インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 キャラクター紹介

 キュアデーティア

 『プリキュア・マトリクスインストール!』の音声コード入力によって、『ネットコミューン』のインストールプログラムが解放、キュアデータそのものがインストールされることによって、ほくとが変身した姿。

 変身によって超ロングとなった水色の髪が、サイドテールにまとめられている。また、ファイトスタイルの時には無かった純白のマフラーを首に巻いている。
 変身とともにほくとの体は完全に女体化、声も女の子そのものに変わってしまうため、ほくとは死ぬほど恥ずかしがっている。曰く『誰にも正体は知られたくない、たとえ死んでも!!』。
 だが、ヒートアップしたり気分がノッたりすると一人称が『わたし』になったり、喋り方が女の子っぽくなったりすることもある。(これもほくとは死ぬほどイヤ。『男でいること』を意識することにも神経を割かねばならない)。もっとも、正体を隠す必要がある場合は意識して女口調で話すこともある。

 見た目は『幼げな顔立ちの清楚系美少女』といった趣。ほくとの面影は『10%くらいしか残っていない』らしい。これはほくとの深層心理の底にあった、『好意を抱いている異性』―――――すなわち、『東堂りんくの中学1年生当時の姿』が、『理想の異性』としてスタイルに反映されたためであると思われる。実際、ほくとが一目惚れしたりんくのその時の髪形は、キュアベリーをイメージしたサイドテールだった。
 マフラーはほくとの『仮面ライダーへの憧れ』が反映されている。

 ほくとの空現流拳法の技術が120%発揮され、格闘戦ではキュアメモリアル以上の実力を見せる。
 他、仮面ライダーの必殺技を完コピして放つなど、技のバリエーションは数多い。
 その名は、『涙を以って涙を祓う』ほくとの覚悟から、あえて『涙=Tear』という語が冠せられている。

 ――――――――――

 父:ルージュ
 母:ブロッサム
 兄:ドリーム
 妹:フェリーチェ

 ……木ノ葉隠れの里の火影さんちはプリキュア一家だった……!!
 なんて一人で悦に入ってる今日この頃……(笑

 ……さて今日の『インストール@プリキュア!』は、キュアデーティアの正体が八手ほくとと知ってしまった、東堂りんくの自室から物語を始めよう。(トランスフォーマー風)

 りんくさんの衝撃発言もお見逃しなきよう……では送信!


第8話 つながる私と僕の道!ふたりはインストール@プリキュア!
ドキドキ!下駄箱!?


 爪弾くは魂の調べ!キュアビートよ!

 

 わたしを取り込んだバグッチャーに倒されて、絶体絶命のほくと―――――

 でも、ほくとの諦めない心と、キュアデータの願いが、奇跡を起こした―――――

 

 「ほくとを、ヒーローにしてくれぇぇぇぇ………………!!!!!」

 「僕は―――――ヒーローになりたい―――――」

 『渾然一体、涙祓一心―――――キュアデーティア!!』

 

 はじめての、男の子が変身したプリキュア―――――キュアデーティアの誕生よ!

 ほくと、あなたがプリキュアになったことには、絶対に意味がある……

 それを、忘れないで。

 

 そしてそれは、もうひとりのユーザーの子も、同じはずだから……

 いつか必ず、あなた達ふたりの『ココロの音』が、重なる時が来る……

 わたしも、信じるって決めた―――――響、奏、アコ、そして、ハミィ……あなた達が、わたしを信じてくれたように……

 

 『インストール@プリキュア!』―――――

 爪弾いて!あなたたちの、魂のセッションを!!

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 《はっくしゅんっっっ!!!…………………………はぁ……》

 

 りんくは盛大なくしゃみをして、また机にヘコんじゃった。

 そう、すべては今日の昼間のできごと―――――

 キュアデーティアの正体を知りたくて、戦いが終わった後にデーティアを追いかけて行ったんだけど……

 そこであたしたちは、とんでもない事実を知ってしまったんだ……

 

 「……まさか、データとユーザー契約を結んでいたのが、男の子だったなんて……」

 「ちょっと、予想外かもね」

 

 タブの中では、レジェンドプリキュアのみんなが口々に、データのユーザーさんのことを話してる。データのユーザーさんは、りんくと同い年の、隣のクラスの―――――『男の子』だった。

 つまり、キュアデーティアは……『男の子が変身したプリキュア』だったってこと。

 でも、変身した姿はどう見ても女の子だったし、声も女の子だったし……どうなってるのかな……?

