インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 キャラクター紹介

 川村 ゆめ

 中学2年生。りんくのクラスメート。
 プリキュアなどの玩具を手掛ける大手メーカー『財団B』を一代で築き上げ、『玩具王』とも呼ばれる財団B会長・万代何晏(ばんだいかあん)の孫娘。
 絵に描いたようなお嬢様で、髪形は当然のように縦ロール。常に優雅なふるまいを心掛けているが、突発的事態には取り乱すことも。
 アニメ嫌いを公言しているが、実は隠れプリキュアファン。本当はりんくたち3人組の会話に加わりたいのだが、自身の立場やキャライメージなどの体面を重視するあまり、素直になれないツンデレさん。
 それ故にプリキュアをバカにするような発言を繰り返しているが、殆どのヒトには魂胆モロバレ。しかし自身は『カンペキに隠し通せている』と思っている。
 金にモノを言わせた財力を使っての行動力は抜群で、クラスや学校全体を巻きこんだ一大イベントを催すこともあるが、そのほとんどはプリキュアトークに加わりたいが故の、お金と労力と時間をかけたチャンスメイクである。
 常に同年代の執事・ギャリソンを従えて行動する。
 
 ギャリソン

 中学2年生。ゆめの執事を務める少年。
 ゆめが5歳の時から彼女に仕え、ゆめの身の回りの世話はもちろん、スケジュール管理などの秘書的な仕事も完璧にこなしており、14歳にして執事として完成されている驚愕すべき少年である。
 また、料理の腕前はプロ級であり、財団B会長・万代何晏も絶賛したほど。週に何度かは、川村家で腕を揮っている。
 川村家の教育方針から、ふだんはゆめとは別の隣町の中学校に通っている。各種格闘技・スポーツにも精通し、部活動に助っ人として参加していることもある。
 なお、ギャリソンとはゆめが付けた執事としてのコードネームであり、本名は『時田 はじめ』。
 ゆめに付けられた『ギャリソン』の名を魂の名として刻んでおり、本名で呼ばれると反射的に『ギャリソンとお呼びください』と返すほど。
 まさにマンガから出てきたような執事的性格で、老若男女問わず、丁寧な物腰で接する。

 ―――――――――

 まほプリ、終わっちゃいましたね……
 しかしオールスターキャスト&キュアホイップ先行登場など、最近の平成ライダー最終回さながらの超豪華な最終回で、おなか一杯になりました!

 来週からはさらにあま~く、プリアラを楽しみたいと思います!

 さて今回からは、もうひとりのプリキュア、キュアデータに迫るストーリーとなります。
 プリキュアとなったりんくを、アニメではない『現実』が容赦なく苛みます……

 鬱的描写がありますので、耐性の無い方はご注意ください……


キュアデータ編 第5話  もうひとりのプリキュア登場!その名は@キュアデータ!
ヒロインの現実


 きらめく星のプリンセス!

 っていうワケで、今回の当番はアタシ、キュアトゥインクルだよ!

 

 りんりんとメモリア、マトリクスインストールまでモノにしちゃうなんて、ホントスゴいよ!

 

《あたし、りんくになってる!》

『私も……メモリアになってる……』

『メモリア―――』

《りんく―――》

『私をプリキュアにしてくれて―――』

《あたしをこの世界に連れてきてくれて―――》

 

『《ありがとう―――》』

 

 でもね、まだアタシを含めて3人しか取り戻せてないこと、忘れないでよね?

 はるはるやみんなを早く助けてくれないと、アタシだって困るし……

 

 それに、サーバー王国の封印だって―――

 

『早くプログラムクイーンを助けたいなら、アタシたち『プリンセスプリキュア』を全員助け出して!アイツら、サーバー王国の入り口の封印に、『鍵』を司ってるアタシたちのデータを使ったみたい……』 

 

 力を悪用されちゃったアタシにも責任がある……だからアタシ、全力でふたりに力を貸してあげる……!

 だから、がんばってよね?こんな最初の方でつまづいちゃうなんて、ナシだからね?

