ネンチャック
ジャークウェブ四天将のひとり。
見た目は優男だが、人間心理のスキを突いた卑劣な作戦を得意とする。
綿密な策を弄して相手を罠に嵌め、その相手を眺めて悦に入ることを至上の喜びと語る根っからのドS。
しかも嫉妬深い上に執念深く、一度敗北した相手を徹底的にマークし、勝つまで『粘着』し続ける。
アラシーザーとはまったく正反対の性格のため、常に反目しあっている。
りんく曰く「『ハトプリ』のコブラージャっぽい見た目だけど、心底好きになれないタイプ」。
――――――――――
ついにこの時がやってまいりました……心の準備はOKですか?
『設定は邪道、物語は王道』のコンセプトで送るこの『インプリ』……
その、最大の『邪道』―――――キュアデーティアの正体、ここに公開です……!!
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CURE-DATA
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お昼休みの時間になり、観客席でみんながお弁当を広げ始めた。
―――――この時を待ってました!
私はむぎぽんとそらりんといっしょにお弁当を食べ始めて、何回かノドに詰まらせそうになりながらも3分で食べ終え、すばやく席を立った。
……よい子のみんなはごはんはちゃ~んとよく噛んで、味わって食べてね!キュアメモリアルとの約束よ!(ウインク)
「ごめん!私、空手部の子にちょっと用があるの!すぐ戻るから!」
と断りを入れて、観客席をそそくさとあとにする。
早足で階段を下りて、控え室へと一直線!この会場に入った時、下見をしといてよかった!
しかし―――――
控え室のある、だだ長い武道館1階の廊下に立った時、違和感に立ち止まった。
―――――誰もいない。
そのうえ、誰かが控え室から出てくるなんてこともなく、しんとしずまりかえっていた。
……静かすぎる。ただ、ひたすらに、無音の空間―――――
《りんく……なんか、コミューンがヘンな音波を拾ってる……なんだろ、コレ……》
「解析とかできないの?」
《う~ん……そういうの、あんまり詳しくないんだよね……キュアリカバーだったら、こういうの得意なんだけど……》
メモリアの声と、私の靴音だけがいやに響く。でも、ヘンな音波ってなに……?
私は、大泉中の女子空手部の控室のドアをノックした。返事はなかった。カギも開いてる。
おそるおそる、ドアを開けた。そこには―――――
「……!!」
割と広い控え室。その中にいた8人の女子空手部員のみんなが、全員倒れていた。
みんな、その手にスマホを握りしめたままだった。
「だいじょうぶ!?しっかりして!?」
一気に血の気が引くのを感じながらも、私は一番近くにいた子を揺り動かした。手首に指を当ててみると、脈がある。そして、かすかに肩が上下しているのも見えた。
「寝て、る……?」
すやすやと寝息を立ててる。全員が、スマホを持ったまま、だ。
自然と、控室の中の全員のスマホを見ることができたけど―――――ネットコミューンを持ってる子はいない。
ま……まさかのアテ外れ!?空手部の子の中にはキュアデーティアはいない!!
「……となると、まさか柔道部!?」
《そんな場合じゃないよ、りんく~!》
と、ここでメモリアからのツッコミが。割とこっちも重要だと思うけどっ。
「なに、メモリア?」
《さっきからのヘンな音波、みんなのスマホからジンジン出てる!》
「スマホから怪音波……それでみんなが眠っちゃってる……これってヤバくない!?」
私は思わず控え室から飛び出した、それとほぼ同時だった。
控室の目の前にある、武道館の中庭に、地響きを立てて巨体が舞い降りた―――――!!
『バグッチャ~~~~ッッッ!!!!』
「―――――ッッ!!?」
風圧で周囲のガラスが喧噪な音を立てて砕け散った。一拍遅れて、火災報知機が誤作動でも起こしたのか、けたたましいベルが鳴る。
「バグッチャー!……もう実体化してる……!?」
普段のこいつらのやり方なら、まずはキュアネットで悪さをして、そこから実体化して現実世界で暴れまわるのが恒例のハズ。なのにこいつは、私の目の前に実体化して現れた……!?
