今日はおじさんが居て修行も無い日の筈だった。
しかし、突然静かな家の中に甲高い音が響き渡った。
何事かと部屋を出てみるとおじさんが階段を転がるように下りていた。
「あ……っ!」
何があったのかと声を掛けようとして
――背後に立つお爺様に気づいた。
「何、心配するでない。雁夜は侵入者の排除に向かっただけじゃ。」
肩に手を掛けられる。
身体が凍り付いて後ろを振り向くことが出来ない。
体が自然に震え始めて、歯の根が合わずにカチカチと音を立てた。
「カカカ。しかし、ただ待つのも暇じゃろう?――修行にするかの?」
お爺様の言葉に逆らうことなんて出来る筈が無かった。
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「う……あ」
どの位の時間が経っただろう?
地下室に降りた後。
しばらくは上から破壊音が響いていたが、それもしばらくすると治まった。
それでも修行は終わらなかった。
そうして、私はおじさんの最期を知った。
「馬鹿な人……お爺さまに、逆らうから」
せっかく外に居たのに戻ってきて、必死に修行に耐えてボロボロになって、その結果がコレだ。
私のように何も考えずに過ごしていれば良かったのに。
そんなことを徒然と考えていると擦れるような蟲の声しか聞こえない地下室に靴音が反響した。
思わず哂ってしまう。
お爺様に逆らう愚か者が他にも居たのかと。
その内に姿を現したのは白い髪に朱い瞳をした綺麗な女の人と茶髪の男の人だった。
「うっひゃー。なんかモロに悪の魔術師の地下室って感じだね。」
「悪などと私たちが言えた義理か?」
その人たちは私や蟲どころかお爺様すら居ないかのように振る舞っていた。
いや、気づかない筈が無い。
まるで道に転がっている小石に対するように一切の興味が無いだけなのだ。
「最近の若者は老人に対する敬意が足りんのう。」
背中に氷を入れられたようだ。
その淡々とした声が私は何よりも怖かった。
次の瞬間、部屋が蠢いた。
いや、部屋中を埋め尽くしていた蟲達が全てその二人に向かって行ったのだ。
私に群がって居た蟲達もそれに倣い向かっていく。
「
蟲の蠢く音の中でその声は綺麗に通った。
それが私の耳に届いた時には何本もの巨大な銀色の柱が二人を囲んでその姿を隠した。
「自分から挑んでおきながら持久戦か、いいじゃろう。」
その綺麗な銀色の柱を蟲が覆って行く。
そして、蟲が柱を覆い尽くした時に視界の端を白が掠めて、それを追って首を回すとお爺様の首が飛んでいた。