「龍之介。今日は一日休息に当てるぞ。」
少女を教会に預け、適当なホテルで睡眠を取ったあと龍之介は起き抜けにそう言われた。
彼女は白いワンピースをまとい、髪を解いて背中に流していた。
その姿は昨日までの彼女と印象が違い過ぎて人目では同一人物と断じることが出来ないほどだった。
「ん~。姐さん。その服はどうしたのさ。」
「お前が寝ている間に盗ってきた。暇だったのでな。」
もし、雨生龍之介が普通の感性を持っていれば。
ここで驚愕なり嫌悪なりの反応を見せただろうが。
「へー。やっぱり、姐さんは白が似合うね。」
道徳や倫理観が破綻している彼にそれを求めるのは酷だろう。
さらりとこんなことが言える当たりは人当たりの良い青年なのだが
「
訂正しよう。
彼はどうしようもない破綻者である。
「お前の頭の中はどうしようもないな。尤もそうでなくてはつまらないが。」
「安心してよ。姐さんをどうにかしようって気は無いから。」
「ふむ。どこか引っかかる物言いだな。これでも歌手として一世を風靡した事もあるからな。人間の美的センスからそう外れて無い筈だが」
そう言って器用に片眉だけを上げ、目を細める。
その視線を受けた龍之介は苦笑した。
「いやいや。姐さんに魅力が無いって訳じゃないよ。」
「ではどういう訳だ?」
「う~ん。姐さんの事は好きだけど、人じゃないから殺す気にはならないって感じかな?」
その率直な言葉に彼女は一瞬呆けたような表情を見せる。
しかし、その表情は瞬きの内にあきれたといわんばかりの表情へと変わる。
「お前は種の保存という生物の本能に全力で反逆しているな。」
「本能を理性で押さえ込んでこその人間っしょ。」
その笑顔を伴った返答には溜め息を吐き、頭に片手を当てる。
「……言葉としては合ってはいるが使い方は間違っているな。」
「そう?」
彼女はその返答にこれ見よがしにもう一度大きな溜め息を吐いた。