インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 用語解説

 ネットコミューン

 プリキュア見習いのユーザーになった人間のスマホが変化したツール。
 正式名称は『Precure Network Communicate Unit』。その中の一節を縮めて、りんくが『ネットコミューン』と呼び始めた。
 通常のスマホとしても使えるほか、プリキュア見習いをファイトスタイルに変身させたり、プリキュア見習いとユーザーが融合変身する『マトリクスインストール』にも使用する。また、キュアチップをスロットにセット(キュアットイン)することで、プリキュア見習いにそのキュアチップのレジェンドプリキュアの技や能力を使えるようにしたり、リアライズスタイルのプリキュアの二段変身『レジェンドインストール』にも用いる。また、平時でもキュアットインをすれば、そのキュアチップのレジェンドプリキュアとコミュニケーションを取ることができる。

 りんく用のモノはピンク、ほくと用のモノは水色のカラーリング。
 デザインは共通となっており、リボンやフリル、ハートマークといった、『小さな女の子が好みそうな』意匠がふんだんに盛り込まれた『プリキュアのオモチャ』的なデザインであり、りんくはともかく、男の子であるほくとが持つにはかなり抵抗があるため、ほくとは相当恥ずかしがっている。
 なお、周囲には『新機種のテスターに当選した』ことにしている。

 ――――――――――

 前の投稿から少し間が空いちゃいました……これが稚拙の本来の投稿ペースです……

 さて今回はデータとほくとの初陣となります。気合を入れたら1万5千字近くの分量に……

 ふたりの想いが炸裂する初めての戦い、いざ、送信!

 2017.4.22 今回と次回の展開上でトンでもない矛盾点を見つけてしまったのでラストにちょっとだけ加筆修正。


アタシとほくと

 ……NOW LOADING

 

 ――――――――――

 

 BACK LOG HOKUTO HATTE

 

 ――――――――――

 

 あれから、9日が経った。

 その間、僕とデータが何をしていたかというと―――――

 

 《バカ!ちげーだろ!?ブックマークに登録すんのはこっち!そっちはウィンドウをだな―――――あ゛ーッ!!》

 「ご、ごめん……」

 《ッたく……オキニのサイトをブックマークすんのに1時間もかけッかフツー……?》

 

 ……こんな感じで、データから鬼のスマホ特訓を科せられていた。

 さすがはキュアネットの奥からやってきたネットの世界の住人だけあって、スマホのことには詳しく、口調は乱暴だけれども丁寧に、イチから教えてくれた。

 それでも、僕にとってスマホが扱いづらいことに変わりはなく、ドジを踏んでは怒られ、指をすべらせては怒られ……

 僕って、指先も割と不器用……なんだろーか……データにとっては出来の悪い生徒だったに違いない……

 授業や部活、道場での鍛錬の合間に、どうにかしてスマホをモノにしようと奮闘した。もちろん、この『オモチャっぽくなった』スマホは、誰にも見せられなかったけれど……

 

 この日の夕方、スマホに悪戦苦闘している僕を、母さんが呼んだ。お得意の隣町のスポーツ用品店に頼んでおいた新しい胴着やサポーターが出来上がったらしく、こども園にのんを迎えに行くついでに、それらの受け取りを手伝ってほしい、とのことだった。

 発注伝票の控えを見て、ちょっとヒイた。

 

 「母さん!?なんで胴着50着も発注してんの!?」

 「だってあんた達、大技ブッ放すたびに胴着ダメにしちゃってるじゃないの!いっそ大量発注しといた方が経済的なの!」

 

 ぐうの音も出ない。親子孫、三世代まとめて、手合わせの時は割と派手に戦ってる。道場が壊れるのはもちろん、胴着をいったい何百着ダメにしたか憶えていない。

 こんな感じなので、割とウチの家計はあまり芳しくないのが現状だ。もっとも、家族みんなは金遣いの荒い方じゃないから、生活が苦しいわけじゃないけど。

 車を回しに行く母さんを、僕は玄関に座って待つ。

 

 《もう9日も世話になってて今更だけどさ、お前んちって変わってるよな》

 「……よく言われるよ。まるでマンガかアニメだって」

 《違いねぇなァ、アハハ》

 「僕から見れば、キミも紙一重だよ……」

 

 ホント、3Dの立体映像が動いて喋って、しかも意思疎通ができるなんて、空想の世界の出来事だ。見た感じ、『ゴーオンジャー』の炎神のようだ。

 でも、僕の目の前で形が変わったスマホが、そんなできごとに現実味を与えている。

 

 《アニメで思い出したんだけどさ、こっちの世界じゃ、プリキュアってアニメになってんのな》

 「うん……僕は見てないんだけど、のんが好きなんだよね。見たでしょ?あのオモチャの山」

 

 のんの大切な、プリキュアごっこの小道具(プロップ)だ。母さんにせがんで買ってもらったプリキュアグッズは、居間の隅のおもちゃ箱に箱狭しと詰められている。

 割と時間のある休日なんかは、なりきり衣装も身に着けての一大スペクタクルが始まる。毎回、僕がやられる悪役なんだよね……

 しかも最近ののんは、空現流拳法を習い始めたせいか、意外と蹴りが『重い』。巧く受け身を取らないと危ないレベルだ。

 

