俺、連装砲になりました   作:αスタイル

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重巡の那智と出会った俺たち。
照さんは那智に俺たちを例の海域へ連れ出すように説得を始める。


第9話 : 《俺、賭けに出ました》

第9話 : 《俺、賭けに出ました》

 

「この海域に連れていけだと……?」

 

 那智は怪訝な顔をした。

 

『そうだ』

 

「……確保された海域ならまだしも、この海域は敵性海域だ。認められん」

 

 那智はそう言いながらも、パソコンの画面からは目を離さなかった。

 俺は二人の会話を聞いているしかない。照さんは聞いていれば何故、那智が協力者になってくれる可能性があるのかが分かると言った。ならば、今は聞いている他ない。

 

『考えてもみろ、今回の海域攻略で発覚した深海側の浸食能力。これに関しての情報が入手出来れば今後の海軍の利益にも繋がる。………………大鳳の治療にもだ』

 

 照さんのその言葉に那智は眉間にしわを寄せる。俺にも苦悶の表情が見て取れた。

 那智は照さんを睨む。

 

「……私の弱みに付け込む気か?」

 

(弱み……?)

 

 照さんが言っていた可能性って、もしかして……

 

『……あぁ、そうだ。悪いが時間は限られているんだ。手段を選んではいられないのだよ攻略組の≪旗艦≫殿?』

 

「旗艦……!?」

 

 旗艦、海域の攻略等……隊を組んだ際の責任者、言わば隊長のような存在である。しかし、まだ話が見えない……。すると『彼に説明する時間をくれ』と那智に言い、照さんがこちらを向いた。

 

「先程後回しにしたのは悪かった、ここで説明させてくれ。今は理解が先だ」

 

「……那智が旗艦であること、それがなんで大鳳の話に繋がる?」

 

 照さんは少しため息をつき、話し始めた。

 

「彼女はある海域の攻略の際、提督により旗艦に選抜された。勿論、旗艦に選ばれるという事は名誉なことだ。彼女は喜んでその任務についた。海域攻略は彼女の技量もあり、事無く進んでいった…………だが、もうすぐ海域奪取目前のところで敵の奇襲を受けた。」

 

「……それって…………」

 

 照さんはコクリと頷いた。

 

「大鳳の部屋の前で話した、戦艦レ級だ」

 

「!!」

 

 つまり、那智を旗艦とした艦隊に大鳳はいた。そして、戦艦レ級の奇襲に合い負傷したところを浸食されたと……。

 

「彼女はあの時の奇襲を自身のせいだと思っている。レ級による攻撃への対処の追われ、敵の戦闘機の接近に気付くのが遅れた……それのせいで大鳳は浸食されたと……」

 

「…………」

 

 照さんはこの話を武器に那智を説得させようとしている。

 彼女自身の失敗を材料に彼女を追い込むのは人であれば躊躇われる。だが、今日を入れて後五日……こうしている間にも大鳳は浸食されている。迷っている暇はない。

 俺は那智に顔を向けた。

 

『俺たちがやっていることはお前に対して酷いことであるのは分かってる。けど、大鳳を助けるにはこれしかもうないんだ。頼む……力を貸してくれ』

 

「…………。」

 

 那智は再びパソコンに映し出された情報を見る。彼女の拳に力が入った。

 

「……いいだろう。元と言えば不甲斐ない旗艦のせいだ。協力してやる」

 

『……助かる』

 

「あぁ、だが場所を変えよう。そろそろ姉が帰ってくるからな」

 

 

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 那智を説得した俺たちは人気の少ない休憩室に来ていた。

 

「秘書艦の同意を得られない今、この作戦をこのままの形で提督に出す訳にはいかない」

 

『ならどうする?』

 

 俺の疑問に那智が答える。

 

「勿論、やりたくはなかったが偽装する。我々が隊を組んで海域に行くには嫌でも提督の許可が必要だ」

 

『つまり、俺と少年、那智と以下数人を動かすには≪書類上の任務≫が必要ってわけだ』

 

「そう、私たちは書類上偵察任務に出ていることにする。ただ、そのためにはこの海域を偵察に行くだけの価値を見つけなければならない。言わなくても分かるだろうが浸食を食い止めるもの以外のでだ」

『ふむ……面倒だな』

 

 海域に出るための提出書類を作るのは容易ではない。何せ現状の俺たちは浸食防止以外の価値をこの海域に見出していない。海域の規模や位置的にも軍事的な優先度は低いと見ていいだろう。これでは通らない……。

 

「誰かこの海域について知らないのか?」

 

『さぁな……。俺と照さんにに至っては碌な実戦経験すらない』

 

『申し訳ない……』

 

「……そうか、ないものは仕方がない。とにかくこの海域の有力な情報を集めるのが優先か」

 

 しかし、困ったこともある。俺と照さんは秘書艦から逃げてきた身、あまり外でウロチョロするのは良くない。海域の調査は那智に任せるしかない。

 

「私は情報を収集してくる。お前たちは秘書艦と提督に見つからないように行動しろ」

 

『恩にきる』

 

『我々はしばらくドッグの奥で待機しよう』

 

「分かった。何か掴めたらそちらに向かう」

 

 そう言うと俺たちと那智は行動を別にした。

 

 

 

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 連装砲たちと別れてから、私は鎮守府の資料室に向かった。

 中には大量の資料が私の身長を優に超える棚の数々の中に保管されている。

 

(あの海域の資料は……)

 

 連装砲たちが持ってきた情報の中の海域は幸い、この鎮守府からはそう遠くない。飛ばせば半日で着くだろう。それに、この近さなら何度か偵察が出ている可能性もある。もし有益なものがあれば海域の攻略に移しても良いかもしれない。

 

(……!あった)

 

 資料を手に取り中を拝見する。

 予想通り、何度か偵察が出ているようだ。しかし、得な情報は見つからない。

 

(やはり有益な情報はないか……)

 

 そう思ったその時、思わぬ人物によって後ろから声をかけられた。

 

「どうした那智、何か探し物か?」

 

「……!!」

 

 私に聞いてきたのは何と提督だった!

 最悪である。よりにもよってこのタイミングで……!

 

「て、提督か。そういう貴様も探し物か……?」

 

「いや、お前の背中を見てな。声をかけたまでだ」

 

「そ……そうか」

 

 何という不運!自身の運の無さを呪いたい!!

 バレないように奥歯を噛み締めていると提督が私の持っている資料に目を付けた。

 

「その資料……」

 

「!!」




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