我と堕天使の盟約   作:あべかわもち

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続きです。


盟約の儀~解答~

 

 ほんの数時間前とは思えない濃さの出来事を振り返っていると、平塚女史が運転する車は我の自宅に到着した。送っていただいた女史にお礼を述べて、敷地玄関の門に手をかけたが、そういえば、まだ文句を言ってなかったなと思い出し、我は、今日平塚女史が仕組んだこの舞台を振り返りながら苦言を呈した。

 

 

「何を考えておるのだ。平塚女史よ。あれでは下手をすれば彼女の心にトラウマができていてもおかしくなかったぞ。なんの因果か、奇跡的にも、彼女が我の同胞であったからよかったようなものの」

 

「それは褒め言葉と受け取っていいだろうか?教師にとって、いや私にとって、リスクをとってリターンを得ることができたというのは、全くもって素晴らしいことなのだ。まぁリスクになることなど微塵も感じてはいなかったからこその特別授業なのだがね。それに、もしも君がなにも思いつかず、時間にして45分程度たってもお通夜状態であれば、私が君の代わりをするつもりだったがね」

 

 

 そういって、彼女は自身の白衣のポケットから放課後総武高校の職員室で我に渡したのと同じ『クッキーの小袋』を取り出す。我がこのとんでもない事実に唖然としていると「ただ舞台が整っただけだ」なんて快活に笑っていた。

 

 どこまでが偶然でどこからが故意的かはわからないが、おそらくこの人はその時がくれば動けるように常に準備しているに違いない。

 

 我がそれを指摘すると「助けを求める者には手を差し伸べる、ただそれだけのことだよ・・・もう少し手を伸ばして欲しい者たちもいるのだがね」と返してきた。最後の言葉はとても微かだったのでよく聞き取れなかったが。

 

 

「なんという女史だ・・・ふん。女史の思惑はもう見切ったから何も言わぬ。だから、我の言葉も好きに解釈するが良い。だが我も、おそらく彼女も、お主のしたことを全面的に肯定できないことだけは伝えておかねばなるまい・・・結果だけみれば感謝しないこともないが」

 

「ふ。そうか。君も大概ひねくれているのだな」

 

 

 平塚女史は少々罰が悪そうではあったが、それでもどことなく嬉しそうではあった。

 

 

「それでどうだ?私の問いの答えを君は見つけたか?」

 

「・・・時間制限を超えてしまったから答える必要はないのでは?」

 

「なんのことだそれは。忘れたな。それよりも。彼女と出会って君は何を感じた。君は君自身の進むべき道についてなにか感じたのではないか?なんなら私が改めて相談に乗ってやらんでもないぞ」

 

 

 ふん。ニヤニヤと見透かしたような態度が締まらぬな。お主の策略にこれ以上乗せられるわけにはいかぬ。

 

 

「ご助言痛みいる!平塚女史よ。だが、その答えを出すは、我、剣豪将軍義輝しかおらぬ。他者に諭されたから選ぶのではない。たしかに今はまだはっきりせぬが、必ずや己の信念に違わぬ道を進んでみせる!!」

 

「・・・くくくはははは!いい感じじゃないか。そうだ。君の思うようにしたらいい。どうやら私と君はやっと最初のハードルを越えることができたようだ」

 

「ん?して、最初のハードルとは?」

 

「本当に気づいていないのか?さっきからの私たちの状態だよ。誰の目からも、私たちは『会話』しているじゃないか」

 

「あ・・・」

 

「たしかにある人からすれば、その言葉遣いでは退行じゃないかと言いたくなるだろう。だが、私と初めて会った頃の君は、私の言葉に対して、なにも言葉を返せなかった。君をよく見ていればどういう言葉でどういう順序で文章をつくろうか、どんな文章なら嫌われないか悩んでいるのは一目瞭然だったがね。しばらくそんな状態が続いていたが、最近になってやっと時間を置かずに詰まりながらも言葉を返してくれるようになった。そして、今、この瞬間、例え中二病という仮面を被りながらでも、私と自然に会話ができている。この事実をどう解釈するかね、材木座義輝」

 

「あ、あの・・・」

 

 

 言葉にならない感情に支配される僕、いや我を尻目に、平塚女史は続ける。

 

 

「少なくとも私にとっては、こんなにも嬉しいことはこれまでにそうそう何度もない。君は少しずつ成長しているんだ。確実に。それに今日、君は君だけの仮面を私の前で、彼女の前で使うことができた。仮面だからなんだ。それがどうした。世間一般のいう普通が、素のままが難しいのなら、自分が持っている別の何かを使えばいいじゃないか。それだって自分を表現する立派な手段の一つだろう?そもそも誰もが大なり小なり仮面を被っているものだ。それが君の場合、多少奇抜なだけじゃないか」

