「姐さ~ん。お食事はどうだった。」
「ああ、サーヴァント以外も中々に楽しめたな。」
夜の繁華街を連れ立って歩きながら話し合う二人。
その姿は見目麗しい年若いカップルにしか見えなかった
そんな二人が指名手配中の連続殺人犯といくつもの星を滅ぼし、ついさっきも二人の人命を奪った
「それでこの後はどうするの?俺としては今回の成果を聞きたいんだけど?」
龍之介はそう言って、瞳を輝かせる。
その姿は、親に絵本の読み聞かせを願う子供のようだった。
「悪いがそうもいかんな。」
しかし、インベーダーはバッサリとそれを断った。
「え~。じゃあ何やんのさ~。」
龍之介は明らかに落胆した様子で半ば投げやりに言葉を返した。
歩くスピードも心なしか落ちる。
「孫子曰く、兵は拙速なるをきくも未だ功遅なるを聞かず。」
「???つまり、どういうこと?」
「今夜中にもう一体。サーヴァントを頂く。」
それを聞いた龍之介は一転して瞳を輝かせた。
少し小走りになりインベーダーに並ぶ。
「マジで!いつの間に居場所調べたの?」
「幸いなことにランサーのマスターだったストックが三つ程知っていたのでな。」
「やっぱ、便利だね。そのネブレイドって。それでどこ狙うの?」
龍之介がそう言うとインベーダーは僅かに眉を顰めた。
その表情はインベーダーには珍しく酷く苦々しげだ。
「間桐邸。衰退し続ける魔導の家だ。未だに他のサーヴァントと正面からやり合うには力が足りないからな。」
インベーダーとしては歯がゆくてしょうがないのだろう。
生前はそれこそ向かう所、敵無しだったのだ。
なのに今ではサーヴァント一体倒すのに策を弄さなければならないのだから。
「……ねえ、姐さん?」
「?何だ。」
「今度は俺も付いて行って良い?」
「……馬鹿か?」
インベーダーの口から呆れが多分に含まれた声が思わずといった感じで零れ落ちた。
さらに頭が痛いといわんばかりに眉間に手が当てられる。
「いいか?マスターはサーヴァントにとってアキレス腱だ。お前が魔術師なら少しは考えたが、魔術も使えんお前を連れて行ったら私が相手のサーヴァントの相手をしているうちに貴様が敵マスターに殺されかねん。」
「それでも、こんなCoolな事を近くで見られないなんて辛すぎるよ。」
そう言った龍之介の顔は歪み、今にも泣きだしそうだった。
その顔は所謂、母性本能をくすぐるといった枕詞が付きそうな表情だった。
インベーダーにそんなものは通用しないが少し考え込む。
(自身の何よりも好奇心を優先する。そのあり方は好ましいのだがな。)
しばらく沈黙した後、インベーダーは何かを龍之介に投げ渡した。
竜之介はそれを危なげ無く受け取る。
それは形状的に鞘におさめられたナイフのように見えた。
早速、それを鞘から引き抜く。
それは白を基本とし、赤い両刃を持つダガーだった。
「姐さん。これって?」
「それなら例えサーヴァント相手でも多少は使えるだろう。」
そのダガーはたった今彼女が作った物だった。
もう少し大きなものになると時間も力も多大に使うがこの程度のモノなら問題なく生み出せた。
インベーダーとしては多少の友愛を込めたモノだったのだが。
「姐さん。」
「ん?」
「出来たらメスの方が良いんだけど……駄目?」
両手を顔の前で合わせ、片目を瞑り、小首を傾げる。
年齢と性別を考慮しなければ可愛らしいそれを受けたインベーダーの反応は。
(ニッコリ。)
「痛い!痛いよ、姐さん!徐々に力を込めないで……アッーーー!」
さらに三本メス型のものが進呈された。
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「さて、辿り着いたな。」
龍之介を甚振りながら歩き続けて間桐の家の前に辿り着いた。
それは、洋風の広い屋敷だった。
「うっひゃー。何ていうか、感じが出捲ってるね。」
龍之介の言うとおり、手入れを放置された庭の木には葉が無く。
地面も枯草が覆っている。
そして、何よりも。
「成る程、人払いの結界か。」
あのランサーのマスターであったストックの知識から恐怖感を煽り、その土地を忌避させるものだとわかる。
尤も、恐怖を親の腹に忘れてきたようなこの男とサーヴァントたる自身には何ら影響を与えるモノでは無かったが。
「それでは行くぞ?龍之介。」
「あいあいさー。」
