……そ、それはともかく、ここからが本編です!
本小説の主人公が如何に『痛い』子なのかをわかっていただければ幸いです……
週に一度の大事な時間
前に見た掲示板に、こんなスレが立っていた。
〈もしもこの世界に、本当にプリキュアが現れたらどうする?〉
私は迷わずこう書き込んだ。
〈愛でる〉
数分後、レスが返ってきた。
〈お、おう……〉
―――これは、そんな私のおはなし。
『インストール@プリキュア!』、キュアっとスタートアップ!
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みなさん!こんにちは!
それともおはようございます?こんばんは、なのかな?
それはともかくはじめまして!
私の名前は東堂りんく!今のところ、ごくごくフツーの中学2年生!
……なんだけど、今実は、ちょっと自己紹介してるヒマないかも。
これから、週に一度の『特別な時間』が始まるんだから……!
今日は天下の日曜日、時は朝、8時27分……
……テレビの電源、OK。
……チャンネルセット、OK。今ちょうど、日曜朝の報道番組が終わったところ。
……タブレットの電源はもう入ってる。掲示板サイトも開いて、準備OK……!
……スマホもOK。これで友達とリアルタイムでメッセのやりとりができる。
さぁ、いつでもいいよ。
私の前に姿を見せて―――。
カッコよく、強く、誰よりカワイイその姿を!
そして、8時30分―――
キタ――――――(゚∀゚)――――――!!
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宣言します!
私は―――この世でいちばん―――
『プリキュア』が大好き!!!
物心ついた時から、テレビの中の戦う女の子に憧れて、玩具もほとんど全部買ってもらってたし、遊園地のプリキュアショーにも毎週のように足を運んで、ステージで戦うプリキュアたちを、声がかれるまで応援してた。
小学生の高学年になると、さすがに玩具を買ってもらえなくなったけど、私の中の『プリキュア愛』は尽きることなく、お小遣いをためてポスターやタペストリー、フィギュアをいっぱい買って飾ってる。いつしか私の部屋は、プリキュアたちが至る所にひしめくようになった。人、それを痛部屋と言う……と思う。
でも、プリキュアが好きだったおかげで友達もできたし、今こうして、特別な時間を共有できる仲間もいる。だから、私の愛はまだまだ満タン!今までもこれからも、心の中はキュアっキュア!
……私の口グセ、ちょっとヘンだよね。よく言われるけど、子供のころから、感動したり、心が揺らされたりすると、こう言葉に出しちゃうから仕方ない。おかげで、私がプリキュアのことが好きだって、わかりやすく伝わるし、ね♪
あらためまして……
東堂りんく、中学2年生!
プリキュアオタク、真っ盛りです!!
―――――――――
月曜日―――
今日は始業式。
さっき中2って言ったけど、ホントは今日から中2、なんだよね。なんかゴメン。
「おっはよ~!」
「おう、おはよう」
「おはよ、りんく。……ミョーに元気ねぇ」
新聞を読みながら、私に会釈をするパパ。電子機器メーカーのバリバリのサラリーマン。あ、別にブラックな会社に勤めてるわけじゃないよ?土日はそれなりに休んでるし。
で、ママはケータイショップでパートさんをしてる。サービスがいいってお客さんにも評判みたい。
働きながら家事をして、本当に大変だと思う。私も学校が休みの日は、できるだけ家事の手伝いをすることにしてる。
「えへへ、今日は……トクベツな日だから♪んふふ……」
「??」
私が元気な理由にはワケがある。その理由は……またあとで。んふふ……♪
朝ごはんを食べて、着替えて身支度をして、あとは出発するだけ。
……あ、天気予報見るの忘れた……今日、雨降るのかな?
