インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 キャラクター紹介

 スパムソン

 ジャークウェブ四天将のひとり。
 何ごとも形から入るカッコツケだが、清濁併せ呑む気概を持つ軍人肌の男。
 一人称は『小官』、二人称は『貴官』、さらには他人に『将軍』と呼ばせるなど、とことん軍人っぽい。
 第二次サーバー王国侵攻の際、キュアモフルンの不意打ちによって後頭部にキョーレツな一撃を食らい、以来、言語機能に支障をきたしたのか固有名詞を言う際に言い間違えるようになってしまった。そのためキュアモフルンには並々ならぬ因縁を持つ。
 第二次サーバー王国侵攻作戦を立案、指揮した司令官でもある。
 アラシーザーのことは一方的に気に入っている模様。
 りんく曰く「『ハピプリ』のオレスキーのモノマネをしている『フレプリ』のウェスター」。

 ――――――――――

 あ、危うく前回投稿から1ヶ月経つところでした……生きております、稚拙です。

 この間、プリアラではシエル=サン登場からその正体発覚、エグゼイドでは『お前はもう死んでいる』的エフェクトが稚拙的に大ウケしているライダー史上最強スペックを誇る『もう全部あいつひとりでいいんじゃないかな』『ぼくのかんがえたさいきょうのらいだー』エグゼイド・ムテキゲーマー登場、キュウレンジャーでは毒メロン兄さん退場&ホウオウソルジャー見参、さらには10月からニチアサ時間帯移動の報道など、激動の3週間でした……あ、『光と闇が備わり最強に見える』ウルトラマンジードもはじまりましたな。

 さて今回のインプリですが、3人目の『電調』メンバーが合流しての大泉町の調査です。
 そのメンバーによって2人ほど、稚拙が『誰の声でそのキャラのセリフを脳内再生しているか』が判明しますが……読者様方が抱いていらっしゃるイメージと違ったらごめんなさい……

 美津秋がどうしてマスコミの道を蹴って公務員を志したか、増子家の人間を蛇蝎の如く嫌うようになったか、その経緯も彼の回想として語られます。
 『増子一族』の闇の一端……送信です。


大泉ふたたび

 NOW LORDING……

 

 ――――――――――

 

 NPC MITSUAKI MASUKO

 

 ――――――――――

 

 翌日―――――

 

 俺達は佐藤の運転するサイドカーと、テテが手配したレンタカーで大泉町入りすることにした。

 このサイドカーは電調に配備された最新型で、機動力が必要とされる局面ではバイク側のスイッチ一つで側車の切り離しも可能、その上側車だけでも自走可能といういささかオーバースペック気味の代物だ。

 その名も"黒檀號(コクタンゴウ)"。その黒々とした車体からインスピレーションを得たらしい。佐藤にしてはなかなかいいネーミングセンスをしてやがる。

 ともあれ―――――

 俺は久方振りに、『本家』のある大泉町に『戻ってきてしまった』―――――

 高校を卒業して家を出たあの日―――――もうこんなクソ溜めみてぇなトコに二度と帰るかと誓って、全ての縁を断ち切った―――――つもりだった。

 

 《もうそろそろ、大泉ッスよ》

 

 耳元の通信機から佐藤の声が響く。風に揺られてうつらとしていた俺は、その声で目を覚ました。海も山も、都会も田舎も、日本のありとあらゆる風景をないまぜにした―――――

 ―――――闇鍋のような街が見えてきた。

 東栄市大泉町―――――

 俺が生まれ育ち―――――そして―――――

 

 捨てた街―――――

 

 ――――――――――

 

 今朝打ち合わせた通りの段取りどおり、まずは先んじて大泉町入りして調査をしている、もうひとりの『調査員』と落ち合う算段だった。

 大泉町中央公民館で9時に待ち合わせ―――――だったが、『彼女』は10分も前に姿を現した。

 

 「お待たせしました、増子主に゛ッ!?」

 

 俺達の目の前で、メガネをかけた童顔の女はすっ転んだ。べちゃ!!という変な音がした。

 

 「だ、だいじょーぶっ!?」

 

 テテが慌ててその女に駆け寄ると、女は無邪気に笑いながら起き上がった。

 