『やれやれ……もう少しで燻り出しができるところだったのに……君のおかげで台無しじゃないか。どうしてくれるんだい?』
電波塔のようなモノと融合したバグッチャーの肩に乗るネンチャックが、見下した視線を向けてくる。
燻り出し―――――ということは、またデータとデーティアを狙ってたってコト……?
「どうもこうもないわ……!空手部の子たちを眠らせて、アンタこそナニするつもりだったのよ!!」
『ナニも?……ただ、このバグッチャーが上手く機能するか、テストしてたのサ。特定範囲内の端末に睡眠促進音波を送信して、狙った人間のみを睡眠状態に陥らせられるかどうか……のね。それで"アイツ"が釣れれば一石二鳥だったけど、そう上手くは事が運ばないようだねぇ』
《そんなコトのために、関係ないにんげんさんたちを眠らせるなんて……りんく!》
「おk!今は大会中なんだから、邪魔にならないように……ね!!」
私はネットコミューンを構えて、キュアメモリアルのチップをスロットに差し込んだ。
《START UP! MATRIX INSTALL!!!》
《CURE-MEMORIA! INSTALL TO LINK!!》
光のタマゴの中で、メモリアとハイタッチ。メモリアと融合して、私のカラダは『プリキュア』へと進化する―――――!
光のタマゴの中から飛び出して、ポーズを決める!
《CURE-MEMORIAL!! INSTALL COMPLETE!!!》
今日ははじめから、私の全力見せたげる!
大抵のバグッチャーは動き自体はニブいから、一瞬で懐に入れる。あとは―――――
『せいっ!!』
真下から、突き上げるような右のアッパー!そのまま―――――!!
『っけえええぇぇええ!!!』
大ジャンプのイメージを、カラダ全体に走らせる。瞬間、ブーツの土踏まずの部分から、イーネルギーの光が噴き出す―――――
中庭から、空へと運ぶ!なんとか、この武道場からコイツを叩き出さなきゃ!
上空へと、バグッチャーとともに私は舞った。街の景色が小さく見えるくらいの高さ―――――
『ひゅぅっ……!』
小さく息を吐いて、私は空中で体勢を立て直す。どこか、被害を気にせず戦える場所は―――――
あった!少し離れたところに、大泉中の野球部が試合をしてる大泉町民野球場がある!でも、今もまだ試合中、試合をしてる野球部の子や、応援をしてる子、先生たちに何とか知らせなきゃ―――――
《それなら……念じて、りんく!》
『!?メモリア、いい手があるの!?』
《前に、あたしが街のにんげんさんたちのスマホにメッセ送っちゃった時の、アレの応用!》
それって、『いーね!メール』のコト!?つまり、私のコトバを直接、スマホに送信とかできちゃうワケ!?
『よっし……!やり方とかよくわかんないけど、とにかくやってみる!!』
何言ってんの私、って思いながら、私は両手を大泉町民野球場に向けて、精神集中、念力集中―――――!!
『みんなーーーーーーっっ!!!逃げてーーーーーーーーーっっっ!!!!!!』
すると、私の『声』が波紋のように拡がって、それが一気に集束して、野球場に向かっていくのが『わかった』。見えるでも聞こえるでもなく、『情報が伝達する』ことが、感覚で理解できる―――――
目を凝らすと、グラウンドにいる野球のユニフォーム姿の男子たちが、一斉にグラウンドからベンチへと避難して、応援しているみんなもぞろぞろと避難していくのが見えた。
ま、マジ……!?成功しちゃったの、さっきの!?ってゆーか、スマホのメッセに着信して、それをみた客席のみんなならわかるんだけど、どうしてグラウンドにいるみんなのすぐに避難しちゃってるの!?
