ハイスクールD×D イマジナリーフレンド   作:SINSOU

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16話

月明かりと電灯の明かりを頼りに、私は学園へと走った。

 

眠ろうと目を閉じた私を襲った突然の寒気。まるで極寒の世界に裸で放り込まれたような感覚。

そして家の窓から見えた、何かに覆われた駒王学園。

私はパジャマの上から上着を羽織り、そのまま学園へと走った。

 

学園に近づく毎に、身体を襲う寒気は一層強くなり、私の足を遅くする、身体が重くなる。

でも、私の中に嫌な予感があった。

 

きっと何かあったに違いない。

だから私は、遅くなる足を必死に前へと進ませる。

きっと先輩たちも何かしてるに違いない。

だから私は、そのお手伝いをしたい。

 

いつも走っている通学路なのに、私はまるで亀のように、一歩一歩踏みしめた。

身体に走る寒気を堪えながら。

そして私の目に映ったのは、何か模様が描かれた壁に覆われた駒王学園だった。

 

「支取先輩!」

 

私は、学園の前に立っていた支取生徒会長に声をかけた。

支取先輩は、声をかけてきた私を見て、酷く驚いていた。

 

「夢殿さん!?どうしてここに!?」

 

「何か凄く寒気を感じて窓を見たら、変なものに覆われていた駒王学園が見えて。

 それで私、心配になって・・・。し、支取先輩、い、一体何が起っているんですか!?」

 

私の言葉に、支取先輩は一瞬顔を暗くするも、直ぐに何ともない顔をする。

 

「大丈夫ですよ、夢殿さん。ここは私たちに任せて、貴女は家に戻ってください」

 

「な、なんですかそれ!?こんな学園を見て、大丈夫な訳ないじゃないですか!」

 

私は声を荒げた。私の姿に、支取先輩は目を逸らした。

支取先輩の行動に私は合点がいった。

 

「リアス先輩たちがこの中にいるんですね」

 

支取先輩が私に顔を向けた。

 

「答えてください、支取先輩。この中にリアス先輩たちがいるんですね?」

 

「・・・・・・そうです、この結界の中で、リアスたちが戦っています」

 

支取先輩が、私に説明してくれた。

私が家に帰った後、件のコカビエルが宣戦布告をしてきたらしく、

リアス先輩たちがこの結界の中で戦っているという。

コカビエルは休戦中の戦争を再開したいがために、

聖剣強奪を行い、魔王の妹であるリアス先輩たちの治める駒王町に来たらしい。

 

なによそれ

 

私はその言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

ただ戦いたいがために、この町にやって来たっていうの?

ただ自己満足のために、私の大切な町を巻き込んだっていうの?

 

黒い感情が湧く

 

そしてこの町を守る為に、リアス先輩たちはこの結界内でコカビエルと戦っているようだ。

確かに、中ではなにか激しい音が聞こえてくる。

私は震える声で、縋るように、支取先輩に尋ねた。

 

「それで支取先輩、リアス先輩たちが何とかしてくれるんですよね?そうですよね?」

 

この町を守ると言ってくれたリアス先輩の言葉を思い出し、私は問う。

だが支取先輩は、私から目を逸らした。

 

「リアスたちは、なんとか援軍が来るまで時間稼ぎをしてくれます。

 私たちは、この町に被害が出ないよう結界を維持することしか・・・」

 

「なんですか・・・それ・・・?」

 

私は支取先輩に詰め寄った。私の手は支取先輩の服を掴んだ。

 

「援軍が来るまでってなんですか?被害が出ない様にってどういうことですか?

 大丈夫なんですよね?この町を守ってくれるんですよね?

 だって、リアス先輩は私に約束してくれたんですよ?」

 

「夢殿さん、落ち着いて・・・」

 

「落ち着くってなんですか?今の話を聞いて、どうすれば落ち着けるんですか?」

 

私の心が冷えていく

心が無機質になっていく

 

突然、激しい音が響き、結界が揺れた。

私が音の方を見た瞬間、それが目に入った。

まるで怪獣映画のような巨体の三つの首を生やした犬が、

口から赤い液体を零しながら、私の目の前で塵となった。

塵となる瞬間、私はその怪物と目があった。

 

次に、まるで間近で落雷が落ちたかのような、激しい音が響き、目の前が光で満たされる。

眩しさに目を閉じ、しばらくすれば、校庭の方から一本の光の柱が見える。

 

「まさか・・・聖剣が完成してしまったの?」

 

支取先輩の呟きが私に耳に入った。

 

「聖剣が完成したら、一体どうなるんですか?」

 

