インストール@プリキュア!   作:稚拙

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 プリキュア次回作のタイトルと概要、発表されましたね。
 『癒し』に『ヒーリングアニマル』……もしかしてプリアラ以来のケモミミプリキュアなんでしょーか……?
 正式なキャスト発表が待ち遠しい稚拙です。

 さて、今回はついに、ほくとくんがあのCRへと足を踏み入れます……そして、『彼ら』も……!

 あと今回の投稿はなんと、東海道新幹線の車内から、初のスマホ投稿です!
 時速285キロの超高速の旅路から、今、送信!!


第15話 輝くHEROはキミのそばに! GAME START@エグゼイドスタイル!
We're "DOCTOR RIDERS"!


  ―――――大丈夫?

 

 柔和な表情(カオ)の青年が、まだ幼かった私の手を取った。

 

 ―――――()()()……時間を遡ってこの時代にまで……キミを助けられて良かった……

 

 ()()()()()()()()()()()()()私に、彼は不思議なモノを渡した。

 

 ―――――キミに、これを持っておいてほしいんだ。いつか必ず、おれは必ずキミの元に戻ってくるから。それを受け取るためにね。

 

 真っ黒な、オモチャめいたモノ。よく見ると、懐中時計にも見えた。

 もっとも、まだそんな知識も知恵も持ち合わせていなかった私には、ソレが『何』なのかすら、わからなかったのだけれど―――――

 

 ―――――じゃあね。…………いつかキミは、おれ達と一緒に戦わなければならない時が来るから―――――

 

 それから、永い永い時が過ぎたけど―――――

 まだ、彼は戻ってこない。

 やがて、"私が造りだしてしまったモノ"のために、争いが起きて、数多くの"世界"をそれに巻き込んでしまった。その中で、たくさんの"仮面の戦士"たちや、"色彩の戦隊"たちと出逢い、ともに戦ったけれど……その中に、彼の青年の姿はなかった。

 

 今……彼はどこにいるのかしら―――――

 

 

 ねぇ、『この小説』を読んでいる、そこのアナタ?

 

 

 ……そう。アナタ。パソコンのディスプレイや、スマホやタブレットの画面を通して、私を『文字』として認識している、アナタのコトよ?

 

 アナタなら、知っているんじゃないかしら?

 

 『彼』が今、どこにいるかを―――――

 

 優しい笑顔の中に、不思議な強さを秘めた―――――

 

 

 『時の王』と呼ばれた、彼の行方を―――――

 

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 担架(ストレッチャー)に乗せられ、運び込まれた東堂さんを乗せた救急車が、サイレンを鳴らして走り出した。後ろのドアが欠けたままの園長先生の車が、救急車の後についていく。

 僕は、園長先生の車の助手席から、前を走る救急車をじっと見つめていた。眩しく明滅する赤色警告灯(パトランプ)と、耳を鋭くつくサイレン音が、僕の心に否応なく不安を落とす。でも―――――

 

 《心配すんなって。()()永夢センセーがついてんだ。な?》

 

 データがポケットの中からそう言うと、不思議と心の中に安心が生まれる。

 救急車に乗り込んだ白衣の背中。その姿が、僕の目にはっきりと焼き付いている。

 

 ―――――ぼくは―――――宝生永夢。CRのドクターだよ。

 

 "テレビの中のフィクション"―――――僕にとっての彼は、まさにそれだった。

 でも、彼は僕の前に現れ、僕の目の前で『仮面ライダーエグゼイド』へと変身し、東堂さんを侵した病魔―――――"バグスター"と戦いを繰り広げたんだ。

 僕の憧れであり、目標でもある―――――仮面ライダーのひとり。その姿はあまりにも鮮烈で―――――

 

 「……うん」

 

 "あの人なら、きっと"―――――

 彼の翻る白衣からは、そう僕に思わせるに十分な説得力を感じさせていた。

 

 《……にしてもよ、園長先生》

 

