Fate/Grand Ordar -Seven Origin- 作:通りすがりの床屋
大空洞
二騎の
剣を持つ黒色の英霊
盾を持つ紫色の英霊
しかし、一方的に責められるマシュが不利だ
セイバーは反撃の隙を許さない
途中まで一緒に行動していたキャスターはアーチャーとの一騎打ちに出ている
少しずつ削られていく後輩の姿に藤丸立花はここにいない男を責めるように叫ぶ
「増援はまだですかドクタアアアア!?」
「…………ッ!」
防御の魔術を展開、維持しているオルガマリーは何も答えない
英霊の戦いに割り込みかねない馬鹿を監視しなければならないのだ
◆ ◆ ◆
「増援に向かって欲しいだと!?増援が欲しいのはこちらだ馬鹿者がッ!ライダーとアサシンのシャドウサーヴァント、潰しても潰しても沸いて出てくる雑魚共の相手で手一杯だッ!!」
アイベール・ファフナーは客観的に見て自身が血管がぶちギレそうなほどに激昂していることを自覚している
爆発から幸運にも生き延び、自力でコフィンから抜け出したと思ったら特異点に我が身一つで飛ばされていた
自分の才能を有効に活用できる職場と聞いて期待していればこの様だ
笑えないにも程がある
しかも、所長であるオルガマリー・アニムスフィアまで特異点に飛ばされているという話
彼女の保護を最優先にしたかったが雑魚に手間取り、シャドウサーヴァントまで出てくる始末
オルガマリー女史は一般枠の素人に付いて危険極まる特異点の中心に赴いている
血管がぶちきれそうだ
状況は均衡していて動きを見せない
逆に一石投じてやれば戦況を打破できるとも取れる
なのに合流した他のマスターと来たら、
「貴様等ぁ!何故、戦わぬ!?」
「いやいや、戦ってるっすよ。自分のアーチャーが」
「………………」
エリオット・ウッドモアは反論を返すが、もう一人は答えさえしない
ウッドモア家など聞いたこともないが田舎の貴族だろうか
何故、そんな低俗な人間が名誉ある仕事に就いているのか不思議でならない
数合わせで一般人も枠に埋め込んでいるという話だ
理解に苦しむ
オルガマリー女史のことだ
きっと深い意味があるに違いない
それはそうと、仮にも貴族の端くれを名乗っているというのに、媚びるように愛想笑いを浮かべるウッドモアに苛立ちを覚える
「貴様自身も戦えと言っているのだッ!」
「いやいやいや、アイベール氏ほどじゃないっすけど、自分もそこそこ重傷っすからね?動いたら傷が開くっすよ」
エリオットの支給された制服はところどころ朱色に染まり、穴から肌が露出している
軽薄な態度から忘れていたがこの男も爆発に巻き込まれた一人に違いはない
「むぅ?そういうことなら仕方あるまい。だが!この女はこの状況で!何故!どうして!寝ている!?どんな精神構造をしているのだ!?」
しかも、無傷だ
気持ちよさそうに寝息などたておって、いや、無表情だな
息をしてなければ死体と判断するに違いない
「あんまり怒鳴らないでほしいっすね。折角、塞いだのに傷が開くっすよ?」
「これを怒鳴らずにいられるか!」
「いやね?気持ちは痛いほど分かるっすよ?下手すりゃ死ぬのにサーヴァントすら現界させずに寝るとか呆れを通し越して感心モノっすけど、『なにしても無駄……だからねる』ってこれも自分わからないでもないんすよね」
「ほう?聞こうか」
青筋を立てながら先を促す
「も、もう遠くないうちに人類は滅ぶって噂じゃないっすか。これから巻き返せなんて無理ゲーもいいところ。人間諦めも肝心ってことっす」
寧ろ、限られた時間で根源に至るために魔術を磨くべきだとエリオットは主張する
「無理?不可能?笑わせるな!我々は何のために集められたか忘れたか!?この事態を打開するためであろう!いいからその女を叩き起こせ!私のランサーだけでは手数が足りぬ!」
魔術師としてはエリオットが正常だ
いつ訪れるかしれない滅びなど気にせず根源を求めるのが魔術師の正しい在り方だ
しかし、アイベールは叫ぶ
根源などと理解できないものに至るより未来を紡ぐ方が大義であると
「わー、御立派っす!惚れちゃいそう!でも、こいつ起こそうとすればサーヴァントにやられそうだから勘弁っす!お断りっす!まだ死にたくないっす!」
「たわけ!私も死にたくないから貴様に起こせと言っているのだろうが……ッ!」
アイベール・ファフナー
エリオット・ウッドモア
ワイス・ダージリン
以下、三名
ライダーとアサシンのシャドウサーヴァントの襲撃に逢い、廃ビルに立て篭もり身動き取れず
◆ ◆ ◆
何がバーサーカーの琴線に触れたのかはわからないが、狂戦士が狂戦士らしく暴威を振るっている
参ったなぁ
「常磐とのコントで忘れてたけど腕と足折れてたわ」
今になって脂汗が滲む
自慢にも限度があるんですよ……?