 

「でも、あ、あの言葉遣いでは、ひ、平塚先生以外には相手にされないんじゃ・・・」

 

「それはそうだろう」

 

「え」

 

 

 あっさりと否定する平塚女史。

 

 

「君の、君たちの仮面は少し・・・いやかなり独特だ。これでは世間というこの社会の枠組みの中で、異端児扱いされるに決まっているだろう。彼女の場合は、一時的ではあるのだが、それを活かすための場所を求めることができたが、それはもはや奇跡、ウルトラCだったと言っていい。この際だから率直に言わせてもらうが、君にはあの方法はとれない」

 

「・・・じゃあ「それでも!それでもだ。材木座」・・・」

 

「大丈夫だ。本質的にいって、仮面を使わざるをえない者にとって、偽物か本物かは重要ではない。その使い方が重要なんだ・・・こびりついてしまって足掻くことを止めた者もいるがね 」

 

「・・・本質」

 

「そうだ。本質だ。人によっては本物というかもしれない。呼び方はどうだっていいが、その大事なものを君は今日手に入れたと、私はそう確信している。君にとってまだそれは実感の沸かない微かなものだとしてもね」

 

「・・・たしかに、僕・・・我は『この姿』を今日あなた達に見せることの抵抗を失くすことができた。それについては感謝している。もしかしたら自分の本質の部分に触れられたのかもしれない。だが、さっきの話では、このまま他の者に対する抵抗が無くなっていったとしても、結局この状態で接していては、下手をしなくても前より余計こじれてしまうではないか!!・・・それが怖いから、われ・・・僕は!!」

 

 

 そこまで一気にまくし立てて、言葉を区切る。いや自分の内側から溢れるなにかが言葉を詰まらせた。瞳を閉じて、ただ静かに、我の言葉を聞いていた平塚女史は、煙草をエチケットケースに仕舞いながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 

「私の話はまだ終わっていない」

 

 

 エチケットケースを白衣の内ポケットにいれながら、彼女は話を再開する。

 

 

「今までの経験で君もわかっているのだろう?その仮面のままでは世間がなかなか受け入れてくれないことを」

 

「・・・」

 

「私がさっき、最初のハードルと言ったのを覚えているか?」

 

「・・・はい」

 

「つまり、まだ君にはクリアしないといけないハードルがたくさんあるんだ。一体誰が、仮面は一つでないといけないと言った?もしくは同じ仮面であり続けないといけないと言った?大事なのはこれまでの君が捉えている常識の枠の中で生きることじゃない。今どうするかで、将来どうしたいかなんだよ。それだけで君の生き方は大きく変わる。私は君の指導的立場の人間としてその仮面の見せ方を一緒に考えよう。それは君だけの人との接し方になるだろう。簡単なところでは目上の者と同級生に対しての言葉の選び方になるかもしれない。だが、君が伝えたいことは君が伝えようとしない限り、他の誰にも、私にもわからない。だから、これからは君がどうしたいかだ。それによって私の指導は刻々と変わるだろう。私は君の進むべき道を強制することはない。ただ君が進みたい道の歩き方を教えることはできる。いや教えるというには私も経験不足で力不足だ。だから、一緒に考えさせてくれないか。これはとてもとても長い道のりかもしれないし、あっさりと解決するかもしれない。だがそれは君次第だ・・・もうここまで言えば、理解したんじゃないかね、材木座?」

 

「・・・」

 

「・・・沈黙は肯定と受け取ろう。それにあまり深く考えることもないさ。時間が解決してくれることもある。いつの間にか、世間の言う普通の喋り方で接することができるようになるかもしれない。だがそれまでは、仮面を使いながら、隠れながらでもいいが、自分の想いを伝えるようにすればいい。それに、この世の他者の全てが、剥き出しの君を否定することはない。断言しよう。その証拠に、今日、君と出会ったあの少女は、君と極めて近い存在なのではないか?だからこそ、彼女は君を受け入れ、君は彼女を受け入れたのではないのか?少なくともあの場にいた第三者である私の目にはそう写っていた。それに私も君を否定しようとは思ったことなど一度もない。信じてもらえるかは君の判断に委ねるが、こう考えれば、ほら?もう君には2人も、剥き出しの君を否定しない人間がいるじゃないか。これは、君が他人に受け入れられないことはないことの、なによりの証拠になるのではないか。私が思うに、君の本質は、きっと、そこにこそあるんだと思うのだがね」

