インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 プリキュアドリームスターズの趣旨が『プリキュア版"平成ジェネレーションズ"』だとようやく気付いた稚拙です……

 毎度お待たせしてしまってホントーに申しわけございません……
 特撮、特にライダーファンの方に自信を持ってお勧めできる変身篇B、ついに送信です!!

 ……『けもフレ』で『野性解放』という単語が出てきた時、ついニヤリとした特撮ファンは稚拙だけではないハズ……


正義ノ系譜

 NOW LOADING……

 

 『……人質を助け出したくらいで勝ったつもりかい?』

 

 バグッチャーの肩に乗るネンチャックが見下した笑いを浮かべる。

 

 『……確かに、ののかを助けるだけなら、これでわたしの勝ちだと思うわ……でも、わたしはまだ、勝ってもないし負けてもない。それに、わたしは"勝つ"つもりも、"負ける"つもりもない―――――』

 

 わたしは、バグッチャーを指さし、宣言した。

 

 『そのバグッチャーに囚われたプリキュアを、"取り戻す"……"勝つ"んじゃない……"打ち克つ"の!』

 『屁理屈を言う!!』

 『ラァァァブギタアァァァァァーーーー!!』

 

 バグッチャーが奏でるギターから、たくさんの音符が弾き出される。見た目はファンシーだけれど、触れたら最期は自明の理。色とりどりの音符を、避けながら掻い潜って、正拳突きを―――――

 

 ―――――ダンッッッッ!!!!!!!!!!!!

 

 打ち込みの手応えに違和感があった。バグッチャーが何かした……!?

 

 『バリア……!?』

 

 泡のような、表面を波打たせた球体が、バグッチャーとわたしの間をさえぎっているのを見た。

 

 『でも、こんなのぉぉぉぉぉ!!!』

 《ほくとッ!》

 

 データの声も耳に入らず、わたしは左右の拳を連続で打ち込んだ。そう、最初にバグッチャーに打ち込んだ時と、同様に―――――!!

 

 《おい、ほくとッ!!》

 『大丈夫!!さっきとは違うから!わたしは……わたしはッ!!』

 《だから、ほくと―――――!!》

 

 

 ―――――お前、()()()って―――――……

 

 

 『!!!!!!!!!!!!!!』

 

 その手は、止まった。

 

 

 『―――――……え…………?』

 

 

 

 ―――――さっきの、なんだったんだ……!?

 

 ―――――()、は……なに、を……?

 

 さっきまで、ののかを助け出そうと必死になって―――――

 ののかを助け出して、やさしくののかに笑いかけて―――――

 ネンチャックに啖呵を切って、バグッチャーのバリアを砕こうと拳を打ち込んでいたのは―――――

 

 ―――――()なんだ……!?

 

 《おい、ほくと!さっきまでお前……まるで……》

 『うん…………』

 

 間違いない。さっきまでの僕は、ののかのことで頭がいっぱいになっていた。

 つまりは、『ひとつのコト』に集中して、まわりが見えなくなってしまって―――――

 

 『(ココロ)が……(カラダ)に、引っ張られてる……―――――』

 

 これって、大問題なんじゃないか……!?

 戦いに集中するあまり、気づいたら"完全な"女の子になっちゃってた、なんてシャレにならない……!!

 だったら―――――

 

 『データ……もしまた、僕の様子がおかしくなったら……もう一度正気に戻してほしい……どこまで自分のまま、"氣"を張ったまま戦えるか……こんな戦い方をしたことはないから、正直自信が―――――』

 

 そうつぶやき終わるか終わらないか、イーネドライブがカタカタふるえた。

 

 《お前だけが気張る必要ねぇよ。アタシとお前は一心同体だ!一度だろうと何度だろうと、正気に戻してやんよ!お前は……お前のまま戦えばいいぜ!》

 『……ありがとう―――――データ』

 

 そうだ―――――この体、この心は、僕だけのモノじゃない。彼女も―――――データもいっしょに、戦ってくれているんだ。

 それなら―――――

 

 『ねぇデータ……あのバグッチャーが、どのプリキュアを取り込んでるか……わかる?』

 《もちろん、もう目星はついてるぜ―――――キュアビートだ》

 

 即答。さすがはデータだ。

 

 《『スイートプリキュア』のひとり、"音魂(おんこん)のビート"……音を使って戦うスイートプリキュアの中でも、攻撃も防御も完璧に近い、要塞みたいなプリキュアだ……とにかく、自分のペースにノって相手にイニシアチブを握らせねぇタイプだな》

 

 とすれば、相当な手練れということになる。もっとも、51人のプリキュアは全員『伝説の戦士』。手練れじゃないプリキュアなんていないだろうけど―――――

 

 《まずはあのバリアだな……ブチ破らねぇと、話にもなんねぇ》

 

 さっき、連続で突きを打ち込んだけれど、崩せたなんて到底思えない。事実、バグッチャーはバリアを展開したまま、確かに立っているのだから。

 連続での攻撃ではなく、一撃だ。全力を一点に集中した、渾身の一撃に賭けるしかない。それこそ、稲光の如き一瞬の閃撃に―――――

 

 ―――――!それなら―――――

 

 この体……そして、データの能力と、僕の『目にしてきたモノ』それを組み合わせることができるなら―――――

 ……やれるかもしれない!

 

 『データ、確かキミは、一度見たモノは忘れることなく覚えていられるんだよね?』

 《あ?そうだけど、それがどーした?》

 『その"記憶"……"僕の記憶"も参照して―――――引き出して、再現することとか……できる?』

 《う~ん……やったこたねぇけど、やってやれねぇことはねぇかもな。何しろ、今のアタシはお前で、お前はアタシ、だしな!》

 『……それなら、応用できそうだね……"心の記録"を、現実の技として、この身で再現できるなら』

 

 僕は精神を集中して、心の中のデータに頼む。

 

 『お願いしたいことがある……僕の"心の記録"……そのすべてをキミに見せる……そこからはキミが判断してほしい―――――僕の見てきたこと、感じてきたことが、"力"に出来るか、否かを』

 

 これは賭けだ。僕の見聞きしてきたこと、僕の『夢への資料』が、今ここで活かせるかどうか―――――

 心の中のデータは、勝気な顔でうなづいた。

 

 《わかった、やってみるぜ!》

 

 ……頼んだよ、データ。

 ―――――そして―――――『僕の夢たち』―――――……

 

 ――――――――――

 

 BACK LOG CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 アタシは、ほくとのココロ―――――『記憶』の領域へとダイヴした。

 ひたすらに真っ暗な―――――床だけが白い空間。ほくとのイメージの中―――――

 

 「ここか―――――」

 

 そうつぶやいた、その時。

 

 『おぉ……待っていたぞ、君を』

 「!?」

 

 精悍な男の声に、アタシは振り返った。

 そこに立っていたのは―――――

 頭には青銀色のヘルメット。紅く輝く大きな複眼、口元を覆う牙のような装飾、額から延びる触覚。

 首元に巻かれたのは、真紅のマフラー。銀色のグローブとブーツ。胴体の緑色の部分は、さながら鎧を思わせる姿だ。

 

 「アンタは……!?」

 

 どう見ても只者じゃない。まるで着ぐるみだ。

 ―――――まさか……!?

