真顔のシングル厨がアローラ入りするお話   作:Ameli

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イカれたパーティを紹介するぜ。

 リーリエは怖がってご飯食べなくなってしまった……神様に殺す発言されたら、嫌でもそうなってしまうだろう。むしろ、普通の反応である。

 

 

 寧ろ、気絶しなかったリーリエを褒めたい。結構ガチなオーラを出していた気もするので、ハルジオンには後でそういうのはやめるように言っておくべきだろう。最悪、本当に死人が出る。

 

 

「リーリエ、今日は遅いし帰ったほうがいいんじゃ……あれ、そういやコスモッグはどうしたんだ?」

 

 

「コスモッグ……? ああ、ほしぐもちゃんですか? えーっと、さっきまでお食事中でした」

 

 

 そういって、リーリエが椅子の下に置いてあったバッグの中にステーキを一切れ放り込めば、コスモッグがぴゅいとひと鳴きして元気に食らいついた。ポケモンフーズじゃなくても問題なさげではあるし、基本的に雑食なのだろう。

 

 

 それにしても、ショルダーバッグに入れっぱなしだと進化したときに大変ではないだろうか。コスモッグの進化系であるコスモウムは、ポケモンの中で一番重い。

 

 

 ゲームならストーリー上、ルザミーネさんが鷲掴みしたりリーリエがキャリーしたりするのも仕方ないものがあったが、今はリアル基準で重力が働いているのだと考えてもいいだろうし、リーリエが持ち運ぶのは不可能だと考えられる。

 

 

「リーリエ、悪いことは言わないからコスモッグをモンスターボールに入れたらどうだ? いざとなれば逃がすこともできるし、何よりコスモッグも安全だぞ」

 

 

「……確かにそうですね、確かにそちらのほうが合理的かもしれません」

 

 

 リーリエが能動的にモンスターボールを使わないのは、ストーリーにて進化したコスモッグが主人公にゲットされるからだろう。だが、時が来れば逃がすか、いっそモンスターボールごと讓渡すればいいだけのことだ。この世界なら、モンスターボールに入れない理由はない。ショルダーバッグを一生懸命運ぶリーリエも可愛いが、些か大変だろう。むしろバッグが限界を迎えそうな気もする。

 

 

 リーリエに、全面コバルトブルーに光るモンスターボールを手渡した。それを見たリーリエは少し不審そうな顔をするが、無理もない。自分で言うのもなんだが、モンスターボールと呼ぶにはあまりにデザインが掛け離れている。

 

 

「このボールを使え……ウルトラボールといってな、コスモッグも居心地がいいはずだ」

 

 

「え、もらってもいいんですか? それでは早速……おいで、ほしぐもちゃん!」

 

 

「ぴゅい」

 

 

 バッグから勢いよく飛び出たコスモッグが、リーリエの前にあらわれた。ハルジオンも先程まで興味無さげにしていたが、コスモッグを見て驚く。

 

 

「あっ、星の子だ。どーしてこんなとこに……まあ、ケンの周りは常識外れなの多いからねー」

 

 

 変な言いがかりではあるが、当たらずも遠からずというような感じではあるので何も言えない。そういえば、カプ系はUBであるコスモッグを見逃すという取り決めをしているという設定があった気がする。

 

 

「ほしぐもちゃん、よろしくお願いします!」

 

 

 言葉の勢いとは裏腹に非常にゆっくりとした軌道で投げられたボールは、ポンと甲高い音を上げて開くとコスモッグを飲み込んだ。そのまま、ゲームでは見たことのないような速度で揺れ、やがて動かなくなった。

 

 

「やった、やりましたよ!」

 

 

 今にも飛び跳ねそうな勢いで喜ぶリーリエを見てると、こちらも心が温まる。やはり天使はここにおられたのか。なんて考えていると、膝上に居座っているハルジオンが強めに手を握りだした。小さく柔らかな掌に包まれているはずの親指が、洒落にならないレベルで痛い。

 

 

「……そんなにあの子がいいわけ?」

 

 

「表情筋全く動かしてない自信あったんだけどなあ!!」

 

 