 《ワリといいツクリだったぜ?本物と比べてもあんまり変わらねーし……あ、でもラブギターロッドやスカーレットバイオリン、ありゃねーわ。弦の一本一本がスイッチとかツクリが雑すぎだろ》

 「オモチャだからね……さすがにそこまで本物のギターやバイオリンとそっくりに作っちゃったら、さ……遊ぶに遊べないだろうし……」

 

 笑いながら、何故かデータとオモチャ談義をしている僕。でも、彼女のコトバから、彼女が『本物』を見ているということが、少なくともわかる。

 やっぱり、彼女は『偽物』なんかじゃない。僕の彼女を見る目は、曇ってなかったと、僕は確信する。

 玄関先に母さんの車が止まったのを見て、僕は立ち上がった。

 

 「行こう」

 《おう!》

 

 ……でも、実感がなかったのは―――――

 まだ、この時の僕が、『本当のホンモノ』を、この身で味わってなかったからだと―――――

 あとになって、心と体で、イヤというほど、理解する―――――

 

 ――――――――――

 

 のんをこども園に迎えに行って、そのまま隣町のスポーツ用品店にへと、母さんは車を走らせた。

 その間、母さんとのんに見られないようにスマホを取り出して、しきりにデータとやり取りをしていた。

 彼女から、タッチでひらがな入力をすれば、声に出さなくても筆談のようにやり取りできると教えてもらって、慣れない手つきで『会話』する。

 

 DATA〈こないだ、アタシと初めて会った日に、キュアネットの障害があったろ?

 HOKUTO〈うん。うちがていでんしたくらいで、とくにひがいはなかったけど

 DATA〈コイツを見てみな。ネットで拾ってきた画像だ

 

 僕はおぼつかない手でひらがな入力をして、1分くらいかけて文章を書くのに、データは完全に漢字変換された文章を、しかも一瞬で返してくる。ネットの住人はやっぱりすごいな……

 それはともかく、データが表示した画像を見た。ずんぐりとした黒光りする怪物が、女の子と戦っている画像だった。

 

 DATA〈コイツは"バグッチャー"……ジャークウェブが使いッ走りにしてる、意志を持ったコンピューターウィルスだ。コイツが例の障害の『犯人』ってワケだ

 

 怪物の形をしたコンピューターウィルスって、まるで『仮面ライダーエグゼイド』のバグスターウィルスじゃないか……!いやな予感が頭をよぎって、思わず僕は訊いた。

 

 HOKUTO〈まさかにんげんにかんせんするの?

 DATA〈今んとこは心配ねえよ

 

 ……よ、よかった……思わず安堵のため息。

 

 DATA〈まぁ、キュアネットで暴れて、そのせいでニンゲンたちが使ってるモノに悪い影響が出るから、どちらにしろ厄介だけどな。しかもコイツ、キュアロゼッタの技使ってやがる

 

 写真の中の1枚には、バグッチャーがクローバー型のバリアのようなモノを展開して、女の子の攻撃を防いでいるように見えるものもあった。

 

 HOKUTO〈きゅあろぜったって?

 DATA〈"護葉(まもりば)のロゼッタ"……伝説の戦士……51人のプリキュアのひとりだ……敵の攻撃を防ぐバリアが使えて、でもって立ち回りも完璧……攻守ともに隙が見当たらねぇ、プリキュアの中でも十傑には確実に入るヤツだ……

 HOKUTO〈そのきゅあろぜったのわざを、どうしててきがつかってるの?

 

 本来ならプリキュアが持っているはずの力を、敵が使っている……仮面ライダーとは逆だな、と、反射的に思っていた。

 ライダーの場合、『敵が作った技術で戦う』場合が多い。特に、昭和ライダーはその傾向が顕著だ。どちらにせよ、『敵も味方も大元の力の源は同じ』というのは、仮面ライダーシリーズのみならず、原作者である"萬画家"・石ノ森章太郎先生が好んで作品に用いた設定構成(ロジック)なんだけれど。

 ごめん、話がそれた。―――――僕の疑問に、データはこう返してきた。

 

 DATA〈これはアタシの推測なんだが……あいつら、奪ったプリキュアのキュアチップで、バグッチャーを強化してるかもな……だとすれば、1体1体がプリキュア並みのヤバい奴等ってことになるか……

 

 キュアチップのことも聞いていた。51人のプリキュアたちは、全員がキュアチップという、メモリーカード状のモノに姿を変えられてしまった、と。

 それらの力を『悪用』しているとなると、この上ない強敵と言える。厳密には違う存在だけれど、ショッカーライダーが頭に浮かんだ。

 それと――――― 考え込むデータの顔を見て、意外に思って僕は思わず訊いていた。

 

 HOKUTO〈もしかして、でーたってあたまいい?

 DATA〈やっぱお前、アタシを脳筋扱いしてたろ!?元々アタシは『辞書』のアプリアンだから、こう見えてもいろいろ考えてんだ!失礼なヤツだな、ったく!

 

 この子が『辞書』とは……やっぱり意外だ。てっきり『トレーニング』か『格闘ゲーム』かと思ってた。

 

 DATA〈……それはともかく、アタシが見てほしいのは、ココだ

 

 データが表示した画像が、ズームされる。そこには、ピンク色の髪の女の子が映っていた。データと、服装がよく似ている。

 

 HOKUTO〈おんなのこ?