 ポケットからニュッと上半分だけを覗かせたコミューンから、データが見上げる。

 

 《どーして園長先生が、()()()()()にしかいねぇ永夢センセーと顔見知りなんだよ?》

 

 いきなり核心をつくのかよ―――――

 肝が冷えた。

 しかし園長先生は、表情を変えぬまま答える。

 

 「永夢くんはね、大泉こども園のOBなの。彼がお医者さんになりたいって言ったとき、そのお勉強も教えてあげたことがあるのよ?……もちろん、彼がゲーム病を治療する仮面ライダーになってたことも知ってたわ。言ったでしょ?『ほくとくんもよく知ってる人』って」

 

 確かに―――――よく知っている。

 『仮面ライダーエグゼイド』という、特撮ヒーロードラマの主人公として。

 でも―――――

 

 「……それは……テレビの話で……」

 「う~ん……そうねぇ……。確かに、『テレビの中の人』かもね。『例の衛生省の記者会見』から、有名になったし……」

 「衛生省の記者会見って……!?」

 《おいセンセー、そりゃドラマん中の―――――》

 「……!データ!ここは……!」

 

 園長先生の言葉で、更に『空想と現実』の区別がつかなくなって混乱する僕の目に、さらに追い打ちをかける白い建物が姿を見せた。その建物へと救急車が入っていき、園長先生の車もそれを追っていく。駐車場の入り口近くの石碑に書かれた端正な文字に、僕は釘付けにされた。

 

 〈聖都大学附属病院〉

 

 《マジかよ……》

 

 データも、呆気にとられた表情を浮かべていた。

 〈救急車搬送口〉と、赤地に白抜き文字で書かれた案内表示がある場所に救急車が止まると、サイレンが鳴り止んで後部ドアが口を開け、ほとんど同時に救急隊員の人達が手際良く担架を運び出した。

 永夢先生はその作業を手伝いながら、取り出したスマホでどこかしらに連絡を取ると、救急隊員の人達から引き継いで、病院の看護士さんらしき何人かの人と、東堂さんを乗せた担架を院内へと運んでいった。

 僕は息を呑みながら、園長先生の車の助手席からこの一部始終を見つめることしかできなかった。

 

 「私達も行くわよ」

 

 園長先生に促され、僕達は"ドラマの中の病院"に足を踏み入れた。

 永夢先生に東堂さんの名前や連絡先を伝えていたのが幸いしてか、受付で東堂さんの関係者だと園長先生が伝えると、すぐさま受付の事務員さんが院内放送で誰かしらを呼んだ。

 2分もしない内、ピンク色の看護士(ナース)服を着た女の人が、僕達の元へとやってきた。

 

 「電脳救命センターの看護士、仮野明日那(かりのあすな)です」

 「あッ……!」

 

 またも僕は驚きの声を上げかけたが、ここは病院だ。すぐさま驚きを飲み込んだ。

 この看護士さんもまた、『仮面ライダーエグゼイド』の主要登場人物……それも、メインヒロインだ。

 

 ―――――本当にここは、僕の住んでいる大泉町と地続きなんだろうか……それとも僕は、『仮面ライダーエグゼイドの世界』に迷い込んでしまったのだろうか……?そんなバカな、ディケイドじゃあるまいし……

 僕は疲れているのか……

 

 「どうしたの、ほくとくん?」

 

 園長先生に促され、僕達は明日那さんの案内で院内を進む。通路の突き当たりのエレベーターに入ると、エレベーターは下へと降りていく。エレベーターが止まり、チン!という小気味の良い音から一拍置き、自動ドアが左右に開くと、見覚えのある字体(フォント)の文字が見えた。

 

 「本物の……CR……!」

 

 電脳救命センター―――――通称『CR*1』。

 ドクターライダーたちの人間ドラマが幾度となく繰り広げられた、ゲーム病医療の最先端―――――

 しかし、六角形のロゴが印された入口は閉じられ、中の様子はわからなくなっていた。

 

