俺、連装砲になりました 作:αスタイル
第6話《俺、装甲空母に会いました》
「ヴァジムくん……ね、新入りさん?」
『まぁ、そんな感じ』
「そうだったの、島ちゃんは私に話してくれなかった。少し……悲しいわね」
女性の名前は
戦闘での負傷により今は寝ているらしい。艦娘専用の修復剤とかがあるからそれで治るのかと思っていたが、そうでもない場合があるらしい。
修復剤は艦娘達が敵の攻撃などで負傷した際に使える言わば薬のようなものである。
……ん?
『島ちゃんが話してた?』
「えぇ」
『どうやって!?』
「お絵かきで」
『絵?』
大鳳は壁に貼ってある幾つもの紙を指差した。
そこには、幼い子が描いたのだろうか、色とりどりのクレヨンで描かれた絵が幾つも貼り付けてあった。
「あぁやって島ちゃんは私にその日あった事などを教えてくれるの」
そうだったのか……。
よくよく見てみると慣れない字で《たいほうだいすき》と書いてあった。他にも、色々な絵が飾ってあり、まるで小さな展示会の様だった。
島ちゃんが描いた絵を見ていると、島ちゃんが一枚の絵を持って俺の肩を叩いてきた。
「キュウ!」
「ん?どうした?……その絵は?」
島ちゃんは持っていた絵を俺に渡してくれた。
そこには、三人のキャラクターが描かれていた。一人は……照さんだな、よく描けてる。二人目は島ちゃん本人か、これも分かる……だけど……
「島ちゃん、こんな怪人みたいな奴いたっけ?」
「キュウ?」
島ちゃんは首をかしげてから絵を見て、納得した顔をしてから俺を指さした。
「キュウ!」
「これ俺!?全くもって別人なんだけど!?姿どころか原型ないんだけど!!お前普段からどういう目で俺のこと見てんの!?」
「キュウ?」
「いやなんでそこで首を傾げる!?」
島ちゃんの顔をガッツリ持って前後に振っていると大鳳はクスクスと笑った。
「仲良しなのね」
『たった今とんでもねぇ真実告げられたけどな……』
「キュウ!」
どうやら後でじっくりと話し合う必要がありそうだ。そう思っていると後ろから声がかけられた。
「やっと見つけたぞ少年、困るな勝手に動かれては」
「照さん!すまない……」
「……!そうか」
照さんは「行くぞ」と一言行ってそこから出ていってしまった。
俺達も大鳳に挨拶をして照さんのあとを追ってその場を去った。島ちゃんにはここにいて良いと言ったが首を振ったのでそれ以上は言わなかった。
「なぁ照さん……」
「……大鳳の事か?」
「!!……あぁ、何で彼女は修復剤などで治らないんだ?島ちゃんが送ってた手紙の数を数えるだけでもここ数週間は寝込んでることになる……何があった?」
しばらく無言だったが、やがて俺にその事実を話し始めてくれた。
「大鳳は新海域攻略組にいた。丁度、お前が現れる三週間前だ。中央本部からの伝令で海域侵攻命令が出た。提督は舞台を編成して海域攻略を始めたが……予期しない敵の襲撃で部隊は撤退するしか無かった。」
「予期しない敵?」
「そう……『戦艦レ級』だ」
「戦艦……!?」
戦艦の攻撃力は伊達ではない。
駆逐艦ならば一撃で沈められる。そんな奴が予想出来ない中で現れたという事は、よもやいきなりラスボスが現れたようなものなのだから。
「そこでだ、提督は現戦力では損害が大きくなると判断して撤退を選び、撤退している最中に敵機の特攻を大鳳は受けた」
「特攻?優勢だった奴らが……?」
特攻とは、戦闘機が意を決して敵の艦に自爆攻撃を行う事である。旧日本軍でも使われた人の命を対価とした爆弾である。
「それは違う、奴らの本当の目的は『侵食』だったんだ」
「?」
照さんの話では、大鳳に特攻して来た敵機の破片が大鳳の左腕に刺さった。そして、帰投した頃には大鳳の体を蝕み始めていたとの事だ。つまり、奴らは艦娘に自らの侵食細胞を埋め込んだのだ。
「侵食されるとどうなる?」
「……現段階では確定しては言えないが、侵食が完了すれば大鳳は深海棲艦となる」
「艦娘が、敵に?」
「有り得ない話ではない。深海棲艦の中には艦娘の姿をした奴らだって幾つも出てきた。恐らくそいつらも侵食されたのだろう」
艦娘が深海棲艦に……。
決して俺がいた世界での裏切りとは違った。奴らは言わば洗脳を駆使して敵を仲間にしている。人間の様な騙し合いなんてものは無い。単調で純粋な鹵獲である。
その時、後ろにいた島ちゃんが「キュウ……」と悲しそうに泣いた。
そうだ、コイツは…………
「……どれほどだ?」
「何?」
俺は照さんをまっすぐと見据えた。
「後どれほどで、アイツは深海棲艦になる?」
「もってあと一週間……その間には処分されるだろう。だから恐らくもって五日だ」
「そうか……」
照さんは「宛があるのか?」と聞き返してきた。宛なんてない。この世界に詳しくもなんとも無い。だが、それでも動かなければならない。
軍が戦うのは自国の国益と民を守る為である。だが、個人は違う。
俺は息を吸ってから言葉を発した。
「無くても行くしかない。例え血を見るのを見慣れても、仲間の涙を見るのは御免だ」
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