 DATA〈コイツはアタシといっしょにプリキュアになった幼馴染……キュアメモリアだ。この姿でいるってことは、多分コイツも、誰かと契約してるってことだ

 HOKUTO〈おなじぷりきゅあってことは、みかた?

 DATA〈ああ。アタシといっしょにサーバー王国から脱出したんだがよ、途中ではぐれちまって……この広いキュアネットの中で、まさか同じ町に来てるなんて、偶然通り越して奇跡だな、こりゃ

 

 確かに、こんな偶然はほぼ無いと思う。キュアネットだって、この世界と同じくらいか、それ以上に広い……と思う。それなのに、この日本の、同じ町に2人とも辿り着くなんて。

 普通に考えて、何か作為的なモノを感じるのだけれど……―――――

 

 DATA〈いずれ、アイツのユーザーになったニンゲンとも会わなきゃな。この先、ふたり……いや、4人か……協力した方が何かと気分もいいしな

 

 気分って……『早く会いたい』って素直に言えないのかなぁ……まぁ、そんなキャラじゃないか、この子は。

 とにかく、僕と同様に、プリキュアと契約した"誰か"が、この街のどこかにいる。その"誰か"を探し出して、接触を図った方がいいか。

 そして、データがキュアネットの中でしか活動できないことを考えれば、それは当然、僕の役目だ。

 でも―――――

 

 HOKUTO〈このすまほ、みせるのはずかしいよ

 DATA〈細かいコトは気にすんな!同じ仲間だ、どーにかなるさ!案外、メモリアのユーザーも、ほくとと同じ男かもしんないし、さ!

 

 やっぱり、相手もこのスマホ、持ってるんだろうか。だとしたら、やっぱり女の子なんじゃないかなぁ……

 もし、キュアメモリアのユーザーが男の子だったら……―――――

 

 心の底から、同情しよう……

 

 ――――――――――

 

 スポーツ用品店に到着して、お店の店主のオバサンに挨拶する。会うたびに『大きくなったねぇ』と感心される。最近会ったのってつい2週間前なんだけどな……

 胴着を車に積み込んで、母さんとのんと3人でオバサンに挨拶して、車に戻ろうとした時、一番うしろを歩いていた僕を、オバサンが呼び止めた。

 

 「そーだった、ほっちゃん、ちょっと待ってて!親戚からもらったお漬物がたくさんあってねぇ―――――」

 

 時々このオバサンは、こうしてご近所さんや親せきのヒトからもらったモノを、おすそ分けしてくれる。収入が雀の涙の我が家にとっては、非常にありがたい。

 漬物満載タッパーを受け取ってお礼を言って、駐車場に停まっている、母さんとのんが待っている車へと戻って、助手席のドアを開けようとすると。

 

 「……あれ?」

 

 カギがかかってる。のんのイタズラ?そう思って後ろの席のチャイルドシートに座るのんを見た。すると、なにやら必死な顔で窓をドンドンと叩いてきた。

 

 「のん!?……母さん!?」

 

 あわてて運転席の横に回り込むと、母さんも困った顔をしていた。窓が閉まっているのでよく聞こえなかったけど、『ドアも開かないし、車のエンジンもかからない』と言っているように聞こえた。

 ドアロックが壊れでもしたの……?いや、ちがう。それだとエンジンがかからない理由にならない。

 どうしようかと思ったその時、まわりもざわつき始めた。まわり……というか、道路を見ると、さっきまで引っ切り無しに行き交っていた車が、例外なく停車していた。この道は幹線道路のハズなのに……

 運転している誰もが、ドアを必死で開けようとしていたけれど、脱出できた人はいない。中には脱出用ハンマーで窓を叩き割って無理やり脱出する人もいた。

 

 「どうなってる……なにが……?」

 

 起こっているんだと思って、もう一度母さんとのんが乗る車に振り返ったその時、エンジンがかかった。

 動けるの?、と思ったのは一瞬だった。中の様子がおかしい。母さんに向かって、僕は叫ぶように訊いていた。

 

 「どうしたの!?」

 

 声がくぐもって、よく聞こえない。でも、母さんはエアコンのスイッチを指さしていた。

 ―――――設定温度、35度!?それも最大風量になっている……!!母さんが温度調節や風量調節のスイッチやつまみを押したり動かしたりしても、何も変化が起きない。

 このまま母さんとのんを放っておいたら、間違いなく熱中症だ。でも、どうしてこんな……!?

 

 「なんだよ……なんだよ、コレは!?」

 《ほくと……!》

 

 ポケットの中のスマホの画面、その中のキュアデータの胸にあるハート型のブローチが、紅い光を帯びて点滅しているのが見えた。

 

 《イーネドライブがビリビリしてやがる……コイツはジャークウェブの奴等の仕業だ……!》

 「……!!わかるの……!?」

 《ああ……!間違いなく狙いはアタシだ……!ほくとのお袋さんや妹……他のニンゲンたちをダシに、アタシを誘ってやがんのか……!!》

 

 ダシ―――――そういうことか。

 この事件は、ジャークウェブの刺客が垂らした『釣り糸』―――――そして母さんとのんは―――――『餌』―――――

 それも、命を落とそうがどうでもいい、使い捨ての餌だ―――――

 

 「…………さん……」

 《……ほくと?》

 

 僕の心の中に―――――怒りの火が灯った。

 

 己の欲望に負け、理不尽な理由で他人の尊厳を侵し、心を傷付け、大切なモノを奪う―――――

 その悪行悪辣を、僕は知っている。だからこそ、僕は許せない―――――

 何の罪のない人たちを巻きこみ、あまつさえ母さんを……のんを危険に遭わせるその所業―――――

 僕は―――――!!

