真・仮面ライダー 〜CASE・8〜   作:リアクト

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長らくお待たせいたしました。

ビルド面白いっす。


第16話「雪乃」

SideA(由比ヶ浜視点)

 

 はるのんさんの話は、つまりこういうことだった。

 

 ゆきのんは生まれたときから虚弱で、5歳の時には既に、あと10年生きられれば奇跡、という状態だった。主に心臓が弱かったみたい。きょじゃくたいしつ?で、病気じゃなくてもすぐに息があがっちゃったりしてたみたい。はるのんさんはその時まだ小学生だったけど、妹を助けなきゃって必死に勉強して、それまでも天才って呼ばれてたのに、中学生の頃にはもう、大学生より物知りで、資格なんかも取れるやつは片っ端から取ってたんだって。

 中学生の頃、ゆきのんのお家の会社とお付き合いのあった、ざいだん?を調べてたら、「人体強化・レベル1」「改造兵士」っていう言葉を見つけて。はるのんさんはお医者さんじゃなかったけど、理屈とかそういうのを全部理解して、必要な人達をどんどん仲間にしていった。ざいもくくんもその時に出会ったんだって。それで、そのざいだんの、人体強化コーナー(ぶもん?)を丸々買い取って、自分が任されてた会社にドッキング(吸収合併)したんだって。それで、その頃もう余命数ヶ月って言われて、意識もあったりなかったりのゆきのんを、半分強引に人体強化ってやつで治したんだって。ゆきのんはその時にたまたま、もっと上のレベルの改造のことを知っちゃって、実際にへんしん?するところも見ちゃって、それが入院してる時に仲良くしてた人だったから混乱しちゃって、それに自分が改造を受けたことで心が尖っちゃって、それで今みたいに身体が強くなって、頭は元々良かったらしいんだけど、人が信用出来なくなっちゃったんだって。隼人くんとはまだ身体が弱かった頃に親同士がお仕事の関係があったから良く遊んだりしてたみたい。幼馴染ってやつだよね。なんか色々あってゆきのんは隼人くんの事をよく思ってないみたいだけど・・・。

 

 そこまでの話をはるのんさんから聞いている間、あたしはずっとゆきのんを抱きしめて、背中をさすってあげてた。はるのんさんが話し始めた時はすごかった。きれいな髪を振り乱して「友達を奪わないで」「もう一人になりたくない」って、子供みたいに泣き叫んでた。今は泣きつかれて、あたしに寄りかかって寝息を立てている。

 辛かったね。哀しかったね。でも、ゆきのんはやっぱりすごいよ。いっぱいいっぱい我慢して、努力して。余命なんて言葉、あたし達には関係ないと思ってたけど、それをずっと小さい頃から突きつけられて、それでも歯を食いしばって。だからあたしはゆきのんの背中をさすりながら言ったんだ。

 

「ゆきのん、頑張ったね。偉かったね。もう大丈夫だからね。ずっとあたしが隣にいるよ。ヒッキーだって、はるのんさんだって、みんなみんなゆきのんの味方だからね」

 

 あたしはこれまでずっと親や周りに合わせてきた。それが我慢だし努力だって思ってた。でも、そんなの全然違ってた。それはきっと「自己満足」てやつだったんだと思う。はるのんさんの話を聞きながら、ゆきのんの涙を拭きながら、そんなことを考えていた。

 

「・・・それで、ヒッキーはどこに・・・?」

「・・・」

「はるのんさん・・・?」

「・・・比企谷くんは、財団第三営業部。つまり、隼人たちをさらったやつらの所に行っているわ」

「・・・え?」

 

 一瞬何を言われたか分からなかった。

 

 なんで?なんでヒッキーがそんな危ないことしてるの?確かにゆきのんは仲間だし、お姉さんとも仲良しかもしれないけど。確かにヒッキーは強いし、頭もいいし、か、かっこいい・・・し、間違いをちゃんと間違いだって言える勇気のある人だけど。でも、危なすぎない?