 「こちらでお待ちになってください」

 

 明日那さんにそう言われ、側にあった灰色の長ソファ―――――こんなソファ、ドラマにあったっけと思ったけど、その時の僕は拘泥できる心持になかった―――――に僕達が腰を下ろすと、彼女はCRの扉の奥へと入っていこうとする。

 

 「あ、あの……!」

 

 思わず立ち上がり―――――僕は呼び止めてしまった。 

 でも、何をどう言っていいのかわからない。

 『ここはいったいどこですか?』とか、『あなたはドラマの中の人ですよね』とか……言える訳がない。

 そんな戸惑いが不安のそれに見えたのだろうか、それまで険しい表情だった明日那さんはふっと表情を和ませて、

 

 「大丈夫よ♪ここには最高のゲーム病専門ドクターが何人もいるんだから♪アナタのお友達も必ず元気になるわ♪」

 「……!は……はい……!東堂さんを……頼みます……!」

 

 またも思わず―――――今度は頭を下げていた。

 それを見た明日那さんは笑顔で頷いて、CRの奥へと消えた。

 僕は―――――どっと力が抜け、ぐったりと長ソファに腰を下ろし、天を仰いだ。無表情の天井が、僕を見下ろしていた。

 

 《何キンチョーしてんだよ》

 「……そういうワケじゃ……ないさ……」

 

 ポケットの中からの茶化しに、僕は力なくそれだけ答えた。

 

 《つーかよぉ……お前、いつもの感じと違くねーか?普段のお前なら、大コーフンでサインくれだの握手してくれだのここで変身してくれだのまくしたてるんじゃねーのか?》

 「……かもね」

 《じゃぁなんでテンションダダ下げてんだ?》

 「……………………」

 

 ―――――どうしてなんだろうな……

 その時の僕は、データの問いに答えることができなかった。

 明確にその『答』を理解するのに、その時の僕の思考回路にはあまりにも負荷がかかりすぎていた。

 後になって振り返ってみれば、他愛のない、それでいて大人気のない、至極単純な理由だったんだけど―――――

 20分ほど経っただろうか。再びCRの扉が開き、明日那さんが姿を見せた。

 

 「お待たせしました。担当医から病状をご説明させていただきますので、こちらへどうぞ」

 

 ついに僕は……CRに足を踏み入れた。

 真っ白な壁に、赤いラインに『AID』と書かれた広い空間。そこに設置された、解析ディスプレイ付きのベッド。部屋の隅に目をやると、上の事務所へと通じる螺旋階段、天井近くの覗き窓―――――

 何もかもが、ドラマと同じだ。

 その、ドラマの中にしか見たことのなかったベッドに、左腕に点滴を打たれた東堂さんが仰向けに横たわっていた。

 

 「東堂さん!」

 

 思わず駆け寄ってその顔を覗き込むと、すやすやと寝息を立てていた。

 

 「……ゲーム病は接触感染することはないが、あまり患者を刺激するな。鎮静剤の投与で眠っているから、尚更な」

 「す、すみま―――――」

 

 その声に振り向いた僕は、またも心臓が強く打つのを感じた。

 

 「せ……ん……」

 

 白衣を羽織った端正な顔立ちの若い男性は、僕ではなく園長先生に向き直った。

 

 「今回、処置を担当させて頂きました、鏡飛彩(かがみひいろ)です」

 

 『仮面ライダーブレイブ』としてバグスターと戦いながら、天才外科医としても名を馳せる彼まで、僕の目の前に―――――

 

 「どうぞ、お掛け下さい」

 

 言われるまま、ベッドのそばに置かれた丸イスに、園長先生と僕は腰を下ろした。

 

 「まず、容態についてですが―――――」

 

 それからは、東堂さんがゲーム病にかかっていること、その治療には普通の病気とは根本的に異なる専門的な技術と知識が必要なこと、そして自分たちはそのゲーム病治療に関するスペシャリストの集団である―――――と、飛彩先生は語った。

