今回はオリキャラが多く登場します。
そして、後半からオリジナルの話になります。
それではどうぞ。
「だからね、スクールアイドルっているのは…」
「…ごめんなさい」
梨子さんが転校してきて数日がたった。千歌は未だに彼女のスクールアイドルへの勧誘を続けていた。
「学校を救うこともできてね…」
「…ごめんなさい」
「どうしても、作曲する人が必要でね…」
「……ごめんなさい」
千歌は何度も梨子さんのことをスクールアイドルに誘い続けているが一向に入ってくれる気配は無かった。無理に誘うのも良くないのだが千歌はどうしても彼女をスクールアイドル部に入れたいようだ。
「うん、あと一歩だね!」
「そうなの?」
「いや、そんな風には見えないが…」
「だって前までは、『ごめんなさい。』だったのに、今では『ごめんなさい…』ってなってるんだよ!」
「それ、完璧に嫌がってるじゃん…」
「千歌、梨子さんを誘いたいのは俺と曜も同じ気持ちだ。だけど梨子さんの気持ちも考えてあげないと駄目だと思う」
「うーん、そうだね…」
千歌は漸く納得してくれた。
「いざとなったら、何とかするし!」
どこから取り出したのだろうか。千歌は音楽の教科書を手に取って言った。それでは作曲が出来ないのは俺も曜もわかっているつもりなのだが。
「千歌ちゃん、龍くん、ステージの衣装を考えてみたよ。どうかな?」
曜はスケッチブックを俺と千歌に見せた。そこには、ステージ衣装を来ている千歌が描かれていた。なかなか上手いな。
「うーん…悪くないんだけど、制服っぽいな」
「アイドルって感じはしないね…」
「そっかー、せっかく考えたんだけどなぁ…」
確かにアイデアとしてはとても良いと思う。だがどうしてもアイドルという感じはしなかった。
「スカートとかはないの?アイドルっぽいよ!」
「それじゃあ…こんなんは?」
「これって、警察官じゃん!コスプレ大会になっちゃってるよ!」
「じゃあ…ほい!」
「武器持っちまったな。戦場にでも行くのか?」
「うーん、こんなのはどうかな?」
「おお、いいじゃん!」
「可愛い!いいと思うよ!」
曜がスケッチブックに描いたのは黄色のノースリーブにスカートだった。とてもシンプルなデザインで可愛らしく俺も千歌もすごく気に入った。
「よーし!挫けてるわけにはいかないね!」
「千歌?どこに行くんだ?」
「生徒会長にところだよ!」
「ええ…まだ人数集まってないよ」
「う…や…やってみなきゃわかんないよ!」
そんな感じで俺達三人は再び生徒会室に行き生徒会長と話をすることにしたのだった。
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放課後。俺達は生徒会室に行きダイヤさんと話をしていた。
「お断りしますわ」
結果から言うと見事に玉砕された。衣装のデザインが決まったくらいで実際は殆ど何も決まっていなかったから当然と言えば当然だろう。
「やっぱり、ダメですか?」
「何度も言いますけど、部員は最低五人は必要ですわよ。それに、作曲はどうなったのですか?」
「それは…可能性は無限大!」
ダイヤさんは何も言わず、ずっと俺達のことを見つめていたがやがて俺の方を向くとこう尋ねてきた。
「海藤さん、少しいいですか?」
「はい?いいですけど。」
ダイヤさんはいきなり俺の名前を呼んだ。そして、話を続けた。
「海藤さん、貴方は私の言いたいことは殆どわかっていますよね?」
「はい、大体はわかりますね。まだスクールアイドル部を立ち上げられない理由も…」
「わかっているのなら、貴方が引っ張っていかないと駄目なのではないですか?」
「そうですね…返す言葉もございません」
今までダイヤさんが言っていたことは正論だった。それをわかっていたにも拘らず俺は千歌と曜に正確なアドバイスをすることが出来なかった。
「貴方にはしっかりしてもらわないと困りますわよ」
「え?ええ?」
俺には少し不思議だった。なぜダイヤさんは俺にしっかりしてほしいと言うのか。すると、ダイヤさんは俺に耳打ちをした。
「貴方達には、少しは期待しているのですよ。特に、海藤さん、貴方には…」
期待。俺はその言葉が好きではない。誰かに期待されることは嬉しいことだ。しかし期待されすぎるとかえってストレスになって空回りしやすくなる。俺は経験者だから本当によくわかる。
