キュアネット
16年前、世界的なインターネット障害『アイ・クライシス』によって機能不全となったインターネットに代わって、世界中に敷設された次世代型インターネット。
『いつでも、どこでも、だれでも、カンタン』がキャッチフレーズ。
ネットワーク空間が可視化されていて、ネットの混雑状態も一目で確認できるなど、わかりやすさを売りにしている。
普及には、りんくの祖母であるネットワーク技術者・東堂博士の尽力があったという。
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かれんちゃんが!まいんちゃんが!ついでに初音ミクがプリキュアに!!
キラプリの声優さん発表で割とテンションが上がっております……!!
テンション上がったついでに文字数も1万字を越えちゃいました……!!
読みにくかったらすみませんが、続きを送信!!
……NOW LOADING……
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《ダメぇーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!》
スマホから女の子の叫び声が、大音量で鳴りひびいた。
「ぅわぁっ!?」
心臓が止まるかと思うくらい、ビックリした。
も、もしかしてさっきのアプリ、開いちゃったの!?
《削除はイヤ!ごみ箱イヤ!死にたくないよぉ~~!!》
女の子の騒ぎ立てるような声が図書館にひびき渡る。一斉に私に向けられる視線。
「な……なんとかしないと、なんとか……!!」
《イヤイヤイヤイヤ~~~!!!!》
そ、そうだ!電源!電源を切っちゃえば、大丈夫なはず……!!
何とかシャットダウンをしようとするけど、手元がおぼつかない。
こうなったら……ちょっと乱暴だけど、直接電源を切る!
ボタンを3秒ほど押しっぱなしにする。でも、電源が切れてくれない!?
《や~め~て~!!こ~ろ~さ~れ~る~ぅ~!!》
このイタズラアプリ!なんてこと言っちゃうんですか!?
これ以上ここにいたら迷惑になる。私は慌てて、図書館から飛び出した。
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近くの公園まで、全力疾走した。運動オンチの私には相当キツい。息切れがヤバい。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
《○×▽□※☆~~~!!!!!》
アプリはまだ騒いでる。この声、声優さんの声をサンプリングしたのだろうか、前に見たことのあるアニメに出てた、若手の女性声優さんの声によく似てる。
「まったく……なんなのよ、コレ!?タチが悪いイタズラアプリ!」
答えちゃくれないだろーけど、思わず私は騒ぐアプリに悪態をついた。
《だって!ごみ箱に入れられそうになったんだもん!死んじゃったらどーしてくれるの!?》
「どーしてって、あなたはイタズラ目的の偽アプリ…………って」
……あれ?
《しっつれいね!!イタズラしようとしたわけじゃないのに!いきなりごみ箱はやめてよね!ふん!》
このアプリ、もしかして……
「ねぇ……私の言葉、わかるの……?」
さっきからこのアプリ、私の言葉を聞いて、返事をしているように聞こえる。そんなまさか……?
でもアプリは、当然のようにこう言ってきた。
《トーゼンでしょ?そうじゃないと、こうして話せないもん》
アプリのアイコンが自慢げに返事をした。なるほど、そういうことか。
「やられたぁ~……遠隔操作ウイルスかぁ……ごめん、おばあちゃん……」
そうに違いない。これは遠隔操作ウイルスだ。こうして話しているのも、通話機能を強制的に起動して、相手の声はボイスチェンジャーを使っているんじゃないか。それなら辻褄が合う。
どうしよう……せっかくおばあちゃんからもらった、特別製のスマホだったのに、こんな形でお別れしないといけないなんて、超ショック……
《遠隔操作でも、ウイルスでもないよ!それこそ失礼だよ!いきなりごみ箱に放り込もうとしたこともそうだけど、『にんげんさん』って、なんかヤな感じ!》
今度はアプリ……いや、ウイルスが悪態をついている。文句を言いたいのは私の方なのにっ!