 

 それじゃ……『インストール@プリキュア!』、オンステージ!

 

 ―――――――――

 

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 ⇒  LINK TOUDOH

    CURE-MEMORIA

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    ??????

 

 ―――――――――

 

 家に帰った私のコミューンには、それはもうすごい数のメッセが着信していた。

 特にむぎぽんとそらりん、川村さん姉妹からのメッセは100を超えていた。そういえばあの時、助けを待つって言っといて、結局はキュアメモリアルに変身してプラネタリウムから自力で脱出しちゃったわけだし、助けに来てくれたレスキュー隊員さんとかにも迷惑かかっちゃったかな……

 そう思った私は、4人にこんな趣旨のメッセを返した。

 

<スゴいよ!まさかホントーにプリキュアがいるなんて!ってか私、そのプリキュアに助けてもらっちゃったの!ホンットマジヤバい!サインとかもらっとけばよかったぁ~!あ、そういうワケで私は無事だから、みんな安心して!それじゃみんな、おやすみ~!

 

 ……―――全部ウソですごめんなさい!!(二度目)

 私なんですッ!!私がそのプリキュアなんですホントごめんなさい!!!

 

 ほどなく、むぎぽんから電話がかかってきた。

 

《りんく!マジで心配したんだからね!?この間の時もそうだけど、アタシ、気が気じゃなかったんだからぁ……!》

 

 そのあとはそらりんが―――

 

《ホントに心配したんよ~!戻ってみたらおらんかったって川村さん言うたからぁ~……プリキュアが助けてくれたってホントなん!?》

 

 でもって川村さんまで……

 

《東堂さんッ!!いったいどこに行っておられましたの!?レスキュー隊から『いない』と聞いた時は心臓が止まりそうになりましたわよ!?……あ、さち!》

《……りんくさん!ほんとうにりんくさんですの……!?ごぶじで……ごぶじでよかったですの……うぅ……ぐすん……》

 

 みんな、本気で私のことを心配してくれてた。電話の向こうの声を聞くたび、心がずきりと痛む。私は、こう返すことしかできなかった―――

 

「―――ごめん……」

 

 無事を確認してくれたのか、むぎぽんとそらりんも安心してくれたようだった。川村さん姉妹も何とか納得してくれたようだった。

 今日はもう遅いからお休み、と、最後に電話を切ったところで、私はコミューンを持ったまま、ベッドに寝転がって、天井を見上げて―――

 ニヤついていた。

 

「夢じゃない……夢じゃないんだよね……私、本当にプリキュアになったんだ……!!」

 

 右手で天井にかかげたキュアチップ。《@01 CURE-MEMORIAL》と書かれていて、ラベルには私が変身した、キュアメモリアルの笑顔。

 あー!!!言いたい!!せめてむぎぽんとそらりんだけにはバラしちゃいたい!!

 

 ―――昨日のプリキュア、ホントは私なんだ!私、夢が叶っちゃったよ~!

 

 なんて言っちゃいたい!でも、お約束なんだろうけど、言っちゃダメなんだろうなぁ……

 今の時代、壁に耳あり障子に目ありどころか、建物に監視カメラあり、街のいたるところに盗聴器まで仕掛けてある……かも。いつどこで、私の変身がバレるかわかったモノじゃない。

 それに、もしバレたらどうなるか……これもなんとなくわかる。あっという間にネットで拡散されて、家族や友達、学校のみんなに迷惑がかかる―――

 

 そう―――アニメのプリキュアではほとんど……というか、一度たりとも触れられなかった『ネットの闇』というモノが、現実には存在しているのだから。

 バラしたら、その時点で人生オワタと考えても差し支えはないだろう―――

 

 うれしさ半分、不安半分。あぁ、プリキュアはつらいよ……

 明日、みんなと会うのが、ちょっとユウウツだ……―――

 

 ―――――――――

 

 ……ENEMY PHASE

 

 ―――――――――

 

「おや……アラシーザー、お咎め無しだったのかい?」

 