「あと数十分で・・・この町が消滅します」

 

 

 

 

その言葉を私は理解できなかった。

その言葉を私は理解したくなかった。

その言葉を私は聞きたくなかった。

その言葉を私は拒絶したかった。

 

私は無意識に口元を歪めながら、支取先輩に尋ねた。

 

「消滅?何を・・・言ってるんですか?だって、この町は先輩たちが守ってくれるって・・・」

 

黒い感情が渦巻く

 

私の言葉に、支取先輩は唇を噛みしめながら答える。

 

「聖剣が完成してしまったことで、なにかの術式も完成してしまったようです。

 術式から感じる力からして、おそらくこの町を吹き飛ばすための術式だと思います。

 作動までの時間を考えると、援軍は間に合いません。

 今、この場でリアスたちが何とかしなければ、駒王町は消滅します」

 

感情が波打つ

 

「おそらく、コカビエルを倒せば何とかなるかもしれません。

 ですが、仮に赤龍帝の力を持っても、コカビエルを倒せるかどうか・・・」

 

感情が滾る

 

「く・・・こうなるのなら、早く援軍を呼ぶべきだった・・・!

 魔王様たちの迷惑になると思って躊躇した結果、この町を危機に晒してしまうなんて!」

 

感情が身体を這い回る。

目の前から、色が消え、輪郭が消え、何もかもが消えて真っ暗になる。

真っ暗になった目の前で、誰かが私に尋ねてきた。

 

またなの?

 

その声は私を問いただす。

 

また失うの?

 

その声は私を責めたてる。

 

また何もしないの?

 

真っ暗な視界が晴れ、見えてきた光景に、私は目を見開いた。

 

 

私の目に映るのは、炎の中で泣いている私だった。

周りは車の残骸で囲まれ、そこら中からは炎が舞っていた。

私はただ泣いていた。

目の前の出来事に何もできず、ただ自分の無力さを嘆いて泣いていた。

目の前の現実から目を逸らし、ただ終わってほしいと願って泣いていた。

 

泣いている無力な私を、私が見ている。

 

その光景に私は気付かされた。

 

それはあの時、何も出来なかった私が犯した、幼い時の私の罪。

 

大切な人を失ったあの時だ。

そしてまた声が聞こえる。

 

また失うの?

 

『嫌だ』私は叫ぶ。

 

『もう嫌だ』私は叫ぶ。

 

『もう絶対に失いたくない』私は声を張り上げる。

 

『もう大切なものが消えるのは嫌だ』私は喉をからして叫ぶ。

 

そしてもう一つの感情が、私の心に渦巻く。

それは私の中にある、憎しみの気持ち。

 

許せない

 

私の思考は切り替わる。

 

何もしなかった私が許せない

 

『脚』が現れた

 

何も出来なかった私が許せない。

 

『身体』が現れた

 

私の大切なものを奪う存在が許せない。

 

『腕』が現れた

 

絶対に許さない。

 

『友達』が現れる

 

ソーナ・シトリーは自分が見ている光景に戸惑っていた。

なせなら突然、夢殿ことなが自分から離れ、その瞬間に目の前に黒い人影が現れたからだ。

それこそ、何の気配も感じず、気付けばそこにいたのだ。

まるで、始めからそこにいて、自分が気付いてなかったかのように。

 

そしてその人影は、風体からして異質だった。

大きさは巨体ではなく、それこそ子供のような体格だ。

なぜか出で立ちは、夢殿ことなと同じような姿をしている。

だが、それよりも目を引いたのは、その顔だ。

それには顔が無かった。

いや顔に当たる部分に、真っ黒の靄がかかっており、顔が認識出来ないのだ。

そしてその黒い人影は、夢殿ことなの前に立っている。

 

「夢殿さん!そいつから離れて!」

 

ソーナは夢殿ことなに声を上げた。その人影は何か判らないが、何かを感じる。

まるで見てはいけないものを見てしまったような感覚。

だからだろう、ソーナは叫んだのだ。自分でも何か恐怖を感じるのだ。

ただの人間の夢殿ことなでは耐えきれないと。

だがソーナの思いは、夢殿ことなによって否定された。

 

夢殿ことなは、すっと黒い人影にに手を差し出し、こう呟いた。

 

『一緒に行こう』

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりだ!」

 

僕の目の前で、木場は手にした禁手『双覇の聖魔剣』で、

フリードの聖剣エクスカリバーを叩き斬った。

砕け散るエクスカリバーをに驚愕するフリードを、僕は返し刃で斬りあげる。

フリードは驚愕の顔のまま、空が殻血の線を描きながら倒れ込んだ。

 