《あたしは……あたしなんだから……!》
声色が変わった。何かと思って、私はディスプレイを見た。
すると―――
「……え……うそ……!?」
アプリのアイコンが、まるで映画かアニメのCGのように形を変えて、女の子のアバターの形になった。それだけでなく、その女の子アバターは、スマホのディスプレイの上に、
その女の子は、ピンク色の瞳と髪をしていた。長さは腰までぐらいのロング。魔法少女……ともちょっと違った、サイバーチックなコスチュームを身にまとっていた。見た感じ、プリキュアのフィギュア―――『キュアドール』がそのまま立体映像化したかのようだ。
《それでも……はじめて『にんげんさん』に会えたんだし、あいさつくらいはしとかなきゃね》
女の子はその場でくるりと回って、私を見上げて、自分を解した。
《……はじめまして!あたし、キュアメモリア!》
キュアメモリア―――
それがこの子の名前……?
キュア…………つまりこの子は……。
「……プ、リ、キュ、ア……?」
……ってことになるの?でも、キュアメモリアなんていうプリキュア、見たことも聞いたこともない。どこかのヒトが考えたオリキュア?
考え出したらワケがわからなくなってくる。というかコレ、遠隔操作ウイルスのハズじゃ……
《!にんげんさん、プリキュアのこと、知ってるの!?》
なんか、食いついてきた。さっきまでの態度はどこへやら、目をキラキラさせて私を見上げている。
「知ってるも何も、常識よ、常識!日曜朝8時30分!絶賛放送中!プリキュアモトにしてるにしちゃ、知識不足ねぇ。やっぱアナタ、モグリでしょ」
《むっかー!バカにしないでよ!!あたしだってプリキュアだもん!!“せんせい”の……キュアブラックの弟子だもん!!》
「ちょっと!?軽々しくキュアブラックの名前を出さないでよ!!栄光の初代プリキュア……キュアブラックこと美墨なぎさちゃんに、弟子なんているわけないじゃん!?」
《こ・こ・に・い・る・の!!サーバー王国の伝説の戦士プリキュア……51人のプリキュアで最強のキュアブラックに修業をつけてもらって、あたしはプリキュアになったんだから!!》
この子、ヤケに詳細な設定を語るじゃん。サーバー王国ってなに?51人のプリキュア?
それなら、ボロを出すまで勝負だ。誇りあるプリキュアオタクのこの私、東堂りんくに『プリキュア型ウイルス』を送り付けるとは何たる愚策……!ホンモノの違いを見せてやる!
「だったら話してごらんなさいよ!サーバー王国のこととか、51人のプリキュアうんぬんとか!」
《……わかった、いいよ》
あれ?やけにしおらしくなっちゃった。私は、この『自称プリキュア』が何を語るのか、とりあえず聞いてみることにした。
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とりあえず、話を聞いてもらうだけ聞いてもらおう。『にんげんさんにサーバー王国の事件を伝える』ことも、キュアブラックから言いつけられた使命だもの。
「あたしたち、『アプリアン』たちが暮らしてる、キュアネットのずっと奥にある国……それが、サーバー王国なの―――」
みんなが平和に暮らしてた国に、16年前―――悪いアプリアンたちの集団“ジャークウェブ”が侵略してきたの。
それまでずっと平和だったサーバー王国は、あっという間に滅ぼされる寸前にまで追い込まれちゃった……
みんなが諦めかけたその時―――救世主が現れたの!
どこからかやってきた、51人の女の子たち。
彼女たちは、こう名乗ったの―――『伝説の戦士“プリキュア”』、と―――
プリキュアたちは、王国に味方をしてくれた。そして、その圧倒的な力で、ジャークウェブをあっという間にサーバー王国から退けたの。
みんなはプリキュアたちを英雄としてもてなして、これからも王国を守ってほしいってお願いしたの。王国がもう一度狙われないとも、限らないから。
プリキュアたちは、そんなみんなの想いに応えてくれて、これからもサーバー王国を守り続けてくれることを約束してくれた。
それからは、51人のプリキュアたちも王国の一員になって、国のみんなとなかよく平和に暮らしはじめたの。
あたしは、そんなプリキュアたちにあこがれて、キュアブラックに弟子入りして、初めての『サーバー王国生まれのプリキュア』になったの!