 データに会って、くわしくきいてみないといけないけど……

 りんくは学校から帰ると、ず~っと机にヘタって、ヘコんじゃってる。

 

 「契約できるにんげんさんって、女の子じゃなきゃ、ダメだったの?……というか、男の子でもマトリクスインストールってできたの?」

 

 ふとギモンに思って、あたしは隣にいたハッピーに訊いてみた。

 

 「え?……う~ん……その辺、特にクイーンから聞いてなかったような……」

 「そうだよね。……でも、ユーザーになったのが男の子だった、ってのは……なんというか……」

 

 トゥインクルはちょっとフクザツな顔をしてた。

 

 「……冷静に考えれば……ワタシたちに先入観があったせい、かもしれないですわね」

 「先入観?」

 

 それまで考え込んでいたロゼッタが、あごに手を当てながら言った。

 マーチを見て、ロゼッタはうなづく。

 

 「ええ……サーバー王国に集った、ワタシたち51人のプリキュア……その中にはひとりとして、男の方はいらっしゃいませんでしたもの……ですからワタシたち全員、『プリキュアは女の子だけしかいない』という先入観を持ってしまっていたのでしょうね……」

 

 そう言われてみればそうかもしれない。キュアエコーが言った有名な言葉だって、『"女の子"は誰でもプリキュアになれる』だもの。

 

 ―――――じゃぁ、『男の子』は?

 

 ―――――プリキュアには、なれないのかな?

 

 ―――――なりたい子はいるのかな?

 

 ―――――男の子だって、誰かを守りたいって思わないのかな?

 

 

 ―――――男の子も―――――"ヘンシン"、したいのかな??

 

 

 ……今までそんなこと、サーバー王国の誰も、プリキュアのみんなも、もちろん、あたしも―――――

 考えたことがなかったんだ。

 

 だから、みんな、こうしてとまどってる。

 この思いが―――――りんくの心に影を落としてるのだとしたら―――――

 りんくの『ダイスキ』が、動かされてしまったのなら―――――

 

 「ねぇ、りんく……」

 

 あたしはりんくに問いかけた。むく、と、りんくは顔だけをタブに向けてきた。

 

 「りんく、やっぱりショックだったの……?」

 《……ショックって……?》

 「その、ね……データのユーザーさんのこと、だけど……やっぱり……その…………」

 

 あたしも、どう言ったらいいかわからない。りんくだけじゃなくって、あたしも、レジェンドプリキュアのみんなも、この気持ちをどう言い表していいか、わからないんだから……

 

 《もしかして、みんな……八手くんがデータのユーザーで……キュアデーティアだったこと、ショック、受けてたりする?》

 「受けてたり、って……一番ショックなのって、りんくなんじゃ……」

 

 なんだか、りんくがきょとんとして言ってきた。変に思った。

 でもりんくは、あたしも、みんなも―――――

 プリキュア全員が驚くことを言ったんだ―――――

 

 

 《八手くんがプリキュアだったこと……私、気にしてないよ?》

 

 

 一瞬―――――タブの中の空気がザワついた気がした。

 

 《むしろ安心したなぁ……ヘンなヒトがプリキュアになってなくってよかったよ。あの子、とっても強いんだよね。あの子がいっしょに戦ってくれるんなら、百人力だよ》

 「……………………」

 

 唖然としていたあたしは、気を取り直して言った。

 

 「ちょ、い、いいの!?だって、その……プリキュア……、プリキュアなんだけど……えっと……お、男の子だよ!?男の子のプリキュアなんだよ!?いいの!?ホンモノの女の子じゃないんだよ!?……そりゃ、変身したらカンペキに女の子だったけど、でも……」

 《……メモリアは、キュアデーティアが八手くんだったこと……イヤなの?》

 

 そう言われて、あたしは口ごもった。

 スゴく強かったし、データとも仲良しみたいだったし、りんくとあたしのことも、何度も助けてくれたし、やさしいし、デーティア、とってもカワイイし……

 

 ……あれ?