ヘンな感じはするけれど、とにかくこれで『人払い』は出来たわけだ。次は―――――!!
上空にふわりと舞っていたバグッチャーをキャッチした私は、野球場を見据えて、『回転』のイメージを身体に走らせた。
すると、腰の金属パーツが開いて、ピンク色のイーネルギーが噴き出した。その勢いに乗って、私はバグッチャーを掴んだまま空中で高速回転して―――――!!
そのままバグッチャーと野球場に墜落した―――――というより、バグッチャーのアタマをグラウンドに突き刺した形だ。
『はぁ……はぁ……けっこー無茶しちゃったなぁ……!』
体中の金属パーツから排気する私。体から熱さが抜けてく。技使って、この野球場に一斉メッセ送信して、また技使って―――――カラダの負担が大きいコンボだ。
熱が抜けて、楽になってくる。リラックスタイムは終了、蒸気の中で、私はもう一度バグッチャーに構えた。
『なかなかやるじゃないか……!この短い間でここまでの技を……!』
『ありがと♪私だって、伊達に特訓積んじゃないんだから!』
……主にイメトレだけどね。それでもバグッチャーに通用しちゃうんだからスゴい。
すぽん!とグラウンドに空いた大穴から抜け出たバグッチャーが、私に向き直ってくる。
『だが、ここからが本番サ……バグッチャー、君の雑音を奏でろ!!』
『タオヤカ!!レシピ~~!!』
電波塔のような頭のてっぺんから、白と黄色、ツートンカラーのハート型の炎の輪が発射された。
『ふぁッ!?』
連続で発射されるこの炎の輪、避けるしかない!一発喰らっただけでもヤバそう……!!
『サンビョ~~シ~~~!!!』
炎に次いで発射されてきたのは、黄色い光の輪っか。それが3つ連なって、不規則な軌道を描いて私に迫る!
側転、バック転、バック宙で立て続けにかわすけど、跳んだところで無防備になった―――――!
……さっきの、もしかして使える……!?
そう思って足の裏に意識を飛ばすと、足裏からイーネルギーが噴射した。その勢いで、私は空中で物理法則を無視した『エアバック宙』をして、無理やり避ける!!
『ひゃぁっ!?』
自分の噴射したイーネルギーのピンクの光条が目に入り、世界が反転して、地面にたたき落ちた。そしてそこに襲い来る3連リング!!
―――――カシカシカシィン!!!
結局リングに追いつかれて、胴体を腕ごとリングで拘束されてしまった。
……プリキュアに変身したら何が出来るか―――――それがわかっていくのはいいけれど、使いどころがカンジンってことね……
《りんくぅ……!》
『この技って……!』
今さらながらこの技の『正体』がわかったけれど、このままじゃ動けない……!!
『バァァ……グゥゥゥ…………』
ずしん、ずしんと、地響きを立てて一歩一歩迫るバグッチャー。睨み上げるとネンチャック。あのニヤケ面、ホント生理的に受け付けないんですけど……!
『自爆とはマヌケてるねェ』
言い返せずに歯噛みする。確かに私は、マヌケてる……!まだ、『
『さて……君を倒すついでに、今までに君が持って行ったキュアチップも、全部返してもらおうか』
『返す……!?どの口が言うのよ……!一方的にプリキュアたちをキュアチップにして持って行ったの、あんた達じゃないの……!!』
『困るんだよねー。君たち人間とサーバー王国にとって希望であるように、ボクたちジャークウェブにとっても、『プリキュアは希望』なんだから』
言葉のベクトルが違う。そりゃ、希望だろうけど、それはプリキュアたちの心身の自由を奪った上で、いいように力だけ使おうとしているあんた達の傲慢……!!
『ボクたちの希望を奪った君たちサーバー王国の残党は……憎むべき"敵"なんだよ……!!』
ネンチャックの吐き捨てるような言葉とともに、振り下ろされるバグッチャーの大きな拳……!!