 

 それを言おうとした時だった。

 部室にざいもくさんと平塚先生が飛び込んできた。

 

 

 

SideB

 

 陽乃が由比ヶ浜と話している頃、総武高校の裏門には、10数人の覆面をした人間が集まっていた。一人は通信機を目の前に置き、しゃがんで周波数を合わせている。やがて耳に当てたヘッドホンを外すと、リーダーらしき男に向かって言った。

 

「報告します。現在雪ノ下陽乃、雪乃、並びに由比ヶ浜結衣が部室内にいる模様。周辺に材木座義輝、教師の平塚静がおりますが、目立った動きはありません」

「・・・頃合いか。全員聞け。これより総武高校奉仕部部室を襲撃、中の人間を確保する。そのうち雪ノ下雪乃はレベル1プラスである。身体能力は通常のレベル1より一回り上だが、レベル2には劣る。雪ノ下陽乃は無改造だが、高レベルの武道技術を持っている。いずれにせよ強襲の混乱に乗じて逃走ルートを狭め、渡り廊下に誘導しろ。俺は渡り廊下で待ち受ける。材木座と平塚の動向はチェックしておけ。奴らも無改造だが、戦闘能力は雪ノ下姉妹と変わらん」

「了解」

「確保次第第三に戻る。それからの事はおって指示する。なにか質問は」

「逃げられた場合はいかがしますか」

「追い込んで消せ」

「了解」

「他には。・・・ないな。では、」

「ほ、報告します!材木座、平塚両名が監視カメラにきづいた模様、死角が増えています!」

「急げ。合流されると厄介だ。・・・状況開始」

 

 合図を受け、覆面達 ―財団第三営業部実働部隊― は音もなく行動を開始した。

 

 

 

SideC

 

「無事か!」

 

 部屋に入ってくるなり、平塚が叫ぶ。後ろでは材木座が息を切らしている。

 

「静ちゃん・・・どうしたの?」

「校内に不審者が多数侵入した。材木座の分析では、真っ直ぐにこっちに向かってきているらしい」

「・・・え」

「本当だ。陽乃嬢、そこの女生徒2人を守り、この部屋にいてくれ。・・・平塚教諭」

「うむ、私と材木座は侵入者を食い止める。その間になんとかしてここから脱出してくれ」

「なんとかしてって・・・わたしと雪乃ちゃんはともかく、ガハマちゃんは一般の生徒だよ?そんなに簡単に「来た」・・・!」

 

 平塚はいつも着用している白衣の内ポケットから金属リベットが鈍く光るグローブを取り出し、軽く腰を落とした。材木座は平塚に並ぶと、泰然自若と腕組みをし、仁王立ちになった。

 この部屋に至る通常ルートは2つ。奉仕部は直角に曲がった校舎の角にあり、正面の廊下、または教室を背に右側の廊下を真っ直ぐ、最低でも10メートルは進むことになる。

 

「材木座、正面頼む」

「平塚教諭、右側恐らくは3人。この狭さ故銃器類の心配はありますまい」

「何故分かる」

「先程監視カメラの映像をハックしました。この校舎に入る直前、3つにグループが分かれています。右、正面、残りは渡り廊下で待機。つまり、逃げられるとすれば」

「窓か」

「ご明察」

「一般人がいることを考えると・・・」

「逃げ場なし、ですな」

「そうか」

 

 平塚は軽く目をつぶる。この修羅場、いくら隣りにいる男が巨漢で並ではない頭脳を持っているとして、教え子を前線に晒したくはない。だが、正直な所、自分に余裕があるわけでもない。すまん、と心の中で頭を下げながら、平塚は材木座を見た。

 

「・・・!」

 

 一瞬、誰かと入れ替わったのかと思った。今隣で仁王立ちしているこの男。見た目こそ平塚の知る天才、材木座義輝ではあるが、目つきが違う。表情が違う。

 

「なるほど」

 

 あの陽乃が惚れるわけだ。

 こいつは、自分の命の賭けどころを解っている。この材木座といい比企谷といい、高校生の年齢でこうまで肝の座っている男はそういまい。

 

