白夢さんが聖杯戦争にinしました   作:BOX

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3.脱落

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルドは歯噛みしていた。

 何故なら、己が労力を用いずにサーヴァントが一体脱落するかと思った時にそれを自身のサーヴァントがくい止めたからだ。

 

(使い魔風情が、騎士道など聞いて呆れるわ)

 

 そもそも、彼はランサーを信用などしていなかった。

 伝説と同じくその魔貌を持って、主君の婚約者をたぶらかすような男だ。

 そんな男が語る綺麗事など信じられる訳が無い。

 確実にセイバーを屠るために切り札を切ることを決める。

 そして、右手を掲げ、命令を飛ばそうとした時。

 

「……ガッ!」

 

 腹部に灼熱を感じた。

 喉に込み上げる吐き気をこらえ、視線を下に向ける。

 するとそこには血に濡れてもなお、穢れを感じさせない白い刃が突き刺さっているのが見えた。 

 彼は最後の気力を振り絞り、下手人の顔を見てやろうと後ろを振り向く。

 そこには――真っ赤な口があった。

   ・

   ・

   ・

(主はどうしたのだろうか?)

 

 ランサーは拠点である冬木ハイアット・ホテルの最上階に帰還の途についていた。

 セイバーとの戦闘中にいきなり言葉が途切れた。

 何かあったのかとランサーは考えたが、令呪の繋がりは健在であった。

 更にその繋がりから拠点に向けて移動を始めたことを感じ取ったのでそのままセイバーと共にバーサーカーを追い返した。

 

(おそらく、私に呆れ果て、戻って仕舞われたのだろう)

 

 主は魔術師だ。

 騎士道が理解されなくても致し方無いのかもしれない。

 ランサーはそう感じてた。

 

(しかし……)

 

 しかし、この忠義だけは何ら曇りないものだとわかって貰いたい。

 戻ったら改めて伝えなくてはいけない。

 ランサーは霊体のままホテルへと入っていった。

 

「主。今、戻り……っ!」

 

 ホテルの最上階で実体化した時、生前に嗅ぎ慣れた匂いがランサーの鼻を突いた。

 そう、血の匂いが。

 

「主!」

 

 令呪のラインはまだ部屋の中から感じる。

 二槍を実体化させ、駆けだしていた。

 そして、角を曲がった。

 そこには白い少女が座っていた。

 その少女はイスに座り、優雅にワインを飲んでいる。

 いや、それよりも彼女の目の前のテーブルの上に置いてあるものは、

 

「主……?そして、ソラ……ウ殿?」

 

 そこにあったのは自身の主とその婚約者の姿だった。

 疑問形なのは当然だ。

 その姿には――首から下が無いのだから。

 

「うおおおおおお!!!」

 

 瞬きの間に少女との距離を詰める。

 そして、槍がその身を貫こうとした瞬間。

 

「私が話し終えるまで膝をつき、頭を垂れていろ。ランサー」

 

 ランサーの意思に反して膝が落ちる。

 頭が重い。

 手を床に着いてしまい、少女に槍を遠くに蹴り飛ばされる。

 しかし、その意識は騎士の魂である武器へのぞんざいな扱いよりも何よりも。

 

「何故だ!何故、貴様が令呪を持っている!」

 

 その右手に刻まれた令呪の存在に向けられていた。

 

「単純な話だ。お前のマスターであるストックをネブレイド。捕食させて貰っただけだ」

「なん……だと……!?」

「ああ、それでお前に聞いてみたい事が有ったんだ」

 

 どうやら少女は詳しい説明をする気はないようだ。

 ランサーは令呪へのせめてもの抵抗と口をつぐんだ。

 

「だんまりか?まあ、構わんがな。」

 

 粘着質な音が響く。

 少女はテーブルに置いてあった頭部を持ち上げた。

 

「では、質問だ。お前は何故、このストックを主と仰いでいたのだ?」

「……何を言っている?私はサーヴァントであり、我が主はマスターだぞ」

 

 ランサーはその言葉に思わず反応してしまう。

 

「私はおかしなことを言ったつもりは無いぞ。もしも、お前が聖杯を欲しているならばわかる」

「そんなものに興味は無い。俺は生前に貫けなかった忠義を全うしたいだけだ」

「それはおかしいな」

 

 ランサーには少女が何を言いたいのか理解出来なかった。

 いや、理解したくなかった。

 

「私は上に立つ者だった。それは他の奴らを纏める力があったからだ。」

「だから、何だ?」

「上に立つ者には相応の何かが必要だということだ。このストックの力はそこらのストックの上に立つ分には問題無い。しかし、サーヴァントが主と仰ぐほどの何かは持っていないように思える。故にもう一度問おう」

 

 ――お前は何故このストックを主と仰いだのだ?

 その言葉はランサーの深い所に突き刺さった。

 

「俺は……っ!」

 

 自分は別に誰でも良かったのでは無いか?

 忠義を捧げる誰かがいれば。

 相手の人格などに関係なく。

 

「ああ、答えなくて良いぞ。あとの楽しみだ。次はこちらか。」

 

 目の前の彼女がそういうとさっきと同じ音が二度響いた。

 

「こっちのストックは面白かったな。途中までは酷く単調だ。しかし、お前に会ってからはお前一色だ。それこそ死ぬまでな。」

「それは……。」

「その通りだ。お前の黒子のせいだな。しかし、お前らは本当に面白いな。それぞれが求める者には拒絶され、無関心だったり、嫌っている者に好意を向けられているのだから。ふふッ]

 

「貴様ーーー!!!」

 

 ランサーの心は怒りで染め上げられた。

 その怒りには死者への冒涜に対するものもある。

 しかし、本人は気づかないようにしているが、実質は自身の心を土足で踏み荒らされたからだった。

 自身の見たくなかった面を正面から叩き付けられたからだった。

 

「ああ、そして、これが話の最後だ。私の糧となれ、ランサー」

(何故、何故だ。俺は、俺はーーーっ!)

 

 ゴトン!

 

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