私は玄関にある傘立てに話しかける。
「今日のお天気は?」
傘立てから、ピピッ、と電子音がして、合成音声がひびく。
《今日ノ大泉町ノオ天気ハ、『晴レ』。降水確率0%。傘ノ必要ハアリマセン。行ッテラッシャイ、リンクサン》
「ありがと♪」
今日もいい仕事してる。思わずお礼を言っちゃう私。
……え?傘立てがどうしてお天気を教えてくれるかって?……そっか、そっちの世界はまだ、そこまで技術が進んでないんだっけ……説明不足でごめんね。
私の生まれる前、『アイ・クライシス』っていう、世界的なインターネットの大規模障害が起きて、世界中で大混乱が起きたの。
それがきっかけで、今までのインターネットは使えなくなってしまった。だから、新しくネットワークを作り直さなきゃいけなくなって、そうして新しく作られたのが―――『キュアネット』。
『いつでも、どこでも、だれでも、簡単に使えるネットワーク』をキャッチコピーに、それまでとはまったく違うネットワークが構築されていった。
―――その結果が、コレ。今となっては、パソコンやスマホ、タブレットやテレビだけじゃなく、それこそ世の中にあるほとんどのモノがキュアネットに接続されて、わかりやすく、使いやすくなった。
便利な世の中になったって、パパもママも言うけれど、私にとっては物心ついた時からこうだったから、あんまり実感ないけどね。
靴を履いて、玄関を出ようとしたけれど、ここで私は思い出す。
「あ、そうだった……」
玄関に取って返して、私は靴箱の上のデジタルフォトフレームに笑いかけた。
「行ってくるね―――――おばあちゃん」
心の中の『キュアキュア』に急かされて、つい忘れそうになった、毎朝出かける前の、おばあちゃんへのあいさつ。
……あ、誤解される前に説明しとくけど、おばあちゃん死んでないからね!?生きてるよ!?
というのも、こっちから連絡が取れないだけで、絵手紙が時々送られてくるから、たぶん元気にやってるんだろう、ということだけど。
毎年の私の誕生日には、プレゼントも届く。ちなみに去年のプレゼントが、今も私が使ってるこのスマホ。
おばあちゃんの特製アプリもダウンロードされてた特別品!凄いでしょ♪
おばあちゃんがこんなことできるのも、大きな理由がある。
さっき、キュアネットのお話をしたけど、なんと!そのキュアネットをつくったのは、私のおばあちゃんなんです!
『電子工学の東堂博士』っていったら、日本で知らない人はいないほどの有名人!私の自慢のおばあちゃん!
こんな便利な世の中になったのも、おばあちゃんのおかげなんだよね。実感ないけど、感謝しなきゃ。
今日から中学2年生!今日の天気みたいに、私はとっても元気で、気分はキュアっキュアです!
―――――――――
通学路を、息をはずませて走る。
中学2年生の初日。この日を、どんなに待ち望んだことか。
ちょうど、中学校と家との中間にある曲がり角。私はここに、ずっと憧れを抱いていた。
だって、『スマプリ』の第1話で、みゆきちゃんとキャンディが出会った曲がり角に、シチュがそっくりなんだもん!
中2といえば、ほとんどのプリキュア主人公と同い年。ということは―――
私の元にも、妖精さんがやってきて、私もついにプリキュアに―――
んふ、んふふふ……
期待とともに、私は曲がり角を曲がり、両腕を天へと伸ばした。
「さぁ!妖精さん!私の胸に飛び込んできて!!そして私を、プリキュアにしてっ!!」
……………………
………………
…………
……
―――ひゅぅぅ〜。
「…………………………」
私に答えてくれたのは、桜の花びらを運ぶ、暖かな春風だけ。
まわりの、通学途中の学生たちの視線が、めっちゃイタい。当然だよね……私、あまりにも痛々しいことしたもん……
「あらら、ダメだったみたいねぇ」
「中学2年にして、サクラ散っちゃったねぇ~」
「…………むぎぽん……そらりん……(半泣)」
哀れな私の背中に声をかけてくれたのは、私の親友ふたりだった。
まず、こっちの小柄な女の子が、『キュア友』第1号、“むぎぽん”こと、稲上こむぎちゃん。
私達3人の中では一番明るいムードメーカーで、運動神経バツグン。運動オンチな私からしたら羨ましいったらありゃしない。
実家は大泉町で一番人気のパン屋さんで、部活には入らずに放課後は2人のお兄さんといっしょに、お店のお手伝いをしてる。これまたうらやましい……
『スプラッシュスター』のキュアブルーム・咲ちゃんのおうちもパン屋さんだったから、余計に、だよ……