 「いしし……お構いなく……カシコはすぐ転んじゃうんです♪メガネも無事でよかったぁ♪」

 「まったく危なっかしい……」

 「おお!!その声!『ワンピース』のサンジそっくりのダンディなお声!!紛れもなく主任です!!」

 「……誰だそりゃ?」

 「アニメやなぁ。ワンピ知らんなんて流石に無いわぁ。ウチもアニメはよぉ知らんけど、ワンピぐらいはなぁ」

 「アナタがテテさんですね!ドクターと主任からお話は聞いてます!そのお声、『ダンまち』のロキそっくりですねぇ!関西弁も完璧マッチしてますっ♪」

 「……??なんやよぉわからんけど、よろしゅうなぁ♪」

 

 コイツは井野菓子々(いのかしこ)。見た目は学生に見えるが、23歳。

 もっとも、普段の振る舞いは『見た目通り』で、テンションが高くて落ち着きがなく、常に見張っとかないと何をしでかすかわからん。

 でもって重度のオタクだ。暇なときはアニメやマンガやゲームやら、その手の話題を振ってきては俺や佐藤を困らせる。

 

 「……お前を一人で行かせろってDr.Gに言われた時は肝を冷やしたぜ」

 「何を言いますか主任!カシコはこれでも…………こ……こ、心細かったです、主任~……(T T)」

 

 こんなヤツを―――――それも、本来は『調査員ではない』コイツをひとりで調査に送り出すなんて、Dr.Gは何を考えてるんだか……

 

 「でもでも、久々に学生時代に戻れた気がしました!なんてたって高校での情報収集!カシコ、キモチだけでも若返りました!」

 「この中で一番年下のくせに何言ってんスかっ」

 「痛ッ!!デコピン禁止って言ったじゃないですか佐藤先輩~!」

 「なるほど、高校か……確かに"P"の見た目は年頃だしな。学生って線は濃厚か……」

 

 これを見越してDr.Gはコイツをこの街に送り込んだということか。まぁ、こんな『ちんちくりん』が学生服を着て高校の中を歩いていても、何ら違和感がないか……。

 

 「詳しいお話は後ほどするということで……段取りはOKです、さ、行きましょう皆さぁ゛っ!!?」

 

 また転びやがった……しかもさっきと同じ場所で。

 1ヶ月も高校にいたと言うが……その高校に迷惑とか掛けなかったのかが少し不安だ……

 

 ――――――――――

 

 井野はテテのレンタカーに乗り込んだ。まず俺達が最初に向かったのは、最初に『ウィルス』が実体化した場所―――――市街地の一角だった。

 町に来るまでに、打ち合わせた通りに―――――

 

 「テテの取材って名目だ。俺と佐藤は、その警護って体裁でついていく。井野はクルマで監視とネットの異常をチェックしてくれ。情報収集はさり気無く、な―――――」

 

 何処に『同業者』が紛れ込んでいるか分かったもんじゃない。その為に『体面上は』一般人であるテテの立場を利用せざるを得なかった。

 テテもテテで、真面目に取材をして、それを記事にするつもりらしい。もっとも、『肝心な事』は巧妙に避けたルポ形式ということだ。

 『ウィルス』の現実空間への初出現から、ひと月半は経っている。破壊されたビルの復旧も大分進んでいるようだった。

 献花台には多くの花が手向けられ、未だに人は途切れない。俺達も花屋で買った花を手向け、祈りを捧げる。

 

 ―――――この件を早急に片付けることが、俺達ができる、この花以上の最大限の『手向け』だ―――――

 

 仕事である以上、全力を尽くす。感情的にならず、あくまでも『そういう立場』だからこそ。

 ―――――丁度、この献花台に花を手向けに来た老婦人に、テテはそっと声をかけた。

 最初は流暢な日本語で話しかけてくる外国人女性に戸惑っていたようだが、徐々に心を開いてくれたようで、自身の心境を話してくれた。

 彼女は当日この場にいなかったそうだが、息子夫婦が大怪我をしたらしい。犠牲者も出た今回の件に思うところあって、週に1度、こうして献花に訪れているという。

 平和な日本に暮らしていて、まさかこんな事が、それも自分の住む街で起こるなんてと嘆いていた。

 