 というより、こちらの顔も見ていないはずだ。それはともかくとして、親指の付け根の部分が、鶏肉の手羽元のように剥離しようとしているのをうっすら感じる。激痛により、もはや触覚など全く働いていないが。

 

 

 そういえばこの邪神、Lv100である。すごいとっくんの仕様上Lv100にしなければならないのだが、まさかこんなところで悪影響が出てくるとは育成中には思いもしなかっただろう。たとえ種族値的に攻撃が控えめだろうが、Lv100は伊達じゃない。おそらくレートにいるガブやカイリューより火力が出る。

 

 

「わかった! わかったから離せ!」

 

 

「ふんだ。アタシの力、思い知った?」

 

 

 言われなくとも、育てたのは自分自身であるため嫌ほど理解している。むしろ臆病なのに何故こんなに強気なのだろうか。控えめと臆病で迷った結果、どうやらハズレの方をひいてしまったらしい。

 

 

 ただ、ツーンとそっぽを向いている姿はまんま無邪気な子どものようだ。強がっている様子が逆に嗜虐心を煽り、おもわず撫でてしまった。

 

 

「そ、そんなんじゃ許してあげないもんね!」

 

 

 そんな捨て台詞を吐いて、ハルジオンは殻に引きこもってしまった。あれ、もしかしてテテフも天使可愛い?

 

 

「カプ・テテフの相手も大変そうですね……」

 

 

「まあ、いつものことだ」

 

 

 まるで長い付き合いであるかのような口ぶりだが、出会って一時間も経っていない。リーリエに全てを打ち明けるには、とりあえずこの世界の把握と、生活基盤の安定化をさせてからでなければ危ういだろう。どこで国際警察に捕まるのか、分かったものではないのだから。

 

 

「俺はハルジオンの相手をしてるから、リーリエは帰ってもいいぞ。この後じゃ流石に飯は食えないだろ」

 

 

「そうですね、それではまた明日……どこで待ち合わせますか?」

 

 

 リーリエとの待ち合わせ、この文面だけで心が踊る。

 

 

「ポケモンセンターで待ち合わせるか……住民が騒ぎそうだが、グダグダ言っても仕方ないだろう」

 

 

「では、カフェでゆっくりしてますね」

 

 

 あー、リーリエとゆっくりーりえしたい。一緒にスイーツを食べあいっこして、ほんわかな時間を過ごしたい。これだけハイペースでイベントを消化してきたのだし、少しくらいは休息も必要ではないのか等と下らない事を考えたが、出来ることは早めに消化しておいた方がいいと結論付いた。ゆっくりーりえはその後だ。

 

 

「よし、後で迎えにいくわ。俺はハルジオンの相手しないといけないから見送れないが、気を付けて帰るんだぞ」

 

 

「はい! 今日はありがとうございました!」

 

 

 そういって、天使は去ってしまった。残されたのは邪神のみ。

 

 

「なんか失礼なこと考えなかった?」

 

 

「気のせいだ。それで、デートの件なんだが……人気のない、かつスペースのあるところってない?」

 

 

「ここの近くだと……北のほうの崖下にちょうどいい砂浜があって、ゆっくりできる場所があるよー」

 

 

「んじゃそこに行くか。案内してくれ」

 

 

 それを聞いたハルジオンが、何やらウキウキと張り切っている……一体今から何をするつもりなのだろうか。ホテルの外に出ようと一旦、ハルジオンをボールに戻そうとした……のだが身体がピクリとも動かない。

 

 

「それじゃあ一名さま、ごあんなーい!」

 

 

 勢いよくバルコニーの入り口が開いたかと思ったら、ハルジオンと一緒に飛び出していた。何を言っているのか自分自身よく分かっていない。分かっているのはただ一つ。

 

 

「どうして飛び降りたんだよぉぉぉぉぉおおおおおおおああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

「こっちのほうが早いからねー」

 

 

 次の朝、「絶叫しながらカプ・テテフと共に空をとんでいた」と噂が追加された。実際には落下しているのだが、それは本人にしか分からないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 方法はどうあれ、肉体は無事に辿り着いた。精神は無事かどうか、定かではない。思考できるだけまだマシといったところか。

 

 

