今回でやっと三人目の幼馴染みが出てきます。
そしてあの人も漸く登場します。
それではどうぞ!
「設立の許可どころか申請もしていない内に、勝手に部員集めをしていたというわけですか?」
俺達は生徒会室に呼び出され、生徒会長からのお叱りを受けていた。
「本当に悪気はなかったんですよ!」
「千歌…お前反省してないだろ」
千歌は悪びれもせずに言った。少し生徒会長の方を見てみるとさっきと全く変わらない仏頂面で俺達を見つめていた。
「……部員は何人いるんですの?」
「今のところは…一人です!」
どうやら俺と曜は部員には含まれてなかったようだ。俺はそういえばと部活の設立の条件を思い出した。たしか…
「たしか…部の申請には最低五人は必要ですよね?」
「その通りですわよ」
「はい。生徒手帳にも載っていますよね」
千歌の変わりに俺と曜が答えた。千歌に答えさせると突拍子もない答えが返ってくるような気がしたからだ。
俺達が答えると、少し生徒会長の機嫌が直ってきたように見えた。
しかし、千歌はとんでもないことを言いやがった。
「だーかーらー!そのために勧誘をしていたんじゃないですかー!」
さっきの俺と曜からのフォローが無駄になった。そして、その場の空気が一瞬で凍りついた。
そもそも部活勧誘は生徒会から正式に承認された部活動が部員を集めるために行うことなのだ。まだ生徒会から正式に承認されていないスクールアイドル部が勝手に勧誘をしていたから、俺達は生徒会室に連行されているのだ。どうやら千歌は自分たちが生徒会室に呼び出された理由が分かっていないようだ。
バン!!!
生徒会長は申請書を机に叩きつけた。まずい、相当ご立腹のようだ。しかし、俺達に怒りを爆発させることはなく、静かに立ち上がって、俺達に言い放った。
「とにかく!こんな不備だらけの申請書を受け取るわけにはいきませんわ!」
生徒会長は俺達を指さして言った。
「千歌。取り敢えず一旦戻ろうぜ」
「うう…わかりました。部員を五人集めてくればいいんですね?」
「…たとえそれでも承認は致しかねますがね…」
生徒会長は俺達に背を向け、そう言った。だが、部員を集めても承認は致しかねない?どういうことなのだ…
「えっ!なんでですか?」
「それは…私が生徒会長でいる限り、スクールアイドル部は認めないからです!」
「ええっ!?そんなぁー!」
生徒会長にそんな権限はあるのだろうかと俺は少し疑問に思った。そして、ガックリと項垂れている千歌を連れて、俺達は生徒会室をあとにしたのだった。
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「どうしてスクールアイドル部はダメだって言うんだろう…」
場所は変わってここは船の上。俺達三人はとある人物に会いにいくために淡島へと向かっていた。
「嫌いみたい…クラスの子が前に作りたいって言った時も断わられたみたいだよ。」
「ええっ!曜ちゃん!知ってたんだったら教えてよ~!」
「ご、ごめん…」
「これからどうするんだ?あの生徒会長が承認してくれないとスクールアイドル部の活動は出来ないんだぞ」
「今考えてるんだよ!」
どうやら生徒会長はスクールアイドルが嫌いなようだ。
しかし、あの生徒会長がただ嫌いだという理由だけで承認を断るとは思えない…何か事情があるのだろうか。
「生徒会長の家ってたしか古風な家らしくて…ああゆうチャラチャラした感じのものは嫌っているんじゃないかっていう噂もあるし…」
「チャラチャラじゃないのに…どうすれば…」
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数分後、俺達は淡島に到着した。千歌の様子を見るといつの間にか元気を取り戻しているようだった。そして俺達は目的の人物がいる場所へと向かった。
「あっ!果南ちゃん!」
「千歌!いらっしゃい!」
俺達の目的の人物は俺達のもう一人の幼馴染みの果南姉さんだ。年齢は俺達の一個上だが、昔から俺達四人で遊んでいた。今日は姉さんに学校であったことを伝えに来たのだ。
「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」
「うん!これお土産!」
千歌は姉さんにみかんの入った袋を差し出した。
「またみかん?」
「文句ならお母さんに言ってよ~!」
そんないつもと変わらない会話をしていると自然と頬が緩んでくる。そんな俺に気づいたのか姉さんは俺に質問をしてきた。
「どうしたの龍吾?あっ…もしかして、久しぶりに私に会えて嬉しいの?」
「べっ…別にそんなんじゃないよ…」
姉さんは少し俺をからかってきた。確かに久しぶりに姉さんに会うことができて嬉しいのは事実なのだが…
「あー!龍ちゃん照れてる!少し顔赤いよ!」