 「……なんって言うか……来るモノがあるッスね、こういうのは―――――」

 

 そう、佐藤が小声で呟く。コイツはまだ、電調に来て1年ほどで、まだ『こうした事』に慣れてない節もある。

 俺はもう―――――慣れた。慣れて、しまっていた。表沙汰にならない『仕事』を5年近くもしていれば、間近で別の『誰か』が傷ついたり、下手を打てば命を落とすことも稀にあった。

 俺にこの仕事のイロハを教えてくれた先輩は2年目に死んだ。

 初めての俺の後輩は3年目に死んだ。2人目はその次の年に。

 そして、『そうしたモノ』を失った悲しみを背負って、押し殺し、大義の名の下、権力の命ずままに、犯罪者を法の裁きにかけ、金を貰って飯喰って―――――

 そうした『他人の命』や、『他人の運命』を『食い物』にすることに―――――

 俺は慣れてしまった。

 まだ俺は『人間的』でいられるが、じきに俺も、誰が傷つこうが死のうが、涙ひとつ流さない『マシーン』のような存在になっていくのだろう。

 ―――――まぁ、『バケモノ』よりかは……マシな存在なんだろう……。俺にとっては。

 

 「……じき慣れる」

 

 まだその『どちら』にも染まり切っていない佐藤には、俺はこう答えるほか出来なかった。

 

 ――――――――――

 

 その後も俺達はテテとともに大泉町各地を回って、『取材』と称した情報収集を続けた。 

 しかしどれもこれも、都市伝説じみたことばかりだ。

 そして、そのほとんどで出てくる単語があった―――――

 

 ―――――プリキュア―――――

 

 佐藤やテテもそうだが、何故に誰も彼も、"P"やC-ORGのことを『プリキュア』って呼ぶんだ?

 それに―――――

 

 「どうして『プリキュア』なんだろうな……」

 

 疑問だった。こうした都市伝説の類なら、もっと曖昧なネーミングがされる筈。それなのに、何故だ?

 

 《確か……最初に"例のウィルス"がこの町で暴れた時に戦ったC-ORGの映像が配信されて……その時に誰かが『プリキュアだ』って書き込みをしたらしくって、それからは定着したみたいッスよ》

 

 サイドカーを運転している佐藤がそう答える。

 

 《ウチ、その書き込みしたって子に電話で取材したことあるんやけど、ホンマに何の気無しやったんやて。なんとなく『プリキュアっぽかった』から思わず応援の書き込みしたらしいて。本人も驚いとったわ。まさかこんな大ごとになるなんて思わんかったて……》

 

 テテの調べたことが真実なら、この大泉の『プリキュアフィーバー』は偶然の産物なのか?

 しかしその裏付けのために、放送局や製作サイドに調査に奔らされた俺や佐藤はたまったもんじゃない。

 

 《でもでも、あのコたち―――――"P"が『プリキュア』なのは、あながち間違ってないかもですよ?》

 「……どういうこった?」

 《今まで"P"が戦いの最中に更に姿を変える……いわゆる"2段変身"とか"フォームチェンジ"をしたことが確認されてます。カシコ、アニメのプリキュアをず~っと見てきて、今のシリーズも見てるんですけど、"P"のフォームチェンジした姿、アレ、過去に放送されたプリキュアシリーズに登場したプリキュアそっくりなんですよ!見た目も、その能力も!》

 「"P"がアニメを真似てるってのか……?」

 《まさかとは思いますけどね……。でも初めて現実世界に出現した"P"が最初にフォームチェンジした姿は、2013年度に放送された『ドキドキ!プリキュア』に登場した『キュアロゼッタ』にそっくりでした……バリアを発生させる能力も全く同じです。次に変身したのはその前年度……2012年度に放送された『スマイルプリキュア!』の『キュアマーチ』……ビルの壁を走るシーンは、毎回オープニング映像で描かれてましたからね!"P"って、まるで"プリキュア版ジオウ"ですよ!……あ、『ジオウ』っていうのは2018年から2019年にかけてに放送された『平成ライダーシリーズ』の20作目にして最終作で―――――》

 「あー、わかったわかった……お前、やけに詳しいな」

 