 カイザランチュラ様と謁見し、報告を済ませた俺に声をかけてきたのは、俺と同じ四天将であるネンチャックだった。

 

「……彼の御方の御心には感謝せねばなるまい。三度も敗北を喫した俺に、再起の機会を下さった。次こそは必ず、プリキュアを―――」

「あぁ、そのコトなんだけど、今度はボクが行くことになってるからサ」

 

 この男―――ネンチャックと俺は反りが合わない。

 戦とは常に正々堂々、己のみを信じて投じるもの。しかしこの男は、策を弄して罠に嵌め、甚振るように獲物を狩る、戦士として風上にも置けぬ卑劣漢だ。

 何故カイザランチュラ様は、このような男を懐に置いているのだ。これだけは、彼の御方の御心が知れぬ。

 

「貴様とて……別のプリキュアに二度も敗北を喫しているではないか。つまらぬ策を弄するから辛酸を嘗める羽目になるのだ」

「……言ってくれるねェ……猪突猛進するだけが戦いじゃないんだよ。これまで僕が負けたのは、アイツが計算外の力を発揮したからサ……解析した今なら負けはしないよ……!」

「……フン、見物だな。一度目を付けた獲物を執念深く追う貴様は……さながら手負いの毒蛇よ」

「褒め言葉と受け取っておくよ、アラシーザー」

 

 ……褒めた訳ではない。その執着心が身を滅ぼすのだ。

 

「今日こそ必ず仕留めてやるよ―――」

 

 まぁ精々頭を捻り戦うがいい。彼の御方がリアルワールドに降臨するには、プリキュアの力が必要なのだから。

 誇りあるジャークウェブの尖兵として、役立って見せろ、ネンチャック―――

 

「―――キュア……データ……ククク……!」

 

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    ??????

 

 ―――――――――

 

 翌日―――

 

 寝惚け眼で朝ごはんを食べていると、パパの読んでいる新聞、その一面が目に入った。

 

 〈不明生物 市街地を襲撃 死傷者多数 大泉〉

 

 眠気が一瞬で吹っ飛んだ。

 昨日のあのバグッチャーが暴れて、街が壊れて、燃えて、人が傷ついて―――

 

 誰かが、死んだ――――――――

 

「―――――――――……」

 

 アニメのプリキュアだと、ほとんどの作品で、モンスターを倒したら、壊れたモノはほとんど元通りになってくれる。戻らない作品もあるけれど―――

 誰かが死ぬなんて―――当然、そんなの、無かった。

 これは、現実なんだ。

 私が昨日、プリキュアに変身したことも。

 バグッチャーが街で暴れたことも。

 そして―――

 

《……お伝えしておりますように、昨夜7時30分ごろ、大泉町の中心市街地に大型不明生物が出現し、商店や車などを襲撃しました。これまで、3人の方の死亡が確認され、147人が重軽傷を負い、うち2人は重体で、心肺停止の状態だということです。また―――》

 

 ニュースキャスターの男の人が、あくまで感情を抑えて、淡々と伝えている。

 食べているご飯が、鉛のように感じられて、私は7割方の朝ご飯を残して席を立った。

 

「?りんく、もういいの?」

「―――なんか、食欲ないかも」

「カゼでもひいたか?」

「……大丈夫。学校、行けるから」

 

 私はあくまでパパとママの前で平静を装った。

 洗面所で、顔を何度も洗った。

 

 ―――涙が止まらなかった。

 

《―――りんく》

 

 メモリアの声に気づいたら―――20分近くたっていた。

 ネットコミューンを取り出すと、メモリアが不安げな顔をして私を見上げていた。

 

《学校、行こ?》

 

 その顔を見て、私ははっとした。

 私―――メモリアにまで、心配をかけてた。

 

「―――……うん」

 

 笑顔を作ろうとしたけど、力が入らないや―――

 でも―――それでも、この街の一日は、また始まっていく。

 中心市街地から離れている大泉中学校も、通常通りの授業の予定。

 