 

 『私は……この少年の、"記憶"にして、"憧憬"……"夢"と呼ばれる存在だ。そして、……"彼ら"も』

 

 そう、着ぐるみが言った瞬間、カッ!と空間が明るくなり、アタシは思わず目がくらんだ。

 おそるおそる目を開くと―――――その男の背後に―――――

 空間を埋め尽くさんとするほどの数の、異形の人型が並び立ち、アタシを見ていた―――――

 

 《データに見てほしかったのは……彼らだよ》

 

 ほくとの声が降ってくる。

 

 《彼らこそ……45年以上の長きにわたって、人間の自由と、世界の平和を守るために、悪と戦い続けてきた―――――正義の戦士たち》

 

 ザッ!!と、100人以上のシルエットが、雄々しく構えた―――――

 

 《彼らを……人は、こう呼ぶ―――――》

 

 

 

 

 ―――――『仮面ライダー』―――――

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 BACK LOG CURE-DATEAR

 

 ――――――――――

 

 

 《お前はやっぱ、最高だ……こんなに頼りになる"先輩"たちを、アタシに紹介してくれたんだからさ……!》

 

 その言葉を聞けただけでうれしかった。そして、こうも言ってくれた。

 

 《行けるぜ!お前の"心の記録"……再現できるぜ!!》

 『……よし……!!』

 

 僕は意を決した。マフラーを掴んで、顔の鼻先までをマフラーで覆う。

 これは僕の―――――仮面だ。悪に対する怒りと、平和を守る誓いを宿した、戦士の仮面―――――

 彼らに少しでも、近づけるように―――――

 そして僕は、バグッチャーをまっすぐ見据えて、左の拳を握って腰だめに構えて引き、右腕を斜め左上方に、指先を揃えて真っ直ぐに伸ばした。

 

 『なんだいそれは……?』

 

 ネンチャックの問いには答えず、ただ静かに、僕は伸ばした右腕で弧を描くように、右へとゆっくりと動かし、斜め右上方に達した瞬間、右腕を握って腰だめに引き、同時に左腕を斜め右上方に指先を揃えて真っ直ぐ突き出した。

 刹那―――――

 

 《GENEALOGY OF JUSTICE(正義ノ系譜)!! START UP!!!》

 

 僕の全身から、青白いイーネルギーの粒子が噴き出した。

 理解できる―――――これは僕の、『決意』であると。

 

 『真のヒーロー』に近づくために―――――偉大なる先人たちの力を借りるための―――――

 

 『行くぞッ!!』

 

 僕は駆け出し、"心の記録"にアクセスする。

 

 

 ⇒ 〈MASKED RIDER 1〉

   〈MASKED RIDER 2〉

   〈MASKED RIDER V3〉

 

 《LET'S GO! RIDER KICK!!》

 

 女の子のような電子音声を、スマホが叫んだ。

 すると胸のイーネドライブに、『R』と『正面から見たバイク』を組み合わせた、『立花レーシングクラブ』のエンブレムが浮かんだ。

 マフラーが真紅に染まり、フォトンストリームのようなラインの色が、ブルーグレイにあざやかに変わった。

 瞬間、体中のイーネルギーが、両脚へと集束していくのがわかる。

 駆け出して、踏み込む度に、光がスパークする。そして僕は、高々と跳躍した。

 

 『とォッ!!』

 

 ネンチャックとバグッチャーが、僕を視線で追う。そして、両脚をバグッチャーに向け、一直線に蹴り込む―――――

 これこそ、仮面ライダー1号が、立花藤兵衛さんとの特訓で編み出した、『稲光の如き一瞬の閃撃』―――――

 その名は!!

 

 

 

電光ライダァァァァキィィィィィックッッ!!!!!

 

 

 ―――――バギィィィィイインン!!!!!!!

  

 バグッチャーの張り巡らせたバリアがガラスのように砕け散り、キックの直撃を受けたバグッチャーは20mほど吹っ飛んだ。

 

 『何ィィ!?』

 

 驚愕するネンチャック、その横を僕は素早く駆け抜け、バグッチャーを正面から両腕で掴まえた。そのまま思い切り跳躍し、高速で回転させ、投げ飛ばす……!

 その高速回転によって一時的な真空状態を生み出し、運動エネルギーと環境変化によって敵の三半規管を破壊、受け身を封じた上で地面へと叩き落す仮面ライダー1号の決め技、これこそ―――――!!

 

 

 

ライダァァきりもみッシュゥゥゥゥットッッッ!!!

 

 

 バグッチャーは頭から、コンテナの山へと叩き落ちた。鋼鉄がひしゃげるような壮絶な音が響いた。

 

 『……できた……!!』

 

 僕の心の中で、はじける感覚―――――技の再現に成功し、それが相手に通用した、会心の心境―――――!