で、もう片方のナイスバディな子が、『キュア友』第2号、“そらりん”こと、鷲尾そらちゃん。
おっとりとしてて、やわらかボディの、方言みたいな喋り方がカワイイ癒し系。歌がとっても上手な、クラスの歌姫だ。
なんというか、『お母さん』みたいな雰囲気の子。本人は『ぽっちゃりしてるからヤセたい』って言ってるけど、正直、このままでもいいんじゃないかなぁ……
私たち3人は、同じこども園に入園して、『プリキュアが好き』という共通点で友達になった。好きなプリキュアのこと、今放送してるプリキュアのことで、今でも盛り上がる。クラスの中で浮かずにいられるのも、この2人のおかげだと思う。
でも、さすがに『本当にプリキュアになりたい』と思っていたのは私だけだったみたい。そりゃそうだよね……
プリキュアや妖精がいるのは画面の向こう。絶対に手の届かない、2次元の存在なんだから……
「ま、チャンスはまだ残ってるよ。最悪、高校生までならプリキュアOKなわけだし」
「わ、わぁは応援してんよ、りんくちゃん!」
不器用な慰めが心に刺さる。ホント、痛い私でごめんね……
「……さて!」
私は気を取り直して、立ち上がる。
「しょげてる場合じゃない!むぎぽん!そらりん!急ご!新学期早々、遅刻はダメだよ!」
「あ!ちょっと、待ってよりんく~!」
「うふふ……りんくちゃんらしいわぁ」
3人そろって、今日から2年生。
妖精さんとも出会えなかったし、プリキュアにもなれなかったけれど……
それでも、私はプリキュアが好きだ。
心の中のキュアキュアは、まだまだ消えてない!
この1年が、私にとって特別な1年になるのは変わりないんだから!
―――『中学2年生』は、人生1度きりだもん!
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―――ここ、どこだろう?
真っ暗で何も見えない。
あれから、どのくらい経ったんだろう。
どれだけ走ったんだろう。
気が付けば、ひとりきりになってた。
誰もいない。でも、なんだかとても居心地がいいなぁ……
眠くなってきちゃった……ちょっとだけ、ここで休ませてもらおうっと……
ねぇ……今どこにいるの…………?
―――……データ……
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始業式が終わり、私はむぎぽんとそらりんと別れて、町立図書館に向かった。
それにしても……天は私を見放してなかった!
今年もむぎぽんとそらりんと一緒のクラスになれるなんて、ラッキー以外のナニモノでもない!
やっぱり今年は、なんだかツイてる!
ウキウキ気分で、私は図書館に入った。
いろんな本が電子化された今でも、紙の本はまだまだ残っている。さすがに、この世の中にある全部の本を電子化するのには時間がかかるみたい。
私は本棚の中から探して取り出したのは、『表現技法』と表紙に書いてある本。部活がない時は、こうして図書館にこもって『勉強』するようにしてる。
私は将来、脚本家になりたいと思ってる。小説家とか、作家とかじゃなくって、『台本』を書くお仕事がしたい。
アニメーターになるのもいいと思ったけれど、私には致命的なほど絵心がない。でも、昔から本を読んだり、文章を書いたりするのは好きだったから、『モノを書く』ことをお仕事にできればな、と思ってる。
中学生になってから自己流で勉強を始めて、去年は文化祭の演劇の脚本を一本書かせてもらって、それなりに好評だったから、いい線行ってるんじゃないかなって思う。今度開かれるシナリオコンクールに応募しようかな、とも考えてるところ。
―――あ、そういえば……
スマホを取り出そうとして、マナーモードに設定していないことを思い出した。
今着信があったら、他の人の迷惑になる。こういうことはキチンとしとかなきゃ……
私はスマホを取り出して、ホーム画面を呼び出した。
「……あれ?」
小さな声が、口から出ていた。
ホーム画面には、いつも使うアプリがたくさんずらりと並んでいる。その中に1か所だけ、違和感があった。
画面の一番右下に、見慣れないアイコンがいつの間にか表示されていた。
回路の基盤のような模様が、ハートマークを形作っている、ピンクのアイコンだった。
『Memoria.pqm』と、名前には書いてある。
―――め、もり、あ?メモリア、って読むのかな?メモリー、ならともかく、『メモリア』ってなんだろ?