でも―――少し前のこと―――
やつらは―――ジャークウェブは、もう一度王国を襲ってきたの。
あたしが気付いた時には、もう遅かった。あっという間に攻め入ったジャークウェブは、瞬く間に国を焼いて行って……
プリキュアたちも戦ったみたいだけれど、みんな負けてしまって……
最後に、“せんせい”は……キュアブラックは言ってた。これは、キュアネット全体の危機なんだ、って……
あたしは、にんげんさんにそれを伝えて、あたしに力を貸してくれる“ユーザー”っていうにんげんさんを探して、契約するために、ここまで来たの―――
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なるほど、よく練られた話ねぇ……もっと練りこめばいいホンになるかも。
でも、ところどころ穴があるんだよねぇ。私はそれを『自称プリキュア』に突き付ける。
「事情はわかったわ……と言いたいトコだけど、私を丸め込むにはまだまだねぇ」
《ふぇ!?》
「その、51人のプリキュアたち、いったいドコから来たの?」
《そ、それは誰にもわかんないの……王国の誰も、プリキュアたちがどこから来たのか知らなくって……》
「それに、あなたが“ユーザー”と契約したその先、どうする気なの?目的が見えないよ?」
《その先は……その……あたしも、『契約しろ』としか言われてなくて……》
だんだんとボロが出てきた、ように見える。ふふん、もうちょっと設定練り直してきなさい?
しょげ込む『自称プリキュア』。ホント、よくできたCG。この完成度、もっと別のことに活かしたらいいのに……。
「で?『契約』したらスマホの情報丸々抜き取っちゃうって寸法ね……まったく、私じゃなかったら引っかかっちゃってるわね」
あ、でも、プリキュア型のウイルスやスパムなら、踏んじゃってもいいかも……❤
なんて脳裏によぎった。い、いかんいかん。落ち着け、りんく。ここは『プリキュア愛』をセーブしないと……!!
このコはウイルス、ウイルスなんだ……!!!
ふぅ…………。さて問題は、この『自称プリキュア』をどうするかだ。やっぱ削除するか……
私は、再度『ごみ箱』に『自称プリキュア』を放り込むために、スマホの画面に指を伸ばした。
カワイイんだけど、もったいないなぁ……
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……ENEMY PHASE
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「……この近辺か」
俺は、『大泉町』と呼ばれるエリアのキュアネット上にいた。
サーバー王国の残党―――プリキュアを捕縛、もしくは撃滅するためにここまで追いかけてきたが、この近辺で反応が途絶えた。
「人間どもが使っている端末にでも隠れているのか……小賢しい」
端末に隠れこんでしまえば反応も消えるが、いつまでも隠れていられるとも思わん。
ならば、燻り出すまでだ。
「さて……どれほどのものか、見せてもらおうか……嘗て我々を苦しめた、『伝説の戦士』の力を」
俺は『P-31』と書かれたチップを取り出し、右手に込めたワルイネルギーと一つとした。
「陽だまりの四葉よ……その楯を以って、電子の流れを堰き止めよ!!バグッチャー、ユナイテーション!!!」
ワルイネルギーはチップを取り込み、黒光りする大柄な躯体となってネット上に現れる。
『バァァグッチャァァァーーーーー!!!!!』
これこそが、我々ジャークウェブの使役する電脳侵蝕尖兵―――――“バグッチャー Ver.2.0”だ。
「出てくるがいい……最後の希望はこの俺……ジャークウェブ四天将が一角、アラシーザーが摘み取る!!」
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―――ザザッ……
「あれ?」
一瞬、スマホの画面が乱れた気がした。
「やば……まさか本体も?」
この『自称プリキュア』、そんなにヤバいウイルスだったの?キレイなバラにはトゲがあるってよく言ったモノねぇ……
《……!!》
その時、『自称プリキュア』が、ハッとしたような表情に変わった。それとほぼ同時か、公園内にいる人たちがざわつき始めた。
「あれ?ページが開かない……?ロード長すぎない?」
「マジ?……あれ?あたしのスマホもだ」
みんな、スマホの画面とにらめっこしながら眉をしかめてる。
なんだか、あたりの様子がおかしい。
「う、うぅ……」
私のそばを通りかかったおばあさんが、急に胸を押さえだして、うずくまるのを私は見た。
「!!大丈夫ですか!?」
反射的に私はスマホをベンチに置いて、おばあさんに駆け寄る。
おばあさんは顔を青くして、苦しそうに言う。
「うぅ……ペースメーカーが、急に、動かなく、なって……!」
まさか―――私は直感的に訊ねていた。
「そのペースメーカーって、まさかキュアネット接続型の!?」
おばあさんはうなづいた。
確か、聞いたことがある。今の心臓ペースメーカーには、キュアネットに接続して、リアルタイムで使っている人の健康状態をチェックしながら、心拍数を調節する機能があるって。
それが動かなくなったってことは―――
って、それを考えるのは次だ。まずは……!