 

 『なんだ、その技は…………なんなんだぁその技はァーーーッ!?』

 

 ネンチャックは、瞠目して叫んできていた。

 

 『51人のプリキュア……その技の数々はすべて解析したハズだ……!なのになんだその技はッ!!?ボク達ジャークウェブが蒐集したプリキュアのアーカイブに無いその技はなんなんだよぉぉぉ!?!!?』

 『……知らなくて、当たり前さ』

 

 僕は、ネンチャックを睨み返して言い放った。

 

 『この技は、プリキュアの技じゃないから』

 『……!?』

 『……この世界には、プリキュアとは異なる道で、"正義ノ系譜"を紡いできた、『人間の自由を守る戦士』たちもいるんだ……さっきの技は、その彼らの技を借りたんだ』

 『な・に……!?』

 『その名も、"仮面ライダー"……僕の"夢"だよ』

 

 仮面ライダーが、現実にはいないことは知っている。でも僕にとっては、現実と同じだ。

 あの日僕を救ってくれた、大きな背中は、確かに僕の力になってくれる―――――

 そして―――――僕の夢は、僕を"僕"のまま、つなぎとめてくれる。

 つまり、"(カラダ)"に引っ張られることなく、僕は"(ボク)"のままでいられる―――――!

 

 『……聞こえる?……キュアビート』

 

 僕はコンテナの山を掻き分け、体を震わせながら上体を起こそうとするバグッチャーを見据えた。

 

 『僕は……キミのことをほとんど知らない……でも僕は……キミを偉大な先達として、越えさせてもらう……僕は……夢と勇気を束ねて、キミに立ち向かう……!後悔をしたくないから……』

 

 僕には、ヒーローになるという夢がある。

 僕には、その夢を阻むモノに立ち向かえる勇気がある。

 だから―――――僕は―――――

 

 『守りたい"明日"のために……この高鳴る鼓動は……止まらない!』

 

 ―――――みんなの涙を祓う、ヒーローになる!!

 

 《CURE-DATEAR! FULL-DRIVE!!》

 

 その瞬間―――――手首と足首、腰の部分の金属パーツから、水色のイーネルギーが噴き出した。同時に、僕の体の全身が熱を帯びてくる。

 イーネルギーが一点に集まり、1本の棒状の得物に変わる。頭の中に、その得物の"銘"が走る―――――

 

 ―――――タッピンスティック・デーティアソード―――――

 

 でもあえて……今はその名を唱えまい。

 光の中から出現したそれを引き抜きながら、僕は叫んだ。

 

 『"リボルケイン"ッ!!』

 《おい名前違ェぞ!?Σ(;゚Д゚)》

 

 データのツッコミが聞こえた気がしたけれど、今は些末な事だ。コアユニットを手前側に動かすと、光の剣と化した。

 

   〈MASKED RIDER BLACK〉

 ⇒ 〈MASKED RIDER BLACK RX〉

   〈MASKED RIDER SHIN〉

 

 《WAKE UP! SON OF SUN!!》

 

 電子音声が響いて、今度は『RX』の二文字を意匠化したエンブレムがイーネドライブに浮かび上がり、マフラーと全身の光のラインが深い緑色に染まった。

 

 『……ぶっちぎるぜ!』

 《はァ!?》

 

 一言つぶやいて、僕は駆け出す。驚くデータの裏返る声が聞こえた気がした。

 

 『ちッ!!』

 

 体制の整いきれていないバグッチャーを援護するためか、ネンチャックが光弾を放つ。数発は牽制、最後の一発はまっすぐこちらに―――――

 

 『ふんッ!!』

 

 躊躇いなく、僕はソードを振り抜いた。光の弾が両断され、僕の背後で立て続けに爆発を起こした。橙色に照らされる視界の中、僕はバグッチャーに肉薄し、光輝くソードを真っ直ぐに突き刺した。

 

 『ガガガガガガガガガガガガガガガガ!?!!?!?!?!!?!?!?!?』

 『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!』

 

 全身のイーネルギーを、ソード一本に集中し、相手が倒れるまで、極限まで流し込む!!

 そして、僕はソードを抜きはらいながら振り向き、ゆっくりと両腕で『R』の文字を大きく描き、見得を切る―――――

 これこそ、全ライダーの中で最強の必殺技とも謳われた、『太陽の子』仮面ライダーBLACK RXの奥義―――――

 

 

 

 

リ ボ ル ク ラ ッ シ ュ

 

一欠

 

 

 

 ―――――ドッゴオオォオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンン!!!!!!!!!

 

 僕の背後で、重々しい爆発音がひびいた。あたりがまるで昼間のように、一瞬明るくなるほどの爆炎が上がった。

 

 『ば……バカな……プリキュアのくせに……プリキュアのくせにプリキュアの技を使わないプリキュア…………君は……なんなんだッ!?プリキュアなのか!?それとも……!?プリキュアではない別の"何か"だとでもいうのかいッッ!?』

 『―――――……あえて二度言う』

 

 僕はネンチャックに振り返りながら、静かに語気を抑えながら言った。

 

 『そんなこと僕が知るか』

 

 僕はネンチャックを睨んだまま、一歩、また一歩と、ゆっくりと近づいた。

 この時の僕は大いに、そして……静かに、昂っていた。さっき、"女の子になりかけた時"とは、別の方向で―――――

 

 

 

つ ぎ は お ま え だ

 

 

 『ひ……ひィッ!?』

 『……ただで、帰れると、思うな』

 

 光り輝くこの太刀、奴の身に斬り下ろさなければ、僕の気が収まらない―――――

 

 『ゆ゛る゛さ゛…………ッ!?』

 

 その時―――――体全体の熱が、僕の意識を侵した。

 ふらりと、上体がゆれて、風景がぐらっとスライドしていく―――――

 僕の全身から、まっしろな蒸気が噴き出した。

 

 ―――――なんだよ、これ……!?

 

 文字通り、視界が靄に蔽われていって―――――

 全身から力が抜けて―――――

 

 意識、まで―――――

 

 

 ――――――――――

 

 《…………気ィついたか?》

 

 データの声だった。

 次に気付いた僕の視界には、一面の星空。耳に入るのは、波音にまじって、遠くに聞こえる消防車や救急車のサイレン。

 上体を起こして、辺りを見回すと、さっきまでの戦いが嘘であるかのように静かだった。

 

 「……データ……?」

 

 ……!