 

 

 彼女の口から紡がれた言葉の一つ一つが我の心を覆っていたなにかを、少しずつ少しずつ、ゆっくりと溶かしていくのを感じていた。我は言葉を探していた。今、我が最も求めているものはなにかと。

 

 

「・・・平塚女史よ。一つだけ聞きたい。こんな我でも・・・それを、いつか見つけることはできるだろうか」

 

「歩みを止めない者に見つけられない道理などないさ」

 

 

 我は先ほどからの平塚女史の言葉を頭の中で繰り返し思い返す。それと同時にこれまでの彼女との訓練も思い返す。そうか。今我が最も伝えたいことは、これだけははっきりと思い浮かべることができた。

 

 

「・・・平塚先生。これまでどうもありがとうございました・・・そして、これからも、ご指導よろしくお願いします」

 

 

 頭を下げながらだったのでちょっと呟き気味になってしまった。でも言葉が聞こえなかったことはないだろう。そう思いながらも、反応がないことに戸惑い、チラッと平塚女史を伺う。ん?どうしたというのだ。平塚女史のこんなに驚く顔を見たことなどこれまでなかったぞ。もしかすると我の言葉の真意がうまく伝わらなかったのかもしれぬ。なかなかに難しいものだな。

 

 だが、少々照れ臭いのでこのまま家の中に入ってしまおう。もし次会ったときにまた聞かれたら「これはしたり!」とでも言ってごまかそう。そうしよう。そそくさと頭を垂れたまま自宅の中に引っ込んだ我の耳には、平塚女史の口から零れた言葉が届くことはなかった。

 

 

「・・・まったく。本当にこの学校の生徒達は面白い。なぁ?・・・陽乃」

 

 

 

 帰宅後、心身の疲れを癒すべくヘブンズバスユニットを満喫し、その流れで夕食を済ませた我は自室に戻り、ベッドの上で今日の出来事を振り返る。

 

 自分のことはとりあえず置いておいて(いやだってさっきまでの会話を振り返るなんで恥ずかしくて死んでしまうではないか!)、とりあえずあの子の力になれてよかった。いやこれはあくまで我の自己満足、か。これが迷惑とか自己満足などではなく、本当に彼女の役に立っていたらいいなとは思う。

 

 もしや八幡はいつもこんなことを考えてあの部の活動をしているのか?そんなことはないか。いやでも・・・こんなことをグルグルと考えていたら、足早に時間は過ぎていった。

 

 おっと。いつもの日課を忘れるところだった・・・ふむん?そうかあの時計は少し遅れているから・・・!?もう番組は始まっておるではないか!我は慌ててベッドの脇に置いているミニコンポの電源をいれる。

 

 人と接することが苦手な我は、小説を書いていない時は歴史書や漫画を読むことが多いのだが、実はそれと同じくらいラジオを聞くことも多い。しかもお気に入りの番組が決まっていて、なるべく欠かさず聞くようにしているのだ。

 

 お目当ての番組の周波数に合わせると、恒例のゲスト紹介がちょうど終わるところだった。よしよし。これならラジオの内容を聞き逃すことはなさそうだな。

 

 

『今日のゲストは神崎蘭子ちゃんでーす!今大注目の私の可愛い後輩です。たしか先月デビューしたばっかりなんですよね。これからが楽しみです!・・・可愛い後輩を可愛がる・・・うふふ』

 

『ここちの良い夜ね。今宵ここに降臨せしは我が名を汝らの魂に刻み込まんがため!我が崇高なる使命を果たすため、我が闇の力今ここに解放せん!」

 

『うふふ。相変わらず、一生懸命で可愛いですね。今日はそんなあなたの魅力をリスナーの皆さんにお伝えできればと思います。よろしくね』

 

『我が名を知らしめんとする異種の瞳を持つ天の者よ感謝致す。さぁ、人に生まれし者どもよ、慄き、そして平伏すがいい!!汝らを我が覇道の礎とせん!!今こそ降臨の時!! 皆の者しかと括目せよ!』

 

『ラジオなのに括目とはこれいかに。いかにも!・・・うふふ』

 

 

 なんという中二病の濃い人物だ。あぁそっか先ほど出会った謎の堕天使が崇拝しているあのアイドルではないか。同じ瞳を持つものか。ぬ!?いかん!!