「すみません!誰か、AEDを持ってきてくれませんか!?それから、救急車を呼んでください!!」
私は周りにいた人に応援を頼むと、ベンチに置いたスマホを手に取った。
《……わ!?》
『自称プリキュア』が驚いて、画面の中に引っ込む。私は『おばあちゃん特製アプリ』の中の、『ネットチェッカー』を起動した。
「スマホ、持ってます!?」
おばあさんは苦しそうにしながらも、震える手でポケットからスマホを出してくれた。私は「すみません、失礼します!」とひとことおわびを言ってから、手持ちのケーブルで私のスマホとおばあさんのスマホをつなぐ。
キュアネット接続型のペースメーカーは、使う人のスマホに状況確認用アプリをダウンロードして使う必要がある。そこからなら、状況が調べられるはず……!
『ネットチェッカー』は、キュアネットに接続している電子機器のネット接続状況と、本体の機能チェックを同時にしてくれる、とびきり便利なアプリだ。瞬く間に、ペースメーカーとおばあさんのスマホを調べ上げてくれた。おばあちゃんのアプリ、役に立ったよ!
「メディカルチェックシステム……異常無し……!?ってことは、本体が誤作動してるわけじゃない……!」
本体が故障してるわけじゃなかった。でも、ネットの接続速度が大幅に遅くなってる。もしかして、キュアネットに影響があるっていうの?
「くっそ~!何度も電話してんのに、どうして繋がんないんだ!?」
さっき、電話をお願いした男の人が、頭を抱えていた。
「見せてくださいっ!」
男の人が使っていた電話アプリは、キュアネットを経由する回線で通話をするアプリだった。このアプリもまた、キュアネットが絡んでるアプリだ。
「このフォルダの中に、プリインストールの通話機能があります!どこの会社のスマホもデフォルト設定だとこっちのアプリになってて、みんな今のアプリが便利だから、ほとんどの人が、使わないんですけど……でも、違う通話回線を使っていますから、キュアネットで繋がらなくても、通話できます!試してみてください!」
「あ……あぁ!わかった!ありがとう!」
それなら、『非キュアネット』の回線経由ならつながるはずだ。いざという時の代替アプリは、こういう時覚えておくと、役に立つ。
私はそれからも、おばあさんのそばについていた。その間も、引っ切り無しに私のスマホにはメッセが立て続けに着信し続けていた。
むぎぽんやそらりん、クラスメートたちの不安の言葉。でも、着信は分刻みで少なくなっていっている。キュアネットの障害が、徐々に広がっているの……?