 

 「……ですので、お孫さんのゲーム病は必ず完治します。何も心配する事はありません。我々にすべてお任せ下さい」

 

 あくまで感情を込めずに事務的に語るところは、ドラマの飛彩先生と同じだ。『患者とその関係者に必要以上に関わらない』という彼のスタンスが、ありありと感じられる。

 しかしここで、園長先生はクスクスと笑った。僕は思わずぎょっとした。怪訝そうな表情を、飛彩先生は園長先生に向けた。

 

 「……なにか、ご不明な点でも?」

 「いえいえ、違うのよ……♪確かにりんくちゃんとはそのくらい歳が離れてるけど、私はりんくちゃんのおばあちゃんじゃないわよ♪」

 「……!?」

 「……そ、そうだったんですか!?う、ぉうわぁっ!?」

 

 CRの後ろの部屋から、それまでパソコンに向き合っていた白衣の人があわてて振り返ったと思うと、ハデに転んで、飛彩先生と僕達の間に『べちゃっ!』と倒れ込んだ。

 

 「…………おい……研修医……」

 

 ため息をついて、飛彩先生は永夢先生を睨み下ろした。

 

 「す、すみません飛彩さん……お年頃から園長先生のお孫さんかな~……なんて思ったんですけど……」

 

 頭をポリポリとかきながら、白い歯を見せて笑う永夢先生。さっきの転ぶ様といい、ドラマで見た光景が目の前で繰り広げられている……

 

 「お前の知り合いなのか?」

 「はい!お世話になったこども園の園長先生で、医大を目指していた頃には勉強も教わってたんです」

 「こう見えても私、元小児科医なのよ♪」

 「……そうでしたか。……ただ、ゲーム病治療に関しては我々に一任していただきます。既存の医学は全く通用しませんので」

 「もちろん、そのつもりよ♪りんくちゃんのご家族には私から連絡しておくわ。……りんくちゃんのこと、よろしくお願いします」

 

 園長先生は立ち上がり、丁寧に頭を下げると、「行きましょう」と僕を促した。

 僕も園長先生に倣って頭を下げてから、園長先生について行く。

 その時、背後から飛彩先生と永夢先生の小声でのやり取りが耳に入った。

 

 「新種のバグスターらしいな」

 「ええ……今までの幻夢コーポレーションのゲームにも、それらしきキャラクターはいませんでした」

 「今までに無い症例……感染源も不明、か…………」

 「"カルテ*2"は貴利矢(きりや)さんに渡してありますけど、解析には時間がかかるかも知れないそうです……感染源になったゲームさえわかれば、あるいは……」

 

 途端―――――足が止まった。

 僕は―――――このまま帰ってしまっていいのだろうか? 

 何もせずに、何も聞かなかったことにして帰るのか?

 

 ―――――否―――――

 

 僕は―――――

 少しでも、永夢先生の力になりたい。

 

 ―――――否、否!

 これは建前だ。本心から、芯の本音をぶち撒くなら―――――ッ。

 

 東堂さんを、元気にしたい……!

 あの笑顔を、僕の手で取り戻したい…………!!

 

 「あの……!」

 

 永夢先生と飛彩先生の視線が突き刺さる。

 一瞬、飛彩先生の鋭い視線にたじろぎそうになったけど、ここで怯んじゃダメだ……!