 

 「……イヤ、じゃない、かも……」

 

 答えが自然と口から出てた。

 全部―――――カンペキ、だった。

 りんくやあたし達といっしょに戦ってくれる子なら、こんな子がいいな―――――そんな理想が、全部カタチになったような……

 それなのに、『男の子』って理由だけで、あの子をヘンな目で見たり、イヤがったりすることって……

 

 それって―――――ヘンだ。間違ってる。

 

 「ってか―――――あの子が、イイ」

 

 あたしの言葉を聞いたりんくは、ニンマリとしてた。

 

 《……でしょ?カッコいいし、カワイイし、優しいし……文句の付けどころ全然ナシ!……ねぇ、みんな》

 

 りんくは、あたしの周りにいる、レジェンドプリキュアたちに言った。

 

 《『女の子は誰でもプリキュアになれる』ってコトバってさ―――――ちょっと、()()()って思うんだよね》

 「……ズルい……?」

 

 首をかしげるハッピーに、りんくはうなづく。

 

 《うん……だって、逆に考えてみて?そうなると、『女の子しかプリキュアになれない』ってコトにならない?『女の子』だけが、"プリキュア"を"ひとりじめ"しちゃうのって……なんか、もったいなくない?》

 

 なんかりんく、モノスゴいことを言ってる……ような気がする。みんなの価値観を塗り替えるようなコトバだ。

 

 

 《私は別に構わないよ?―――――男の子だって、プリキュアになってもいいじゃん》

 

 

 みんな、絶句していた。

 ……っていうか、そんな考え方があったことに、驚いている……そんな顔だった。

 

 《誇りあるプリキュアオタクの私としては、どんなプリキュアだって受け入れ……って、みんな、どしたの?》

 「りんくちゃんって……すごいって、思って……」

 

 リズムが、何とか言葉をしぼり出した。

 

 「……反省しなきゃいけないの、あたしたちみたいだね……」

 「うん……男の子ってだけで、ヘンな目で見るなんて……おかしいよね!」

 「りんりんの言うとおりだね……それに、アタシたちプリキュアにも、男手が欲しかったところだし☆」

 

 誰にともなく、みんなは反省を口にしている。トゥインクルは……まぁいつも通り、かな。

 

 「りんくさんがメモリアと巡り会って、ユーザー契約を結んだこと……これは……メモリアやデータだけでなく、ワタシたち51人のプリキュアにも、光明をもたらすコトかもしれませんわね……」

 

 そう、ロゼッタがひとりごちるのが聞こえた。

 どんな『プリキュア』でも、そのありのまま、すべてを受け入れて、全部を『スキ』って言えるりんく。そんなりんくだから、あたしのコトも、みんなのコトも、大切にしてくれる。

 だから、あたしはりんくが『スキ』になって、みんなもりんくのことを『スキ』になってくれて―――――

 りんくがユーザーさんになってくれて……あたし、ほんとうによかった―――――

 

 「それでは……りんくさんは何をお悩みになっていらっしゃるのですか?」

 《うん……―――――》

 

 りんくはまた、落ち込んだカオになって、机に目線を落とした。

 

 《私……ちょっと無神経だったかなって、ちょっと後悔してるの……あの子が知ってほしくないって……言いたくないコトや見られたくないコト……私、強引に見ちゃって……やっぱ、フェアじゃなかった……それで明日から八手くんに会ったらどうしたらいいのかなって……そう思うと―――――》

 

 りんくが悩んでいることは、『キュアデーティアが男の子だった』コトじゃなかった。

 りんくは、デーティアが『隠してた』ことを強引に見てしまったことに、責任を感じてるんだ……。

 