 

 「(ゆる)さんッッ!!」

 

 無意識にこの言葉が出た。怒りに燃える仮面ライダーBLACKが発する裁きの宣言を、僕は放っていた。

 

 《ほくと!アタシをキュアネットに送れ!お前の怒りの分も、アタシが奴等にブチこんでやるぜ!!》

 「わかった……!頼んだよ、データ!!」

 《おうよ!!》

 

 僕はスマホの画面の、ハート形のアイコンを押しながら、データに教わった通りに叫んだ。

 

 「プリキュアッ!オペレーション!!」

 

 瞬間、画面の中のデータが輝き、青白い光球へと変わった。12本のリングが展開される様は、仮面ライダーディケイドのディメンションキックを思い起こさせる。

 

 《CURE-DATA! ENGAGE!!》

 

 女の子の合成音声を合図に、光球が射出されて、キュアネットへと向かう。

 この9日間でデータに教わった、このスマホの使い方。不器用な僕がどこまでデータの手助けができるかはわからないけど―――――

 僕の燃える心を、キミに……データに託す……!

 キミといっしょに、悪を討つ―――――!

 

 ――――――――――

 

 BACK LOG CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 お前の想いは受け取った……!

 家族を想うお前の心……痛いほどに、アタシの心に突き刺さる。

 だから、負けられねぇ―――――

 お前と、その家族……そして、アタシのために巻き込まれちまったニンゲンたちのためにもな……!!

 力漲る全身で、アタシはキュアネットに降り立った。

 

 「記録の戦士、キュアデータ!!アタシの辞書に、敗北の文字は無ェ!!」

 

 そうさ―――――ビリビリと感じるほくとの想いがある限り……負ける気しねぇ!

 

 《データ、武器とかあるの?剣とか、銃とか》

 

 ほくとの言葉を聞いて、アタシは笑って、両の拳を握って答える。

 

 「そんなモン必要無ェぜ!アタシの最大の武器は……"アタシ自身"だ!」

 

 "お師さん"―――――キュアホワイトから教わったのは、アタシの両手両足、五体をフルに使った徒手空拳。アタシたち『プリキュア』の基本戦術だ。殴る、蹴る、投げ飛ばす―――――自分自身を最強の武器へと鍛え上げること―――――それこそがプリキュアの真髄なんだ……!!

 ……でもまぁ、何人かは違った戦い方してるプリキュアもいるけど、な……

 

 《それなら……僕もキミの助けになれそうだ……!一緒に戦おう、データ!》

 「おう!」

 

 考えてみたら、こうして『誰か』の助けを借りて戦うのは、初めてかもしれねぇ。でも、不思議と違和感はなかった。

 まるで、こうやって戦うことが、アタシの『本当の戦い方』みたいなように―――――

 

 「あはは、釣れた釣れたwwサーバー王国の残党!……おやぁ?こないだアラシーザーが見つけたのとは違うねぇ」

 

 待っていたのは、全身から金色の鎖を張り巡らせているバグッチャーと、ロン毛のチャラけたヤツ。見慣れねぇ顔だった。

 

 「釣られてやったんだよ、スカシ野郎が……!ンだテメェ?さっきアタシが名乗ってやったんだ、テメェも名前くらい教えろや」

 「とんでもなく口が悪い女の子だねェ。……まぁいいサ……ボクはネンチャック。ジャークウェブ四天将の末席を務めさせてもらってる。短い付き合いだろうけど、ヨロシク♪」

 

 イヤらしいニヤケ面、思いっきり顔面をブン殴りたくなる。

 

 「接着剤みてぇな名前の割には、くっつき悪いんだな、ア○ンアルフア」

 「ネンチャックだ……ヒトの名前をまともに覚えられないとは……育ちの悪さがうかがい知れるねぇ」

 「ケッ、これは育ちじゃなくってアタシの性分なんでな……で?こんな大仰なヤツを用意して、何してんだセメダ○ン?」

 「…………釣りさ」

 

 さすがにもう挑発には乗らねぇか。ネンチャックはさらに言葉を続ける。

 

 「プリキュア釣りをするために、"撒き餌"を仕込まなきゃならなくてねぇ。このバグッチャーはその職人というワケサ」

 《コイツ……!》

 

 ほくとが眉をひそめるのが見える。その気持ちはアタシも同じだ。

 

 「撒き餌も"手仕込み"たぁ本格的じゃねぇか……ならさ―――――」

 

 アタシは右の拳を握りしめ、一跳びに間合いを詰める。

 

 「大物だぜ!!祝いに鉄拳(ぎょたく)くれてやらぁーーー!!!」

 

 しかしストレートに殴られてはくれねぇようで、バグッチャーがずいと躍り出た。

 

 「バグッチャァァーー!!!」

 

 右腕に握られた金のチェーンが振り下ろされ、思いっきりアタシに命中した。地面に叩きつけられて、一瞬息が詰まった。

 

 《データ!!》

 「なんてコトねぇ、こんくらい!」

 

