「それで、由良は夕立ちゃんのことどう思っているの?」
「可愛いと思うわよ。妹がもう一人増えた感じよね」
突然の私の質問にも、彼女はすまし顔で答える。
「えぇ、本当に?」
「他に何があるって言うのよ?」
「例えば、恋人とか」
「あなたと五月雨ちゃんみたいな?」
「いや、私達の事を引き合いに出さなくていいから……」
思わぬカウンターをくらって、私は自分の顔が赤くなるのを自覚する
「何よ。別に恥ずかしがることないじゃない。ちゃんと上手くいっているのでしょ?」
「はい」
「なら堂々としなさい。あなたの方が年上なのだから、ちゃんとリードしてあげないと、ね」
「仰る通りで……。って今はそのことは置いといて」
確かにその節は色々とお世話になりましたけど。話題にしたいのは、そのことではないのだ。
「私の目からすると、あなたたち凄くお似合いのカップルに見えるわよ」
「そうかしら?」
私の言葉にも、彼女は首をかしげるばかり。
「それに、今度一緒にデートにも行くんでしょ?」
「デートって、ただお買い物にいくだけよ。彼女のリボンを選んであげるだけ」
「他の予定は?」
「時間次第では、どこかでランチをするかもね」
「それだけ?」
「それだけ」
確かにそれは、デートと断言するにはちょっと足りないのかもしれない。
「だいたい、何であなたはそんなに私と夕立をくっつけたがるの?」
「まあ、いくつか理由はあるのだけど」
「言ってごらんなさい」
「さっきも言ったけど、由良と夕立ちゃんはすごく相性が良さそうに見えるのよ。それに、前回私が色々手伝ってもらったから、今度は私が何かできないかなと、思いまして」
「別にそんなこと気にしなくてもいいのに。私も楽しかったのだから」
由良が優しくこちらに微笑む。
そう。私夕張は現在、五月雨ことさみちゃんと正式にお付き合いしている。
私が彼女に告白したのだけど、その時、色恋沙汰に不慣れな私に色々アドバイスをくれたのが、他でもない由良なのだ。
もし彼女がいなかったら、私は今こんな幸せな生活を送っていなかっただろう。
だから、今度はこちらが恩返しをしたい。ちょっと押しつけがましいかもしれないけど、それが私の純粋な気持ちだった。
「まあ、気持ちは嬉しいのだけど。私にはまだ、その手のことは早いと思うわ」
「どうして?」
「エネルギーが足りないからかしらね」
そう言うと、彼女は視線を私から逸らす。
「私があの時夕張の告白を手伝ったのは、あなたが凄く輝いて見えたからよ。必死にもがいて、苦しそうで、でもそれでも前に進もうとしたあなたの姿に惹かれたから」
へー。あの時の私はそんな風に見えていたんだ。
自分では、なんて不格好なんだろうと思っていたのだけどね。
「その時思ったのよ。私はこんなに人を引き付ける程のエネルギーを持ったことが、今までないなって」
それは私も感じていた。
彼女には熱が足りないのだ。それは彼女の能力も関係している。
私から見て、由良は聡い子だと思う。物事全体を俯瞰的に見て、的確に事に当たることができる。
それは深海棲艦との戦闘でもそうだ。どんな事態になっても、彼女は冷静さを失わず、指示を出すことができる。
だからこそ、感情は優先されない。
理性が無意識にストップをかけてしまっている。それゆえに熱は生まれない。
「そんなエネルギーがどうやったら体の底から湧いてくるのか、今はまだ分からないわ。だから、それを理解してからでも、遅くないかなって、ね」
「頭でっかちね」
「仕方ないわ。今までそうやってきたのだから」
そう答える彼女は、少しだけ寂しそうで。
だから、夕立ちゃんには期待しているのだ。
彼女は良くも悪くも型にはまっていない。
あの子なら、由良に何かしらの変化をもたらすのではないか。
由良の凝り固まった理性を壊してくれるのではないのかって。
他人任せというのは少し癪だけど。
「とりあえず、何かあったら相談してよね」
「はいはい。分かっているわよ」
いつも頼ってばかりの私が言っても、説得力がないかな。
まあそれでも、もし頼られる時が来たら、全力で答えよう。
それが、私が一番の友達にできる、唯一のことだから。
これで一話は終わりです。
次回は由良視点のお話になります。