やがて、公園内にあったAEDを持ってきた人によっておばあさんの応急処置がされ、救急隊へと引き継いだ。私は、救急車が視界から消えた瞬間、どっと力が抜けてへたり込んでいた。
「すごいよ、君!あんなソフトがあるなんて知らなかったよ!」
「その制服、大泉中学の子?すごいアプリ持ってるのねぇ」
まわりの人たちがほめてくれてる、のかな……なんか、こういうのくすぐったくって、はずかしいというか、なんというか……
《にんげんさんって……すごいね》
「……?」
……そういえば、こんなヘンなのがいたんだっけ。この騒ぎで忘れてた。スマホの画面の中に、キュアドールもどきがまだいた。
《誰かのために、何かをすること……それって、『簡単なようで、とっても勇気がいること』だって、“せんせい”、言ってたよ》
「そ、そうかな……?えへへ……」
この子が言う“せんせい”って、キュアブラックのことなんだよね。作り話かもしれないとはいえ、間接的にキュアブラックに褒められてるような気がして、私は自然と笑ってた。
《次は―――あたしががんばる番、だね》
「……え?」
『自称プリキュア』は、うつむきながら、拳を握った。
《この騒ぎの原因……キュアネットの障害は、きっとあいつらの……ジャークウェブの仕業だよ》
「え……で、でも、そんなことどうしてわかるの……?」
《感じるの》
こちらを向いた『自称プリキュア』―――その胸にある、ハート型のブローチのような部分が、紅く、眩しく、輝いていた。
「それって……?」
《……ジャークウェブの……正確には、ジャークウェブがばらまく“ワルイネルギー”……それを感知してる……たぶん、目当てはあたし。あたしのために、この街のにんげんさんたちに、これ以上迷惑はかけられないから……だから―――行くね》
私に背を向けた『自称プリキュア』。なんだろう―――その背中から、決意というか、悲壮感のようなモノさえ感じされるのはどうして?
《短い間だけど……プリキュアのことを知ってるにんげんさんとお話ができて、うれしかったよ。それから―――ヤな感じって言って、ごめんなさい》
「……ちょっと!?」
アプリのアイコンとともに、『自称プリキュア』は画面から姿を消した。
瞬間―――
「この感じ……………………なに」
心の中に、穴を空けられたようなこの感覚は何?
罪悪感?後悔?―――いや、それらをも内包したイヤな気持ち―――
『キュアキュア』が、消えていく―――
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はじめてお話した『にんげんさん』が、プリキュアのことを知ってる子でよかった。
誰かのために、迷わず行動できる、勇気のある子でよかった。
―――だからこそ、守りたい。
そんな『にんげんさん』が暮らす、この街を。
ジャークウェブがこの街のキュアネットを荒らしたのが、あたしを捜し出すためだったのなら、なおさらだ。
この街は―――あたしが。
『キュアメモリア』が、必ず守る!
「見つけたぞ!サーバー王国の残党!」
男の声に、あたしは足を止めて、振り返った。
「誰なの!?」
「我が名はアラシーザー!!ジャークウェブ四天将が一角!!貴様さえ叩き潰せば、サーバー王国は真の終焉を迎える!!もう逃げ隠れせず、正々堂々と戦え!!」
「何が正々堂々よ!キュアネットを荒らして、この街の『にんげんさん』に迷惑をかけて!」
「フン……人間共がどうなろうと、俺の知った事ではない……バグッチャー!プリキュアに引導を渡せ!!」
アラシーザーと名乗った相手の背後から、ずんぐりとした黒光りの巨体が飛び出してきた。
『バグッチャ~~~!!!』
バグッチャーだ。やっぱり、こいつが……!!
『ポッカポカ~~!!』
雄叫びを上げながら、左右の拳を繰り出すバグッチャー。単純な攻撃、こんなのカンタンに―――
「きゃぁっ!?」
避けられなかった!?というか、体の動きが前より重くなって、思ったように動けない。一体どうなってるの……!?
「フン……やはり、サーバー王国の外に出たプリキュアは、十全に力を発揮できないようだな……」
アラシーザーの言葉から、あたしは思わず自分の体を見ていた。
「……え!?」
なに、これ!?すっごく『ちっちゃく』なってる!?
手足が短くなって、これじゃまるで人形。サーバー王国にいたころと違う!
どうして……!?サーバー王国の中と外じゃ、勝手が違うってこと!?
「力を出せぬプリキュアなど、赤子の手を捻るも同じこと……終わりだ、プリキュア!」
『バグッチャァァ!!!』
そんな……!?
ここで負けちゃったら……倒れちゃったら、命を賭けてあたしを送り出してくれたキュアブラックに、申しわけが立たないよ……!
それに―――
あの『にんげんさん』が暮らすこの街のキュアネットと守れずに負けるのが……何よりも悔しい……!!
