初作品ですがよろしくお願いします。
白く無機質な壁の会議室。
自分こと、七草 優《ななくさ ゆう》は作家人生の終わりを感じていた。
「……君さぁ……やる気あんの?」
自分を見据える冷たい編集長の目。
「でっでも、ホラ! これなんかオリジナリティがあって!」
慌てて原稿用紙を片手に弁明してみる。
「今時そんな小説どこにでも転がってんの。何なら君よりいい新人さん、いっぱいいるよ?」
「……はい」
叱られた男子中学生のごとく意気消沈する自分。
「異世界モノねぇ……うん、つまんないわ。君、才能無いんじゃないの?」
「……すみません……」
編集長が目に薄く笑みをたたえて言った。
顔は全く笑っていない。
「辞めたら? とは言わないけどさぁ……。次面白いの書けなかったら、解雇だから」
「……そ、そんな無茶な……!」
それは困る。
この仕事を解雇されたら、自分は食っていけなくなってしまう。
だが編集長は、この話は終わりとでも言うように立ち上がってしまった。
「ま、精々頑張ってね。我々としては、君がダメでも代わりはいくらでもいるってことだからさ」
そして「ガハハハ」と豪快な笑い声と共に部屋を出て行ってしまったのだった。
×××
「糞ッ!!」
雨の降る帰り道。
近くの電柱に思い切り蹴りを入れ、叫んだ。
足元には新しくできたばかりの原稿が、水に濡れ黒く変色している。
「糞ッ糞ッ糞ッ!」
叫びながら、黒くなってしまった原稿をひたすら足で踏みつけた。
通りすがりの人が何人か、驚いたようにこちらを振り返る。
傘も無いせいで全身ずぶ濡れだ。
今の自分はきっと、ただの変な人にしか見えないだろう。
だが、構うものか。
ひたすら泥にまみれた原稿をぐちゃぐちゃにしてから、自分はようやく動きを止めた。
……自信作だったのに。
自分の頭の中には先ほどの会話がぐるぐると渦巻いていた。
『代わりはいくらでもいるってことだからさ』
『君、才能無いんじゃないの?』
『今時そんな小説どこにでも転がってんの』
『解雇だから』
「……じゃあ……どうしろってんだよ……!」
思わず、雫が滴る頭を押さえて呻いた。
「俺には……これしか無いのに……」
小さくそう呟いてから、俺は何事も無かったかのようにその場から立ち去った。
もう、あの黒い原稿を見たくなかったからだ。
×××
少年が立ち去った後、血まみれの黒ずくめの女が、荒い息と共に一人ニヤリと微笑み言った。
「見つけた……私の眷属……もう……逃がしはしない……!」
そして、黒い原稿用紙を掴むと、それを手の中で消滅させた。
「上々……。今日は調子が良さそうだ……」