 《あ゛~、自己嫌悪だぁぁ~……》

 「……そのままでいいの?」

 

 頭を抱えるりんくに、少し強い口調で言ったのは―――――

 

 《……リズム……》

 「そのまま……"あの子"を悩ませたまま、りんくちゃんも悩んだままで……それでいいの?」

 《それは…………》

 

 りんくをまっすぐ見上げる翠色の瞳に、ちょっとだけりんくがたじろぐのが見えた。

 リズムは部屋の中の"ぶるーれい"の棚の、『スイートプリキュア♪』と書いてある箱を見ながら言った。

 

 「りんくちゃんは、私達のことも、知ってるのよね……当然、私と響が、1年間、ずっと誤解したままいがみ合っていたことも……」

 

 このことは、サーバー王国でも割と有名なエピソードだ。いつも仲良しのキュアメロディとキュアリズムが、昔、1年の間、仲違いをしていた時期があったこと―――――

 

 「本当のこともわからずに、ただ相手のことを誤解して、嫌いになって……あの頃は気づかなかったけど、後になってわかったの……"それ"が、すごく辛いことだった、って……」

 《……奏ちゃん……》

 

 たしか、ふたりが入学式のときに待ち合わせていた場所に、たまたま似たような場所が2か所あって、ふたりはそれぞれ『別の待ち合わせ場所』に行っちゃったことが原因だった。

 ほんの小さなすれ違いから、ふたりは顔を合わせるたびに口ゲンカをするほどに、仲が悪くなってしまった―――――

 でも、きちんとふたりでお話しすることで、お互いの事情を理解して、仲直りすることができた―――――

 このことは、サーバー王国の学校の道徳の教科書にも載っていて、『きちんと互いを分かり合うこと』『相手の気持ちを考えること』の大切さを教えてくれている。

 

 「今のこの状況を『フェアじゃない』って思うなら……『フェアにすれば』いいんじゃない?」

 《フェアにする―――――……》

 「そう。あなたのコトを正直に、心から伝えて、誤解を解くの。あなたが"あの子"のことを想っているなら……"あの子"を傷つけてしまったことを悔やんでいるなら……なおさら、早い方がいいわね」

 《正直に……心から、伝える……―――――》

 

 りんくはほっぺたを、両手で挟むようにぱちん!とたたいた。それから、シャープペンシルと便せんを取り出すと、一心不乱に何かを書き始めた。

 そんなりんくに、なんだかあたしは不安を感じた。

 

 「りんく……大丈夫かな……?」

 

 ぽつりと不安をつぶやくと、リズムがやさしく、あたしの肩に手を乗せた。

 

 「きっと大丈夫よ。……見て」

 

 うながされて見上げた先には、りんくの目。

 真っ直ぐに便せんに向いているその目は―――――

 プリキュアのこと、いろんなことに、一生懸命なりんくの―――――

 

 "がんばってる"目―――――!

 

 「ここから先は……"新参者"の私よりも、メモリアやみんなの方が、よくわかってるんじゃないかしら?」

 

 あたしとみんなに、リズムはウィンクを飛ばした。緊張が解けたように、みんなは笑う。

 

 「そうだね……"ああ"なったりんくを見れば、なんか安心する♪」

 「ほんと、プリキュアのコトになると一生懸命だよね、りんくちゃんって。当のわたしが、ちょっとテレちゃうくらいに……」

 「そーそー。アタシたちを大切に想ってくれてるりんりんだから、アタシたちも安心して、ココにいられるワケ☆」

 「そして……ワタシたちも、りんくさんのご期待と憧れに、プリキュアとして応えなければならないと……そう思いますわ」

 

 みんな、プリキュアのことが大好きなりんくのことを、よくわかってくれてる。レジェンドプリキュアのみんなも、そんなりんくの想いを裏切らないようにがんばろうと決めている。

 あたしも―――――あたしにできることで、りんくのことを応援したい―――――!