ちょっと涙が出てきた
「だから止めておきましょうって言ったじゃないですかーー!!」
「アサシンの
「城の中では暴れないって前提が崩れたんですよ!?これからどこに逃げればいいんですか!?」
「泣き言を言っても無駄だから。賽は投げられた。もはや、勝利以外の道はない」
「つまり、死ねってことですね!?誰か助けてくださぁい!」
『■■■■■ーー!!』
バーサーカーが瞬発加速で石斧をぶち込みに来るのが見える
見えるというか見えたときには石斧が床を抉っていて、アサシンが回避済みなのだ
私がまだ挽肉になっていないのはアサシンのおかげと分かっているんだけど
「お姫様抱っこは照れる」
「言ってる場合ですか!?照れるといってる割りに苦虫潰したような顔してますけど!?」
「振動が骨に響く。超痛い」
アサシンさんってば、アクロバティックに立体的に動きなさるんですもの
天井すら足場ですか凄い
でも、動きをもう少し緩やかにお願いしたい
「バーサーカーが暴走を始めた原因を探しましょう。それを盾にすれば生き残れる……!」
「瓦礫と枯れた花の山、加えてバーサーカーの妨害付き。探し出す余裕は?」
「ないですね!死にたくないです!!」
泣き言を言ってるが、生身でバーサーカーの猛攻を避けきってる時点で簡単に死にそうにないと思う
バーサーカーの癖にコツを掴んだのか
「あっ、やば……」
アサシンの背をバーサーカーの拳が捉えた
筋肉ダルマが、石斧の攻撃を囮にしやがっただと
理性あんだろ大英雄め
直撃した
アサシンの背はくの字の折れ、吹き飛ぶ
アサシンに持たれていた私も例外ではなく巻き込まれ壁に叩きつけられる
視界が点滅する
直撃したアサシンは消滅までなくとも暫く行動不可
私はどこがイッた分からないが頭を打ったか
気を抜くといよいよお迎えが来そうだ
痛みすら感じない
「……つか様!折火様!」
同僚の声が遠い
バーサーカーは拳の届く位置にいた
すぐ近くで見ると改めて圧巻される巨漢だ
「サーヴァント!せめてサーヴァントを呼んでください!」
せめてサーヴァントを遺して逝けってか
なんて奴だ化けて出てやる
サーヴァントにはフラれたよ
「拳が届くなら……殴り合える」
魔術を構成、実行、成功
後は拳を振るうだけ
戦おうとする私を見て常磐はいう
「折火様が殴っても小揺るぎもしませんよ!頭打ちました!?」
打った
意識が朦朧としてる
バーサーカーがやけに静かだ
チャンスだ
拳を振るう
力が入らないせいか岩に触れた程度の感触しか返ってこない
巨漢は微動だにしない
なら、もう一発
なら、何度でも
『――――』
バーサーカーの石斧が私の影に重なる
一発には一発だもんね
いいよ来いよ
――――私は死んでも屈しない
「……ッ」
死を覚悟した
そのとき、左手に針を刺したような痛みが走る
「――――問おう」
左手には痣が浮かび上がっていた
私はそれを知っている
何を感じ取ったか
あのバーサーカーが私から距離を取った
「貴様が真の勇者たらんとす、マスターか?」
問いと共に先ほどまでバーサーカーがいた眼前に真紅のシルエットが顕現する
あぁ、サーヴァントだ
声の主は小柄な少女だった
されど、巨漢と並び立つ存在感を放っている
「真の勇者なんて知るか」
思ったことを吟味することんなく口にした
このとき私はどんな表情をしていただろうか
分からないが、彼女が満足するものだったと信じたい
少女は、二ィっと笑って名乗りを上げる
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じ、ここに現界した」
アイベール・ファフナー
ケイネス先生とウェイバーを足して割ったような人間になった
エリオット・ウッドモア
こいつのアーチャー
一体、何ン・フッドなんだ……?
ワイス・ダージリン
戦場で寝るとは中々の剛胆ではないか