「ほうほう…意外とピュアなのですなぁ…」
「うるさい…馬鹿…」
千歌と曜が、姉さんの言葉に便乗して俺のことをからかってきた。姉さんは優しい笑みを浮かべて、俺達のことを見つめていた。この人達は本当に昔から変わらないな…
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俺達が他愛のない会話を続けていると、あっという間に夕暮れは訪れた。姉さんはショップの後片付けを始めていた。そんな彼女に千歌は尋ねた。
「果南ちゃんは新学期から学校に来れそう?」
「うーん…まだ父さんの怪我が治ってないし、家の手伝いもあるからなぁ…」
姉さんは親父さんの怪我の影響で学校を休学して、家のダイバーショップの手伝いをしている。親父さんの怪我はなかなか良くならないようで、姉さんは当分学校には来れないそうだ。
「残念だったなぁ…新学期が始まったら果南ちゃんもスクールアイドルに誘おうと思ったのに」
「……まぁ私は千歌達と違って三年生だからね…」
姉さんは少し声のトーンを下げて答えた。
「スクールアイドルって知ってる?すごいんだ…ぐぇっ!」
「はい!お返し!」
「んっ…えー!また干物!?」
「文句なら母さんに言ってよ!曜と龍吾にもあげるね」
みかんのお返しに姉さんが差し出してきたのは…やっぱり干物だった。またか…美味いけど飽きるんだよなぁ…
「果南ちゃん!いつもありがとう!」
「サンキューな!」
「どういたしまして。もうちょっと休学続くから何かあったら教えてね!」
俺達はさっきの船に乗り込み、帰ろうとした。すると空からヘリの音が聞こえてきた。
「なに?あのヘリ?」
「……小原家でしょ…」
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「曜ちゃんバイバイ!また明日ね!」
「じゃあな!」
「龍くん、送ってくれてありがとう!千歌ちゃん、また明日!」
俺は曜を家まで送ってやった。方向は真反対なのに千歌がここまでついてきたのはちょっと意外だった。
「どうにかしなくちゃなぁ…」
「なんとかして生徒会長を説得しないとダメだな」
俺と千歌は砂浜で海を見ながら話し合っていた。もう日が落ち始めていて、夕焼けが広がっていた。早めに家に帰らなくてはならないのだが、千歌はまだ帰りたくないらしい。
「千歌、なんで帰りたくないんだ?」
「それは…龍ちゃんに…色々と聞きたいことがあったからだよ!」
「そうか。で、聞きたいことってなんなんだ?」
「え?えっと…そ…その…あれ?何だったっけ?」
どうやら千歌は俺に聞きたいことがあったらしい。内容については忘れてしまったようだが…まぁ仕方がない。話そうとしたことを忘れることなんてよくあることだからな。
ふと千歌の顔を見ると頬が微かに赤くなっているのが見えた。そんな彼女のことをじっと見つめていて、気がついたら俺の頬も赤くなっていた。うん、これは夕焼けのせいだろうな…
その後、俺と千歌は話し合いを再開したが、なかなかいい考えが浮かばないでいた。
「うーん…どうすればいいんだろう…あれ?」
「どうした?何かいい案が浮かんだのか?」
「違う…龍ちゃん!アレを見て!」
千歌が指さした方を見ると一人の女子生徒がいた。おそらく年齢は俺達と同じ位だが、見たことがない制服を来ていた。
「あんなところで何をしているんだろう…ええっ!?」
「千歌!?どうしたんだ?」
女子生徒の方を見てみるとブレザーを脱ぎ始めていた。
Yシャツも脱ぐと、彼女は水着姿になった。どうやら彼女はこれから海に飛び込むつもりのようだ。
「うそでしょ?…まだ四月だよ…」
「まずい…この時期じゃまだ水温は低い…体が冷えて溺れてしまうかもしれないぞ!」
女子生徒は今にも海へと飛び込もうとしていた。俺は隣にいる千歌を見た。しかし、そこに彼女の姿は無かった。
「千歌?…まさか!」
千歌はもう女子生徒の元へと駆け出していた。
「…ったく…アイツは!」
俺もすぐに千歌のことを追いかけた。
すでに千歌は女子生徒を取り押さえて必死に説得をしていた。どうやら彼女のことを自殺願望者だと思っているらしい。
「ダメ!ダメだよ!ホントに死んじゃうから!」
「離して!私は行かなくちゃいけないの!」
「絶対にダメだってばー!」
すでに二人とも体勢が崩れていた。このままじゃいつ海に落ちてもおかしくない…
「「あっ」」
そのまま二人は足を滑らせ、海へと真っ逆さまに落ちてしまった。
「やばい…このままじゃあの二人は…急がないと!」
俺は制服を脱ぎ捨ててたまたま近くに置いてあった浮き輪とロープを手に持ち、二人の元へと駆け出した。
To be continued…
今回はここまでです。
今まで文字数が少なかったので増やしてみました。
前の話もこれから加筆していくつもりです。
それではまた。