 

 あたし―――――『がんばるりんく』が、だいすきだよ―――――

 

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 ――――――――――

 

 ここまで、沈んだ気持ちで歩く通学路は初めてかもしれない……

 体全体が重く感じる。足に履いているのが、スニーカーじゃなく、鉄下駄だと錯覚するほどだ……

 友達と連れ立って歩く子、自転車で急ぐ子。様々な表情で通学するみんなだけれど、その中でも、"女の子"の視線が、僕にとっては恐怖にも感じられる。

 そう―――――僕……八手ほくとが、キュアデーティアだと知っている女の子が、この大泉中学校のどこかに、ひとりだけ、確実にいるんだから―――――

 

 《おい、早くしねぇとチコクするぜ?》

 

 データがスマホの中から急かしてくるけれど、正直、ズル休みでもしてしまいたい気分だ……

 でも、そこまでしてしまうと、今度は僕の性分が僕自身を許せなくなる。絶対に『逃げない』ということ―――――

 ヒーローは、決して『逃げ』てはいけないんだから―――――

 大泉中学校の白い校舎を見上げた時、思わずため息が漏れた。まずは、今日一日だ。

 今日一日、何事もなく、誰にも不審がられることなく乗り切ることができたなら、明日以降にも希望が持てる。

 

 がんばらなきゃ。―――――……がんばら、なきゃ……

 

 僕は玄関ロッカーのボックスの取っ手に手を掛けた。扉が重々しく感じる。

 意を決して開いた。すると―――――

 

 ―――――ぱさり。

 

 「……?」

 

 僕の上履きだけしか入っていないはずの僕のロッカーから、白い紙きれが落ちてきた。

 まさか、また……?

 そう思って、僕は紙切れを拾い上げた。

 ……実はこういうことは、よくある。これで4回目だ。

 ―――――今まで、僕は3人の女の子から、告白を受けたことがある。僕みたいな特にいいところもない、特撮マニアのどこがいいのかわからないけれど……

 すべて、やんわりとお断りをさせてもらった。理由はもちろん―――――東堂さん。

 きちんと、僕の口から、いつかは伝えなきゃいけないことなんだろうけど、でも……まだ、決心がつかない。

 試合や戦いに臆したことはないくせに、僕はなんで、"こういうこと"だけには逃げ腰なんだろうか……。

 僕は拾い上げた紙切れを開いてみた。便せんに、丁寧な文字で、こう書かれていた。

 

 

 ―――――今日のお昼休み、お話したい、大切なことがあります。

 

 お昼ご飯を食べたら、体育館の裏まで、ひとりで来てください。待ってます。

 

 

 文面は、今までに僕に告白してきた子が、僕を呼び出すための手紙と、あまり変わらなかった。

 でも、最後に書かれた名前だけが―――――僕の心を突き動かした。

 

 

 

 東堂りんく

 

 

 

 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 体に電流が走り、顔全体が沸騰したように熱くなった。こ、こ、こ、これ、これって…………!?!?

 動転したまま、僕は近場にあったトイレの『個室』に駆け込んで、スマホを取り出した。

 

 「で、で、ででで、デー、データ、タ、デデ、デー……ッ」

 《お・ち・つ・け!ブッ壊れた声出すな!聞こえてるッ》

 

 完全に気が動転していた。得体の知れない熱が全身を支配して放さない。

 胸に手を当てると、心臓がバクバクいってる。

 

 「ど、どどどど、どーしようぅ……!?と、とーどーさんが、とーどーさんが僕をッ……」

 《ほら、悪いコトばっかじゃねェじゃんか!逃げずに学校来た甲斐があったってモンじゃね?》

 「う、うん……そう、そーなんだけっ、ど……」

 

 いろいろなことがありすぎて、アタマがパンクしそうだ……

 不安も消えない、ドキドキも消えない……地獄と天国、今、僕、どっち!?