 声が元に戻ってる。見ると、体も元通りだった。データの声は、すぐそばに置かれたスマホから出ていた。

 よ、よかった……さすがに女の子のままだったらどうしようかと……

 

 「そ、そうだ、ネンチャックは!?」

 《一目散に逃げちまったよ……逃げ足だけは早い奴だぜ、アイツ》

 

 当然、そうなるだろう。手駒をやられて、長居する悪人はそうはいないから。

 僕は立ち上がって、土ぼこりを払った。

 

 『無事で何よりね……よかったわ』

 《ああ、まったくだ……待たせちまって悪ィな、ビート》

 

 女の子の声にふり向くと、薄紫色の髪の女の子の姿が、地面に置かれたキュアチップから浮かび上がっていた。

 彼女が、さっきまでのバグッチャーに囚われていたプリキュア―――――キュアビートなのか。

 

 《ビートったらよ、お前が気ィ失ってる途中で出てきちまったもんだから、さっきまでオロオロしててよォ》

 『ちょ、ちょっと、データっ!』

 

 あわてて顔を赤くするビートに、僕は思わず笑ってしまった。最初に見せたクールさとは裏腹に、いい人そうだ。

 

 『……ごほん!……それよりも、驚いたわ……まさか、男の子がプリキュアになっちゃうなんてね』

 「一番驚いてるのは僕だよ……」

 

 今でも、夢だったんじゃないかと思う。でも僕は確かに、プリキュアに変身してしまった。

 ふつう、女の子しか変身できないはずのプリキュアに、どうして……

 

 『驚いてるっていうより……落ち込んでるようにも見えるけど?』

 

 図星を突かれて、なんだか顔が熱くなった。たぶん、顔が真っ赤になってる、と思う。

 たぶん、『プリキュアになってしまった』コトよりも、『女の子になってしまった』コトに落ち込んでるんだ、これは。そうに違いない、うん……

 

 『その気持ちはわかるわ。わたしも、最初そうだったから……』

 

 ビートの表情に、少し憂いが雑じるのを見た。

 

 『……わたしは元々―――――プリキュアの敵だったの』

 「……!」

 《マジかよ!?》

 

 データのリアクションを見るに、この事は彼女も知らなかったようだ。データもまた、プリキュアたちの事情をすべて知っているわけじゃない、ということか。

 

 『……"不幸のメロディ"を歌って、世界を悲しみに染める……マイナーランドの歌姫、"セイレーン"……それが、かつてのわたし』

 

 スーパー戦隊シリーズで、何人かこんな戦士がいた。最初は悪の戦士だったけど、戦いの中で正義に目覚めて悪の組織から離反した戦士たち―――――

 プリキュアにも、そんな子がいたんだ……

 

 『最初にプリキュアに変身した時……わたしは戸惑ったわ……もう元の場所には戻れない……これからどうしていいか、どうすればいいのか……先の未来もわからない状況に、一時は絶望もした……でも、メロディやリズム……それから、ハミィ……みんなが、わたしを受けいれてくれて―――――みんなが、"わたしの居場所"になってくれたの』

 《……そんなことがあったのか……》

 『それからは……わたしの世界は一変した……今まで見えなかったコト、感じられなかったコト……いっぱい知ることができたわ。それに、サーバー王国に来てからは、わたしと同じような立場のプリキュアが、他の世界にいたこともわかって……だから、ほくと』

 

 ビートは、僕に笑いかけた。

 

 『わたしは思うの……プリキュアはみんな、『なるべくしてなった』んじゃないかな、って。運命みたいな、そんな感じ……意味もなくプリキュアになった子なんていないんだから……ほくとがデータと出会って、キュアデーティアになったことには、絶対に意味がある……それだけは、心にとめておいて』

 

 僕がプリキュアになったことの意味って、なんなんだろうか……

 それは今わからないけれど、でも、これからの戦いで、それもわかってくるのかな……―――――

 ビートはプリキュアになったことで、『変わる』ことができたけれど、僕は―――――

 

 『変わること、変わっていくことを、怖がっちゃダメよ。大丈夫!がんばれ、男のコ!』

 

 最後にウィンクを残して、ビートはふわりと消えていった。僕は身をかがめて、残された青いキュアチップを拾い上げた。《P-22 CURE-BEAT》と、ナンバーが書かれている。

 

 「男のコ、か……」

 

 まだ、僕がプリキュアになって、数時間ともたっていない。そこから、『僕がプリキュアになった意味』、その答えを見つけることは出来ないだろう―――――

 僕はキュアビートのチップの横の、もう1枚の水色のチップを見た。

 

 《@02 CURE-DATEAR》

 

 "僕"のキュアチップだ。ラベルに描かれているのは、まるでアイドルのように満面の笑みをこちらに向けている、"女の子になった僕(キュアデーティア)"――――― 

 

 「はぁ……―――――」

 

 今の僕には、目の毒だった……

 

 ――――――――――

 

 それから、隠れていたのんを迎えに行くと、それはもう盛大に泣かれてしまった。

 プリキュアに助けてもらったことを伝えると、一転して目をキラキラさせて、『ホンモノのプリキュアが助けてくれた』ことを熱く語って聞かせてくれた。

 

 ……妹よ、ごめん。それ、僕だ。

 

 夢を見せてしまって申しわけないけれど……それは紛れもなく、ハイになって完全に女の子になりかけていた、僕だ。

 のんの喜ぶ顔を見るのはうれしいけれど、なんだか申しわけないような、複雑な気分……

 夜遅くに帰り着いた僕とのんは、家族から大いにカミナリを落とされ、縮こまったとさ……

 

 翌朝、テレビを見ていた僕は飛び上がりそうになるほど驚いた。

 ゆうべ、実体化したバグッチャー。最初に現れた方のバグッチャーと戦う、桃色の髪の女の子が、テレビ画面に映し出されたからだ。

 間違いない。あの子は、キュアメモリアのユーザーだ。僕と同じで、メモリアと一体化して変身して、この世界で戦えるようになったんだ。

 とすれば、彼女とも戦いの中で対面する可能性がある―――――

 そこで僕は―――――実に男らしくない決心をすることにした。

 

 ―――――隠す。

 

 ただひたすら、『キュアデーティア=八手ほくと』という事柄を、隠し通すことに決めた。

 家族や世間にはもちろんのこと、もうひとりのプリキュアユーザーにも。

 

 相手の素性が知れない、ということもある。でもそれ以上に、男である僕が、女の子に―――――プリキュアに変身することを、どう思われてしまうかが怖いと思った。

 僕がキュアデーティアであることは、この世界の誰にも知られちゃいけない―――――特に―――――東堂さん、には―――――

 あの子がプリキュアが好きだということは知っている。でも、変身しているのはみんな女の子。男が変身するプリキュアなんて、気持ち悪がるに決まってる。

 『性別が変わる』ということは、よほどの事情が無い限り、異常なことだって思うから―――――

 