 耳元から響くほくとの声に、反射的にアタシは答えた。

 そして今ので、『推測』が『確信』に変わった。

 

 「コイツ……やっぱりそうか。テメェ、バグッチャーにキュアチップ組み込みやがったな!?……なんてエゲツねぇことをしやがる……!!」

 

 ネットで拾った画像のバグッチャーが、キュアロゼッタの『ロゼッタウォール』を使っていたこと、そしてこの、目の前にいるバグッチャーの技の『既視感(デジャヴュ)』―――――

 偶然とは思えなかった。

 

 「よくわかったねェ……口ぶりと違ってインテリのようだねェ、キミ。その通りさ!このバグッチャーはいわば"Ver.2.0"……サーバー王国でキミが戦った"Ver.1.0"の改良型……キュアチップを搭載することを前提に設計(プログラミング)された、ボクたちにとっての『希望の鍵』なのサ」

 《希望の鍵……!?》

 「プリキュアから……いや、キュアチップから"力"のみを抽出し、バグッチャーの力にする……そうすることで、"フォースウォール"を突破することのできるバグッチャーが実現したのサ!素晴らしいと思わないかい!?」

 

 そういうことか……!アタシの中で全てが繋がった。

 

 「おいほくと……!思ったよりもヤバいことを企んでるぜ、コイツら……キュアネットだけじゃねぇ……リアルワールドも……ほくとたちの世界も、侵略するつもりだ……!!」

 《……!!》

 

 ほくとが息を呑むのが聞こえた。

 

 「そういうワケだから、キミたちサーバー王国の残党は目障りなのサ。どんな小さな可能性も、ツブしとかないとねぇ……ククク」

 「笑ってられんのも今の内だぜ接着剤野郎!!プリキュアとして、テメェらのようなヤツはスルーできねぇんでな!!」

 《データ……!》

 「心配すんな、ほくと!お前の家族もリアルワールドも!アタシがまとめて守ってやんぜッ!!」

 「それは……無理サ」

 「ハジケ~~~ロ!!!」

 

 こちらに両腕を向けるバグッチャー。その手から、無数の『金色の蝶』が広い範囲に放たれた。この技は……!!

 

 「レモネードフラッシュか!」

 《知ってるの!?》

 「見たことあんだよ!!」

 

 ほくとの問いに返事を入れながら、黄金色の光をまき散らしながら羽ばたく蝶の群れを―――――

 

 「くぅぅぅぅぅ……!!」

 

 躱しきれねぇ!!何度も見てるハズなのに、いざ実際受けるとなると話が違う!!掻い潜れるスキマくらいあると思ったけど、甘かった!!

 

 《大丈夫!?データ!?》

 「く……やっぱヤバいな……さすがは『プリキュア5』のキュアレモネードだ……」

 《プリキュア5……?キュア……レモネード……?》

 

 あぁ、そういやほくとはプリキュアのこと知らないんだっけか。

 

 「51人のプリキュアってのは、バラバラに戦ってるワケじゃねぇ……何人かでチーム組んでんだ……そのうち、一番大所帯の6人編成なのが、『プリキュア5』だ……」

 《『5』なのに『6人』?》

 「こまけぇこたぁ気にすんな」

 《なるほど……スーパー戦隊みたいだね。6人目はさしずめ追加戦士か……》

 

 時々ほくとはよくわからないことを言う。すーぱーせんたいってなんだ?よくわからねぇけど、たぶん、プリキュアと似たようなモンだろう。

 

 「ま、そんな感じだ……で、コイツが取り込んでるのが、その『プリキュア5』のひとり、キュアレモネード……またの名を"麗弾(らいだん)のレモネード"……5人の中では撹乱・足止め担当だな」

 《強いの?》

 「弱いワケねぇだろ……51人全員が、『伝説の戦士』の看板背負ってんだかんな」

 《それなら、負ける道理はないね》

 「何の根拠があんだよ……!?」

 

 迷いもなく、ほくとは『負けない』と言った。相手は格上、キュアレモネードだ。アタシは負ける気しねぇけど、フツーに考えりゃ負けるとか思わねぇのか?

 でも、ほくとは確信を持った口調で言う。

 

 《キミも、相手も、『プリキュア』かもしれないけど……相手は、確かにプリキュアの力を持ってるかもしれないけど……でも、キミと相手は違う。相手はただ、『力』を利用しているだけだ。プリキュア『本人』が相手じゃない……心無き単なる『力』に、心ある『プリキュア』であるキミが、負ける道理は無いってことさ》

 

 そういうことか―――――そういや、"お師さん"にも耳にタコができるほど言われたっけ。『力におぼれちゃダメ、常に力を心のうちでコントロールしなさい』って。

 このバグッチャーは、レモネードの力だけ振り回して、キュアネットをブッ壊して、リアルワールドに迷惑をかけることしか考えちゃいねぇ、『力におぼれた』哀れなヤツだ。

 そんなヤツに、仮にも『プリキュア』の名前を与えられたこのアタシが、負けるハズねぇんだ!!

 

 「……フ……アハハハハ!そーだ、そーだな!違いねぇ!アタシはプリキュア……キュアデータ!!こんなザコにツブされるようなタマじゃねぇ!!」

 

 ありがとよ、ほくと……お前はいい相棒だ……!