あたし……プリキュアとして、ホントダメダメだ……!
ごめん…………あたしを信じてくれたみんな…………―――
《諦めちゃダメだよ!!》
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私の声に気が付いてくれたのか、怪物の攻撃を、すんでのところで『自称プリキュア』は避けてくれた。
スマホ画面の中の『自称プリキュア』が、カメラ目線で見上げてくる。
《にんげんさん!?どうして!?》
「だって……放っておけなかったんだもん……!あなたが行っちゃったあと……私の『キュアキュア』が消えていって……それで私、気づいたの……私、あなたのこと信じようともせずに、ひどいこと言って……情けないよ、私……プリキュア大好きなくせに、プリキュアの言ってることを信じないなんて……」
答えは最初から出てた。
私が、『プリキュアが好き』ということ。
仮にも『プリキュア』を名乗ったこの子を、私は一度疑った。だから、なんだ。私は、自分自身を裏切ってしまったんだ。だからあの時、『キュアキュアの消失』を味わったんだ。
このままじゃ、ダメだと思った。後悔は、やらないよりも、やってからしたほうがマシだ。そう思った時、自然と足が動いていた。
私は、この子を追いかけることを決めた。スマホに残っていたキャッシュデータから『特製アプリ』で逆探知をかけて、とある会社のオフィスのサーバーにこの子を見つけた。あとは、キュアネットの可視化アプリを使えば、サーバー内を映像化して見ることができる。そうして見ている画面が、今のこの画面だった。
画面の中には『この子』と、『スプラッシュスター』のキントレスキーと『まほプリ』のガメッツを合わせたようなフンイキの、それっぽいワルそうなヤツ、そして黒光りしてずんぐりした体のモンスターがいた。
「だから私、あなたのこと、応援する!世界中の誰が敵でも、私だけは、あなたを応援する!だから諦めないで!!逆転できる!奇跡起こせる!!プリキュアなんでしょ!?プリキュアだったら、奇跡のひとつやふたつ、起こして見せてよ!!」
《……にんげんさん……》
こんな小さな手で、『この子』は必死で戦っていたんだ……
画面の奥のその手は、画面の『上』にいるその時よりも、ずっと“ちいさく”見えた―――
「ちいさなこの手に……何を願うの?」
《…………え?》
思わず私は呟いていた。
「あなたは今ここで、何を見て……何を感じてる?」
《…………あたしは…………!》
この子が戦う理由が、この子が言って聞かせてくれた通りなら、私は全力で応援したい。私はその答えを、この子に無意識に問うていた。
《あたしの願いは……サーバー王国を元通りに戻すこと……!未来を見て……希望を感じてる……!!》
胸のブローチのような部分に、この子はグッと手を当てた。
《でも…………今のあたしは全力を出せないの……たぶん、“ユーザー”と契約してないから、だと思う……》
それなら―――私は即答した。
「だったら、私があなたのユーザーになる!契約する!!」
《え!?》
「ただ、プリキュアが好き……それだけの私が、プリキュアの助けになれるんなら、私は喜んで、あなたの力になる!!」
ユーザーになるのが誰でもいいのなら、私がこの場で、この子に力を貸したい。
私の存在が、プリキュアの力になれば、それでいい!
《にんげんさん……》
「『にんげんさん』なんて、そんな他人行儀な呼び方、しなくていいよ!」
私は―――プリキュアを愛する、ひとりの人間として、画面の向こうのプリキュアに名乗りを上げた。
「私はりんく!東堂りんく!!今日から私が、あなたのユーザーだよ!“メモリア”!!」
この子の―――キュアメモリアの表情が、ぱっと明るくなっていく。
《りんく……!ありがとう……!!》
「お礼は後!それで、私はどうすればいいの!?」
《それがあたしも―――――……ぁ》
その時、メモリアの目の感じが変わった。なんというか、遠いところを見てるような目というか、焦点が定まってないというか。
同時に、スマホの画面の片隅に、アイコンが表示された。さっきメモリアが姿を変えていた、『ハート型の集積回路』。
《……たっぷしながら、となえて。『ぷりきゅあ・おぺれーしょん』……》
声色も、なんかヘン。なんだか、『別の誰か』が乗り移ってるみたい。
でも、何をすればいいかわかったのなら、やらない理由は、ない!
