さてさて、他のも書き進めねば(;^ω^)
それではどうぞ!
「やっぱりこんな時間だと不気味だなぁ………」
『鬼』の棲む山に向かいながら少女は呟く。
いくら月明かりがあるとはいえ辺りはとても暗い。普段歩き慣れているはずの道もこっそり持ってきた提灯の明かりがないと足元が見えないくらいだ。
そんな中を少女は何度か道端の小石などで躓きながらも一人歩いて行く。そして歩くこと数十分が経った頃、目的の山へと到着していた。
来た道もそうだったが山の中は更に一段と暗く、まるで深い闇に包まれているようだ。
「大丈夫………、だよね。見つかりそうもなかったらすぐ帰ろう」
おどおどした様子で少女は山の中へと入っていくと、闇の中へと姿を消していく。
その時、山の木々たちの騒めきが微かに大きくなっていた―――。
†
(―――、何だ? 騒がしいな………)
一つの影がゆっくりと大きな岩の上で起き上がる。
影の形は人の形をしているようだが、この山には人は立ち入らない。この山に棲んでいるものとすれば―――。
その影は、ぽりぽり、と頭を掻きながら、自分がいる岩から下の方に見える小さな灯りを見つけると目を凝らした。
「あれは………、『人の子』か? 人を最後に見たのは何年前だったかな」
人がこの山に立ち入らなくなってもうどれくらいの時が経っただろうか? もう覚えていなかった。別に寂しい気持ちがあるわけではない。寧ろ、人を見ずに暮らせるのは気楽でいい。人は嫌いだ、欲深いから。
「こんな夜更けに何をしに来たんだ?」
影は横になると、肘をつきながら少女を眺める。すると少女は何やら木の上を見ているようだった。木の上にあるものといったらなんだ………、鳥たちの巣か?
(『人の子』がこんな暗闇で見える訳ないだろうに―――、っと、諦めたのか?)
そんなことを思っている内に少女は諦めたようで、とぼとぼ、と来た道を引き返していた。本当に何をしにきたのだろうか? とその動向をなんとなく見ていると少女のある変化に気が付く。どうやら泣いているようだ。そして少女は何かの拍子に転んでしまった。
「はぁ、仕方ない………。あまり関わりたくないんだけどな………」
少女を見ていると何故か思い出してしまう。『大切な人』を。最後に残っている記憶の姿と身長もあまり変わらない。この時少女の前に姿を現したのも、少女を『大切な人』に姿を重ねて見てしまったが故の出来心だったのかもしれない。
「おい、『人の子』よ。こんな刻に何をしているんだ?」
泣いている少女の前にふわりと一つの影が降り立つ。それは人の姿をしていたが頭に角があった。
影の正体は村の皆が『鬼』と呼ぶもの―――、出会ってはいけないものだった。
†
「全然見えない………。せっかくここまで来たのに………」
少女は自分の考えが甘かったことに気が付く。こんな時間でも月明かりで何とか見えるだろうと思っていたことに。
実際に山の中に入ってみると手に持っている提灯の明かりでさえ心もとないほどに小さく感じた。足元も十分に見えない。もしかしたらと淡い希望を持って山の深くまで来たのだが、奥に行くほどに辺りの暗さは増すばかりだった。
そんな中、目的である木の上の鴉たちの巣などは見えるはずなく少女は落胆する。
これ以上奥に入ってしまうと村に帰れなくなるかもしれないと感じた少女は来た道を引き返して行く。仕方がない。そう自分に言い聞かせながら―――。
とぼとぼ、と歩いて山を下る少女。暫く歩いているとあることに気が付く。
「えっ………、ここどこ………?」
ちゃんと来た道を通って来たはずなのに見たことのない場所を歩いていた。少女は焦り出すと走り出してしまう。
村に帰れない―――、それが少女の焦りの原因。こっそりと家を抜け出して来ているため、気づかれないように帰らないと怒られる。それよりもこの山で迷子になる方が危ない。
『鬼』が出るとされる山。
村の皆が近づくなと口を揃えて少女を含める子供たちに言い聞かせている場所。
この闇に包まれているような暗さで少女の不安と恐怖がどんどん増していく。その感情が少女を焦らせ走らせる。だが、進めば進むほど迷ってしまっているように感じた。
少女は息を切らし、一度立ち止まる。
「はぁ、はぁ………。どうしよう、このままじゃ帰れない………」
髪飾りも見つからない。家にも帰れない。いつ『鬼』が出てくるか分からない。
ついに少女は泣き出してしまう。そして行く当てもなく歩き出した。
着物の袖で顔を覆いながら提灯だけを前に出して歩いていると、案の定木の根っこに引っかかり転んでしまう。そのまま少女は蹲るように身を丸め、めそめそ、と泣き出してしまった。