 その時の僕は、妙な方向に決意が固まってしまっていた。体にも心にも、ヘンに力が入ってしまっていた。

 登校してから、隣のクラスから聞き覚えのある声が響いてきたのも、そんな時だった。

 

 「だいたいよ!!どうしてあんな風になってからプリキュアは出てきたんだよ!!?もっと早く、それこそバケモンが出てくる前に来てくれりゃ、あんなコトにはならなかったんだ!!」

 

 同じ部活の、香川桃太郎―――――僕は"モモ"と呼んでいる―――――だ。

 隣の教室をのぞき込むと、モモは東堂さんに詰め寄り、八つ当たり気味にまくし立てていた。

 

 「お前はプリキュア好きって言うけどな……おれは正直昨日で嫌いになった……!ヒーローだとかヒロインだとかいうなら、なんでおれの妹助けてくれなかったんだよ!?お前、プリキュア詳しいんだろ!?あのプリキュアはなんなんだよ!?どこのどいつか知ってんのか!?」

 

 昨日のことはニュースで見た。僕ではないもうひとりのプリキュアと戦ったバグッチャーが街で暴れて、怪我をした人も、命を落とした人がいたことも―――――

 でも―――――それでも、僕は見ているだけではいられなかった。

 

 「…………それは…………違うと思うよ」

 

 それから僕は、僕の見てきたヒーローの戦いが、『仕合』とは違うことを、過去見てきたヒーローたちの言葉を引用しながら、モモに伝えた。

 

 「でも……ヒーローやヒロインだって、心を持つ人間なんだ……神様なんかじゃない。どんなに全力でがんばっても、助けられない命があるし、救いの手が届かないことだってある……だから僕は、昨日のプリキュアを責める気にはなれないよ」

 

 この言葉は、かつて見た映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』で、ウルトラマン―――――ハヤタさんが言った言葉を借りた。

 昨日の僕だって、たまたま運が良かっただけかもしれない。『運命』が『噛み合って』くれただけかもしれない。一歩間違えば僕も確実に死んでいたし、のんも無事に取り戻すことができたかどうか―――――

 それだけに、この言葉は僕自身にも、刻み込むべき言葉だった。

 やがてモモは僕の言葉に納得してくれて、東堂さんにも謝ってくれた。その東堂さんは、

 

 「八手くん……その、ありがとう」

 

 と、力無くも笑顔を向けてくれた。その笑顔に、また僕の鼓動が早まる。顔全体が熱くなる。真っ赤な顔を見られたくなくって、僕は一瞬合った視線を逸らしてしまった。

 

 「…………、い、いや……その……昨日のプリキュア、ヒーローっぽかったから……本当に出てきたのが仮面ライダーじゃなくって、ちょっと残念だけど……でも、プリキュアが戦ってくれなかったら、もっと被害が広がっていたかもしれないし……」

 

 やっぱり、東堂さんは"昨日のプリキュア"のことも、好きになったんだろうな……

 でも、僕は"昨日のプリキュア"とは違う―――――男なんだから……

 

 本当の僕のことは―――――やっぱり、彼女には伝えられない。

 

 大好きなヒトの、"ダイスキ"の感情を、裏切ることなんてできないから―――――

 

 ――――――――――

 

 その日の放課後―――――帰ろうとした僕は、スマホからのデータの声を聞いた。

 

 《ほくと!ヤツだ!ネンチャックが近くにいるぞ!!》

 

 警戒しながら、僕は校舎の死角へと素早く隠れて、キュアネットへとデータを送り込んだ。

 

 ―――――今度こそ逃がさない!

 

 街の人を、家族を、ののかを傷つけた罪、今日こそ清算してもらう!

 やがてデータは図書室のキュアネット空間に辿り着くと、今にもトドメの一撃を受けそうなキュアメモリアを救うべく、バグッチャーに跳び蹴りで奇襲をかけた。

 

 《元気してたかよ?……メモリア》

 

 データにとっては、待望の瞬間だったに違いない。ようやく、面と向かってメモリアに再会できたのだから。

 でも、再会早々顔面に拳を打ち込むのは流石にやり過ぎだったんじゃないかなぁ……

 その戦いの中で、僕はキュアチップを実戦投入してみようと思った。これが仮面ライダーディケイドやディエンドの使うライダーカードのように、別のプリキュアの能力を引き出して、データが使えるようにするものであるなら……

 手にしたキュアレモネードのチップを、スマホのカード差込口に挿入した。

 

 《はじけるレモンの香り!キュアレモネード!》

 

 すると、レモネードを取り込んでいたバグッチャーが使っていた光の鎖が、データの両手に装備された。やっぱり……!

 限定的だけれども、キュアチップはライダーカードのように使うことができるんだ……

 データも『辞書』のアプリアンだけあって応用力はなかなかで、僕が送ったレモネードの鎖をすぐさま使いこなして見せている。

 データの会心の一撃によってバグッチャーは粉砕されるも、それは虚像だった。

 

 《BE ON GUARD!!! BUGUCCHER REALIZE!!!》

 

 合成音声ののち、さっきデータが倒した虚像と、全く相似形の巨体がグラウンドに立った。

 それを見上げて、僕は息を呑んだ。

 

 ―――――また……来るのか。

 

 《ほくと……行こうぜ!次はお前がぶっちぎる番だ!!》

 「……わかった!」

 

 意を決して、僕はキュアデーティアのチップを、差込口にセットする。

 

 《START UP! MATRIX INSTALL!!!》

 

 初めて、僕は僕の意志で『変身』する。

 左手にスマホを握って、仮面ライダーXの『セタップ』を意識して構えながら―――――

 

 「プリキュア!マトリクス!インストールッ!!」

 《CURE-DATA! INSTALL TO HOKUTO!!》

 

 水色の光を放つスマホを胸に押し込むと、水色の光を放つ空間が広がる。

 目の前に、キュアネットからデータが実体化する。

 

 『行くぜ、ほくと!』

 「……うん!」

 

 互いに右の拳を握って、2人の拳をぶつけ合わせる。瞬間、データが光に包まれて、光の粒子になって僕の胸へと入っていく。

 

 「う……ゎ!?」

 