《人間の子供が何を言おうが関係ない!やれ、バグッチャー!》
《ポカポカポカポカ~~!!!》
ワルそうなヤツの指令で、モンスターがメモリアに突撃してくる。これってヤバくない!?
「よ、よぉし……!」
私は意を決して、右手の人さし指をアイコンに乗せ、叫んだ。
瞬間、閃光が迸り、メモリアの体をピンクの光が包み込んだ。その光に怯んで、モンスターが仰け反って尻餅をついた。
《なにッ!?》
光に目が眩んだのか、ワルそうなヤツが驚いたような声を上げる。
「どうなったの!?メモリア……!?」
さっきまでメモリアがいた場所には、ピンクの光を放つ球体が浮かんでいた。やがて、その球体から光のリングが飛び出した。それも、1つじゃない。どんどん増えていって、最後には12個のリングが球体から一直線上に並んだ。
電子音声がスマホから鳴り響いた次の瞬間、ピンクの球体がリングに向かって弾丸のように飛び出していった。真正面にいたモンスターが立ち上がろうとしたところに、それが直撃する。
《ギャプッ!?》
再び怯んで倒れるモンスター。ピンクの球体は跳ね返って、空中に舞った。
その球体が、モーフィングのように形を変えていく。手が生えて、足が生えて、ついには女の子の形に変わり、大地に降り立った。
全体的な雰囲気は、さっきまでのキュアメモリアと同じ。でも、明らかに背丈というか、『造形』が違う!
わかりやすく言うなら、『キュアドール』が、『S.H.Figuarts』に変わったぐらいの劇的進化!
すらっと長い手足、5頭身のかわいくもカッコいい全体像。丸っこかった顔はしゅっと引き締まって、凛々しい表情が敵を見据える。
笑顔でポーズを決めるキュアメモリア。
私―――東堂りんくはこの時―――はじめて、『プリキュアに出会った』。
プリキュアは、テレビの中の―――
―――ホンモノのプリキュアは、私のスマホの中にいた―――
私の手のひらの中で―――この街を守るための戦いが、始まった―――
TO BE NEXT STAGE……!
『ひだまりポカポカ!』
―――りんくの『今回のプリキュア』!
メモリア「ねぇりんく、このコーナーはなに?」
りんく「次回からは、お話に登場したレジェンドプリキュアたちを紹介する新コーナーをはじめるよ!題して、『今回のプリキュア』!」
メモリア「なんか、マンマだね」
りんく「それ、言わないでよ……とにかく、これをチェックすれば、画面の前のアナタもプリキュア博士!あ、でも『後篇』だけにしかないコーナーだから、注意してね~」
メモリア「ホントーは今回から始めるつもりだったんだけど、尺不足で次回に持ち越したの。コレ、ナイショだよ?」
りんく「メ、メモリア!あんまり内情を暴露しちゃうのは……そ、それじゃ次回をお楽しみに~!」
メモリア「ばいば~い♪」
――――――――
次回予告
メモリア「ありがとうりんく!あたし、全力でがんばる!!」
りんく「で、私はどーすればいいの?」
メモリア「戦うのはあたしだから、応援してて!」
りんく「見てるだけってのも退屈~……」
メモリア「あれ!?何これ!?攻撃が効かないよ!?」
りんく「四つ葉のクローバーの形のバリア……まさか!?」
インストール@プリキュア!『エンゲージ!記憶の戦士@キュアメモリア!』
りんく「ピカっとキュアっとあつめてプリキュアオールスター!」
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といった感じで、Aパート⇒Bパート⇒ミニコーナー⇒次回予告と、基本的にフォーマットはアニメを踏襲していきます。
ミニコーナーでも触れました通り、本来はこのバグッチャーを倒して1話を終える予定だったんですが、予想外に尺が伸び、急遽次回、1話を書き足すことに……
構成力不足だけはなんとかせねばならぬと悩む今日この頃です……
それでは、また次回で!!