「正面、5」

「場所を変わろう」

「いえ、このままで。そちらの武器はその拳でしょう。4人以上を同時に捌くのは難しい」

「・・・確かに。では材木座、君の武器はなにかね?」

「我の武器ですか。それはこの身体に装着してあるナノスキンアーマー、そして・・ッ」

 

 ふいに材木座の姿勢が低くなる。足を大きく拡げ、直角まで膝を曲げる。そのまま前傾姿勢をとり、溜めを作ると

 

「ふんんっっっ!!」

 

 階段を上りきり、現れた5人の赤く光る赤外線センサーを確認したところで、材木座は消えた。

 

「おっぐうう!」

「ごはぁっ」

 

 反対側の壁までそのまま押し切り、更に予め空けておいた窓から侵入者をまとめて叩き落とした。

 

「我の武器は、相撲ですよ教諭」

 

 材木座が5人を料理している頃、平塚にも侵入者の手が迫っていた。

 

「相撲とはやるなぁ、材木座。・・・さて」

 

 右脚を引き、右腕に力を溜め込む。侵入者の一人が青い火花の散る棒を持ち、低い体勢で走ってくる。裏拳の要領で横薙ぎに棒で殴ってくるが、振り切る前に平塚が出した左前蹴りが軌道を逸らす。

 

「衝撃のぉ!」

 

 間髪入れず、平塚は動いた。引いた右半身の力を一気に放ち、直突きの形で拳を突き出した。

 

「ファーストブリットぉぉぉ!!」

 

 一気に前に出した右脚からどん、と大きな音が響き渡る。中国八極拳において「震脚」と呼ばれる足運びである。

 食らった侵入者は「お゛っ」と息の詰まった音を口から出し、その場で崩れ落ちた。

 残る二人は倒れた仲間の上を踏みつけ、迫ってくる。手にはさっきと同じ棒を持っていた。

 

「品がないな貴様ら」

 

 倒れた侵入者の持っていた棒を拾い上げ、徐に二人の真ん中に投げる。慌てて両側に避けた所を、平塚は素早く走り抜け、振り返る。

 足元のおぼつかない侵入者達に向かって跳躍し、両手でそれぞれ侵入者たちの後頭部を掴み、そのまま倒し込む。例の棒を拾いそれぞれの首筋に押し当てると、侵入者達は大きく痙攣した後動かなくなった。

 

 

 

SideD(陽乃視点)

 

 廊下が静かになった。戦闘が終わったのだろう。今なら逃走ルートも確保出来るかもしれない。

 そう思い、震えながらも雪乃ちゃんの手を握って離さないガハマちゃんに声をかけようとした、その時だった。

 

「・・・何、この音、どこから・・・」

 

 どこからか、低いモーターの音がしている。決して大きくはないが、出力自体が強大なのだろう、床が微振動を起こしている。校舎の床が微振動を起こす?・・・てことは発信源は、中!?

 私は慌てて二人を強引に引っ張り、教室から廊下に出た。

 

「お、おい陽乃、いきなり出てきたら危ないだろう!」

「違う!音!」

「陽乃、こっちだ!」

 

 義輝の声が1秒遅かったら、私たちは全員ミンチになっていただろう。

 音の主は、奉仕部部室の真下から、床を突き抜けて現れた。

 

「イ・ショニ・キテモ・ラオウカ」

 

 ひと目で分かる。改造兵士レベル2。しかも後期型。作戦に合わせたアタッチメントを使い遂行出来る、汎用性の高いタイプ。3メートル近い身体に、左腕には掘削用ドリルが装備されている。

 こいつもかなり重度に改造されているのだろう、言語能力はカタコトもいいところだが、意味のある言葉を発するところを見ると、思考力はあるらしい。

 

「ね、姉さん・・・」

「雪乃ちゃん・・・。大丈夫、安心して。二人はちゃんと守るから」

「だめ、よ・・・おねえちゃんもいっしょ・・・にげ・・・」

 

 あまりのショックに意識が混濁しているのだろう、一時的に幼児化を起こした雪乃は、言いながらもまた意識を手放そうとしていた。

 

「義輝、二人をお願い」

「いかん、陽乃嬢!」

「お願いよ。今回こそは雪乃ちゃんを守らせて。時間稼ぎくらいはするわ」

「ふざけるな!それは私の役目だ、陽乃!」

「静ちゃんも、お願いね。比企谷くんたちのこともあるし、あとのことは・・・?」

 

 そこまで言った時、私の耳には確かに聞こえた。どこからだろう。

 

 それは少し甲高い、怪鳥のような・・・音?声?

