「やはり、魔物の回復は早いですねぇ」
私は少しの財産を使って買った島で優雅に休息を取っていた。
と言えれば良かっただろうに。
自分が買った島というのはあっている。
ニュージーランドから少し日本よりの所の島をひとつ買ってあるのだ。
違うのは休息ではないという所だろう。
この島は私の研究施設だ。
ロードのいる城に連れてきた私設部隊や研究員たちはここに就職している。
この島から薬の開発を行っているのだ。
現在の研究内容は魔物の身体構造の研究と月の石の研究だ。
月の石はこれからの戦いにも役に立つ。
一般人に使用しても効力を発揮するのが大きい。
光での摂取は効率が悪いためカプセル状にする研究も行っている。
魔物の身体構造は実に興味深い。
血液採取での結果もよくかわらない結果しかでない。
分からないのを突き詰めていく作業が楽しくて堪らない。
そんな私の同類たちをこの施設…いや、島に閉じ込め、日夜研究を行っているのだ。
できればファウード戦までには心の力を回復する手段が欲しい。
そしてファウードの回復液で更なる向上を目指す。
そして私の前にはデモルトがいる。
食事にと牛を数頭調理して渡したのだが、3日で完治するとはね。
身体構造が別の種の魔物だが、回復速度はだいたい同じなのが不思議だ。
その構造をヒトに移すことも可能な気がしてしまう。
人道的ではなさそうだがね。
「おい、クソ人間。おかわりだ」
「一応兼任とはいえ、パートナーなんですからクソ人間は辞めて貰いたいんですが…」
「確かにお前は俺を救った。しかし、俺に勝ったわけじゃねぇ。あの、クソ共もだ。一体一で勝ったわけじゃねぇ」
そういう感性ですか。
「意外ですね。狂戦士ではあると思いますが、戦闘狂ではないと思ったのですが…どこぞの戦闘民族の様な事を言うのですね」
「当然だ。弱いやつに従えば種が滅びる。当然だろぅ」
本当に狂戦士とは言えないほど頭の理解がいいですね。
まだベギルムEOの方が狂ってる感じしましたよ。
「だからエシュロスには従うのですね」
「………ああ」
不服そうですね。
魔本の力とはいえあそこまで惨敗すれば。
呪文として現れるだけでエシュロスの能力なのですからしょうがない気もしますがね。
3日で完治……ではなくて、この島に移動した時に4分の3ほど回復してたんですよ。
ですが島ごと暴れようとしたので病む無く鎮圧したのでした。
海に向かって撃ったので誰にもバレることなく撃つことが出来ましたよ。
上級呪文は隠しておきたいですからね。
そんなエシュロスですが、島の反対側でフライドチキンに舌づつみを打っております。
この島医学薬学以外にも様々な分野の研究をしているんですよ。
法の届かない無法地帯ですからね。
やばい生物が出来ても、魔物達で鎮圧してますからね。
今はバランスがあるんですよね。
「では、またやりますか?模擬戦。次勝ったら私にも従ってもらいます」
「流石に俺も学ぶぜ。わざわざ負ける戦いはしねぇ」
「大丈夫です。エシュロスは今邪魔すると怒りそうなので……別の本を使います」
そう言って私はカバンから緑の魔本を取り出した。
「俺やエシュロス以外にも魔物がいたのか」
「勝ちという事に置いてこの魔物以上に相応しい魔物を私は見たことないですよ。今はもっぱら植物学の研究員と共に栽培室にいると思いますが……まあ、呼べば来るでしょう」
私はかの魔物がいるであろう部署に連絡する。
「はい、私です。アレいるでしょう?こちらにお願いします。離れない?ガタガタぬかすとエックスで固定すると脅しなさい。……直ぐに来る?分かりました」
「…………」
「何か?」
「いや……」
しばらくすると山の方から何かが射出される。
それは叫び声を上げながらこちらに飛来する。
「ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィクトリイイイイイイィムウウウウウウゥ!!!!」
それは砂浜に突き刺さる。
「久しぶりだな、進一!華麗なるビクトリーム様だ!!!して、何用かな?」
「新人の教育ですね。お力をお見せ出来ますかね?華麗なるビクトリーム?」
「当然よ!この華麗なるビクトリーム様の力を見せてやろう」
「との事です」
「ビクトリームか……生きていたのか」
「お、お前はっ!デモルト!!