 コイツがオタクなのは知っていたが、よもやここまでとは……プリキュアと"P"の容姿の類似性を、妙な切り口ではあるが指摘出来ているのは流石……と認めるべきか。

 何故、"P"がアニメのプリキュアを真似ているのか―――――そもそもの理由は一切わかっちゃいねぇが―――――

 こりゃ……今回の件を追う上での、思わぬ鍵を手に入れたかもしれねえな……

 

 《あ、主任!そーいえば、次にお話を聞く、"P"の事を調べてるっていう学生さんなんですけど―――――》

 

 ――――――――――

 

 《―――――主任と名字が同じですけど、ご親戚の方ですか?》

 「……………………」

 

 もう遅い―――――俺は心の中で井野にツッコんだ。

 午後―――――これまで幾度も"P"と"実体化ウィルス"の戦場となった俺の母校―――――

 大泉中学校の校門の前にいたのは―――――

 

 「あ~!!ミツ叔父さん!!」

 

 俺を指差すメガネの少女。やっぱりコイツだったか……

 

 「最近メッセの返事が無いって思ったけど、帰ってきてたなら連絡ぐらいよこしてよ!お母さんも心配してたよ!?」

 「……人違いだ」

 

 俺と佐藤はサングラスをかけ、鉄面皮でテテの後ろに控えていたが、コイツは一発で俺に気付きやがった。

 

 「何言ってるのよ?そのジャック・スパロウみたいな声、他に誰がいるってのよ?」

 

 予想外だった。

 まさかコイツと鉢合わせるハメになるとは―――――

 つかコイツも声だけで俺を判別できるのか。俺の声、そんなに特徴あんのか?

 

 「??みっつー、この子は?」

 「……姪だよ。姉貴の娘の美祢。はぁ……ったく―――――」

 「あ~~~~~~~!!!!!!」

 

 今度は俺を見つけた以上のリアクションだ。美祢が驚いていたのはテテの姿を見て、だ。

 

 「も、もしかして、去年ピューリッツァー賞を取ったティモシー・フランシスさん!?!?ミツ叔父さん知り合いだったの!?え、え~っと……は、はろ~……」

 「あらら、サトーくんとリアクション一緒やなぁ。『ワ~タシ、ニホンゴ、ワ~カリマセ~ン♪』って返したらええんかいな?……って、ヘ〇ン姐さんかいな」

 「ふおおおをををを!?!?!?関西弁!?どーして関西弁!!??と、ともかくサインください!!あ、色紙が無い!?」

 「増子さんテンション高いねぇ……( ̄▽ ̄;)」

 

 美祢の横にいる濃い赤色の髪の少女がこうツッコんだ。

 

 「そ、それはそうと叔父さん!メッセの返事も寄越さないで何やってたのよ?」

 「仕事が忙しかったんだ。ついでに言うなら今も仕事中だ。……こいつの護衛(ガード)でな」

 「内閣府の警備部、だっけ……?そりゃ仕方ない、か」

 

 『電調』は公にされていない、所謂『非公開組織』だ。

 それ故、所属する人間には箝口令が布かれ、組織の事を民間人に明かすことは厳重に禁じられている。

 当然『本家』の連中も知らず、連中の認識では、俺は未だに前の職場である内閣府警備部に所属していることになっている。

 それ以前に、そんな箝口令があろうがなかろうが、俺がどこで何をしてようが、『本家』の連中に話す気など無いが。

 

 ――――――――――

 

 世界的なジャーナリストであるテテと話せることが余程嬉しかったのか、テテの聞き込みにも美祢は嬉々として応じていた。

 それにしても美祢のヤツ、立場上は普通の中学2年生のハズなのに、どうやってここまで情報を仕入れた?