 体が女の子に変わっていくこの感覚、事実上初めてだけど、これは馴染めそうにない……

 一瞬で髪の毛が水色に染まって膝まで伸びて、髪飾りでまとめられ、周りのイーネルギーが、グローブとショートブーツ、コスチュームに変わって、僕を包んでいく。

 

 《CURE-DATEAR!! INSTALL COMPLETE!!!》

 『渾然一体、涙祓一心!キュア、デーティアッ!!』

 

 まるで、体そのものに刻み込まれたかのように、勝手にポーズを決めて、誰もいないのに名乗りを上げる僕。スーパー戦隊と違って、プリキュアは体が勝手に動くのか……

 ジャンプ一跳びで校舎を飛び越え、グラウンドに立つと、すぐ隣にピンク色のイーネルギーをまとった女の子が降り立った。

 

 『あなたが……キュアデータのユーザーさん?……私、とう……じゃなくって、キュアメモリアル!……あなたのお名前は……?』

 

 初めて対面する、『もうひとりのプリキュアユーザー』。それがこの子―――――キュアメモリアル。

 僕と同じように、プリキュアと一体化して変身した人間―――――

 直視するのが、ちょっと恥ずかしかった。僕はその子をちらと見て、ひとことだけ名乗った。

 

 『……キュア……デーティア』

 

 僕を見るキュアメモリアルの視線と立ち居振舞いを見て、僕は確信した。

 間違いなく、この子が正真正銘の『女の子』だということを。

 言動すべてに、違和感というか、不自然感が一切ない、僕とは違う、混じりけ一つの無い、女の子だ。

 戦いの中で、彼女はキュアチップを使って、別の姿にも変身して見せた。

 

 《CURE-TWINKLE! INSTALL TO MEMORIAL!! INSTALL COMPLETE!!》

 『キュアメモリアル、"トゥインクルスタイル"!!……冷たい檻に閉ざされた"未来の光"、返していただきますわ―――――お覚悟は、よろしくて?』

 

 その様はまるで、仮面ライダージオウやゲイツの『アーマータイム』によく似ていた。

 僕はプリキュアのことをまったく知らなくて、キュアチップを自分でどう使っていいか、ほとんどわからない。でも、この子は―――――

 

 『キラキラ!流れ星よ!プリキュアっ!ミーティア・ハミング!!』

 

 別のプリキュアの力と技を、まるで自分の手足のように使いこなしていた。やはり、この子は僕と違う、『ホンモノ』だ。

 僕が特撮ヒーローに憧れて、その技を記憶に刻んだように、この子もまたプリキュアに憧れて、なりきって、再現することができているんだ―――――

 

 《大暴れだな、相棒!》

 『……今日は、ちょっと抑えてる。初めて……いっしょに戦うし、ね』

 

 キュアメモリアルの存在に僕は安心して、心を平静に保つことができていた。だからこそ『普段』のまま戦えた。でも、ライダーの技を使うことはなるべく抑えた。そこから、僕の正体が露見することを恐れていたからだった。

 

 『こんな形であなたと出会ってしまったのはつらいコトだけど……でも……笑顔のパワーで……私とあなたの、世界はつながる……!バグッチャーにとらわれたその瞳は曇ってしまったかもしれないけれど……でも!今からでも……!!私の負けない勇気!!ここに束ねて、あなたを、未来に導く!!!もう一度輝いて、みゆきちゃんっっ!!』

 

 彼女は、憧れているだけじゃない。そのプリキュアを知って、愛しているから―――――

 相手が『誰』かを知っているから―――――

 心から、プリキュアのことを想って、戦えている―――――

 そんな、プリキュアのことを愛してやまないその姿は、否応なしに、『あの子』と重なって見えて―――――

 

 『……なんか……"あの子"に似てるなぁ……』

 

 思わず、そうつぶやいていた。

 

 『ありがとう……いっしょに戦ってくれて。……それで、よかったらこれからも、いっしょに戦って、くれるかな?』

 

 バグッチャーを倒した後、彼女は少し上目遣い気味に僕を見つめて、こう訊いてきた。

 考えるまでもなかった。彼女は僕と同じ、プリキュアユーザー。ヒーローもヒロインもいないこの世界で、同じ運命を背負った存在―――――仲間なんだ。

 

 『……もちろん。……よろしくね、メモリアル』

 

 右手を差し出すと、メモリアルはためらうことなく握ってきた。暖かくて、やわらかい―――――

 入学式のあの日、はじめての『あの子』の手の感触が重なって感じられた。でも―――――

 

 『それで、なんだけど……あなたの本当の名前、教えてくれないかな……?』

 

 ―――――!

 

 心の中が、ずきん、と疼いた。

 本当の僕のことを彼女が知れば、失望するに違いない。

 プリキュアのコトも全く知らず、むしろ特撮ヒーローに傾倒していて……

 そしてなにより―――――男なのだから。

 

 『……それは、できない』

 『え……?どうして……なの?』

 『………………それは……本当のことを知ったら……きっと、キライになるから―――――』

 『……え』

 『……ごめん。さよなら!』

 

 キミの手を取ることはできても―――――

 本当の姿だけは、キミに見せられない―――――

 最初は、僕が男だから、という単純な理由だった。

 でも、彼女の人となりを知って、もう一つ、理由ができてしまった。

 

 どうしても、東堂さんとメモリアルが―――――重なって見えてしまったから。

 

 メモリアルとあの子は、別人かも知れない。でも、メモリアルの想いを裏切ってしまったら、あの子の想いも裏切ってしまうんじゃないかって、そう思う。

 メモリアルにとっても、あの子にとっても、『プリキュア』は"綺麗なモノ"であってほしいと、僕は願う。だからこそ―――――

 僕はキミたちの『ダイスキ』の―――――汚点にはなりたくないんだ――――― 

 

 その後、データから散々どやされた。

 メモリアといっしょに戦うことができるかもしれないというデータの喜びを失望に変えてしまって、本当に悪いと思う。

 でも……でもね、データ……

 キミがリアルワールドと呼ぶこの世界は、キミが思っている以上に複雑なんだ。

 この先、僕が誰であるのか、彼女が気にしなくなるまで―――――

 

 隠さなくちゃ、ならないんだ……

 

 ――――――――――

 

 それから1週間がたち、その日は中学総体の空手の部の地区予選が、大泉武道館で開かれていた。

 空手部所属の僕もチームの先鋒として、試合に出場するためにここを訪れていた。

 前の日、むぎが応援に来るって聞いていたけど、彼女の声を聞いて見上げた観客席には―――――

 

 ―――――何故か東堂さんがいた……!?