こんな奴に……私は……ううん、私達は、負けるわけにはいかないのに……!!
『そんな……そんな勝手な考え……ッ!!』
――――――――――そう、認めるわけにはいかない!!
『!?』
突然、大きな声が野球場全体に響いた。バグッチャーは拳を止めて、その声に振り返った。
見上げると、野球場のスコアボードの上に、青白い輝きがあった。
『……キュアデーティア!』
思わず声を上げていた。純白のマフラーをはためかせ、腕組みをして直立不動のヒーロー立ち、これ以上ないくらいにカッコいい!!
今の自分がどうなっているのかも忘れて、ハートだけはキュアっキュアでした、私!!
『君も来たのか……!結局結果オーライってことだね』
『騒がしくなったからね……!……、わたしはともかく、他の人たちまで巻き込むなんて……狙うなら……、わたしだけにしたらどう!?』
……なんだろう、この子、ちょっと話し方に違和感がある。『わたし』って言う前に、ちょっとだけ言い淀むような
『関係ないサ!プリキュアを倒すことさえできれば、他の人間共などどうなってもねェ!!』
清々しいまでの悪役セリフだ。なんともわかりやすい……でもこの言葉が、デーティアの心に火をつけたようで―――――
『よくわかったよ―――――"
マフラーで口元を覆い、すっと構えるデーティア―――――
『
スコアボードから、デーティアは蹴り出し、一直線にネンチャックへと跳んだ。
『止めろ、バグッチャー!』
『ツマビィィィィィク!!!!!』
ネンチャックは飛びのきながらバグッチャーをけしかける。でも、この勢いからなら、デーティアは"アレ"を撃つ!!
来た!先制技の、え~っと……
そ、そう、それそれ、イチシキなんとか!!とりあえず、超スゴいミサイルキックってのはわかる!
―――――ズガアァァァァァンン!!!!!
デーティアのキックが突き刺さって、勢いのままグラウンドへと土煙を上げて崩れ落ちるバグッチャー。飛びのいたデーティアは私の隣に立つと、手刀で素早く、私を拘束していた光のリングを切断した。
『メモリアル、大丈夫?』
『う、うん!ありがと、デーティア!』
近くで見るとますますカワイイなぁ……マフラーで覆面しちゃってるのが、ホントもったいない。
でもこの子、空手部の女子じゃなかった。ここにきて、デーティアの正体の手がかりは途切れてしまったことになる。
直接聞くわけにもいかない……っていうか、この子が話したがらないから私は空手部を探そうとしたワケで―――――……
『……こないだは、ごめん』
『え……?』
そんなことを考えていたら、デーティアの方から謝ってきた。
『でもね……いっしょに戦えないってわけじゃないから……むしろ……いっしょに戦える方が、うれしいから……』
『あ……わ、私も!……無神経でごめんね……言いたくないこと、誰でもあるもんね……』
割り切った関係で、いたいのかもしれない。それがこの子のスタンスなら、私も合わせないといけない、のかな。
考えてみれば、あまりズケズケと他人の事情に踏み入ることは、そもそもよくない事なんだ。
私、ちょっとはしゃいでたの、かも―――――
『キ・ア・イイィィィ…………レ・シ・ピイィィィ…………!』
うなりながら立ち上がるバグッチャー。体勢を立て直して、こちらに構える。
《りんく、あのバグッチャーが捕まえてるのって……》
『うん、もう気づいてる―――――キュアリズム……南野奏ちゃん』
ハートの炎と光の輪。それは、ファンタスティックベルティエの力。
そしてバグッチャーが叫ぶ、レシピ、キアイ、タオヤカ―――――それらのキーワードをつなぎ合わせた場合、出てくるのは、ただひとり―――――
《『スイートプリキュア』のサブリーダー……"
デーティアのイーネドライブから、データの声がする。
『……強いの?』
《弱いわけねェだろ。チームの
『……そうだね。違いない』
デーティアがデータにたずねる様を横目で見て、確信する。
やっぱりこの子、プリキュアのことを知らないんだ。キュアリズムが弱いなんて、実際にアニメを見ていれば思うはずがないもの。
それならどうして、この子はデータのユーザーになったのかな……?