 ―――――俺達電調は、今回の任務に携わる以前にも、民間人を『この件』から遠ざける工作を細々ながら行っていた。

 昨日佐藤がやっていた、関連サイトや考察サイトの閲覧禁止・削除措置もその一環だ。サイトの管理人に連絡を取り、警告と口止めの後、サイトを削除する。

 動画サイトにアップロードされた動画や画像も、サイトの管理人に連絡して削除要請を行い、出来るだけ削除した。

 情報も映像も、出来る限り民間に流れないようにしろというDr.Gの指示だったが―――――

 "人の口に戸は立てられぬ"―――――それがキュアネットならば、尚更だ。

 一度アップロードされてしまった画像や映像、情報は、コピーされて拡散される。完全にネット上から無に帰すことは不可能と云っていい。

 そうした結果、美祢のように『首を突っ込みたがる』人間も出始める。どのような話題であれ、最低一人は『それ』にそそられる。

 物事は起こってしまえば、もはやそれを取り消すことは『何者であろうと』不可能だ。たとえ、神であろうとも―――――

 

 「そうそうテテさん!プリキュアの事だったら、この子に聞いて!プリキュアの事、すっごく詳しいんだから!」

 

 美祢はそう言うと、一緒にいた濃い赤色の髪の少女を前に出した。

 

 「ふぇ!?……あ、えっと、はじめまして、東堂りんくです」

 

 ―――――!?東堂!?

 これは偶然なのか……!?

 確か、東堂博士もこの大泉町の出身だったと聞いた。事前に調べていたが、東堂姓の家はこの街に一件だけだった。

 もしやこの娘は……東堂博士の家族か縁者ということか……!?

 テテも俺と同じことを思ったのか、こちらに視線を横目で向けてきた。俺はサングラスをずらし、小さく頷く。

 

 「……よろしゅうなぁ、リンクちゃん。プリキュアのこと詳しいっちゅーことは、もしかして、この街のプリキュアの事も、何か知っとぉの?」

 「え!?……えっと、私、アニメのプリキュアのことなら自信があるんですけど、この街のプリキュアの事はちょっと……」

 「そぉなんか……せや、ところでなリンクちゃん、親戚のヒトで―――――」

 

 その時、耳元の通信機から、井野の声が響いてきた。

 

 《お話し中ごめんなさい!皆さん、大泉町のキュアネット空間……座標B-4、大泉変電所サーバー内に使途・目的不明の動態プログラムを検知しました……現在解析中ですが、恐らく……》

 

 ―――――遂に来たか。それにしてもタイミングの悪い……

 

 「……引き続きマークしろ。逃すなよ」

 《カシコかしこまりました!》

 

 その時、電子音が東堂りんくのポケットから鳴り、小さな振動音も聞こえた。

 

 「あ!……ご、ごめんなさい!ちょっと急用を思い出しちゃいまして……増子さん、また何かあったらよろしくっ!それじゃっ!」

 「ちょ、東堂さんっ!?」

 

 美祢が止める間もなく、東堂りんくは慌てて駆け去っていってしまった。

 

 「なんや慌ただしいコやなぁ」

 「少し前からなんですよ……スマホにつきっきりになったり……」

 「あ、せやせや、ウチもちょっとヤボ用でな、行かなあかんねん。ミネちゃんのメッセのアドレス、交換してくれへん?」

 「い、いーんですかっ!??」

 

 美祢は目を輝かせながらスマホを操作する。その間も俺は変電所のサーバーに出たという『不明プログラム』が気がかりだった。

 Dr.Gが言うには、コイツも『C-ORG』らしい。だが、性質はネットでウィルスと戦っている連中とは正反対で、『ウィルスを使役する存在』とドクターは分析している。

 つまりは―――――"黒幕"。そいつもまた、"ネットの中の生命体"らしい。

 つくづく非常識な連中だ。そんな奴等を、どうやって『身柄確保』して、『逮捕』しろっていうんだ?

 

 「叔父さんっ!」

 

 去り際、美祢が俺を呼び止めた。

 

 「その……ウチに寄ってかない?お母さんやみんなも、叔父さんの事心配してたし、それに―――――」

 「言ってるだろ。俺はもう、本家に一歩たりとも戻るつもりはない。大泉に戻ってきたのも仕事だから、だ。仕事が終わればとっとと出ていく」

 「で、でも……」

 「それと、これは忠告だ。もう、この件には首を突っ込むな。……ここから先、お前のような子供の出る幕じゃない」

 「!?……何よソレ……?みんな、このことを知りたがってる!この街で何が起きてるのかを……!だからわたし……」

 「……知りたがってるのは、この街の連中じゃない―――――"お前"じゃないのか」

 「……っ!……」

 