 出ぎわに、またテレビが目に入った。

 

《……また、現場では大型不明生物に単身で立ち向かい、かつ撃退したという、10代前半と思しきコスプレをした少女の目撃情報が30件以上、警察に寄せられています。こちらは『CURE-TUBE』に視聴者が投稿した映像です―――》

 

 どきりとした。その画面に映っていたのは―――『キュアメモリアル』だった。

 

《『本当に助かりました!……あれって、最近ネットに出てきた『プリキュア』ですよ、きっと!信じられませんけど、……ネットから飛び出して、私達を助けに来てくれたんですよ!』》

《『あの子のおかげで、家が壊されずに済みました……まるで天女様ですじゃ……ありがたやありがたや……』》

《『ぷりきゅあ、ありがとう~~!』》

 

 テレビから流れる、街の人たちの感謝の言葉―――

 さっきまでズキズキと痛んでいた私の心を、そっとなでてくれるような―――

 

 ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、だけど―――

 

 ココロが、楽に、なった―――

 

「……メモリア」

《なあに?》

 

 玄関から出る間際、私はメモリアに言った。

 

「私が―――プリキュアで、いいのかな」

 

 当たり前のように、メモリアは答える。

 

《あたし、りんくじゃなきゃ、イヤ》

 

 ―――本当に、この子は、私の理想。

 私がプリキュアになっても、この子にはまだかなわない。

 プリキュアとしての―――誰かを守るための気構えは、この子の方がずっと上だ。

 私も―――まだまだ、見習いプリキュアだ。

 

 玄関のドアを開けて―――

 

 私は両手の頬をぱちんとたたいた。

 

 ―――――――――

 

 通学路でむぎぽんとそらりんに会うと、それはもう心配された上で、質問攻めにされた。

 

「マジで大丈夫なの!?はぁ……実際会うまで不安だったんだよ……ケガとかしてないのかなって……」

「ホンによかったわぁ……無事だって信じとったよ、わぁは☆」

「それでさ、ホンモノのプリキュアに助けてもらったってマジ!?どんな系!?お姉さん系!?妹系?!リーダー系!?」

「やっぱアレなん?わぁらと同じ中学生なんかなぁ?それか高校生?」

 

 どの質問にも、苦笑いで言葉を濁すリアクションしか、私は返すことができなかった。

 というか……この間の遠足の時よりも、ふたりへの隠し事が増えてしまった。それも、とてつもなく重大な。

 

 『私自身が、プリキュアになってしまった』コト―――

 

 ゆうべは、うれしさ半分、不安半分だった。でも今は、『不安』の比率が明らかに増えている。

 アニメでは決して触れられなかった『実害』を、新聞やテレビの画面越しでとはいえ、私は知ってしまったから。

 明るく振る舞って、はしゃぐという行動を、今の私は取れなかった。

 

 私の大好きなプリキュアが―――私を縛る枷になる。

 そんな日が来るなんて、思ってもみなかった―――

 

「東堂さん!」

 

 沈んだ気持ちの中で歩いていると、いつの間にか黒いリムジンが私達の横につけていた。

 後部座席のウィンドーが開いていて、そこにはこちらを見る川村さんの姿があった。

 

「あ、川村さん、おはよう……」

「おはよう……ではございませんわよ東堂さん!ワタクシがどれだけ心配したとお思いですか!?」

「…………ごめん……」

 

 私の顔を見て何かを感じ取ってくれたのか、川村さんはふぅ、とため息をついて言った。

 

「……そのご様子……アナタもいろいろと、お辛い目に遭ったようですわね……深くは訊かない事に致しますわ」

「川村さん……ありがとう」

「!!」

 

 気遣いがうれしくて、素直に感謝を口にした。すると川村さんは顔を真っ赤にした。

 

「か、勘違いなさらないでくださいませ!……Bミュージアムのリニューアルオープンも延期、再建までに半年……その他諸々の対応で、財団Bもかなりの被害をこうむりましたから、ワタクシも頭が痛いだけ、ですわ!……それでは、ごきげんよう」