「よしゃぁぁぁぁ!!やったな木場!」

 

イッセー君が僕に向かって叫んだ。イッセー君は僕以上に喜んでいた。

その姿に、僕はクスリと笑いつつ、ありがとうと感謝する。

そして僕は、色々なことを思い出す。

見捨ててしまった僕を許し、最後まで気にかけてくれていた同士たち。

ありがとう、みんなのおかげで僕は禁手に至れたんだ。

そして僕を救ってくれた部長、迷惑をかけてしまったイッセー君やみんな。

ありがとう、みんなのおかげで、僕は過去を振り切れることが出来た。

『双覇の聖魔剣』を握りしめる。

 

だから僕は、この思いを胸に、部長の、みんなの剣になるんだ!

僕の想いに呼応するように、『双覇の聖魔剣』も更に光輝く。

 

僕はバルパーを見据える。バルパーは、何かに憑かれたかのように何やら呟いている。

これ以上、僕のような犠牲者を生まないためにも、僕は斬る!

だが突然、目の前のバルパーは血反吐を吐いて死んだ。

 

「バルパー、貴様は優秀だったゆえにそこまで至れたのだろう。

 だが正直言うとな、別にお前がいなくても良かったんだよ」

 

声の方を見れば、コカビエルがバルパーに掌を見せていた。

どうやら、光の槍で彼を殺したみたいだ。

 

「最初から俺一人で十分だったからな」

 

その瞬間、コカビエルから放たれた殺気に、僕は死を認識した。

フェニックスとの闘いとは違う、本当の意味での殺し合い。

これが聖書に刻まれた堕天使の強さなのか?

僕は無意識に、より強く剣を握りしめる。

 

でも、同士たちは願ってくれた。生きてほしいと。

だったら僕は生きなきゃいけない!

僕は皆の剣として、グレモリーの眷属として、みんなを守らなきゃいけないから!

それに・・・僕は彼女との約束を思い出した。

 

「夢殿さんとケーキを食べに行く約束をしたんだからね」

 

夢殿さんの、あのおっかなびっくりな姿を思い出し、僕は笑みをこぼした。

約束を守る為にも、僕はここで死ぬわけにはいかない!

僕は部長やイッセーくんたちを見回し、頷く。

みんなの気持ちは一つ、コカビエルを倒すこと。

 

「いくぞ皆!コカビエルをぶちのめして、さっさとこの戦いを終わらせるんだ!」

 

「カハハハハハ!ならば全力を持ってかかってこい!生半可ならばすぐに殺してやる」

 

コカビエルの笑い声が合図となり、僕たちはコカビエルに向かって行った。

 

 

「消し飛べぇぇぇぇぇえぇぇえぇぇ!」

 

イッセーくんの最大譲渡を受けた部長の魔力の塊がコカビエルを襲う。

それは校庭の地面を削りながら、周りを消滅させながら、コカビエルへ向かう。

 

「面白いぞサーゼクスの妹よ!その力、確かに魔王のように才に恵まれているな!だが!」

 

コカビエルは部長の魔力を両手で受け止める。

その瞬間、堕天使の持つ光力と魔力がぶつかり、その衝撃で校庭の木が数本吹き飛ばされる。

だが、次第に部長の魔力が力を失いだし、コカビエルを消滅させられずに消えた。

 

流石にコカビエルも無傷ではなく、掌からは血が流れ、纏っていたローブはボロボロ。

でも、大したダメージを追っていないことは明白だった。

 

「どうした?貴様らはこの程度なのか?ならば失望しかないな。

 これならさっさと殺した方がいいか」

 

僕たちを冷めた目で見下すコカビエル。

でも、負けるわけにはいかない!僕たちは互いに連携を取りつつ、コカビエルと戦った。

朱乃さんの雷撃を翼の羽ばたきで消し飛ばす。

その隙をついて僕とゼノヴィアが斬りかかるも、片手で僕の剣を防ぎ、

ゼノヴィアのデュランダルを避け、逆にゼノヴィアを蹴り飛ばす。

 

「おまけだ」

 

そういうと、コカビエルは、空いた手で僕を掴み、ゼノヴィアの方へと投げる。

ゼノヴィアは、蹴り飛ばされた勢いで地面に落ちるも、寸でのところで体勢を立て直す。

僕もなんとか空中で受け身を取り、着地と同時に斬りかかる。

 

「ほう、デュランダルと聖魔剣の同時攻撃か!」

 

そういうと、コカビエルは片方にも光の剣を生み出し、僕たちの剣戟を難なく捌く。

 