 僕はしっかりと、ふたりを見据えた。

 

 「東堂さんのゲーム病の感染源に……心当たりがあります」

 

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 ――――――――――

 

 ……よく言った。

 ホンモノのヒーローを前によくぞ踏ん張った……。

 ここでほくとが何も言わずに帰ってたら、誠心誠意丹誠込めた、熱烈な罵倒(オ・モ・テ・ナ・シ)を浴びせてたところだ。

 "逃げない"ってのはまぁ、強さだな。どういった形であれ、な―――――

 で、詳しく話を聞きたいと、ほくとは事務所に招かれた。

 園長先生はというと、りんくちゃんのご両親に連絡しなきゃと、ひとりでCRから出ていっちまった。肝心なこと、聞きそびれちまった。

 つまりは―――――ほくとは事実上ひとりで、ライダーだらけ(今の所3人)の事務所へと残されちまったワケだ。

 ……螺旋階段を上がった先のCRの事務所もまた、ドラマと全く同じだ。

 天井から下げられたモニターや、永夢センセーや飛彩センセーがデスクワークをしてるだろう机、顕微鏡……

 そして、ピンク色で塗られた一角。その奥には、ゲーム機の筐体。ココ……ホントは練馬の撮影所じゃねーだろーな……?

 ファンとしては飛び上がりてぇほど嬉しいんだが、今のアタシはしがねぇスマホだ。今出てったら、永夢センセーたちを混乱させちまう。ガマンだ。アタシの記憶に、コピペして保存しとこうか。……こういう時、アタシが『辞書』のアプリアンだったことに感謝したくなる。

 さて、永夢センセーに促されたほくとは、ドラマん中でセンセーたちが語り合っていた円形の大きなテーブルを前に座った。

 ほくとは雰囲気に呑まれそうなのを必死に堪えてる、それがよくわかる。おっかなびっくりながらも、ほくとはりんくとメモリアがやっていたゲームのことを話した。

 

 《《"ベストフレンドプリキュア"……?》》

 

 口をそろえてそう言い、首をかしげるセンセーたち。

 

 《そのゲームはどこで……?》

 《昨日がゲームの発売日で、ゲームショップで予約していた……と聞いてます》

 《ぼく達の知らないゲームが……それもウイルスが混入されたゲームが"また"市販されてるなんて、そんな……》

 《ある意味『仮面ライダークロニクル』よりも厄介だな……宣伝が大々的でない分、こちらが後手にならざるを得ない……》

 《そんなゲーム……いったいどこの誰が……》

 

 ここでアタシの頭ン中に、ふとギモンが浮かんだ。

 

 「おかしいぜ……『ベストフレンドプリキュア』だけどよ、しきりに財団BがCM流してたぜ。ゲーム好きの永夢センセーならまずチェックしてるハズじゃねぇか……?」

 

 おっと、思わず声に出しちまった。永夢センセーに聞かれちゃヤバい。アタシはここにはいない、いいね?

 幸い永夢センセー達にアタシの声は聞こえてなかったようだ。飛彩センセーが顎に手を当て考えている。

 

 《幻夢コーポレーション以外の何者かが、バグスターウイルスを使って何かを企んでいるのかもな……》

 

 ―――――私の知らないゲーム、だと……!?

 

 《《!!!!!》》

 

 ふたりのセンセーと明日那サンの顔が真っ青になった。

 この声は……はは~ん、なるほどなぁ♪

 

 ―――――私の……この(クァミ)の許可なく…………!!

 

 《勝手にゲームをォ……、作るなァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッッッ!!!!!》

 

 ピンクの部屋の中から飛び出してきたオレンジ色の粒子が集まって、ニンゲンのカタチになった。

 

 《あッ……あなたは…………!!!!!!!!!!》

 

 見ろよこの『!』の数wwwほくとの受けた衝撃のハンパ無さが文章にも出てるぜ。この辺小説って便利だよなぁ。

 ……って、要らんことに地の文割いてる場合じゃねーか。ある意味、『仮面ライダーエグゼイド』を象徴する大物の御登場だ。

 

 ―――――檀黎斗(だんくろと)

 

 バグスターウイルスを発見した上、悪用して他人様(ヒトサマ)に大迷惑をかけまくった、幻夢コーポレーション*3の元社長サマだ。

 つまりはすべての元凶、ともすればラスボスなワケだが、いろいろあってCR預かりの身となっている。

 ―――――どうしてそんなヤツが味方の基地みたいな所に、しかもニンゲン離れした登場の仕方してるのか、って?

