ハイスクールD×D イマジナリーフレンド 作:SINSOU
ことなが言葉を発した瞬間、突然空から岩のような氷塊がことながいる場所に降り注いだ!まるで山のように重なった氷のせいか、一瞬にして結界内の空気が冷えた。呼吸するたびに息が白く濁る。山のような大量の氷による寒さで体が震えてきた。
「突然出てきたと思ったら訳の分からないことを・・・!」
そして水も何もないのに大量の氷を放ったのは、カテレア・レヴィアタンだった。突然の出来事に呆けていたけど、忌々しげな彼女の声を聞いて俺やみんなはカテレアへと視線を向ける。カテレアの顔は、普段ならば美人だろう顔を憎しみに歪めていた。ことなの方へと向けていたその右手からは、はっきりと見えるほどに白い空気が漂っていた。
「カテレアちゃん、貴女、一体何をしたの!」
セラフォルー様が叫ぶ。授業参観の時のような笑顔ではなく驚愕の表情だ。セラフォルー様がそんなに驚いているってことは、今のが本当にやばいことだと俺は実感した。
「何を驚いているのですかセラフォルー。
「そんな、だってカテレアちゃんの力は・・・!」
「ええ、
今の言葉に、セラフォルー様だけでなく部長たちも驚く。待ってくれ、今のがただの氷の魔力だって?初めて見た時、部長や朱乃さんの力に凄いと思った。でも今の力は二人の力とは格段に違うのに、少しの魔力によるもの?じゃ、じゃあ本気を出したら、今のよりも恐ろしいことになるってことなのか!?どんな化け物になっちまったんだよ!?
「ほんっ・・・とうに厄介なことをしてくれるぜ、オーフィスの奴は。やり合って分かったが、今のカテレアはただの悪魔じゃない。旧魔王の力と龍の力を併せ持った、一種の魔龍みたいなものだ。それに無限龍の力寄るものか、更に力が増していってやがる。こりゃ短期でやらなきゃいづれこっちが力負けだ」
「ようやく力の差を理解しましたか。もはや私に負ける要素はありません。この力があればお前たちを倒すことも容易いこと!」
カテレアは勝利を確信したのか、歓喜に歪んだ顔で叫び、大声で笑いだした。それは燻っていた想いを、積もり積もった劣等感を解放した姿。今まで手の届かなかった相手の上に立ち、ようやく見下せる負の達成感。俺やセラフォルー様らが呆然とカテレアの姿を見上げる中、誰かその笑い声を遮った。
「まあでも
そう言うとアザゼルは懐から何か短い短剣を取り出した。それは一見すれば何の変哲もないただの短剣だった。別に豪勢な装飾もなかった。アザゼルはその短剣の先をカテレアに向ける。
「どうして俺が
アザゼルが言葉を発すると、短剣が光った様な気が・・・って何か輝きだしてる!?
「
「アザゼル、それは一体なんなのですか?」
カテレアの言葉にアザゼルは口を歪ませる。
「確かに俺でさえ、まだ完璧な神器は作れていない。でもなそれなりの物は出来てるんだよなぁ!」
そして堕天使総督はその言葉を発した。
『
目も眩むほどの光が一面に溢れ、そしてそれが人の形になる。そしてそこにいたのは、
「黄金の騎士?」
全身を鎧に包まれた黄金の騎士。背中には6対12枚の黒翼を生やし、右手には巨大な光の槍。あまりのかっこよさに、俺の心がトキめいた。すっげぇなにあれカッコイイじゃねぇか!
「白い龍の鎧と他系統のドラゴンの力を持つ神器を研究して作り上げた、俺の人工神器の傑作品の一つだ。名前を『堕天使の閃光槍』。そしてこの姿はそれの禁手、『堕天使龍の鎧』だ。もっとも、禁手擬きでしかないがな」
「なるほど、人工物の紛い物でも仮に神器と名乗るもの。一時的でも禁手に至れるというわけですか。そのようなものを作り上げるとは、やはり貴方は危険すぎる。なおさらここで潰させてもらいます」
「ちょうどいい、試運転にもってこいの舞台だ。データ収集のためにも、せいぜい頑張ってもらうとするか」
「舐めるなぁ!」
そして二人は、目にも留まらない速さで動きだす。カテレアの腕の一振で展開された魔法陣から射出された、何十もの氷の刃を掻い潜るアザゼル。降ってくる氷を、同じ氷で全て相殺するセラフォルー様。くそ!レベルが違いすぎる!