 

 レベル2も音を聞いたのか、後ろ、つまり部室の方を振り返る。

 同時に激しくガラスの割れる音と共に、一人の男が飛び込んできた。

 

 

 

SideE

 

「新手!?」

「いや」

 

 材木座は陽乃の疑問を否定した。

 

「敵ではないが・・・なぜここにいる・・・?」

 

 飛び込んできた男は、かなり異様な風体であった。

 黒い革のベストと同じく黒いハーフパンツ。全体に赤いストライプが波のようにうねっている。

 脚は膝までを布で巻き上げ、左腕には大きな腕輪をつけていた。

 そしてなにより異様に見えるのは、腰に巻いた巨大なバックルのベルトであった。

 

「ココ、ユキノ、イルカ?」

 

 男が声を発した。外国人が覚えたての日本語を話しているような感じ。これに陽乃が反応した。

 

「大介、くん・・・」

「大介?・・・というと、あの資料にあった男か!」

「うん。・・・類まれなる身体能力を買われて連れてこられた孤児。そして検査の結果」

「既に改造されていたというものだな」

「改造じゃないわ」

「?」

「彼には現代の改造技術が使われていない。信じがたいことだけど、呪術によって、身体の変身を可能にした、いわば天然種よ」

「ユキノ、イナイカ?」

「大介くん、久しぶりね。・・・雪乃ちゃんならここよ」

 

 大介と陽乃に呼ばれた男は、彼女の指す方向に目を向けた。途端にその目には憤怒の炎が燃え上がっていた。

 

「オマエラ、ユキノ、ナニヲ、シタ?」

「・・・なぜ彼はあんなに雪ノ下に執着しているのだ」

「大介くんはね、研究所にいた頃、雪乃ちゃんに会っているのよ。・・・そして、雪乃ちゃんは彼の変身を見てしまった」

「なんだと・・・」

「今なぜ彼がここにいるのかは後よ。でも、彼は少なくとも敵じゃない」

 

 大介がレベル2を通り越し、雪乃に近づこうとする。それを見たレベル2は、左腕のドリルを回転させ、道を塞いだ。

 

「ジャ・マヲ・ス・ルナ。キサ・マカラ・カタ・ヅ・ケルゾ」

「・・・」

 

 大介は立ち止まると、顔を伏せた。身体が軽く震えている。

 

「フル・エテイ・ル。コワ・クナ・タカ」

「・・キノ・・・オレ・・・マモ・・・」

「ン・ン?」

 

 大介が顔を上げた。その瞳には、先程の怒りの炎がさらに大きく燃え上がっていた。

 

「ユキノ、トモダチ。オレ、トモダチ、マモル」

 

 大介の左上腕部に巻き付いている腕輪に、眼のようにはめ込まれている宝石が紅く光った。腕輪が輝きを増す中、大介の両腕がゆっくりと、大きく拡げられた。

 

「アーーーーー・・・」

 

 力を込めて何かを抱え込むように腕を畳み、交差させる。

 

「マーーーーー・・・」

 

 身体の中に膨れ上がる力。やがてそれは光を放ち、爆発する。ダイスケの両腕が、引き剥がされるように大きく左右に弾けた。

 

「ゾォォォォォオオオオーーーーーーンンンン!!!」

 

 白から黄色、そして緑に光が輝く。四肢からは鋭利なヒレのような突起が生え、口が大きく裂け、紅く光る眼がその形を大きく変える。皮膚は深い緑を紅い蔦が這い回るような、毒々しいとも言える色合いになっていた。

 

「アマ・・・ゾン・・・」

「トモ・・・ダチ・・・マ・・・モル・・・」

 

 怪鳥のような甲高い叫びと共に、陽乃にアマゾンと呼ばれた大介は、レベル2に突っ込んでいった。

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