『待っててリズム……今助けるから!!』
私とデーティアは、ほぼ同時に駆け出した。バグッチャーの頭の上の電波塔から、ハート型の炎の輪が発射される。それを合図に、私達は左右両方に別れて跳んだ。
デーティアが側面から、イーネルギーを纏った回転廻し蹴りを見舞う。それをバグッチャーは、大きな左腕で受け止めた。
悪いけど、今がチャンス!素人戦法だけど、私だって!!
右腕に力を込めて意識を集中すると、右肘の金属パーツが開いて、ジェット噴射のようにイーネルギーを放出する。
踏み込みとともに、私は右拳を突き出し、そのまま突撃した―――――!
バグッチャーが右腕で受け止めるも、私の勢いは止まらないし、止めない!
デーティアが飛びのくとともに、私は拳にさらに力を込める。勢いのまま、私とバグッチャーは外野のフェンスに激突した。
『……く……無茶苦茶だ……なぜそこまで必死になるんだい!?君達には恐怖心というものはないのかい!?』
ネンチャックは苦虫を噛み潰したような表情で言う。私は、素直に私の心をさらけ出す。
『最初はこわくなかったけどね……でも、今はこわいよ』
私たちの戦いの結果如何で、何もかもが決まってしまう、"現実"―――――それを知った今、『こわくない』なんて強がりは吐けなくなった。
でも、強がらないかわりに、今の私には―――――
『こわいけど……それでも、"怖さ"以上のモノが……私の心の中の"勇気"が、今の私を動かしてる……!!』
『メモリアル……』
私を見るデーティアの表情が、少し明るく変わった気がした。
『勇気と強気は違うけど……弱気じゃ、らしくない!!』
私はデーティアを見た。あの子もたぶん、私と同じ思いで、ここに立っている。こわくない、はずがない。
『私と、メモリア……!そして私とデーティア、私とデータ……!みんなのチカラを、ひとつに合わせて……!!今、想いを放つッ!!』
《CURE-MEMORIAL!! FULL-DRIVE!!!》
全身から湧き立つピンク色のイーネルギーの輝きが、一層その光を増す。そして―――――
《CURE-DATEAR!! FULL-DRIVE!!!》
私の隣に立つデーティアもまた、全力全開とばかりに、全身のメタルスリットから青白いイーネルギーの奔流を噴き出した。
『デーティア……!』
『同じだよ……キミと。こわいけど……"勇気"を出して戦ってるのは……!』
『……!!』
やっぱり、そうなんだ―――――
私も、この子も―――――
恐怖を乗り越えて、心の中の勇気に支えられて、プリキュアとして戦ってる―――――!
『伝えたいことが、あるんだよね?……あのバグッチャーの中の、プリキュアに』
『うん!……あきらめない未来へ……毎日、すこしずつ夢に向かってた奏ちゃんに―――――!』
―――――私達2人の、"メッセージ"を、届ける!!
私の電子の光が、ロッドの先に収束する。さらに―――――
私と同じ形で、ところどころが色違いのタッピンスティックが、デーティアの手に握られる。
私のとは反対側の手元側へと、デーティアはコアユニットを動かす。スティックはその名の通りの"剣"へと形を変えた。
私のと形が違う。『フレプリ』のキュアスティックみたいな感じ、かな……
『電子のヒカリよ!闇にとらわれし"たおやかな調べ"を、取り戻して!』
無意識につづられる私のコトバに続いて、デーティアも言葉をつづる―――――
『電子の剣よ!闇にとらわれし"たおやかな調べ"を、解き放て―――――!』
デーティアの顔の前に構えられたデーティアソードが、青白い光を纏って、長大な光の剣と化した。すごい……!