 ()()()()のアタシに、こんな檄を飛ばしてくれるなんてよ……

 『もっと最強』になれそうで、嬉しくなっちまうじゃんか……!

 

 その時、アタシの胸の『イーネドライブ』が、強烈な光を放つ。次の瞬間―――――

 アタシの中に、"声"が流れ込んでくる―――――

 

 〈これって、プリキュアが戦ってんのか?

 〈でもこないだのと見た目違くね?

 〈どっちにしても、もう俺ヤバい……@閉じ込め車中暖房暴走中

 〈お願いプリキュア!私達を助けて!

 〈がんばれ、プリキュア!

 〈プリキュア、負けるなーー!!

 

 これって、ニンゲンたちの端末から送られた、メッセとかいうのか……?

 その、『プリキュア』を応援する言葉だけが拾われて、アタシの中に流れこんで、力に変わっていく―――――

 

 《これって……!?》

 「そうか……そういうことかよ……ッハハハ……クイーンも面白ェモンを仕込んでくれるぜ……!!」

 

 これが―――――キュアブラックの言った、レジェンドプリキュアたちには無い、"無限の可能性"ってヤツなら……!

 

 「ジンジン来るぜ……!お前の想いとニンゲンたちの想いが……!!元々負ける気しねぇが……これならもっと、負ける気全然しねぇ!!」

 

 アタシは一気呵成に駆け出した。体中に漲るイーネルギーがスパークして、一歩一歩を踏み込む度に、ビリビリと迸る。

 

 「何が起きてる……でもね―――――バグッチャー!!」

 「カガヤーーーク!!!」

 

 バグッチャーがもう一度、レモネードフラッシュを放った。おびただしい数の光の蝶が、流星群のようにアタシに迫る。

 

 《……!見切った!!》

 

 ほくとの声が響いて、アタシの足元から青い矢印が伸びた。その矢印は光の蝶をかいくぐるように、複雑な軌道を描いてバグッチャーに向かっていく。

 

 《データ!これをたどって!》

 「ほくと!……よっしゃぁ!!」

 

 その矢印をなぞるように、アタシはジャンプして、回転ステップで横っ跳び、スライディングで地面すれすれを潜る。

 すげぇ、全弾避けられた!ほくと……お前って……!!

 

 《がら空きになってる!今だ!》

 「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 ステップで踏み出し、横っ飛びしながら、相手のドテッ腹に突き刺すようなキックを放つ!

 

 「グギャッ!!??」

 

 まだだ!今度は回転しながらの―――――

 

 「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃぁぁぁあーーーー!!!」

 

 連続手刀!"お師さん"が教えてくれた、最初の技だ!!

 あお向けにブッ倒れるバグッチャーを見て、思わずアタシは笑っていた。

 

 「いい切れ味、してんだろ♪」

 

 もっとも、アタシだけでここまでのパワーは出せねぇだろうな……ほくとと、街のニンゲンたちの応援が無けりゃ、こうまで逆転できねぇ……

 これが、イーネドライブの力ってヤツか……!

 

 「まだだ!!」

 

 接着剤野郎ががなると同時にバグッチャーが素早く立ち上がり、今度は金色の光の鎖を無数に放った。

 

 ―――――それは、もう見た!!

 ヘビのようにうねりながら襲い来る光鎖を、アタシは右に左に、回転しながらひらりと躱す。

 

 《凄い……凄いよ、データ!》

 

 うれしそうなほくとの声に、思わずアタシもにやけちまう。

 

 「言ったろ?アタシは『辞書』のアプリアンだぜ?一度見た攻撃は、アタシが意識しなくても勝手に『ココ』が憶えちまうんだ」

 

 自分で言うのもなんだけど、『辞書』のアプリアンのアタシは、都合がいいコトも悪いコトも、『勝手に記憶』しちまう因果な知能(アタマ)の持ち主だ。

 アタシ自身は物事を単純に考えたいけど、『辞書』のアプリアンとして生まれちまった以上、余計なコトも頭に入ってきて、しかも忘れようにも忘れられないときた。アタシはそれが死ぬほどイヤだった。アタシが他の辞書アプリアンと比べてヒネくれた性格になったのも、多分このせいだ。

 でも、メモリアにプリキュア修行に誘われて、"お師さん"―――――キュアホワイトと出会って、アタシは変わった。"お師さん"はアタシのこの『忘れたくても忘れられない』、アタシのコンプレックスを褒めてくれた。

 

 ―――――すごいじゃない!それって、貴女の立派な才能よ?伸ばしていけば、きっと貴女にとって誇れるものになるはずよ!

 

 アタシの『この力』は、これ以上ない武器になるって、"お師さん"は言ってくれた。そしてアタシは、『この力』を活かした戦い方を教わって、プリキュアになって、ここにいる―――――!

