食戟のソーマ×ジョジョの奇妙な冒険~Sugar Soul~ 作:hirosnow
調理実習室にて、二人の少年少女が、己の実力を証明するために、調理の最中だった。和音は、二人の一挙手一投足に注意を払う。相手への妨害工作は勿論のこと、食べ物に異物を混入させたり、第三者の幇助がないか、これらを厳しくチェックしなければならない。
そして、もう一つ__。
二人がどのような料理人かを、調理する姿を通して、知ることも目的としてあった。
今年、面接試験を排除したことは、遠月学園の総帥の意向だった。総帥曰く、「この学園への入学を希望する者が目指すことは、一流の料理人になることに他ならない。それが唯一、そして、絶対のテーゼである」とのことだった。人柄や家庭環境、家柄など関係ないと。
和音からすれば、概ねその意見に賛同するものの、実際には、在学する生徒の中には、料理人という括りを忌避する傾向の人間もいるので、そのテーゼとやらは、実態に即していないと思っていた。
さて、和音の目は、若き料理人の作業工程を注視する。少年の方は、二階堂
二階堂は、フライパンにバターを引き、フォアグラとキノコ類をソテーにし、塩コショウで味付けをした。さらに、もう一つ、フライパンを用意すると、ここにもバターを引き、割って溶いた卵を流し入れた。
「ここからだ。
二階堂が、フォアグラの乗った、フライパンの上に、マデラ酒を振りかけた。
フライパンから炎が立った。フランベという技法で、お酒の香りを食材に移す効果があるとされる。
そんな派手なパフォーマンスを目の当たりにしても、和音の二階堂に対する評価は影響を与えなかった。
それよりも、和音の関心は、
◆
二条理莉香は、アマンドプードル(アーモンドパウダー)と粉糖をふるいにかけ、混ぜ合わせるとこれを冷蔵庫で冷やし、オーブンを予熱した。
続いて、理莉香は、数多の数と種類の卵の中から、数個を選定した。材料選び、つまり、目利きもこの試験の要素の一つとなっている。質の劣るものや鮮度の古いものも用意された卵には混ざっている。質の良し悪しなどお構いなく、手にした卵でオムレツを作った二階堂に対して、理莉香は根気よくその真贋を判別しようといていた。卵を割った後も、黄身の盛り上がり具合や白身の弾力を見て、使用すべきかをチェックしていた。
「ふむ。この子は、材料選びの点では合格といったところね」
和音は、そう評点を手元のノートへ書き込んだ。その時だった。
「ねえ、審査員さん」
和音は、声を掛けられた。
「なんでしょう?」
「ハンドミキサーある?」
と、尋ねられた。
「ここにあることはあるんだけど、動かないみたいで」
理莉香からハンドミキサーを受け取ると、和音も機動させてみたが、彼女の言うとおり動作しなかった。
「ええと、他のフロアにいるスタッフに連絡を取って、用意しましょうか?」
和音は、備え付けのインターホンに手をかけようとしたが、「じゃあ、いいや」と理莉香はその申し出を断った。
菜箸や泡立て器でも、卵を混ぜるだけなら目的は達せられるだろうが、相当腕の力を要するはずだ。それに、綺麗に
「出ておいで、『ブリング・ミー・トゥー・ライフ』!!」
「なっ!」__和音は、心の中で感嘆符を打った。理莉香の傍に、一体の
「さあ、こいつを攪拌するよ。メレンゲにするんだ」
理莉香は、卵白に乾燥卵白とグラニュー糖を加えると、理莉香の傍らに立つ像から伸びた二本の腕が、泡立て器を持ち、まるでハンドミキサーのように高速で卵白を泡立て始めた。