見とれてる場合じゃない。私は"リズムバグッチャー"を視線でとらえ、ロッドを向けた。
フラァァァァァァァッシュ!!!!
放たれる電子の浄化の輝きに、無抵抗の"リズムバグッチャー"が呑まれる。奔流が去った、そこへ―――――
神速の踏み込みからの、光の剣の
水色にかがやく斬跡が、バグッチャーの胴体に刻まれていた。
『デ…………デリィィィトオォォォォオオ………………!!!』
私たちふたりのキメ技を受けたバグッチャーは光の粒子と化し、天へと還っていった。
てっきりデーティア、プリキュアっぽくない技ばっかり使うって思ってたけど、カンジンのキメ技は、ワリとプリキュアしてるかも。
『チ……3度ならず4度目も……!!』
『!逃げるなぁっ!!』
『ちょっ……!?』
捨て台詞を残して去ろうとするネンチャックに、デーティアは右手から光弾を放った。しかし、ネンチャックは光弾が命中する寸前に消え失せてしまった。
もう帰ろうとする幹部相手に追撃!?流石の私もこれには驚いた。
『また、だ……くっ……!』
歯噛みするデーティアの姿には、ネンチャックとのただならぬ因縁を感じるのだけど……
全身からの蒸気排出に隠れる前、最後に見たデーティアの顔は―――――
少し、コワかったかも―――――
――――――――――
白いキュアチップから輝く、白色のイーネルギーの粒子の中、キュアリズムの幻影が浮かび上がる。
『助かったわ……本当にありがとう、メモリアとデータのユーザーさん……それから、ごめんなさい……私の力が悪用されたせいで、大勢の人が眠らされてしまって……』
チップを取り戻して早々、リズムは私とデーティアに、ぺこりと頭を下げた。
『か、奏ちゃんが謝らなくってもいいって!バグッチャーがやった事なんだし!』
『うん……悪いのはあいつら……キュアチップを悪用するジャークウェブだよ』
月並みなんだけど、デーティアの言う通りだと思う。あいつらがこうして、プリキュアの力を悪用するなら、それを阻止して、プリキュアたちを取り戻すのが、私達の役目なんだから―――――
『そう言ってもらえたら……ちょっと気が楽になったかも……ありがとう、ふたりとも……』
『だいじょーぶ!響ちゃんや他のみんなも、きっと助け出すから!だから、私達にまかせて!……ちょっと頼りない見習いかもしれないけど、ネ☆』
私がウィンクしてそう言うと、リズムはクスッと笑った。……よかった……いつものキュアリズム―――――南野奏ちゃんの笑顔だ。
『うふふ、お願いね♪私の、たおやかな調べの力……あなた達に預けるわね。がんばって!』
イーネルギーの幻像が消えて、キュアチップだけが私の手元に残される。
毎回恒例勝利宣言!今回も行ってみよう!
『キュアリズム、キュアっとレスキュー!!』
《キュアっキュア~!♪♪》
その様子を、デーティアが微笑みながら見守っていたので、終わってからちょっと恥ずかしくなった。それを見たのか、データの声がひびく。
《それ、毎回やってんのか?》
『いーじゃん別にぃ。……カワイイでしょ♪』
《ま、それでヤル気が出るなら文句はねぇけどさ。……そーだ、今度からアタシたちもやるか?》
『えっ!?……は、はずかしいよぉ……』
そんなに恥ずかしいかなぁ?女の子なんだし、なによりプリキュアなんだし、カッコいいのと同じくらい、カワイくないと、ね♪
『……そのチップは、キミが持ってて。使い方とか……よくわからないから』
『え?……うん、いいけど……データはいいの?』
《アタシは、相棒を信じてっからな♪何しろ、アタシの見込んだ世界一のニンゲン、それがコイツ、だからな!》
『……データ……///』
持ち上げてくれるじゃないの。データにとっても、この子が『最高のパートナー』になってくれてるようで、何より。
はにかむデーティアもカワイイ❤実はこの時右手にネットコミューンを持ってて、いつでも写メれるようにしてたんだけど……空気を読んで、やめときました。あはは。
『それじゃ、また』
『……やっぱり、ダメ?』
やんわりと訊いたけど、デーティアは申し訳なさそうに力なく笑うと、ジャンプして去っていった。
……あれ?デーティアが去っていったのって、大泉武道館の方向だ。どうしてデーティアが武道館に―――――
『まさか……!?』
やっぱりデーティアは、今朝からあの武道館にいたってこと!?