 

 「そーゆーわけだから……一度見た技は、アタシにゃ二度と通用しねぇんだよ!アタシをブッ倒したいんなら、アタシの知らない大道芸を持ってきな!!」

 

 アタシは再度、バグッチャーに向き直った。

 

 「……目指すは未知数、その向こう……そうだろ、レモネード!」

 

 レモネード"自身"が答えられるとは思えねぇ。でも、それでもアタシは、このバケモンに囚われているレモネードに向かって、叫びとともに拳を放つ。

 

 「アタシは……アンタに憧れてた……!アタシから見たアンタは、眩しくって、キラキラしてて……それから、それから………………あ゛ーーーーー!!!」

 

 アタシはジャンプして、バグッチャーの脳天にカカト落としをブチ込みながら叫んだ。

 

 「とにかく!!アタシはアンタが好きなんだ!!!」

 

 "好き"の理由なんて、誰かに言われて簡単に答えられるモンじゃない。アタシの場合、全部覚えてるから、いくらでも出てくるけど、今ここで並べ立てても仕方ない。

 

 「心が折れそうになった時……途中で息切れした時……アンタの姿がアタシを……アタシの"何か"を動かした!だからこそ、アタシは変わった!!覚悟をキメた!!!」

 

 修行の途中、アタシが励みにしていたのは、レモネードの歌。修行でイヤなコトがあった時、逃げ出したくなった時、彼女の歌がアタシを励ましてくれた。

 最初は本当にプリキュアになれるのか、半信半疑だったけれど―――――彼女の歌で吹っ切れたんだ。

 レモネードがいなけりゃ、アタシはプリキュアになれなかったかもしれない―――――

 

 「今ここで……アンタに返すよ……ありったけの"礼"ってヤツをさ……見てくれよレモネード……プリキュアとして生まれ変わった、新しいアタシってやつをさ!」

 

 全身に迸る青白いイーネルギーのスパークを連れて、アタシは翔んだ―――――

 アタシの想いを、この一撃に乗せて、ブチかます!!

 

 「データ!!ボルトォォォ!!!スクリューーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!」

 

 イーネルギーを左足に集中して、全力で蹴り抜く―――――

 苦し紛れに相手が放った光の鎖ごと、脳天を射抜いた―――――!!

 

 「デリイィィィィトォォォォ………………!!」

 

 閃光を全身から放って、たちまちにバグッチャーが爆裂した。

 

 「っしゃぁ!!お次はテメェだ粘着剤(トリモチ)野郎!!」

 

 歯噛みしているヤツの顔に、アタシは視線を突き刺す。

 

 「く……クク、負けたよ……―――――」

 

 しかしコイツは、顔に手を当て、猫背ぎみに肩を震わせて―――――笑ってた。

 

 「なに笑ってんだ……!?」

 「いやぁ……ハハ……悔しいねェ……でも――――――――――」

 

 ネンチャックは蜥蜴めいてアタシを睨んだ。

 

 「もう君は……負けるまで逃げられない……!!クク……アハハハハ…………!!」

 「つまりはコンティニューってか!?…………させっかよ!!」

 

 コイツのようなヤツを野放しにしたら、いつまたキュアネットやリアルワールドに迷惑をかけるか、知れたもんじゃない。アタシはヤツ目掛けて駆け出した。

 

 「テメェはココでゲームオーバーだド外道ーーーーッ!!」

 

 全力を込めた右ストレートをヤツの顔面にアタシは放った。しかし寸でのところで、ヤツはかき消えるようにその場から去った。ワープ、とかいうやつか……

 

 「ちッ……悪ィ、ほくと……逃がしちまった」

 

 仕留め損ねた。せっかく、ほくとがアタシの背中を押して、助けてくれたのに、その想いに応えられずに、悔しかった。でも―――――

 

 《いいよ……アイツはまた、僕達の前に現れるはずだ……決着はその時につければいいじゃないか。……それよりも、かっこよかったよ、データ!》

 「え……?」

 

 目をかがやかせるほくとの笑顔。なんか、恥ずかしいというかテレるというか……

 

 《キミは……本当に、"プリキュア"だったんだね……!》

 「い……今さら何言ってんだ!言っただろ!?サーバー王国最強のプリキュアだって!」

 《そこは本当に最強かどうか、まだちょっと信じられないけどね♪》

 「あのなぁ……!うふふ……あははは……!」

 

 でも、こうして勝てたのは、ほくとのおかげだ。ほくとがアタシに想いを託して、アタシの勝利への道を指示してくれたのは、まちがいなくお前だ―――――!

 アタシは不思議と、笑ってた。

 

 「ありがとよ、ほくと……アタシ、ほくとがユーザーに……相棒になってくれてよかった……!お前は、世界一の男だぜ!この、最強のアタシが認めるんだ!自信を持ちな!」

 《データ…………》

 

 ほくとは、『うれしそうな苦笑い』を顔に浮かべた。

 

 《世界一って……持ち上げすぎだよ》

 「うんにゃ、お前が相棒じゃなきゃ、アタシは負けてた!お前は最強のアタシに相応しい、世界一の相棒だ!」

 《……そうあれるように、努力するよ》

 

 確かほくと、『ヒーロー』目指してるんだっけ。だったら、このアタシが保証する。お前は、最高のヒーローになれる。

 今日こうして、アタシといっしょに戦ってくれて、街のニンゲンたちの危機を救ったんだからさ……!