 

 リムジンが発車していった。それを見送って、私達はもう一度学校に向けて歩き出す。

 通学路の途中でも街中を走るパトカーの台数が増え、マスコミ関係のヒトらしき大きなカメラを持った人が目立つようになり、上空にはヘリコプターが引っ切り無しに飛び、プロペラが発する爆音が絶えない。

 

 私が想像していた以上に、この街は一晩で変わってしまった。

 それまで、『画面の中』の、あくまでも『二次元』の中だけの存在だった『プリキュア』の、現実への出現。

 

 プリキュアが、世界で初めて現れた町―――

 私が生まれ育って、いつも見慣れていた大泉町は、その形相を変えていた。

 

 ―――――――――

 

「だいたいよ!!どうしてあんな風になってからプリキュアは出てきたんだよ!!?もっと早く、それこそバケモンが出てくる前に来てくれりゃ、あんなコトにはならなかったんだ!!」

 

 私達が教室に入った時、大声でわめいているクラスの男の子がいた。

 空手部に所属している、香川桃太郎くんだった。

 

「……なにがあったの?」

 

 むぎぽんが、教室の入り口近くに立っていた、クラスメートの宮本きせきさんに小声でたずねる。

 

「みんなで昨日のプリキュアのことを話してたら、香川くんが急に怒りだして……」

「昨日香川くん、街でバケモノに襲われて、それで香川くんの妹さんが大ケガしたって……それで、そうなったのはプリキュアのせいだって……」

 

 同じクラスメートの高橋おとさんの言葉に、私は心をずきりと痛めた。

 今まで、テレビや新聞越しに、被害のことを知っていた。それだけでも、私はどこかで責任を感じていた。

 でも、こうして、実際に怒りをあらわにする人を見て、私の心は更に締めつけられるようで―――

 

「………………っ」

 

 私は無意識に、両手で胸をぎゅっとつかんでいた。

 

「東堂さん、あまり気にしない方がいいよ?」

「そうそう、東堂ちゃんの好きなプリキュアはアニメの話で、『昨日のプリキュア』とは別だって……」

 

 高橋さんと宮本さんは、プリキュアファンの私を気遣ってくれてるんだろうけど、逆にそれが私にはつらい。

 気にするなと言われて気にしないのは無理だ。だって、昨日のプリキュアは、誰あろう、私、なんだから―――

 

「もっと上手に戦ってりゃ、おれの妹はケガせずに済んだんだ……なぁ東堂!」

「……っ!」

 

 香川くんが私を見てきた。私の心臓が強く打った。

 

「お前はプリキュア好きって言うけどな……おれは正直昨日で嫌いになった……!ヒーローだとかヒロインだとかいうなら、なんでおれの妹助けてくれなかったんだよ!?お前、プリキュア詳しいんだろ!?あのプリキュアはなんなんだよ!?どこのどいつか知ってんのか!?」

「ちょっと香川!八つ当たりはやめなよ!」

「そうやえ!りんくちゃんかて、昨日怖い目に遭って、まだ立ち直ってないんやから……!」

 

 私と香川くんの間に、むぎぽんとそらりんが割って入る。教室の中の空気が、殺伐としてきた。

 私の―――私がうまく戦えなかったから―――

 バグッチャーと戦うのに夢中になっていたから―――

 プリキュアになったことに、有頂天になっていたから―――

 香川くんの妹さんがケガをして―――誰かが死んで―――

 

「…………、」

 

 もう、私の心は限界だった。

 この場で言ってしまえば、楽になれる。

 護れなかったのは―――私なんだ―――

 

「………………私は……―――」

 

 口に出してしまいかけた、その時だった。

 

「“モモ”」

 

 ひとりの男の子が、教室に入ってきた。

 

「…………なんだよ、ほくと」

 

 彼は確か―――遠足の時に見かけた子。

 むぎぽんのお向かいさんで、香川くんと同じ空手部の、八手ほくとくんだ。

 