つまり、大泉中の女子空手部以外で、あの武道館に来ていた大泉中の2年生の女子の中に、デーティアがいることになる……!
『……メモリア、私やっぱり、追っかける』
《りんく……!?》
デーティアが視界から消えそうになった時、私もまた駆け出していた。
―――――この時の私の心は、好奇心が勝ってしまっていた。
『他人の事情に無断で踏み入るのはよくないコト』だって、さっき思ったはずなのに。
でも、知ったとしてもきっと大丈夫だって思った。私から話さない限り、大丈夫だって―――――
そして、私は知ってしまうことになる―――――
決して『あの子』が誰にも知られたくなかったヒミツを―――――
―――――それは、過去どんなプリキュアも抱えたことが無いと断言できるぐらいの、重大な『ヒミツ』だった……
――――――――――
ぎりぎり、デーティアに悟られない距離を保ちながら、私はデーティアを追った。
そして、デーティアがたどりついた場所は―――――
大泉武道館の、裏口だった。
私は物陰に隠れて、デーティアの様子をうかがった。
《イイ暴れっぷりだったぜ、相棒!》
『……まだまだだよ』
謙遜するデーティア。またまた遠慮しちゃって、もう♪今日も絶好調だったじゃん♪
『また、ネンチャックを追いきれなかった…………僕の力不足だよ』
ぼ、ボク!?デーティアさん、まさかの『ボクっ娘』だったんですか!?
『ハトプリ』のいつき
……でもさっきは、『ワタシ』って言ってたような。これってどういうコト……?
《なぁに、あの手のヤツはしつこいのが相場だぜ。イヤでも顔を合わすさ》
『……憂鬱だよ。それに……このカラダってどうしてもどうにもならないの?』
《アタシだってどうしてこうなったのかわかんねェんだからしょーがねーだろ……戦えてるだけいいじゃんか》
『……僕自身、慣れていくのがこわいな……"自分のまま"戦うのも、気力がいる。頭の中まで、カラダに引っ張られるみたいで……』
《そこは……まぁ、そういうもんだ。でも、お前がお前のままでいるって決めてるなら、心配はないさ》
……さっきから、ワケのわからないことを話してる。変身した体のこと、ヘンに思ってるみたい。それに、"引っ張られる"って……?