「隙ありです」

 

僕たちに注意を向けた隙を突き、小猫ちゃんがコカビエルに拳を振るう。

 

「甘いぞ!」

 

だが、コカビエルの12の翼が刃物の如く、小猫ちゃんを切り刻む。

刃の嵐に巻き込まれたように、小猫ちゃんの身体から鮮血が噴き出す。

 

「おまけだ」

 

1つの翼が小猫ちゃんを薙ぎ、肩から脇腹まで一線を刻まれた小猫ちゃんは、

そのまま地面に叩き付けられた。

アーシアさんとイッセーくんが小猫ちゃんに駆け寄る。

 

「小猫ちゃん!」

 

「余所に意識を向けるとは余裕だな」

 

小猫ちゃんの意識を向けたことで僕の剣は弾かれ、僕は無防備になる。

コカビエルの光の剣が、僕を断とうと迫る。

 

「させるか!」

 

けれども、僕を襲う光の剣が、ゼノヴィアによって寸でのところで防がれた。

あと少しでも彼女の援護が遅かったら、僕は真っ二つだっただろう。

 

「まさかエクソシストが悪魔を助けるとはな。だが!」

 

コカビエルから放たれた衝撃波により、僕とゼノヴィアは地面に叩き付けられた。

 

強い!僕らとコカビエルとの力の差がこんなにあるなんて!

そう思った瞬間、僕は頭を振り、その考えを追い出す。

駄目だ、相手に呑まれたら死ぬ。僕は皆と一緒に生き残るんだ!

僕は自分に発破をかけ、コカビエルを見据える。

 

「聖魔剣よ!」

 

僕は力の限りをつくし、コカビエルの周りに聖魔剣をありったけ生み出し、

コカビエルの動きを封じ込める。

だが、コカビエルの翼が難なくそれらを破壊する。

その一瞬の隙を突き、背後から斬りかかるも、

 

「ハエが止まるぞ」

 

指二本で止められる。

でも、僕はそれに笑みを浮かべる。

だってこれは僕にに注意を引きつけることが目的だったからだ。

 

「くらえ!」

 

反対からゼノヴィアがデュランダルで斬りかかった。

それをコカビエルは咄嗟に避ける。そしてゼノヴィアを斬ろうと、光の剣を生み出し、

 

「かかったね」

 

僕は止められていた剣を離し、新たな聖魔剣を生み出すと、コカビエルに向けて振り下ろした。

これが本命。

流石のコカビエルも、これには虚を突かれたのか、一瞬にして後ろへ下がる。

見れば、その顔に一筋の傷が見えた。

今の攻防ですら、それしかダメージが与えられていない。その事実があまりにも残酷すぎた。

 

だが突然、コカビエルが笑いだすと、僕たちに恐ろしいことを語り出した。

 

『四大魔王だけではなく、実は神も死んでいた』と。

 

その事実に、先ほどまで懸命に闘っていたゼノヴィアが、

剣を落とし、膝をつき、「嘘だ嘘だ」と呟いている。

アーシアちゃんも、コカビエルの言葉に放心していまい、イッセーくんが彼女を揺さぶっている。

二人は神のために生きてきた信者たちだ。

その神が実は死んでいた。それはあまりにの衝撃に違いない。

僕たちの様子を無視して、コカビエルは叫ぶ。

 

「もはや戦争はおこらないだと?ふざけるな!

 あのまま戦争が続いていれば、勝っていたのは俺たちだった!

 散々殺し合ったというのに、今更止められるわけがない!

 喪った部下たちのために二度と戦争をしない?

 アザゼル!ならば死んでいった奴等は、一体何のために死んだというのだ!」

 

コカビエルは叫び続ける。

 

「もう一度戦争を起こすために、貴様らやこの町共々生贄になってもらうぞ。

 そうすれば今度こそ決着が尽く!

 死んでいった奴等のためにも、俺たち『堕天使』が最強であることを示す!

 ふんぞり返っているサーゼクスや傍観者のミカエルを、戦場に引き摺りだしてやる!」

 

高らかに叫ぶコカビエルの姿に、僕の心は折れかけていた。

サーゼクス様にミカエル。

聖書にも記された強大な存在に、コカビエルは挑もうとしている。

勝てるはずがない。僕たちはそんな恐ろしい敵に勝とうとしていたんだ。

 

「ごめん、夢殿さん。約束、守れそうにないみたいだ」

 

僕はなぜか、その言葉をつぶやき、目を閉じようとして

 

『だから何ですか?』

 

彼女の声を聞いた。

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