 と、と、とにかく、昼休み、だよね……忘れないように行かなきゃ……

 

 《いやぁ~、まさか片思い先から逆に告白とは、人生ナニが起きるかわからんなァ、ほくと!》

 「かッ、からかわないでよッ」

 

 茶々を入れるデータの声が、なんだか心地よい。

 でも……東堂さんと会うときには、スマホの電源を切っとかなきゃ……

 いくら東堂さんがプリキュア好きでも、データの存在だけは、知られるわけにはいかないから……

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 「……よっし!」

 

 給食を食べ終わって、私は教室を後にした。

 この心境……なんというか、今から戦に出陣する戦国武将だ……!!……たぶん。

 いまだに、私の心の中で、どう伝えようかとプランを練ってる最中……。

 うまく……八手くんに、事情を伝えられるのか、正直自信がない―――――

 

 「……でも……!」

 

 それでも……きちんと謝って、本当のことを伝えなきゃ。

 まっすぐに―――――私のココロを―――――

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 こうまで授業に集中できない日は初めてだった。

 先生に指名されても上の空、先生のお叱りが降ってきて、チョークが僕の眉間に何発も命中した。

 給食もなんとか喉を通した。

 動揺をクラスのみんなに悟られないよう、そそくさと教室を出る。

 あ゛ぁ……緊張する……試合や手合わせの前以上の、人生史上最大級のド緊張だ。

 まさか……東堂さんの方から、僕を呼び出すなんて……

 これって、ホントーなんだろうか……?ホントーに、東堂さん『本人』が呼び出したのだろーか……?

 誰かが仕掛けたイタズラとかドッキリとかじゃないのか……?

 はたまた、僕が東堂さんに片思いしていることを実は誰かが知ってて、それを東堂さんに伝えたから……?

 あぁ、余計な考えが頭の中を猛スピードでぐるぐる回る。仮面ライダードライブの愛車"トライドロン"が、ドライブの必殺技・スピードロップの時にする高速ローリングのようだ……。

 そうこう考えているうちに、体育館へとたどり着いてしまった。

 

 「すぅ…………はぁ~~~………………」

 

 落ち着け、落ち着くんだ……深呼吸して落ち着くんだ……―――――

 そ、そうだ、素数を数えるんだ…………あ、あれ?素数ってなんだっけ……?

 数学ニガテなんだよなぁ、僕…………。

 ちょっとだけ、体育館裏をのぞいてみた。

 

 ―――――いた……。

 向こうを向いていて、後ろ姿だったけど、確かに―――――…………!

 

 のぞいて、見て、一瞬で取って返し、胸に手を当てる。

 

 "心拍数急上昇ッ"……!!

 

 で、でも、逃げちゃいけない!逃げることだけはやっちゃいけないッ……!!

 僕はヒーローになるんだ……!ヒーローたる者、敵から逃げちゃ……い、いや、東堂さんは敵ってワケじゃないけど……と、ともかく!

 ヒーローらしく……正々堂々、真正面から……!!

 

 「あ、あの……!」

 

 向こう側を向いている東堂さんの背中に、思い切って僕は声をかけた。

 ぴく、と肩がかすかに動いて、東堂さんは僕に振り返った。

 少し上目遣い気味に、東堂さんは僕を見てきた。視線が合って、どきりとする。

 一瞬、いつものように目をそらしそうになった。だけど、今日は目をそらすわけには、いかない……!

 大事な話があるからこそ、彼女は僕をこの場に呼んだ。

 そう、これは僕だけの問題じゃない。彼女にとってもまた、重要なコトなんだ。

 だから僕も……逃げずに、彼女の覚悟を、真正面から受け止めなきゃいけないんだ……!!

 

 「いきなり呼び出して、ごめんなさい……」

 「い、いや……別に、僕は……」

 「それで、なんだけど……私……八手くんに、どうしても伝えなきゃいけないこと……それから……謝らなきゃいけないことが、あって……」

 「え……?」

 

 謝る、という東堂さんの言葉を聞いて、僕は違和感を覚えた。

 僕、東堂さんに何か悪いコトをされたんだろうか?

 もちろんそんな覚えはない。なのに東堂さんはどうして―――――

 申し訳なさそうな表情を、僕に向けているの……?