 そうだ。それが増子家の"呪い"なんだよ。

 『好奇心』という名のエゴを肥大化させて、その為には他人の事情など目に入らぬ、"危険な呪い"―――――

 そんな呪いにかかった"バケモノ"に―――――コイツもなってしまうというのなら―――――

 俺は、コイツを、『救わなければ』ならない―――――

 

 「お前個人の好奇心の言い訳に、他人様を使ってんじゃねえ……!マスコミごっこは学生で卒業しとけ……でないと……怪我じゃ済まなくなるぜ」

 

 それだけ言うと、俺は振り返る事無く佐藤のサイドカーに乗り込んだ。

 

 「出せ」

 

 クルマが発車してしばらくして、通信越しにテテが話しかけてきた。

 

 《みっつー……お節介かもしれへんけど、なんや正直印象悪かったで》

 《そうッスよ……あの子、泣いてませんでした?……姪っ子さんッスよね……?》

 「だからだよ。……俺はあいつ等とは違う…………違うんだ……」

 《カシコ……ちょっと怖いです、主任……―――――》

 そう、俺はあいつ等とは―――――呪われた、人の皮を被ったバケモノとは違うんだ。

 だが、俺も一つ運命を違えていたら、今頃美祢と同じような目をして、どこかのマスコミでこの事件を追っていたかもしれない。

 そう―――――

 『あの事件』をきっかけに、俺は『目を覚ます』ことが―――――

 自分自身にかかった『呪い』を、解くことが出来たのだから―――――

 

 ――――――――――

 

 BACK LOG MITSUAKI MASUKO

 

 ――――――――――

 

 16年ほど前―――――

 当時高校2年生だった俺は、『この一族特有』の熱に浮かされていた。

 

 ―――――『真実を追求して詳らかにする』という、飽くなき好奇心―――――

 

 世界の誰も知らない謎、隠された真実を追い求め、夏休み、一人でとある街へと出かけた。

 昨今、『怪物が出る』と噂され、謎の秘密組織が暗躍しているとネット上で騒がれていた街だった。

 ネット上で流れる怪情報は、当時の俺の心を掻き立て、遂にはデジカメを相棒とした一人旅の決心までさせたのだった。

 途中で立ち寄った、さながらヨーロッパの街並みを思わせる、聊か日本離れした雰囲気の街の一角で、俺はついにその手掛かりを見つけた。

 黒づくめの服を着た見るからに怪しい雰囲気の男が、周囲の人目を窺いながら裏路地に入っていくのを、俺は見逃さなかった。

 

 ―――――あの怪しい奴を追いかければ、真実に辿り着けるに違いない!

 

 今思えば、これは己の若さから来る、根拠もない自信だったのだろう。

 俺はその男に気付かれないように細心の注意を払いながら追いかけた。

 その男が、港の埠頭の倉庫に入った時には、もう日はとっぷりと沈んでいた。

 その男は、別の男からアタッシェケースを受け取り、その中身を確かめた。USBメモリのようなモノに、俺には見えた。

 

 「これが例のブツか……危ない橋を渡った甲斐があったぜ……!これを使えば、人生バラ色だ……!」

 「ありがとうございます。ですが流通前の試作型の特別頒布品ですので、安全性は保障しかねます。くれぐれも扱いは慎重に。では、代金を」

 

 男は別の銀色のケースを取り出し、開けた。その中には、大量の札束が詰められていた―――――

 

 ―――――裏取引の現場……これは……特ダネだ!

 

 俺は物陰に隠れながらも興奮を抑えられなかった。半ば反射的にデジカメを構えて、ボイスレコーダーを起動した。

 この情報をどこかのテレビ局や新聞社に売り込めば、有能さを認められて、ジャーナリストへの近道になる―――――

 この一枚は―――――俺の栄光の報道人生の第一歩だ!―――――

 

 そう思って切ったシャッターが、俺の運命を変えた。

 

 静音モードに切り替えていなかったデジカメから、シャッター音が工場に鳴り響いた。

 

 「!?誰だッ!?」

 「このガキ!何撮ってやがった!!」

 

 慌てて逃げようとしたところを、男の仲間だろうか、別の黒服の男に行く手を塞がれてしまった。それでもカメラとボイスレコーダーだけは死守しようと、必死に抵抗した。

 