間桐の土地に足を踏み入れたその瞬間、結界が中の主に侵入者の存在を知らせようとして、――粉々に砕け散った。
それに反応した魔術的な罠が愚かな侵入者たちに食らいつこうするが、ホワイトサイズによって切り払われる。
――侵略。
イレギュラークラスたる彼女、インベーダーに与えられたクラス別スキルだ。
星々を侵略して回ったが故に与えられたこのスキルは結界、トラップ等の防衛機能を粉砕する。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの工房もこのスキルにより容易く蹂躙された。
このスキルに対抗するのならば、それこそキャスターの作り上げた神殿でも無ければ足止めすることすら不可能だろう。
そして、彼女は知る由もないが今回の聖杯戦争に置いてはキャスターのサーヴァントが存在しない。
故に一般家庭に潜伏するライダー陣営以外にとって、彼女は死神に等しかった。
何と言っても、彼女を退けた所で防衛機能は壊滅しているのだ。
当然、他の陣営に再度襲撃を受けるに決まっているのだから。
そうして、玄関まで辿り着く。
その間、龍之介は鬱陶しいほどに騒いでいた。
「すっげー!姐さんの目を通して見た戦いも凄かったけど、こっちの方が魔法って感じがするじゃん!」
「もう少し進めば。ここの奴らの宝具も見れるだろうな。」
適当に返して、玄関の扉を両断する。
そして、中に入るとパーカーを着て、フードで顔を隠した男が立っていた。
「……聖杯戦争の参加者だな?」
「むしろ、それ以外だとおもうか?」
軽く嗤いながら言葉を返す
そして、相手を観察する。
傾いだ身体に青白い肌、微かに漂う死臭。
――この男は間違いなく半死人だ。
「いや、一応聞いただけだ。」
「そうか。では、どうする?」
「――来い!バーサーカー!」
次の瞬間、壁から漆黒の鎧に包まれた腕が突き抜けてきた。
そして、壁に大穴を開けて、全身漆黒の鎧のサーヴァントが現れた。
「くっ……な!?」
その拳をホワイトサイズの柄で受ける。
拳を柄で受けると硬く握りしめられた拳が瞬時に開き、柄を掴んだ。
すると白一色だった筈の柄に漆黒の葉脈のようなモノが広がった。
それと同時に自身の一部に等しいホワイトサイズの制御系を侵されているという不快感が身体を襲う。
「姐さん!?」
「下がっていろ!」
龍之介にそう伝えた後に目の前のバーサーカーに膝を叩き込む。
そうして、身体が浮き上がった所でホワイトサイズを振り回し、遠心力をそのままに反対側の壁に叩き付ける。
その衝撃で手を放したバーサーカーは壁を突き抜けて転がる。
「プッシュ!」
転がったバーサーカーに対してホワイトサイズを振り下ろす。
しかし、それは受け止められ、そのまま押し返される。
「何だと!?」
自身の攻撃を退けたモノを見るとそれはこの部屋に置いてあったであろうただの木製の帽子掛けだった。
それにはさっき見た黒い葉脈のようなものが走っており、それを槍のように振るい突いてきた。
その攻撃をホワイトサイズで弾いていくがあまりにも鋭く正確な突きに柄で受けてしまう。
「■■■■■■■■■■■ーーー!」
「な!」
四つに別れた先がホワイトサイズを絡み取り、跳ね上げた。
手を跳ね上げられて無防備になった胴体に突きがせまってくる。
その突きに蹴りを合わせて後ろに飛んで距離を取る。
そして、落ちてきたホワイトサイズを受け止めて砲形態に変形させる。
「ハッ!」
幾つもの弾丸が目の前のバーサーカーに殺到する。
しかし、その全てをバーサーカーは打ち落とした。
「ハハ。同胞の中でもここまで手こずらせるものは少なかったぞ!」
砲を更に刀形態に変形させてバーサーカーに向かって距離を詰める。
バーサーカーはそれを薙ぎ払いで迎撃する。
それに合わせるように刀が振るいお互いの武器をかち合わせた。
そして、そのぶつかり合いは筋力、敏捷共に優るバーサーカーに軍配が上がり刀は大きく弾かれるが。
「レッドウィンド!」
その弾かれた勢いをそのままに瞬時に変形を済ませたホワイトサイズが首狩りの一撃を見舞う。
その一撃はスキルの後押しを受けて、さらに鋭さを増した。
しかし、それすら反応したバーサーカーが腕を盾にその一撃を防ごうとして――そこで動きが一瞬止まった。
そして、それは致命的な隙となりバーサーカーの首が飛んだ。