 ……正直、一言二言で説明できる自信がアタシには無ぇ。それに説明したらしたで、トンでもなく長くなっちまう。

 『仮面ライダーエグゼイド』の連中について詳しく知りたいヤツは、本編をDVDかブルーレイで見てもらった方がわかりやすいだろう。

 そんなのまどろっこしい、ってヤツは、ググるかWikipedia読んでくれ。もっとも、読んだところでわかるかどうか保証はできねぇ……

 ……一人一人の説明が超長ェんだよ、天下のWikipedia様でも。いっそ、一人一人を独立記事にした方がいいくらいに、『仮面ライダーエグゼイド』のキャラってのは複雑怪奇だ。

 その中でも、この檀黎斗ってヤツは一際ヤバい。ニンゲン辞めてる自称神で、超ヤベーイヤツ。エグゼイドの顔芸担当。あ、一言二言で説明出来ちまった。

 そんなヤツだから、ヘタに刺激したら何されるか分かったもんじゃねぇ。挙句の果てにどう呼んでいいかも時期によって変わる*4からな……

 ほくとよ、選択肢ミスるんじゃねーぞー。

 

 《………………だ……》

 

 

 ―――――檀黎斗()さんっっ!!!

 

 

 …………この沈黙がイタい。

 唖然とする永夢センセー、頭を抱える飛彩センセー、何故か驚いたような顔をしている明日那サンの視線がさらにイタい。

 

 《…………ほぅ》

 

 なんと―――――(クァミ)は途端にニカッとしやがった。

 

 《初対面の第一声から、私を(クァミ)と崇め讃えるとは……少年、名は?》

 《は……八手ほくと、です……》

 《ほくと、か……うむ、大いに見込みのある少年のようだ♪私も未知のバグスターには興味がある。ほくとよ、この私の神僕(しんぼく)として、そのゲームとバグスターについて大いに語るがいい》

 

 ……エラく尊大で回りくでぇ言い回しだが、つまり『協力してやるから詳しく話してみろ』ってトコか。

 ふぅ、なんとか神サンのご機嫌取りには成功したらしい。一応味方にしといて損は無ぇだろう。何しろ、エグゼイドが『最強フォーム』になるためのアイテムを作ったのは誰あろうこの神サンだ。起死回生のイイモノを閃いてくれるかもしれんしな。

 ……しかし、ほくとの話を聞く内に、神サンはだんだんと難しい表情になり、しまいにゃ―――――

 

 《―――――――――――――――》(ち~ん。)

 

 腕組みして薄ら笑いを浮かべたまま、白目剥いて真っ白になっちまった―――――

 つまり、神サンもわからん、ってコトじゃねーか。期待してソンしたぜ……

 

 《く、黎斗~~!?》

 《……珍しいモノを見られたな》

 

 あわてる明日那サンの横で、何故か感心するように、飛彩センセーが神サンの顔をのぞき込む。

 

 《……はッ!?……むぅ……(クァミ)ともあろうこの私が、一時(いっとき)ながら意識を喪失するとは……そもそも、"プリキュア"とは一体何だ!?何かの専門用語か!?》

 

 ……全知全能の神サンでも、知らんことはあるらしい。

 

 《女の子に人気のアニメですよ。異世界の妖精に選ばれた女の子が、伝説の戦士"プリキュア"として、世界の平和を守るために戦う……っていう》

 《……え!?永夢先生、プリキュアを知ってるんですか!?》

 

 アタシも驚いた。

 永夢センセーがサラッと『プリキュア』の名を口にしたんだから。

 ココがドラマん中なら、『その中』で完結してる世界観で、『別の作品』である『プリキュア』を知ってるワケがねぇ。

 ……イカン、アタシもこんがらがってきた……

 ほくとの驚き顔に、どこか照れるように永夢センセーは笑う。

 

 《まぁ……少し、ね》

 《『カワイイ』と『カッコイイ』のバランスが絶妙なの♪女の子なら一度はプリキュアに憧れるって聞くし!》

 《……そういうモノなのか?》

 

 明日那サンもプリキュアを知ってるようだな。……ん?明日那さんって『フツーの女のヒト』だっけか?