 

 目が合ってしまって、思わず目をそらしてしまった。顔が熱い……たぶん、真っ赤だ。

 まさか東堂さんが見てる前で仕合をすることになるなんて―――――

 人生で、一番緊張する仕合だった―――――

 

 ――――――――――

 

 結果は―――――『辛勝』だった。

 相手方もかなりの腕前で、僕も何度か窮地に追い込まれたけれど、最後は何とか優勢勝ちに持ち込むことができた。

 次の試合は午後からの予定。僕は弁当を取りに武道場から控え室に戻ろうとした、その時―――――

 ものすごい地響きと、けたたましい火災報知機の音がこだました。

 僕は反射的に、武道場の外へと出た。見上げると、ピンク色の輝きが、バグッチャーの巨体を天へを押し上げている最中だった。

 

 《ほくと!アレって……!!》

 「うん……!」

 

 言われるまでもなく、あれがこの場からバグッチャーを引き離そうとするキュアメモリアルだということは、すぐにわかった。

 武道館の裏口から出た僕はすぐさま変身し、彼女たちの後を追った。

 

 『そんな……そんな勝手な考え……ッ!!』

 

 野球場のグラウンドに、光のリングで拘束されたメモリアルと、今にもトドメの一撃を加えようとしていたバグッチャーを見たときには、反射的に叫んでいた。

 

 『そう、認めるわけにはいかない!!』

 『……キュアデーティア!』

 『君も来たのか……!結局結果オーライってことだね』

 『騒がしくなったからね……!……、わたしはともかく、他の人たちまで巻き込むなんて……狙うなら……、わたしだけにしたらどう!?』

  

 ここで僕は、意識して『わたし』と自称していた。メモリアルには正体を隠すことを徹底していた僕は、『女の子』を演じることにした。

 ……言うまでもないけど、この上なく恥ずかしかった。しかし興が乗ると、これが自然になってしまうから恐ろしい……

 

 『……こないだは、ごめん』

 『え……?』

 『でもね……いっしょに戦えないってわけじゃないから……むしろ……いっしょに戦える方が、うれしいから……』

 『あ……わ、私も!……無神経でごめんね……言いたくないこと、誰でもあるもんね……』

 

 この間のことで、彼女が気を悪くしていたのならいけないと思って、逢えたら謝ろうと、そう決めていた。

 彼女も理解してくれたようで、何よりだと思った―――――

 

 『……く……無茶苦茶だ……なぜそこまで必死になるんだい!?君達には恐怖心というものはないのかい!?』

 『最初はこわくなかったけどね……でも、今はこわいよ―――――こわいけど……それでも、"怖さ"以上のモノが……私の心の中の"勇気"が、今の私を動かしてる……!!』

 『メモリアル……』

 『勇気と強気は違うけど……弱気じゃ、らしくない!!』

 

 それに彼女には、戦う覚悟と、恐怖を勇気に変える、『ココロの強さ』を感じた。

 キュアメモリアも、こんな『強い』子と巡り会えて、本当によかったって、そう思う。

 

 『それじゃ、また』

 『……やっぱり、ダメ?』

 

 ―――――ごめん。

 僕は笑顔にそう乗せた。それでも―――――

 彼女の中の『好奇心』までは、ごまかすことは、できなくて―――――

 

 ―――――ぱきっ

 

 『!?』

 「誰!?」

 

 

 本当の僕を―――――

 

 彼女に見られてしまった―――――

 

 ――――――――――

 

    PLAYER SELECT

 

    ??????

    ??????

 ⇒  HOKUTO HATTE

    CURE-DATA

 

 ――――――――――

 

 本当に……本当に、これからどうすればいいんだろう……

 次にキュアメモリアルと会った時、彼女は必ず、僕のことを深く詮索するに違いない。

 それどころか、白い目で見られることも覚悟しなければならない―――――

 

 《いっそのことさぁ……全部言っちまえばいいじゃねェか?……相手方、もうお前のこと知ってるわけだしさぁ……》

 「でも…………」

 《っツぁぁ、もう!なんでそう煮え切らねェんだよ!いつもの覚悟はどうしたよッ!?》

 

 まったくだ―――――

 どうしてこんなに、僕は『人間関係』のこととなると、不器用で、逃げ腰になるんだか……

 でも―――――彼女は去る時も、変身を解かずに去っていった。

 彼女って、いったい―――――

 

 「ねぇ、データ……」

 《んァ?》

 「――――――――――メモリアのユーザーって…………」

 

 

 

 

 ―――――キュアメモリアルって…………『誰』なんだろう…………?

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――STAGE CLEAR!!

 

 RESULT:CURE CHIP No.08『CURE-LEMONADE』

     CURE CHIP No.22『CURE-BEAT』

     CURE CHIP No.@02『CURE-DATEAR』

 

 プリキュア全員救出まで:あと44人

 

【挿絵表示】

 

 TO BE NEXT STAGE……!

 

 『しんしんと降り積もる、清き心……!』




 ―――――りんくの『今回のプリキュア!』

 りんく「今回はご~か2本立て!まずひとりめはだ~れだ?」

 『はじけるレモンの香り!キュアレモネード!』

 メモリア「『プリキュア5』のひとり、"麗弾(らいだん)のレモネード"!属性はぴかぴかの『光』!」

 りんく「お母さんと同じ女優さんを目指す、春日野うららちゃんが変身した、『はじける力』のプリキュアだよ!」

 メモリア「そんなレモネードのキメ技は、コレ!」

 『プリキュア!プリズムチェーーーンっっ!!』

 メモリア「両手から撃ち出す光の鎖、プリズムチェーン!どんな相手も、これでがっちり動けなくしちゃう!」

 りんく「ひとつしつもーん。プリキュア5とスマイルプリキュアって、サーバー王国で間違えられたりしなかったの?ほら、両方5人だし、色も同じだし……」

 メモリア「あー……あたし、最初ルージュとサニーを間違えて覚えてた……」

 りんく「それマジ!?……まぁ、アニメだとキャラデザの人も一緒なんだよねぇ。でも、プリキュアファンなら見分けられてトーゼン!……でもって、今日はもうひとり!ふたりめはだ~れだ??」