 「運が無かったな。でも、冥途の土産にいいこと教えてやるよ。自分の行動は、その『結果』に自分で責任が取れる範囲で止めとくべきだったな……―――――」

 

 そう言いながら、男は黒光りする拳銃を取り出し、その銃口を俺の眉間に突き付けた。

 悔しいが―――――こいつの言う通りだと思った。

 俺は、『好奇心』なんていうちっぽけな自己満足のために、後先も考えずに突っ走っていた。

 俺が、俺のために起こした行動によって、俺自身、そして俺を取り巻く他人に、何が起こるかも知らないで、知ろうともしないで―――――

 その結果が、俺の人生の幕切れ―――――

 厭だ―――――

 

 こんな()()()()()()()のために、俺は死にたくない!

 

 その時だった。一瞬の静寂の中に、かつん―――――と、靴音が響くのが、その時はっきりと聞こえた。

 

 「―――――"マスター"の情報通りだったな……。ここで"取引"をしてるってのは本当だったようだ―――――」

 

 俺は思わずその声の主を見た。暗闇の中に、その男は真っ白に浮かび上がって見えた。

 白いスーツとハットを着こなした男―――――

 

 「ついに尻尾を掴んだぜ。観念しな。それ以上その"毒"を―――――街にばら撒かせる訳には行かないんでな」

 「アナタですか……!コソコソと我々の周りを嗅ぎ回っていたのは……!」

 「おいどういう事だ!?なんだコイツは!?」

 「最近になって、我々の仕事の邪魔をし始めた、目障りな"探偵"ですよ。とりあえず例のモノはもうアナタのモノ……これからも付き合いを続けてほしいのであるならば……」

 「チッ……あ゛ぁ!わぁったよ!!全員始末すりゃいいんだろ!?」

 

 半ばヤケクソ気味に男は吠えた。思わず俺は、白い服の男に助けを求めていた。

 

 「た、助け―――――」

 「おっと動くなよ!」

 

 俺は背中から羽交い絞めにされ、側頭部に再度銃口が突き付けられた。

 

 「そこから少しでも動いてみな!このガキの頭に風穴が空くぜ!」

 「……ひッ……!!!」

 

 男の慄えが重心を伝って、俺の頭に伝播する。そのカタカタという小さな音が頭の中に響くたび、戦慄が背筋を撫でる。

 お願いだ……!頼むから命だけは……!!俺は怯え切った視線を、白服に向けていた。

 何処の誰だかわかんないけど、あんたしか、希望はいないんだ……!!早く助けてくれ―――――

 ―――――だが白服は、キッパリとこう言った。

 

 「撃ちたきゃ撃ちな。でもって、ソイツを撃ったら―――――」

 

 白服は自身を親指で示した。

 

 「俺も撃て」

 「!?」

 「…………え――――――――――」

 

 な、なんてことを言うんだ!?あんた、人の命をなんだと思ってやがる!?

 こちとら、あんたにしか頼れないんだ!それなのに―――――

 

 「だが……―――――」

 

 白服の眼光が、突き刺さるように、俺に銃を突き付けている男に向けられた。

 

 「撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ。テメェが誰かに殺られてもいいなら―――――殺ればいい」

 「ぐ…………………………!」

 

 その言葉、そのナイフのような視線―――――それに気圧されたのか、男の銃を握る手から、力が抜けた―――――

 

 「今だ坊主!!」

 「……!!」

 

 白服の叫びを合図に、俺は男の手を振り払い、無我夢中で駆け出した。

 白服の横を通り抜け、倉庫の出入り口へとまっすぐに―――――

 

 「……悪かったな、坊主」

 

 彼の口から、小さく、そう聞こえた―――――そんな気がした。

 そして、逃げ出す俺の背後から、黒服の集団に向けた、白服の静かなる啖呵が、未だに俺の脳裏に灼き付き、離れない――――――――――

 

 「さぁ―――――お前の罪を、数えろ」

 

 ――――――――――

 

 それから―――――どうやって家に帰りついたか、俺は覚えていない。

 気が付いたら、全身から冷や汗を流し、息を切らしながら、実家の玄関先に立っていた。

 

 ―――――俺は、助かったのか。

 