 

 「昨日の、武道館の試合の時、なんだけど……」

 

 昨日の試合?そういえば、東堂さんも応援に来ていた。

 相当緊張したけれど、今の方がもっと緊張してる。

 でも、これって、告白とか、そんなんじゃないような……雰囲気が変わってきている気がする……

 

 「私―――――その……、えっと…………"見ちゃった"……んだよ、ね……」

 

 ―――――!!!!!?????

 

 『見ちゃった』という言葉が、僕の心に突き刺さる。

 心の中に氷水が注ぎ込まれた……そんな錯覚を僕は味わった。

 胸が疼いて、神経がぞくりとした。思わず一歩、僕は後ずさった。

 全く想定していなかった事態が、僕の前に現出しようとしている、のか……!?

 

 今の僕にまつわる事象で、『見た』といえば―――――

 

 "ひとつ"しか存在しない―――――

 

 ―――――僕がキュアデーティアであることを知られるという、『最悪』。

 

 ―――――それも、『東堂さんに知られる』という…………

 

 『最悪の中の最悪』が……!?

 

 胸の疼きを抑えようと、僕は思わず胸に手を当て、うつむき加減に訊き返す。

 

 「その……何を、見たの……?」

 

 すると東堂さんも、視線を泳がせて、困った顔になった。

 『何を言おうか、どう言えばいいのか』、そんな顔だ。

 どうして、東堂さんがそんな顔をするの……?

 

 「えっと……その…………………………」

 

 ぎり、と、東堂さんの口元が意を決した、ように見えた―――――

 

 

 「"ごめんなさい"っっ!!!」

 

 

 急に大きな声でそう叫ぶと、東堂さんは腰をキレイな90度に曲げて頭を下げ、同時に両手で何かを差し出してきた。

 びっくりして、僕は反射的にもう一歩後ろに下がった。

 おそるおそる……僕は差し出された"何か"を見た。それは―――――

 

 「………………!?」

 

 それには見覚えが……いや、違う。

 毎日目にしていて……そして、僕も持っているモノだった。

 まさか、どうして……!?

 どうして東堂さんが……僕のスマホの……色違いの同じモノを持ってるんだ……!?

 

 僕のモノと色違いの、ピンク色のスマホの画面の上に―――――同じようなピンク色の髪の女の子の立体映像が浮かび上がった。

 立体映像は僕を見上げて、にっこりと笑ってこう言った。

 

 《こうしてお話しするのは初めてだね、データのユーザーさん!あたし、キュアメモリア!よろしくね!》

 

 唖然とする僕を、東堂さんはそのままの態勢のまま、首だけを上げて上目遣いに―――――

 

 「昨日ぶり…………私がメモリアのユーザー…………キュアメモリアルです―――――」

 

 

 え……え……

 

 

 え……?

 

 

 「ええええええええええええええええええええええ!??!??!!?!?!?!?!?!」

 

 ……SAVE POINT




 用語解説

 レジェンドインストール

 リアライズスタイルのインストールプリキュアが、ネットコミューンにキュアチップをセットすることで、過去のプリキュアの姿と力を借り受けた形態に2段変身すること。
 この際の姿は『ロゼッタスタイル』『マーチスタイル』など、そのプリキュアの名前を冠したスタイル名となる。

 変身の際はインナー以外のコスチュームがいったん消滅、その上で2段変身後のコスチュームが再構成される。また、変身時は髪の色・髪型も変わり、右目の色がそのプリキュアを象徴する色へと変化する。このことからほくとは『仮面ライダージオウのアーマータイムのようだ』と表現する。
 コスチュームは『オリジナル』と微妙に異なった意匠となっているが、一目でどのプリキュアかわかる『絶妙』なデザインとなっている。
 レジェンドインストールの最中は、セットしたチップのプリキュアとも意思疎通ができるようになり、2人のプリキュアのアドバイスが受けられるようになる。

 ――――――――――

 りんくがどうしてこんな風に『どんなプリキュアでも受け容れる』、ホトケのような『プリキュア愛』を持つに至ったのか……それに関しては次回で詳しく……
 『プリキュア』という作品の成り立ちにも、少しだけメタ視線で触れようかとも思います。
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