 

 我は中二病であれど、このままではまた新たな扉を開いてしまう!!・・・よし。落ちついてきたぞ・・・

 

 ふむふむ。なるほど。したり。相変わらずこの番組のパーソナリティの言葉選びは独特の空気があるな。勉強になった。今度八幡に使ってみよう。いや、やっぱり恥ずかしいので実際に奴を前にして言えるかはわからないが。

 

 それにしても、こんなオヤジギャグを生み出しているのが見目麗しいトップアイドルの一人というのだから世界は広い。卵が先か鶏が先かではないが、彼女は彼女の舞台に立って自分をうまく表現できているのではないだろうか。

 

 まあ、あそこまで流れるように出てくるのだから、彼女の本質の一面が顔を出しているのであって、少なくとも偽りの仮面でというわけではないだろうなどと考えていると、漠然とではあるが、今日の放課後、平塚女史に言われた言葉が浮かんでくる「仮面を使わざるをえない者にとって、偽物か本物かは重要ではない。その使い方が重要なんだ」なるほど。この言葉は今日の出来事を経験した今ならしっくりくる。

 

 ただ、続けて零していた「・・・こびりついてしまって足掻くことを止めた者もいるがね」という言葉はよくわからぬ。いつかわかる日が来るとも思えんが。おっといかんいかんうっかりラジオを聞き逃しておった。ポッドキャストの配信はあっただろうか?

 

 

『・・・まぁ!じゃあ私も今度バルサミコ酢使ってみようかしら・・・あら?もう時間?もう少し伸ばせないの?プロデューサー。どうしてもダメですか?・・・そんなんでファンが減らんかふあんになんでん・・・ちょっといまいちかしらね・・・さーて皆さん!そろそろお別れの時間が近づいているようです。では最後の質問に移りたいのですが、いいですか?』

 

『よきにはからえ!』

 

『いいお返事ですね。それでは最後の質問メールです。これはゲストさんへの質問ですね。・・・「これまでに恋した経験はありますか?」ですって。とても興味深い質問ですね。蘭子ちゃん、どうでげすと?・・・うふふ』

 

『へ?こ、こ、ここここ!?』

 

『焦っちゃって可愛いですね。そうです。恋バナの恋ですよ!・・・濃い鯉コクは恋しくて来い!・・・うふふ。あ、すいません。ちょっと脱線しすぎました。えーと、どうですか?恋した経験ありますか?まだ早いですかね』

 

『・・・恋、くらい、したこと・・・あるもん』

 

『まぁ!これは女子トークの始まりですね!少し突っ込んで聞かせて欲しいんだけど、あなたのお眼鏡に適った男性は一体どんな方、だった、のかしら?』

 

『ふぇ?えーと、その、たしか、けん・・・こほん!・・・我と同じく瞳を持つ者!彼の者はかつて失われしグリモワールの秘宝の鍵を継承せし・・・』

 

 

具体的かと思いきや非常に抽象的。これなら誰にもわかることはないだろう。いや、きっとこういう話題はこんな感じにならざるをえないであろうがな。

 

 

『ふむふむなるほど。つまり父親ってことかしらね。初々しいわね。・・・うふふ・・・そうなの?なるほどねぇ・・・あら?もうこんな時間!いけない!盛り上がりすぎてEDをかけるの忘れてたわ。あの、急いで曲紹介お願いしていいかしら?・・・ほら』

 

『へ?あ、は、はい。えーと、わ、我が生誕の儀に奏でし旋律を聞くがよい・・・今こそ魂を共鳴させるとき!!・・・あ曲名』

 

 

 ふーむ。段取りに問題があったようだな。曲紹介中にいきなり曲がかかりだしたぞ。というか『あ曲名』って聞こえたような。まあよいか。これは最近よく耳にする曲だから言い忘れても問題ないであろう。我でも知っているくらいだからな。

 

 それにしてもなかなか初心な反応をみせるではないか。これでは世のロリコン紳士が黙っていないぞ・・・あ、やっぱり掲示板でスレが乱立しておるな。ふむふむ・・・なるほどしたり!・・・いやいや・・・

 

 こうして我の夜は今日もブラウザのスクロール量とともに深まっていく。そのため、この夜、コートのポケットに突っ込んだままのスマホを開くことはなかった。

 

 

 自分のために補足しておくが、我がケータイを見るのは一日の内でほとんどない。下手すると2日になることもある。数回あれば多い方だ。だって誰かから連絡があることはまずないし。

 

 それに日中は小説を書くことで忙しいのだ。だから、我が今日出会った謎の堕天使からの密書に気付いたのは、奉仕部へ批評の依頼を出した翌日、奉仕部の皆による我が小説への酷評を受けてノックアウトされながらも、一緒に下校した八幡に格好つけて自分の心の内を曝け出した後(照れ臭くて我が見えなくなるよに反射的に結界を張ってしまったが)、学校を後にしながらコートの中に手を突っ込んだ時だった。