 反対に飛彩センセーは理解できんようだが。

 

 《決めポーズがカッコいいのよね~♪『闇の力のしもべたちよ!』》

 

 明日那サンはノリノリで"お師さん"のマネをする。アタシもガキん頃よくやったっけ。さすがに"御本人様"の前でやる度胸は無かったが。

 

 《そうそうソレです!『とっととおうちに』―――――》

 

 永夢センセーも明日那サンに倣ってキュアブラックのポーズをキメる。知ってるのが『少し』のワリに詳しいじゃねーか……

 と、その時、ちょうど永夢センセーのそばの職員通用口が両開きに開いた。

 

 《帰りな…………―――――さ…………》(凍)

 

 ビシッと指差したその先―――――通用口から、白衣を羽織った、白と黒にくっきりと分かれた頭髪の、目つきの悪いニンゲンの男が現れた。

 その男はドン引きした表情を浮かべて、永夢センセーを睨んでいた。

 

 《エグゼイド……お前そういうシュミがあったのか……》

 

 ……永夢センセーの顔が、引きつったままポーズ*5した。

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 「ご、誤解です!誤解なんですよ大我さん!ぼくはただ……」

 「ニコ*6にいい土産話ができたぜ。『エグゼイドはゲームだけじゃない、アニメも大好きな全方位ヲタクだ』ってな」

 「そーじゃないんですって~……」

 

 花家大我(はなやたいが)先生が、こんなにも砕けた態度で永夢先生に接しているなんて―――――

 彼は『仮面ライダースナイプ』として、最初はCRのドクターライダーたちのガシャットを狙い、永夢先生たちとは対立していた。

 それから、戦いの舞台が『仮面ライダークロニクル*7』に移るにつれ、CRのドクターたちと共闘するようになったけれど―――――

 

 「小さな女の子の患者さんとの話題作りのために、『プリキュア』も片手間に見てただけなんです!ホントなんですってば~……」

 「……そーゆーコトにしといてやるか。まぁ、エグゼイドの"凝り性"は今に始まった事じゃないけどよ」

 「話が横道に逸れたままだ。研修医をイジるのはその辺にしておいた方がいい、無免許医…………いや―――――」

 

 大我先生にじろりと睨まれた飛彩先生はフッと笑って、

 

 「今は『開業医』だったな」

 

 ……と訂正すると、大我先生はほんの僅かに、どこか嬉しそうな表情を浮かべるのだった。

 大我先生は、元々医師免許を剥奪されていた『無免許医』だったけれど、『仮面ライダークロニクル』の事件解決に貢献した功績から、特別措置として、ゲーム病専門医としての活動が認可された―――――と、テレビの最終回のエピローグで語られていた。実際、最終回ではクリニック開業に向けて準備している様子も描かれていた。

 大我先生が開業医になっている……ということは、ここにいる永夢先生たちは、早くとも『テレビシリーズが終わった後の永夢先生』たち……なのだろう。

 

 「……まだ準備中だがな。手続きやら仕入れやらで、ロクに寝るヒマもありゃしねぇ」

 「今日はどうしてココに?」

 「開業準備の打ち合わせで近くに来てたら、レーザーがメール寄越して来やがったんだよ。『新種のバグスターが出た』ってな。CR(ココ)なら何か情報があると思って来てみたが……」

 

 そう言って大我先生は永夢先生たちの表情を見渡してから、

 