『早く戻ろう。みんなも心配してるだろうし……』
《そうだな。……今日もナイスファイトだったぜ―――――》
―――――ほくと―――――
『……………………え?』
一瞬、耳を疑った。
そして次に―――――目を疑った。
キュアデーティアの体を青白いイーネルギーが包み込み、はじけた、次の瞬間そこに立っていたのは―――――
水色のネットコミューンを持った、空手着姿の―――――
『ま・さ……か……』
あまりの出来事に、一歩私は後ずさっていた。
―――――ぱきっ
『!?』
「誰!?」
足元に、小枝が落ちていたのに気づかず、私はそれを踏んでしまっていた。
その音で、その子は振り向いた―――――
線の細い顔。争い事とは無縁に見えるくらいの、大人しめの印象の子。
最初に見たときは、ちょっとナヨっとした、頼りなさげなイメージが強かった。
試合の時はイイ感じに化けるって、むぎぽんも言ってた。実際、その通りだった。カッコよかった。
プリキュアの戦いのことを、わかってくれていた。それが『仕合』じゃないことを、言えない私の代わりに、この子は堂々と言ってくれた。
特撮ヒーローが大好きで、その姿をプリキュアと重ねて―――――
私の心をわかってくれた子―――――
―――――ヒーローやヒロインだって、心を持つ人間なんだ……神様なんかじゃない―――――
そう―――――こういうことも、ありえるんだ―――――
私と同じ、プリキュアユーザー。
私と同じ、"現実世界のヒロイン"―――――
それは何も、女の子である必要なんてなくって―――――
―――――八手ほくとくん。
私と同じ運命を背負ってしまった、"もうひとりのプリキュア"は―――――
男の子だった―――――
―――――STAGE CLEAR!!
RESULT:CURE CHIP No.21『CURE-RHYTHM』
プリキュア全員救出まで:あと46人
TO BE NEXT STAGE……!
『はじけるレモンの香り!』
『爪弾くは魂の調べ!』
―――――りんくの『今回のプリキュア!』
りんく「今回のプリキュアはだ~れだ?』
『爪弾くはたおやかな調べ!キュアリズム!』
メモリア「『スイートプリキュア』のサブリーダー、"
りんく「立派なお菓子職人さんを目指して頑張る、南野奏ちゃんが変身した、音の力で戦うメイジャーランドの伝説の戦士!」
メモリア「そんなリズムのキメ技は、コレ!」
『翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア・ミュージックロンド!!三拍子!1、2、3っ!……フィナーレっ♪』
メモリア「音の力を込めて浄化する、ミュージックロンド!このリングに囲まれちゃったら、もう逃げられないんだから!」
りんく「スイプリの皆さんに『絶対許さない』って言われちゃったら、もう絶対許されないよーな気がする……」
メモリア「そうかなぁ?リズムはサーバー王国ではすっごくやさしかったし、めったな事では怒らなかったよ?」
りんく「でも知ってる?4人の中で怒ると一番コワいのって、リズムなんだよねぇ……くれぐれもリズムの前ではいろいろ自重しなきゃ……((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
メモリア「りんくがぶるぶるしてる……これ、多分マジネタだよぉ……((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
りんく「……そ、それじゃぁ、みんな……」
りんく・メモリア「「ばいば~い…………((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」」
次回予告
ほくと「子供のころ、僕はヒーローに救われた。その時から僕は、涙を流すことをためらわなくなった。泣き虫って言われても、からかわれても、僕は強くあろうと思った。大人になって、涙を流さなくなったその時に、誰かの涙を祓うことの出来る、ヒーローになれるように―――――渾然一体、涙祓一心―――――これは―――――涙を以って涙を祓うことを決めたあの日からの、僕のオリジン―――――」
インストール@プリキュア!『僕がプリキュアになった日 涙を祓う@ほくとの決意!』
ほくと「つらぬけ!キミだけのプリキュア道!」
――――――――――
ようやくネタバレすることができます。
本小説における、最大の邪道設定―――――
キュアデータのユーザーにして、キュアデーティアの正体―――――
中学2年生、八手ほくと。正真正銘の、男の子。
彼が、この物語の、『もうひとりの主人公』です。
あらすじの一部に、『人間の子供と、二次元世界の戦乙女『プリキュア』』と書いてますが、ここに『人間の少女』と書いていなかったのは、2人目が男の子だったからなんです。
画面の前で目ン玉飛び出して驚いている方、予想通りだったと納得される方、いろいろいらっしゃるでしょう……
ともあれ、デーティアの行動など、様々なことで辻褄が合ったかと思います。
次回はそのほくとくんが、どうして男の身でプリキュアになるハメになったのか……ある意味、『もうひとつの第1話』です。
それでは、また。