いったい何がどうなってるんだ!?ギャスパーを助けたら白龍皇が裏切って敵になって、俺の家族を殺す言ったから許さねぇと思ったら、黒い靄と一緒にことなが出てきて、そのことながいた場所に氷が降り注いで、今じゃアザゼルが禁手化して、カテレアと戦っている。もう訳が分からねえ!
「ことな!返事をしなさい!ことな!」
「ことなちゃん!いま助けますから!」
部長や朱乃さんの言葉で俺は呆けていた頭をが覚めた。そうだ!あそこにはことながいたはずなんだ!早くしないとあいつが・・・!
「やはりアザゼルは凄いな!ああ、やっぱりすごい!」
そして余りのことに意識を逸らしていたが、俺の目の前にいるヴァーリはその光景に笑っていた。何なんだよこのイカレ野郎は!俺の心を読んだのか、笑っていたヴァーリは、俺にがっかりした顔を向ける。
「やはり君は力不足だ。君の両親や町の人間を殺すと怒りを煽ってもまだ足りない。ならば次は、リアス・グレモリーか?それとも他の仲間か?君の目の前で君の両親を、友人を、主や仲間を甚振ればいいのか?一体どこまやれば君は俺と対等になってくれるんだ」
まるで心底がっかりしたような、無駄に突かれたようなヴァーリの姿。その姿に俺は、心に宿った想いを呟く。
「殺すぞ」
その言葉に、俺は今の自分の感情を理解できた。こいつはこいつだけは!今ここで倒さないといけない!絶対にこいつだけは許しちゃいけない!
「Welsh Dragon Over Booster!!」
俺の想いに呼応するように、『赤龍帝の鎧』が俺を包む。アザゼルからもらった腕輪のおかげか、疲労感も苦痛もない。だが時間制限があるらしく、ドライグから早々に決着をつけるように言ってくる。ならばと、俺は天使長からもらった
「ほう、それはミカエルからのプレゼントか?だが当たらなければ意味がない。さぁ、俺を楽しませてくれよ赤龍帝!」
「ヴァァァリィィィィィィィィ!!」
ほくそ笑むヴァーリに俺は、力のままに走り出した。
「ここは一体どこなんだ?確か僕は小猫ちゃんと一緒に夢殿さんを会議室に連れて行こうと・・・」
未だぼんやりする思考の中、僕は周りを見渡す。だが、僕の周りに何もなく、ただ真っ黒な闇が広がっているだけ。それこそ、自分が立っている足もとさえも見えず、自分が本当に立っているかすら判らない。少し歩いては見たものの、廊下にいたはずなのに壁に当たりもしない。ということは、ここは廊下とは別の空間ということになる。
「早く夢殿さんと小猫ちゃんを見つけないと」
僕はこの空間に取り込まれたであろう、二人のことを考える。おそらく、二人とも僕と同じ状況に陥っているはずだ。だったら、すぐにでも二人を見つけないといけない。悪魔である僕や小猫ちゃんと違い、人間である夢殿さんに、この異空間がどんな影響を及ぼすのか分からない。
「小猫ちゃーん!夢殿さーん!」
取りあえず叫んでは見たものの、ちゃんと届いているのかどうか・・・。どうにかして二人と合流する案を考えるために、心を落ち着かせようと少し目を閉じる。そしてどうにか心を落ち着かせ、目を開けるとそれはあった。
「扉?」
そう、今まで何もなかったのに、目の前に扉が現れたんだ。何の変哲もない木製の扉で色は茶色。扉には『ゆめどのことな』とピンクの名札が掛かっていた。
「一体どういうことなんだ?どうして夢殿さんの名前が・・・」
そんなことを考えるが、周りを見てもただ闇が広がっているだけで、唯一目の前の扉しか見当たらない。
「選択肢はないってことなんだね」
僕は意を決して、その扉を開けた。
『わたしのへやにようこそ!』
ゆめどのことながわらった
マネッチア
ジニア