かの魔物はビクトリーム。
一発ネタでありながら最後までファンに愛された魔物だ。
何故かアルファベットのVの文字の形をしている。
しかもビクトリームとは……1000年ごとに戦争しているということはその世の偉人も関わっているのでは…?と歴史研究員が白熱していた。
デモルトも同じ1000年前の魔物という事もあり、既知の中の様だ。
「では、構えて下さい。始めますよ。『ギルガドム・バルスルク』!」
「その呪文は!?」
デモルトは驚きの声を上げる。
それもそのはず、この呪文はデモルトの枷を全て外す呪文。
「私は心の力を与え続けますので問題はありませんよ」
「そうか………ルオオオオオオオオオオオオオ!!!」
デモルトは咆哮と共にビクトリームに向かっていく。
「我が強さを右肩に!」
「『チャーグル』!『マグル・ヨーヨー』!!」
右肩の孔が光り輝く。
その光を保ったまま、ビクトリームの両手がヨーヨーの形になり、デモルトに変則的な軌道を描いて飛来する。
そしてその威力は…
「ぐぁっはぁ!!」
強化されているデモルトの鎧を切り裂いた。
呪文『チャーグル』は溜めるだけの呪文だ。
溜めた文を放つ呪文である『チャーグル・イミスドン』があり、最大で5溜められる。
『マグル・ヨーヨー』も両腕をヨーヨーに変化させるだけだ。ヨーヨーと言っても刃が着いていたりと普通のヨーヨーでは無いが、効力としては不規則な軌道による攻撃の避けづらさぐらいだ。
何故こんな威力がでるようになったか。
それは……
品種改良した夕張メロン食べてたら強くなってた。
しかも3日で。
思い当たる節があるとすれば育てる素材に我がチートである薬学、大地をブレンドし、月の石の光で育てた事くらいか。
なんか1日で育ってたから封印指定して保管しといたのに気づいたらV時に金庫が破られ、中にビクトリームがいたのでとりあえずボコボコにしといた。
出会いはもっとバッタリだったんだがな。
それはいつか語るとしよう。
落ちるデモルト。
「怒りのパワーを右腕に!」
「『チャーグル』!」
「誇り高き心を左肩に!」
「『チャーグル』!」
「我が美しさを左腕に!」
「『チャーグル』!」
「V華麗なる美しさを股間の紳士に!!」
「……『チャーグル』」
チャーグルのいい所はギアを上げるように時間をかける必要が無いこと。
ほぼ、言えば溜まるみたいなところがある。
その時にビクトリームがうるさいくらいか。
特訓の成果により順番やVの格好をせずともチャーグルが出来るようになった。
普段は別に止めていない。
迷惑にならないからな。
流石にやばい気配がしたのか下がるデモルト。
しかし、この呪文に距離は関係ない。
「我が頭部よ、分離せよ!我が体はVの字で待機せよ!」
「『ギガノ・マグルガ』!!」
Vの字で光線が発射される。
デモルトの翼をもぐ。
そして体制を崩しさえすれば当たる。
「『チャーグル・イミスドン』!!!」
溜めていたパワーを全て放出する光の本流。
海をVの字で割っていく。
海はモーセの様に割れていた。
デモルトには、当てていない。
当てたら殺してしまう。
そしてパートナーがいないとパワーだけあっても戦いずらいということを知って欲しかった。
その教訓として特に意味もなく溜めたチャーグルを放って海を割ったのだった。
結局のところデモルトは指示に従うようになった。
戦闘が好きなのではなく、勝つのが好きなことを理解し、結局私といると圧倒的な力が手に入ったのがでかかったようだ。
呪文が使えずともここで得た力が魔界に戻れば無視できない力になるだろうとのこと。
やっぱり、デモルトバーサーカーじゃないよ。
狂ってるのもっといるもの。
ビクトリームとか。