 

 ―――――カラッカラァ…………ン

 

 と、何かが地面に落ちる音が聞こえた。見ると、黄色い長方形の板ッ切れが落ちていた。拾い上げて見ると、《P-08 CURE-LEMONADE》と書かれていて、その上にキュアレモネードの顔がラベリングされた、メモリーカードだった。忘れるもんか、これは―――――

 

 「レモネードのキュアチップ……」

 

 アタシはそれを握りしめ、悔しさに歯を食いしばった。

 

 「すまねぇ……アタシがもっと強かったら……アンタ達がこんな姿にされることもなかったのに……!アタシの家族だって……!」

 

 涙が止まらない。アタシの目標だった51人のプリキュアたちは、全員がこんな『変わり果てた』姿に変えられてしまったんだ。

 "お師さん"だってそうに違いない。既に物言わぬキュアチップにされてしまっているに決まってる……

 もう、あの笑顔も、あの声も、二度と見ることも、聞くコトもできないんだ……

 全部……全部アタシが弱かったからなんだ……だからあの時―――――

 

 『…………生まれ変わったデータって、泣き虫さんですか?』

 

 ―――――え?

 

 てのひらの中のチップ。それが黄金色に輝いて、イーネルギーの粒子を霧のように噴き出した。

 それをスクリーンにして、幻のように浮かび上がってきたのは―――――

 

 「レモネード……なのか……?」

 

 ホンモノ……?いや、ショックを受けたアタシが見てる幻覚の可能性も……?!

 

 『わたしが、他のだれかに見えます?』

 「い……いや……」

 

 金色の、形容しがたいウズマキツインテール。小柄な背丈。確かにそこにいたのは、アタシのよく知るキュアレモネードだ。

 てか……さっきのアタシの声、聞こえてたのか……

 

 『見ない間に、すごく強くなりましたね』

 「……と、トーゼンだぜ!アタシを誰だと思ってんだ!?いずれは最強のプリキュアになる、キュアデータ様だぜ!?」

 『うふふ♪……データが無事で、安心しました♪』

 「それはアタシもいっしょさ……てっきり、バグッチャーといっしょにブチ抜いちまったかと思ったぜ」

 

 実は内心ヒヤヒヤしてた。チップごとぶっ壊しちまったらどうしよう、って。

 でもまぁ、こうしてチップを取り戻せたし、キュアレモネードもチップの中で無事だったようだし、万々歳、か。

 

 『あの……キュアネットでデータがその姿になってるってことは、もうユーザー契約を?』

 「ああ!紹介するぜ、アタシの世界一の相棒―――――ほくとだ!」

 《……はじめまして》

 

 アタシの横の空間にモニターがあらわれて、微笑むほくとが映った。その瞬間、ほんの一瞬、レモネードの表情が変わった、気がした。

 

 『!……男の子……!?』

 

 そうつぶやいたのが聞こえた。

 

 「なんだよ?ほくとが男で悪いかよ?」

 『え?……ううん、なんでもないですよ?……ほくとさん……データのユーザーになってくれて、本当にありがとうございます……見ての通り、ヤンチャな子ですけど……どうか仲良くしてあげてくださいね♪』

 「……ちょ、やめろって!?親父やお袋じゃあるまいし……」

 

 ―――――親父や、お袋……!

 

 思わずそう口に出して、アタシは思い出してしまった。

 

 『この調子で、キュアチップに変えられたわたしの仲間たちを助け出していくことができれば、いずれはサーバー王国も復興できますよ!そうすれば、国の皆さんも戻ってくることができます!』

 《データのお父さんとお母さんも、キュアネットのどこかに避難してるの?》

 

 ほくとの言葉もまた、アタシの心をきしませた。

 誰が悪いわけじゃないけれど、それでも―――――

 言わなきゃいけなかった。

 

 『!ほくとさん、それは―――――』

 「――――――――――死んだよ」

 《…………え……!?》

 

 そう、親父も、お袋も、妹のレコも―――――

 あの日、あの炎の中に―――――

 

 《……!ごめん、データ……僕……》

 

 ほくとにも、黙ってたわけじゃねぇけど―――――でも―――――

 アタシの戦う理由は―――――あの日、あの瞬間から、変わっちまったんだ―――――……

 

 ……SAVE POINT




 キャラクター紹介

 キュアデータ

 "サーバー王国"の守護戦士『プリキュア』見習いのひとり。イメージカラーは水色。
 元々はイヌの姿をした辞書アプリアン『データ』だったが、キュアホワイトの下で修業を積み、プリキュアとなった。
 強気で生意気、ヤンチャでボーイッシュな姐御肌。友達思いで面倒見もよく、同年代のアプリアンからはとても頼りにされていた。
 サーバー王国最強を自称しているが、彼女が『最強』にこだわる理由には深い事情がある模様。

 元々、辞書アプリアンは温厚で物静かな性格の者が多く、データも本質的には知的なのだが、それを感じさせないほどの、辞書アプリアンの中では特異的な気性の荒さから、周囲からは『脳筋』と思われがち。
 辞書アプリアン特有の絶対記憶能力を持っているが、かつてのデータはそれをコンプレックスにしていて、気性が荒くなったのもそのせい。しかし、師匠のキュアホワイトからその能力を褒められたことで自信がつき、この能力を活かす戦い方を学んでいった。
 師匠譲りの回転殺法や投げ技を得意とし、カウンター技も使う。
 さらにはそれらをキック技に応用していて、パンチよりもキックの割合が多い。
 決め台詞は『アタシの辞書に、○○の文字は無ェ!!』。

 ――――――――――

 守るべきものを失ったデータが、それでも戦おうとする理由とは―――――
 そして―――――近づくは運命の時。
 次回、『現実』を目の前にしたほくととデータのたどる道は―――――?
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