「モモの声が聞こえてね……うちの組まで響いてきたから、何があったのかと思って」

「……お前には関係ねぇよ。ただ昨日のゴタゴタ、プリキュアってのがもっと上手く戦ってりゃ、あそこまでの騒ぎにならなかったって言ってただけだ」

「…………それは…………違うと思うよ」

 

 八手くんの語気が変わった。拳をぎゅっと握っていた。

 

「何が違うってんだ!?アイツがやり方マズったからおれの妹もケガしたんだ!!それとも何か!?実際出てきたのがプリキュアじゃなくって、お前の好きな仮面ライダーだったら上手く戦えたとか言いたいのか!?」

「そうは言ってない……でも、プリキュアでもライダーでも、結果は同じだったって、僕は思う」

 

 むぎぽんが小声で、「ほくとは特撮ヒーローファンなんだ」と、注釈を加えてくれた。

 

「じゃあおれの妹は大ケガする運命だったってのか!?」

「運命とか、そういうんじゃない……でも、だからって、プリキュアを責めるのはおかしいって思うんだ」

 

 八手くんは、まっすぐに香川くんを見据えて言った。

 

「戦いに、上手も下手も無いんじゃないかな。ことさら、“守るため”に戦ってるのなら、誰であろうとも、全力なんじゃないかな」

「……どういう意味だよ」

「僕もキミも、格闘技をやってる。当然、誰かとの“戦い”になる。でもそれは、命のやり取りなんかじゃない、単なる『仕合』に過ぎないんだ。相手が格上なら、力量差が出て、当然負ける。それに、事前に誰と戦うか、ある程度予想がつく。だから、自分の『()』を知って、仕合に臨める。負けるとわかる『捨て仕合』だってあるし、負けても『次』がある。でも、ヒーローやヒロインは違うんだ。どんな敵が来るのか、相手の格さえもわからないまま、しかも絶対に負けることの出来ない、『殺し合い』を強いられるんだ……!そして、負けたら自分の『死』だけじゃない、自分以外の、たくさんの人の命まで、危険にさらしてしまう……尺度が、全然違うんだ……!そんな『殺し合い』に、『仕合』でしか『戦い』を知らない僕たちが、上手下手を言ったりする権利なんて、無いって思うんだ……昨日のプリキュアだって、きっとそうだよ……街を、命を守るために、全力だったんだ……」

 

 傷ついた私の心に、八手くんの『ヒーローファン』としての見地からの言葉が、まるで救いのように染み込んでくるのを感じる。

 

「でも……ヒーローやヒロインだって、心を持つ人間なんだ……神様なんかじゃない。どんなに全力でがんばっても、助けられない命があるし、救いの手が届かないことだってある……だから僕は、昨日のプリキュアを責める気にはなれないよ」

 

 こんな風に、考えていてくれる子がいたんだ―――

 ただ、ヒーローやヒロインに救いを求めるわけじゃなくって、そのヒーローたちも、あくまで人間なんだという考え方は、ただ単純にプリキュアに憧れていた私なんかとは―――違う。

 私よりも、もっと、考えて、『好きなモノ』を見て、いざ本当に『そういった』存在が現れた時でさえ、こうして自分の考えを、堂々と言える―――

 すごいな……この子は……―――

 

「……言いたいことはわかったぜ……まぁ、昨日の騒ぎだって、そもそもはバケモンが暴れたからだしな……お門違いだよな―――」

 

 ふっと、香川くんは私に向かって頭を下げた。

 

「東堂、悪かった!……おれ、勘違いしてた……!なのにさ、プリキュアのこと変にディスっちまって……ホント、ごめんな!」

「え……う、ううん、いいよ……気にしてないから……」

 

 その様子を微笑みながら見ていた八手くんを、むぎぽんが小突く。

 

「たまにはいいコト言うじゃん」

「……そういうんじゃないよ。ただちょっと、僕にも思うところがあっただけだから」

 