 

 

 

謎の堕天使『喜ぶがいい剣豪将軍よ!我が友を昼下がりの晩餐会へ招待しよう!かくいう我も世界の終焉を迎えるにあたり、世の理の歴史を紐解くことになった。そなたの持つ聖典に関する知識の源泉について我とともに悠久の旅路に参らん!くくく。汝の拒否権など存在せぬ。心してそのときを待つがいい!しかし汝には汝の使命があり、我も汝の自由を全て奪うのは本意ではない。そこで我が報が届きし折、汝の予言書にて示されし天命を我に示すがよい。何人もこれに触れることなどできぬ。これは神の定めしこと。忘れるでないぞ!』

 

謎の堕天使『どうしたというのだ。報せの無きは無事の報せと現世では言うらしいが、我と汝の絆はまだ復活の儀を取りはからったばかり!現世に繋ぎとめるため、今一度強固な契りを交わさん!』

 

(中略)

 

謎の堕天使『あの、迷惑だったら、ごめんなさい。でも、あなたとはもう少し、お話ししたいなって思って。もしよければ返事もらえますか。待っています』

 

謎の堕天使『連絡ほしいです・・・』

 

謎の堕天使『・・・せめて読んで欲しいです』

 

 

 

 ここまで目を通した我は、これまでにないスピードで返事を作成し始めた。謝罪に始まり返事が遅れた理由をつらつらと打ち込んでいく。だがしかし、夢中ですっかり忘れておったのだが、昨日スマホの充電をしていなかったため、途中で電源が落ちてしまい、彼女のトークに対してただただ平謝りだけの返事が出来たのはそれから数時間後のことだった。いかにもしまらない。だが、これがいかにも我らしいと思ってしまうのはただの自惚れかもしれない。

 

 





「ふむ。思い返してみると、あの堕天使に出会えたおかげで、奉仕部の面々の酷評に耐えられたということかもしれぬな。他者と相容れぬ存在である我が、他者であるかの者のお陰で己の道を決められたということか・・・ふーははははは!これは愉快愉快!我の・・・え?ちょ、待つのだ!八幡!いっ痛!なぜガチで殴りかかってくるのだ!・・・なに?この回想に出てくるのは誰だまったく回想になっていなくて呆れ果てるぞそもそもとして勝手に他人の小説をパクってくるんじゃない、だと?・・・ぐふふふふ・・・面白いことを言うではないか。我が相棒にして最大のライバル、比企谷八幡よ!!だが!!ここに記したことこそ事実であり真実!!我の心の内を詳らかにさらけ出すのは多少恥ずかしくもあるが、これによって我は次の・・・あ、ちょ、ちょっと待たれい!!それはもしかしなくても我の・・・いつの間にお主の手に渡ったのだ・・・まぁ別に見られたところで困るものなど・・・ん?どうしたというのだ?いきなり黙るとはらしくないぞ八幡・・・え?この会話アプリに表示されている『謎の堕天使』とのトークについて説明しろ?・・・あの、その・・・嫌だといったら?・・・え、そ、それは困る!いったい我がなにをしたというのだ!?ええぇ!?警察に通報するとか我を社会的に抹殺する気か!?・・・ん?どうしたのだ?・・・!?謎の堕天使から着信だと!?す、すすすまぬが、そのスマホ、早く返してはくれないか?ちょっと、まって、まってってば!いきなり走りだすでない!!返してよはちえもーーーん!!!・・・・・・・・・・失礼するぞ。材木座がここにいると聞いてきたのだが・・・ん?誰もいないのか。鍵もかけないで不用心だな・・・ん?なんだこの原稿の束は。どれどれ・・・ふむ・・・ほう?・・・どうやら私の指導もなかなかどうして捨てたものではなかったようだな・・・材木座も素直でないな。直接言ってくれればいいものを・・・おや?まだ続きがあるのか・・・ふむ・・・ほう・・・・・・ほーーーう?・・・なん・・・まぁいい・・・・・・・・・んな!ぼあっ!??ば、ばかな・・・・・・いかん!これはすぐに材木座を捕まえる必要がある!!まずはこの内容の真偽を確かめ、場合によっては緊急に生活指導をしなければならない。このままでは妄想と現実の区別が・・・・・・ん?・・・いや・・・待てよ。もし・・・もしも・・・いや万が一にもこの最後に書かれた部分が事実だったら・・・・・・・・・・もうやだ・・・ぐすん」


平塚女史、落ちに使ってごめんなさい。
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