「ダイヤさん…ありがとうございます」
「ふふ、どういたしましてです」
ここで俺はあることを思い出した。俺はアイツらから呼び出されているのだ。放課後に来てくれと。
「ダイヤさん。用事があるので俺はこれで失礼します。お前らは話の続きをしていてくれ。終わったら先に帰っていいからよ」
「ええ?龍ちゃんどこ行くの?」
「ああ、ちょっとな」
「気をつけてくださいね」
俺は生徒会室を出るとすぐに待ち合わせの場所へと向かった。
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五分後、俺は待ち合わせ場所の屋上に着いた。途中、ダイヤさんと千歌が言い合いをしているのが校内放送で聞こえたが、あれはなんだったんだ?
「遅かったじゃねーか」
「…すまねぇな。色々忙しくてな」
俺のことを呼び出した相手は孝至だった。そこには孝至の他にも何人かの男子生徒がいた。
「んで、話ってなんだよ」
「とぼけんなよ。言わなくてもわかってんだろ」
俺が尋ねると、高身長のやつが俺に突っかかってきた。
「
「…そうだな」
こいつは源朔也。悪いやつではないんだけど俺はこいつのことが苦手だ。
「なんで逃げたんだよ」
「…逃げたか…お前の言う通りだよ」
「……おい、よせ朔也。龍吾は逃げた訳じゃねーんだからよ」
「真一…俺を庇わなくてもいいからよ。朔也の言う通りだ。俺は逃げたんだからよ」
こいつは桧山真一。無口で無愛想なやつだが、根はいいやつだ。
「龍吾、俺達はお前に戻ってきて欲しいんだよ」
「琉空、俺はお前らのことを裏切ったんだぞ」
こいつは坂本琉空。裏表の無い性格で、チームメイトから信頼されているやつだ。
「お前ら、龍吾の意見も聞かねーと駄目じゃねーかよ」
漸く孝至が仕切り始めた。
「龍吾、裏切ったってまさかお前が部活を去ったことなのか?そんなことはもう気にしてない。それに、裏切った内には入らない」
「…そうだよ。お前らがまた俺のことをバスケ部に誘ってくれるのはありがたいよ。本音を言ったら俺は、お前らとまたバスケがしたい」
「だったら…」
「…すまないけど俺に少し時間をくれないか?真剣に考えるからよ。答えが出たらまたお前らと…」
「そうか…わかった。ずっと待ってるからな」
「…俺は正直、お前がいないと寂しいからな」
「……期待している」
「出来るだけ早くしてくれよ。俺はお前とバスケしたくてウズウズしてんだからよ」
「お前ら…ありがとよ」
話は終わった。孝至達はすぐに屋上から去っていったが、俺はこの場を動かなかった。動けなかった。
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半年前…
「残り二点差で二十秒だぞ、まだまだいけるぞ」
「ああ、みんなで行こうぜ、全国へ!」
俺達は全国大会出場を目指して戦っていた。俺達は二点リードしている。あと一つ勝てば目標である全国大会へ行けるのだ。
「凌ちゃん!みんな!頑張れ!」
「龍吾、彼女ちゃんもこう言ってるし頑張んなきゃ駄目だよねぇ」
「琉空…彼女じゃねーよ。こんな状況で何言ってやがる」
観客席には千歌と曜と果南姉さんがいた。三人とも俺達の応援に来てくれたのだ。
「お前ら集中しろ。ここを守り抜けば全国だ…よし!行くぞ!」
「「「「おお!」」」」
試合が再開した。相手は県内でも有名な超強豪校だ。無名の俺達がここまで善戦しているのを見て、観客達もテンションが最高に上がっていた。
「どっちも頑張れ!」
「勝てるぞ!踏ん張るんだ!」
そんな観客の期待の声が聞こえた。
「龍吾!行ったぞ!スリーだけは打たせるな!」
「…まずい!」
孝至が俺に声を掛ける。しかし、気づいた時にはもう遅かった。その時には、相手のシュートが俺達の守るゴールをすでに射抜いていた。
(スリーポイント…しまった…やられた…)
土壇場で、相手の逆転シュートが決まってしまった。相手の応援席は大盛り上がりだ。このままでは流れが持って行かれる…それだけは避けなければ。
「ドンマイ!気にすんな!」
「おい!まだ十秒あるぞ!諦めんな!」
「…わかってる!勝つぞ、みんなで!」
孝至からのパスが俺に渡る、相手もオールコートでディフェンスをしてくるけどここは逃げちゃダメだ。絶対に切り抜けてやる!