 そういえばこのふたり、幼馴染なんだっけ。なんか、ちょっとイイ感じ。

 でも、八手くんの言葉が今の私にとって、『赦し』をもらえたような気がしたのは、確かだった。

 だから―――

 

「八手くん……その、ありがとう」

 

 お礼を言った。私の顔を見た八手くんは、一瞬目を合わせて、そっと視線を逸らしながら言う。

 

「…………、い、いや……その……昨日のプリキュア、ヒーローっぽかったから……本当に出てきたのが仮面ライダーじゃなくって、ちょっと残念だけど……でも、プリキュアが戦ってくれなかったら、もっと被害が広がっていたかもしれないし……」

 

 仮面ライダーのことはよく知らないけれど、私の―――キュアメモリアルの姿が、ヒーローのように見えたのなら、それはそれで、なんかうれしいなって思った。

 

「じゃ、じゃぁ、もうすぐ授業始まるから……」

 

 そそくさと、八手くんは私達の教室から出ていった。

 その背中を見ながら―――私は氷のように凍てついた心が、あたたかく溶けていくのを感じていた。

 

 私とバグッチャーの戦いで、傷を負ったり、命を落としたりした人がいるのも事実。

 でも―――今朝のテレビのインタビューのように、救われた人がいるのも、また事実なんだ―――

 

 私が戦わなきゃ、この街が、この街の人々が、この世界の人々が傷つき、命を落としてしまう―――

 

 私はポケットの中のネットコミューンに手を触れて、小さくつぶやいた。

 

「……メモリア……私、がんばってみるよ」

 

 声の返事はなかった。でも、振動機能みたいに、コミューンはかたかた、と震えた。

 ……そうだった、ごめん。私だけじゃないんだ。

 メモリアも、いっしょに戦ってくれる。そして、取り戻したプリキュアたちも、私達に力を貸してくれる。

 

 プリキュアたちを取り戻して、サーバー王国を元に戻して―――

 

 そして―――この世界を守るために。

 

 

 私は―――戦うって決めた―――

 

 ……SAVE POINT




 用語解説

 マトリクスインストール

 イーネドライブを持つプリキュア見習いが、ユーザーをプリキュアに変身させる、イーネドライブの最終秘匿プログラム。ユーザーとプリキュアの精神同調率が100%に達して、初めて機能制限が解除される。
 マトリクスインストール発動用のキュアチップをネットコミューンにセットすることでロックが解除、ユーザーの『プリキュア・マトリクスインストール』の音声入力によってプログラムが起動、ユーザーの体内に融合したネットコミューンによって、電脳遮蔽空間『サイバーマトリクス』が展開、一時的ながら、現実世界にキュアネットと同様の電脳空間を形成する。その中で、プリキュアが自分自身をユーザーに“インストール”、一心同体となり、人間とアプリアンが融合した、人間でもアプリアンでもない高度情報化生命体“プリキュア”へと、その肉体を変容させる。
 インストール後はユーザーは自由自在にプリキュアの力を行使することができる。この際もプリキュアの人格はユーザーと別個に存在し、ユーザーと心の中で会話ができる。
 ユーザーを直接危険にさらす行為でもあるため、プログラムクイーンからは、『ユーザーに力を貸す行為』としか、プリキュア見習いたちには知らされておらず、実際は『人間と一心同体となること』であることを知らなかったが、そもそも『マトリクスインストールは、心から信頼できるユーザーと行うこと』と厳命されていた。
 最初のマトリクスインストールの際、肉体のみならず精神も融合し、その整合を行うため、数分間、一種のトランス状態に入る(ドライバインストイール、もしくはディスクデフラグ作業のようなモノ)。この際、2人分の感情がオーバーフローし、涙を流す。また、2人分の記憶から、融合後の名前も無意識に自己命名する。

 ―――――――――

 現実を前に、りんくは悩みます。
 それでも、少しずつ、前に進んでいこうと心に決めます。

 書いてた稚拙の心もちょっとだけ痛んだ今回です……

 次回、傷心のりんくに新幹部・ネンチャックの魔の手が迫る……!
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