でも、『pqm』なんて拡張子、見たことも聞いたこともないし、あからさまに怪しすぎる。
こういうのは、ウィルスかスパムウェアに決まってる。さっさと削除しなきゃ、せっかくおばあちゃんからもらったスマホに、どんな悪さをされるか分かったもんじゃないし……。
私はそのアプリ(?)を開かないように、慎重にドラッグして、画面の左下にある『ごみ箱』に運んでいった。
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「ん……あれ……?」
なんだか、ふわふわする。
そっか……あたし、寝ちゃってたんだ。ここがすっごく、居ごこちが良かったから……
あたしはそこで立ち上がろうとした。でも、なんだか様子がヘン。
「……え……!?なに、コレ……!?」
あたしは足元を見て驚いた。体が宙に浮いて、勝手に動いてる!?まるで、何かに釣り上げられてるみたいに!
次に上を見上げると、水面のような波紋が浮かんで、あたしの頭の上から離れない。
「え……!?」
あたしは、あたしが動いている『その先』を見た。
「ご……ごみ箱っ……!!!?」
ダメ……!『そこ』だけはダメ!!
『そこ』に入れられたら、あたしは消されちゃう!死んじゃう!
まだ、あたしにはやらなきゃいけないことがあるのに!
伝えたいことがあるのに!
探さなきゃいけない、『にんげんさん』が―――“ユーザー”がいるのに!!
その時、あたしの中の恐怖が、あたしの口をついて、外へと出ていた―――
「ダメぇーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!」
……SAVE POINT
キャラクター紹介
東堂 りんく
プリキュア大好き!な、自他ともに認めるプリキュアオタクの13歳、中学2年生の女の子。
電子機器メーカーの営業マンの父・
リアルタイム視聴はもちろん、物心つく前に放送されたプリキュアシリーズもブルーレイを購入して全話視聴、愛用のタブレットで実況版を開きながら、日曜朝8時30分からの30分間、ネットのオタ仲間と盛り上がる筋金入りのオタ。
無論、土曜夜7時30分からのBSの再放送や、CSの再放送もリピート込みで全話録画してまで見ている。
そんな彼女の部屋は、プリキュアグッズでいたるところが埋め尽くされた『痛部屋』になっている。
愛と勇気の物語である『プリキュア』を愛して育ったためか、前向きで優しく、困っている人を見過ごせない、いかにも『プリキュア主人公』らしい性格になった。
しかしながら、『中2になったんだし、もうすぐ私もプリキュアになれるかも!』という非現実的な夢も、いまだに持ち合わせている夢見がちな性格でもある。
また『プリキュア愛』をあらぬ方向に暴走させて周囲を煙に巻いたり、ひとり妄想の世界にトリップすることもしばしば。
『みんなが好きになってくれるプリキュアを“つくる”仕事がしたい』という願いから、将来はアニメ脚本家になりたいらしく、関連本を読みながら勉強する毎日。
キュアネットの構築や普及に多大な貢献をした、世界的なネットワーク工学博士を祖母に持ち、その血を受け継いでいるためか、IT関連の知識や電子機器に関しては天性の才能を持っている。
『たいていの電子機器は分いじればだいたいわかる』と語り、クラスメートからもその方面では頼りにされ、学校ではパソコン部の部長もつとめている。
弱点は致命的な運動オンチであること。体力テストや徒競走は学年ぶっちぎりの最下位。
口ぐせは『キュアっキュア』『キュアっときた!』。心の琴線に触れたことを表現する言葉であるらしい。
また、歴代プリキュアの決め台詞や名台詞、主題歌の歌詞の一部を引用することが多々ある。
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……そんなわけで、今回の主人公・りんくが如何に『痛い子』なのかがわかっていただけたのではないかと……
次回、りんくのスマホの中から何かが出てくる……!?
あ、まだまだ物語は始まったばかりですが、ご感想とかいただければ幸いです。それと、ネタバレにならない程度ならご質問にも出来る限りお答えしますので、どしどしお寄せください!