「龍吾!落ち着け!焦るんじゃねえ!」
「うおおおおお!」
よし!相手を抜いた!このままシュートを打てば…俺はミドルシュートの構えに入った。あれだけ練習してきたシュートだ。外す気がしなかった。しかし
「龍吾!まだ打つな!待て!」
孝至の声が聞こえる。たしかに俺の周りには相手のディフェンスが二人いた。だが外す気がしなかった俺はそのまま強引にシュートを打った。
(よし!入った!勝ったぞ!)
そう思ったのもつかの間だった。本心ではわかっていたはずだった。あんなに強引に打ったシュートが入るはずないことに。
ガコン!
(…何やってんだよ…入るわけないのに…)
「外れたぞ!リバウンド!」
朔也が叫ぶ。
(しまった…ボックスアウトを…)
俺がマークしていた相手は、そのままリバウンドをもぎ取った。真一と琉空がボールを取り返そうとする。しかし、俺達を待つのは無情のブザーだけだった。
俺達の全国大会への夢はここで潰えた。俺は崩れ落ちるチームメイトを尻目に喜びを爆発させている相手チームのことを遠くからずっと見つめていた。
数日後、俺はバスケ部を去った。信頼していた仲間達に何も告げずに。
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気づけば時間は夜の七時を過ぎていた。随分長い時間物思いに耽っていたようだ。
俺のせいで試合に負けた。それは明らかだ。孝至達は気にしなくていいと言っていたが、俺は自分勝手にプレーをして最低限の仕事も出来なかったのだ。
(原因は…俺が精神的に未熟だったからだ。それから俺はずっと自分を鍛えてきた。特に精神力をだ。孝至のように大変な時でも冷静に物事を見れるように)
俺はその特訓のお陰で人間的にも成長できたと感じている。そろそろ戻っていいのかもな…
(戻ったとしたら俺は限られた時間でもアイツらの倍は練習する。そして俺がアイツらを全国に連れて行く。それがせめてもの罪滅ぼしに…)
俺は一つの覚悟を決めた。そんな俺のことを月の光が、優しく照らしていた。
「答え、早めに出さなきゃな。アイツらのためにも。そして…自分のためにも」
一人の男の呟きは風となって消えていった。
To be continued…
ここでバスケ用語の説明をします。
バスケの試合は4クォーター制で行われる。1クォーターの間は2分間だが2クォーターと3クォーターの間には10分間のハーフタイムがある。4クォーターまでやっても決着がつかない時は延長戦になる。引き分けになることはない。
3Pシュートは3Pラインの外から打つシュートのこと。普通のシュートは2点。フリースローは1点
リバウンドはゴールに弾かれたボールを手で弾いて取ること。またはそのボール。
ボックスアウトはリバウンドを取る時に相手を自分の背中で押し出してポジション取りをすること。バスケの試合では特に重要になる。
以上です。それではまた。