 『爪弾くは魂の調べ!キュアビート!』

 メモリア「『スイートプリキュア』のひとり、"音魂(おんこん)のビート"!属性はララララ~♪の『音』!」

 りんく「マイナーランドのセイレーン改め、黒川エレンちゃんが変身した、魂の音の使い手!」

 メモリア「そんなビートのキメ技は、コレ!」

 『駈けめぐれ、トーンのリング!プリキュア・ハートフルビート!ロック!!三拍子!1、2、3っ!……フィナーレっ!』

 メモリア「ラブギターロッドをソウルロッドに変えて使う、ハートフルビートロック!とってもカッコいい~~!!」

 りんく「そうそう!ギターをかき鳴らすビート、いつ見てもカッコいいんだよねぇ~」

 メモリア「ビートのライブって、いつもチケットが取れないんだよ~……せめて一回はライブに行きたかったのにぃ~……」

 りんく「ホンモノがすぐ近くにいるのに……やっぱソレとコレとは別?なのかなぁ……??それじゃぁみんな、ばい―――――」

 「ちょーーーっと待ったぁぁぁぁ!!」

 ―――――ほくとの『レッツゴーライダーキック!!』

 ほくと「今回からは僕とデータの新コーナー、『レッツゴーライダーキック!!』もスタート!このコーナーは、本編の中で僕が使わせてもらった、仮面ライダーたちの必殺技を紹介するよ!タイトルは『ライダーキック』だけど、キック技以外の必殺技も、もちろん紹介させてもらうね!」

 データ「ってもほくとぉ、アタシはプリキュアで、仮面ライダーなんてわかんねぇぜ?」

 ほくと「だからこのコーナーをするんだよ?仮面ライダーを知らない画面の前のみんなにも、知ってもらいたいしね。それじゃ、まずはこの技!」

 1号『電光ライダァァァァキィィィィック!!』

 ほくと「仮面ライダー1号が、立花藤兵衛さんとの特訓で編み出し、対トカゲロン戦で放った『電光ライダーキック』!この技で、トカゲロンが蹴り込んだ『バーリア破壊ボール』を蹴り返して、勝利を収めたんだ!」

 データ「ちょっと待て。『バーリア』ってなんだ、『バーリア』って!?フツーそこは『バリア』か『バリヤー』だろーが!?」

 ほくと「昔は発音が違ったらしいね。『ウィルス』を『ビールス』って言ったり」

 データ「時代が違えばあのキュアウィルスも『キュアビールス』だったのか……なんか呑んだくれに聞こえるな」

 ほくと「それはともかく次はコレ!!」

 1号『ライダーきりもみシュゥゥゥゥト!!』

 ほくと「同じく、仮面ライダー1号の投げ技、『ライダーきりもみシュート』!相手を高速回転させて、空高く投げ飛ばすんだ!投げ飛ばされた相手は受け身が取れずに地面に叩きつけられて、大爆発!!」

 データ「エゲツねぇ技だな……」

 ほくと「サイギャングを皮切りに、カミキリキッド、ギリザメス、ウニドグマ、クラゲウルフ、そして大幹部のイカデビル……6体もの怪人を葬り去った、1号ライダーの最多怪人撃破記録を持つ技なんだ」

 データ「プリキュアにこんな技のマネはできそうにねーな……」

 ほくと「最後はこの技、ぶっちぎるぜ!!」

 RX『リボルケインッッ!!』

 ほくと「仮面ライダーBLACK RXの必殺技、『リボルクラッシュ』!!リボルケインを相手に突き刺し、そこから無限のエネルギー(!!)を送り込んで相手を倒す大技だ!!」

 データ「でもアタシがネットで調べたんだがよ、この技、そんなに強いのか?だってほら、「戦場のライダーRX」って歌の中に、『悪の妖族、迫る魔術、リボルケインも歯が立たぬ』って歌詞があるぜ?歯が立たねぇんじゃ喰らわせようがねーじゃんか」

 ほくと「データ……それ、大嘘」

 データ「ぬゎにィッ!?」

 ほくと「実際、リボルケインが歯が立たなかったのは、第44話に登場した最強怪人グランザイラスだけなんだ……ほとんどのクライシスの怪魔獣人、怪魔妖族、怪魔ロボット、怪魔異生獣を葬り、全知全能のクライシス皇帝すら、リボルケインのサビになった……『全ライダーで最強の必殺技は?』という論争で、間違いなく候補に挙がる技!決めポーズの次郎サンのキレッキレぶりといったらもう……!!!」

 データ「じ、次郎サンってダレだ……??ダメだ、アタシゃもぅついてけねぇ……」

 ほくと「それじゃ最後に僕達との約束!よい子のみんなは、仮面ライダーの必殺技を絶対にマネしちゃいけないよ!」

 データ「できてたまるかぁッ!!」
 
 ほくと「それじゃ次回も、お楽しみにっ!!」

 データ「……ほくとのヤツ、本編とキャラ違くねーか……?」

 次回予告

 りんく「はぁ~………………」

 メモリア「元気出してよ、りんくぅ……やっぱり、データのユーザーさんが男の子だったのが、そんなにショックだったの……?」

 ほくと「はぁ………………」

 データ「いーかげん腹くくれってほくと!どっちにしても、バレる運命だったんだよ……」

 りんく・ほくと「「はぁぁぁぁ…………………………」」

 メモリア「こんな感じで……」

 データ「だいじょーぶなのか……?」

 インストール@プリキュア!『つながる私と僕の道!ふたりはインストール@プリキュア!』

 りんく「はぁ………………」

 メモリア「しっかりしてよ、りんくぅ~~~…………」

 ――――――――――

 キュアデーティアが繰り出した『正義ノ系譜』、いかがでしたでしょうか……?

 『全力全開のキュアデーティア』の正体……それは、『仮面ライダーの技を繰り出すプリキュア』という、本家様ではまず不可能な『ライダープリキュア』だったのです!!

 メモリアルが『直球』ならば、デーティアは『変化球』。『こんなプリキュア見たコト無ェ!!』と稚拙自身思っております……やりすぎちゃいましたかね……

 さて次回は、久々にりんくに視点が戻るわけですが、やはり落ち込んじゃってます。でも、りんくは『別のコト』で落ち込んでいるようで……?

 それでは、次も時間がかかるかもしれませんが、また!
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