪れた思い出の場所だ。
「ここに来ると童心に返れるような気がするね」
「本当に懐かしいな。ここには沢山の思い出があるからな」
正直、俺は爬虫類は苦手だ。何を考えているのかわからない所が少し怖いからだ。でもカエルだけは大丈夫だった。それも幼い頃のここでの思い出が関係しているのかもしれない。
「私達はみんな変わっちゃったね。こんな感じにスクールアイドルをやることになるなんてあの頃には思いもしなかったよね」
「そうだな。しかも千歌と曜も一緒にだからな。俺もこんな感じにスクールアイドルに関わることになるとは思わなかったからな」
「龍吾、寂しいの?」
果南姉さんが俺に尋ねてきた。本音を言えば寂しい。ずっと一緒だと思っていた幼なじみ達が今では遠くに行ってしまった感覚がするからだ。
「…少しな。でも大丈夫だよ。今の俺には果南姉さんと千歌と曜だけじゃない。梨子やダイヤさん、花丸ちゃん、ルビィちゃんに善子、鞠莉さんもいる。俺は孤独なんかじゃない」
「…そうだよね。なんかごめんね?」
少し果南姉さんの表情が曇ってしまった。何だかこっちが申し訳ない気持ちになってしまった。
「果南姉さんは気にしなくていいよ。だからそんな顔しないで」
「ありがと。でもなんで龍吾はそんなに私のことを気にかけてくれるの?」
「それは果南姉さんは俺の大事な…」
「大事な?」
「お、俺の大事な幼なじみなんだからな!」
危なかった。まだ気持ちを伝えるには速すぎるからな。だけど、果南姉さんは少し残念そうな顔をしていた。
「そ、そうだね」
「だけど…少しだけ特別な存在だな…」
照れくさかったけど、少しだけ訂正した。うん、これ以上は無理だな。
「え!それって…」
「よし、次の場所に行こうぜ!」
「あ、ちょっと待ってよ!」
俺は果南姉さんの手を引いて次の場所へ向かって走り始めた。少し顔が赤いのは走っているせいだということにしておこう…
それから俺達は色々な場所を二人で見て回った。手は繋いだままでだ。だけど、その楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまった。
時刻は六時を過ぎ、空も暗くなり始めた頃、俺達はマリンパークを後にした。
「うーん、楽しかったね!」
「久しぶりに来れて本当によかったな!」
やっぱり果南姉さんには笑顔が一番だ。二人で回って楽しんでいるうちに表情は元に戻っていた
「なぁ、果南姉さん」
「ん?どうしたの?」
「これからさ、時間ある?」
「全然余裕だよ。どうしたの?」
「ちょっと行きたいところがあるんだ…」
俺は再び果南姉さんの手を引き、俺がずっと二人で行きたかった場所へと向かって行った。
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「よし、ついたよ」
「ここって…」
俺が二人で来たかったのは、いつもAqoursの練習で使用している神社だった。
「ここに何かあるの?」
「何にも。あるとすればあれぐらいかな?」
俺は神社から見ることの出来る内浦の町並みを指さした。遠くには沼津の街の光が見える。その光の一つ一つが星のようでとても美しかった。
「…綺麗だね」
「そうだね。いや、果南姉さんの方が綺麗だよ…」
そう言うと果南姉さんはハッとした顔をしてこっちを向いた。さっきは恥ずかしくて言えなかった言葉だ。
「龍吾はずるいよ…言えないんじゃなかったの?」
「言えなかったよ。さっきまではね。でも、今なら言えるよ」
「…なーんか初めて龍吾に負けた気がするんだけど」
「あはは、俺も初めて勝てた気がするよ」
小さいことかもしれないけど、何だか誇らしい気持ちになった。初めて果南姉さんを手のひらの上で転がすことが出来た気がする。
「龍吾に言いたいこと色々あったけど、もう満足しちゃったよ」
「そうか?俺としてはまだ満足してもらっちゃ困るんだけどね」
「え?なに?」
「……果南姉さん、誕生日おめでとう!」
俺は密かに用意していた果南姉さんへのプレゼントを手渡した。果南姉さんはさっきよりも驚いた表情をしている。俺が本当に見たかったのはこの表情なんだよなぁ。
「…もう本当にずるいんだから。普段は隠し事なんて出来ないのに」
「それは褒め言葉として受け取っとくよ。隠し事が出来ないってことは正直ってことだろ?」
「はいはい。開けてもいい?」
「もちろん!」
果南姉さんは箱の包みを丁寧に開け始めた。その中には髪を結ぶためのシュシュとマリンブルーのイヤリングが入っている。
「龍吾…本当に嬉しいよ、ありがとう。今までで一番の誕生日だよ…!」
そう言って果南姉さんは俺のことを抱きしめてきた。久しぶりに感じる彼女の温もりはとても心地よかった。
「…そう言ってもらえて嬉しいよ」
俺もそんな彼女のことを抱き締め返した。微かに輝きだした星の光はそんな俺達のことを見守るように優しく照らしてくれていた。
時間がこのまま止まってくれたら…
To be continued…
果南ちゃんの口調がたまにわからなくなるな…気をつけなければ。
私は他にも色々な話を書いてみたいと思っているので何か意見があれば感想欄からお願いします!
それではまた。