その拍子に少女の手から提灯が離れてしまうと地面に当たり、中の火は消えてしまった。
月明かりが届かない所まで来てしまっていたのか、辺りは提灯の明かりが消えたことで何も見えないほどの闇に包まれる。だが顔を覆い、泣いている少女は気が付かない。
不気味なほど静かな山に少女の泣く声だけが小さく響いている中で―――。
「おい、『人の子』よ。こんな刻に何をしているんだ?」
そう、どこからともなく男の声が聞こえてくる。
その声に反応すると、少女は顔を上げ、まだ涙がにじんでいる赤く腫らした瞳を向ける。
そこには暗くて顔までは見えないが、少年が一人立っていた。
†
「ぐすっ………、あなたは………誰?」
少女は涙を拭いながら目の前の少年に問いかける。泣いているからか声は震えていた。
「俺か? 俺は………、そうだな………」
少女に尋ねられ少年は暫し考え込んだ後、口を開く。
「お前たち人の呼称で例えるなら―――、『鬼』。となるものだな」
「えっ―――」
少年の口から聞こえてきた言葉に少女は絶句する。
出会ってしまった。
逃げなきゃいけない。
言い伝えは本当だった。
人食いの『鬼』だ。
少女は恐怖で竦んでしまった足を無理矢理動かし何とか立ち上がると、少年がいる方向とは反対に逃げ出す。力が入らないため、よろよろ、と何度も躓きながら。
「まぁ、待て『人の子』。別に何かしようという訳ではない」
少年はそんな少女を見て落ち着かせようと声を掛けた。だが、少女は転びながらも地面をはいずりながら必死に逃げようとしている。
「ごめんなさいっ! すぐに山から出ていきます、見逃してください!」
泣きながら少女は『鬼』と名乗った少年に謝っていた。
「迷ったのだろう? いいから待て。出口まで連れて行ってやる」
そう言うと少年は少女に手をかざす。すると少女の体がゆっくりと浮き上がった。
少女は逃げようと手足を動かしあがくが体が浮いているため意味をなさない。
目から大粒の涙がたくさん零れていく少女。そんな様子を余所に、少年は浮かせている少女に向けていた手を地面にゆっくりと向けると、少女の体は足から地面に着き、元いた道に起き上がっていた。
「いい加減泣きやめ。ほら、掴まれ。外まで連れて行ってやる」
少年は少女に手を差し出す。
自分の状態にまだ理解が追いついておらず、唖然とし、涙も止まっていた少女だったが、その少年の手に縋るかのように自分の手を出していた。でもあと少しの所で躊躇う。信用していいのかと。
「はぁ、まったく面倒だな」
「あっ―――」
躊躇している手を少年は自ら掴むと、少女を少年は自分へと抱き寄せる。
「しっかり掴まれ。でないと落ちるからな」
次の瞬間、少年の体が少女ごと浮かび上がる。そして木々の間をすり抜けるように闇の中を進んで行った。
「凄い………、飛んでる………」
少女はまるで夢でも見ているかのように感じながらも、少年に言われた通りしっかりと少年にしがみついていた。
「―――、どうして山に入ったんだ?」
不意に少年が尋ねてくる。
「えっと………、
「何もこんな刻に来なくてもいいだろうに………」
「村ではこの山に入ってはいけないことになっているの。でも、私の兄さんは私のために山に入ろうとしていて………。そんな危ないこと兄さんにはさせたくなくて、それで………」
「お前が来た方が危ないだろう。………、その髪飾りとやらは俺が取って来てやる。山の入り口に置いておいてやるから明日にでも持ってゆけ」
「どうしてあなたはそこまでしてくれるの?」
村では人食いの『鬼』と恐れられている少年なのに、人である自分をこんなにも助けてくれることに少女は疑問を持っていた。
「そうだな―――。たぶん、『償い』………、なんだろうな」
「『償い』? 何の?」
少女は聞き返すが、少年はどこか寂しそうな、それでいて悲しい表情に変わり、首を横に振る。
「悪い。そこまでは話せない」
その様子を見た少女は、それ以上少年が言った『償い』という言葉について尋ねることをやめたのだった。
二人の間に沈黙の時間が少し流れていると、明るい場所に出る。それは月の明かりだった。どうやら山の外に出たようだ。
少年は少女が通って来たと言う山への入り口付近のあぜ道に少女を降ろす。
「ありがとう。『鬼』さん」
少女が礼を少年に伝えると、少年は小さく微笑む。
すると突然強い風が吹き、少女は目を瞑る。
暫くして風が止み、次に少女が目を開けた時には既に『鬼』の少年の姿はそこにはなかった。
いまだに地獄少女・閻魔あいが出てこないという(笑
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