 目の前の見慣れた玄関にここまでの安堵を感じたのは、生まれてこの方初めてだった。

 ともあれ、無事に家へと帰りつくことができた。きっと、家族の皆も心配しているに違いない。安心させてやらないと―――――

 

 「……ただいま」

 

 だが―――――

 俺を出迎えた家族が、いの一番に心配したのは―――――

 

 「おお……凄い特ダネじゃないか!裏組織の闇取引……マスコミに高く売れるぞ!」

 「カメラもボイスレコーダーも無事よ!」

 「よくやったなぁ、美津秋!流石は俺の息子だ!」

 

 俺に対して―――――

 俺の『命』に対して、心配をしてくれた家族は―――――誰一人としていなかった。

 心配していたのは、俺が手に入れてきた『モノ』―――――カメラとボイスレコーダーだった―――――

 その時、俺を褒めた父親と母親、家族の『目』もまた、俺にとっては忘れられない。

 

 あの―――――『バケモノ』のような目を―――――

 

 俺はこの時、初めて悟った。

 こいつらが価値を見出すのは、好奇心を剥き出しにして得た情報―――――『真実』だけなんだ、と。

 こいつらは、血の繋がった『家族』にすら、何の感情も抱いていない―――――

 俺は、こいつらと同じような『目』をして、カメラとボイスレコーダーを手に、『その先』に『どう使うのか』、何の意味も考えずに、あるかどうかすらわからない『真実』という『幻想』を、追い求めていたというのか―――――

 何もかもを犠牲にして―――――

 俺は俺の『血縁』を、この上なく汚らわしく思った。

 『真実(くだらないこと)』を追い求めるために、他人の……家族の命すら何とも思わない存在―――――『バケモノ』なんかに、俺は堕ちたくない!

 

 こんな奴らと一緒に暮らすなんて―――――死んでも御免だ―――――……!

 

 ――――――――――

 

 NPC MITSUAKI MASUKO

 

 ――――――――――

 

 そうして俺は家を出て、『増子家』と同じ道に進まぬよう、公務員を志した。

 『個人的』『主観的』ではなく、『組織的』『客観的』に物事に携わる仕事がしたかった、それが理由だった。

 内閣府の警備部に所属されて少しして、電調へとスカウトされ、今に至っているわけだが―――――

 この経緯は誰にも話していない。話す必要が無いからだ。

 ―――――『増子家の真実』を知っている俺からすれば、美祢の行動や思考は、『危険』なものだ。いずれは、あの時俺が見た『バケモノ』同様に成り果てよう―――――

 ああやって声をかけてやっているのも、俺なりの気遣いのつもりだ。分かってくれとは言わん。

 だが―――――若いお前なら、『呪い』を振り切るチャンスはいくらでもあるはずだ。

 『今回の件』―――――既に電調が関わってしまった以上、これからの安全を保障することはできない。

 掛けた言葉の通り―――――下手に首を突っ込めば、怪我じゃすまなくなる―――――

 

 《"XV"、変電所サーバー内に非顕在化(アンリアライズ)!……あ!大泉町全域への送電が停止……停電しました!》

 

 井野の声が緊迫感を持って響いた。

 ―――――動き出したらしい。

 

 ……SAVE POINT




 用語解説

 内閣電脳調査室

 キュアネット移行後、多発・複雑化するサイバー犯罪に対応するべく、
 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部=IT戦略本部の下部組織として発足した調査組織。略称は『電調』。『日本版サイバーCIA』とも呼ばれ、一般にはその存在は公表されていない。
 警察のサイバー犯罪対策室と異なり、公にはできないようなサイバー犯罪を主に担当している。バグッチャーとプリキュアの出現後は、バグッチャーによるキュアネット内外における破壊活動の防止、およびバグッチャーに唯一対抗できる存在であるプリキュアの正体を探り、接触を図るために活動している。

 ――――――――――

 今回の新キャラカシコさん、実は『稚拙の生き写し』的なキャラなんです。
 そそっかしくてよく転ぶ……アニメも特撮もこよなく愛する、インプリで最もディープなオタクキャラです。
 そして学生時代の美津秋が訪ねたこの街、そして彼を助けた白服……
 ……誰なんでしょーね~(棒)

 次回も間が開いちゃいますが、気長にお待ちを……たぶん、キュアパルフェ登場には間に合いません……(悔)
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