 ハルジオンの選んだ場所は、崖のすぐ側にあるかなり広い砂浜だ。確かにここなら、ゆっくり星と海を満喫でき、ロマンチックな一夜を過ごせるだろう。崖が高すぎて、遭難者以外は来る事が無さそうであるのがネックか。

 

 

 何故、人気のない場所を選んだのか。それは……ポケモンたちとの初顔合わせのためである。

 

 

「とりあえず、みんな出てこい」

 

 

 ホルダーについてるボールを全て放り投げた。一度顔を合わせたギャラドスのニシキは勿論、デンジュモク、テッカグヤ、ミミッキュ、ガブリアスが姿を現す。どれも、ゲームの液晶から見る姿とは全く違い、猛者特有の威圧感やおどろおどろしい雰囲気を放っているのを肌で感じる。

 

 

「ちょ、ちょっと! そんなの聞いてないよー!」

 

 

 ハルジオンが抗議の声をあげる。大方、二人きりでデートが出来るなど考えていたのだろう。現実はそう甘くはないのは、先程貴様が教えてくれたはずだろうに。

 

 

「デートは必ずするから、今日は俺のワガママに付き合ってくれ」

 

 

「それなら、別にいいけど……」

 

 

 お墨付きをもらったので、順番にチェックしていくことにする。まずは、最初に組んだバトルボックスという予想を前提に、ポケモンたちの個体を当てていかなければならない。

 

 

「まずは、ガブリアス……お前、シーザーだよな?」

 

 

「ガァブ!」

 

 

 その通りだというように遠吠えをあげるガブリアスのシーザー。レートの王様だしこれでいいかと、暴君ジュリアス・シーザーから名前を取った。余談だが、前作でジュリアスの名前のガブを育成している。

 

 

 性別は雄で性格は陽気のASぶっぱ。技は地震、岩石封じ、逆鱗、アイアンヘッド。ウルトラボールに入れているため、判別はやりやすかった。

 

 

「それとミミッキュ、お前は……シルキーだな」

 

 

「キュキュ!」

 

 

 ぴょーんと、一跳びで胸に飛び込んできて、甘えるように頬擦りされるが……ハルジオンから若干の殺気を感じたため、少し撫でてから地面に下ろした。シルキーの名前の由来はそのまま、幽霊から来ている。

 

 

 雌で意地っ張りのASぶっぱ。技は剣舞、じゃれつく、シャドークロー、影打ち。持ち物は襷で運用していたが、今は所持していない様子だ。ミミッキュは二種類作っていたが、ゴジャボに入れてる方はおそらくアタッカーだったと記憶しておいて幸いであった。

 

 

「デンジュモク……セントエルモか」

 

 

「モク」

 

 

 反応が淡白すぎて何を考えているのか分からないが、おそらく返事を返しただけなのだろう。ニックネームはセントエルモ、悪天候時に起こる不吉な発火現象から名前を頂戴した。長いしエルモって呼ぼう。

 

 

 臆病CSぶっぱ。技は10万V、マジカルシャイン、エナジーボール、めざパ地面。スカーフ持ちで、よく一舞ギャラを後出しで狩っていた。めざ地は撃つ機会が少ないので、氷の方が良かったと後悔している。

 

 

「んで、お前さんは……セレスティーラ、でいいのかな?」

 

 

「フゥン」

 

 

 Celesteelaだ、日本語でテッカグヤである。次からは面倒臭いのでセレスって呼ぶことにしよう。先程の鳴き声的に、おそらく自分だけニックネームじゃないのが不満なのだろうが、他人産なので仕方ない。ただ、そんな縛りなどないこっちの世界なら何と呼んでも構わないだろう。本人も喜ぶだろうし、やはりセレスでいいか。

 

 

 性格は呑気、HBぶっぱで、技はヘビーボンバー、火炎放射、宿り木の種、守るのやどまも型だ。このパーティにはアタッカーが多いので、受けることができる型じゃないと厳しいと予想し見事的中出来たようだ。

 

 

 本題の本題はここからである。

 

 

「なあセレス、俺を乗せて空飛べる?」

 

 

「クゥ?」

 

 

 は? 今飛んできただろって? 滑空だろあんなのシーザーでもできるわ。

 


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