 「その様子だと……まだ何もわかっちゃねぇらしいな」

 「今しがた患者への応急処置が終わったばかりだからな。……大口を叩いた元社長も、ロクに役立っていない」

 「……お前はどうやら神罰がお望みと見た……それと何度言えば理解できる!?私の事は檀・黎・斗・神!!と―――――」

 「まぁまぁまぁ……」

 

 永夢先生が睨み合う飛彩先生と黎斗神さんをなだめる。

 納得いかない、と言った憮然とした表情で、黎斗神さんはどっかと椅子に腰を下ろす。

 

 「……まずはゲームの現物が無いと何も始まらん。せめてPVでも見ることができれば何かしらヒントになるだろうが……」

 「ゲーム病に感染しているということは、どこかにガシャットもあるはずだ……お前、知らないのか?」

 

 大我先生にそう問われたけど、僕はただ、「いえ……」としか答えられなかった。

 プリキュアのゲームのガシャットなんて、存在しているわけもない。僕が見た東堂さんの持っていたゲーム機は、よくあるディスク式だったし……―――――

 

 ―――――おいおい……『ゲーム病治療の若きプロフェッショナル集団』ってマスコミ様におだてられてるセンセー方と自称神サマが、ガン首揃えて何シケたツラしてんだか……―――――

 

 どこからともなく声が響くと、僕の背後に急に気配がした。思わず振り向くと―――――

 

 「よっ♪」

 「……あ……あなたは……!!」

 「貴利矢さん!」

 

 九条貴利矢(くじょうきりや)先生―――――『仮面ライダーレーザー』。

 元々は監察医で、CRのドクターたちとは付かず離れず、独自の立場からバグスターと戦っていた人だ。

 一度は仮面ライダーゲンムの手に掛かって命を落としたと思われていたけれど、バグスターになって復活して、テレビシリーズ最終盤で正式にCR所属になった―――――はず。ここにいる貴利矢先生が、僕がテレビで見た貴利矢先生なら。

 

 「おいレーザー……てめぇおれを頭数合わせに呼びつけやがったな!?」

 「まぁまぁ、新種のバグスターが相手なんだし、安全運転に越したこと無し……それに、興味もあんだろ?でなけりゃこんな忙しい時にノッて来やしない……違うか?」

 「……チッ、相も変わらず口八丁手八丁回る奴だ……」

 「簡単には死ねないんでね♪前より"回転数"アゲてんのさ」

 

 呆れたように舌を打つ大我先生を見事に言いくるめた貴利矢先生は、両手に一つずつ、大きな紙袋を持っていた。

 

 「貴利矢さん、ソレは?」

 「?……あぁ、そうそう!コイツだ!コイツを永夢に渡したかったんだよ。とっておきの土産だぜ」

 

 思い出したように、貴利矢先生は二つの紙袋をテーブルの上に置くと、その内一つの中身を取り出した。

 

 「……!これは……!」

 

 永夢先生は瞠目していた。彼だけじゃなく、他のドクターたちまでも。

 ただひとり―――――黎斗神さんだけは、ソレを見て興奮気味に身震いするのが見えた。

 CRを驚愕の渦に巻き込んだ『ソレ』はまさしく、僕が東堂さんの部屋で見た『モノ』―――――

 ゲーム機本体と、『ベストフレンドプリキュア』のゲームソフトだった。

 

 「お……おおおお……ほくと、コレか!?コレが君の言っていたゲームの現物か!?」

 

 物凄いギョロっとした目で僕を見る黎斗神さんに、たじろぎながら僕は頷く。

 

 「は、はい……」

 「何なんだこの黒く平べったい箱物は……!?外見に遊び心の欠片もない……それにガシャットのスロットも無いぞ!?一体ドコにガシャットをセットするのだ!?」

 「こんなゲームハード、見たことがない……ディスク型のゲームソフトなんてモノも初めて見る……」

 

 黎斗神さんと永夢先生の驚く様は、僕にはひどく異常に見えた。

 何故ならこのゲーム機は、全世界で1000万台以上も販売されている、最もメジャーなゲーム機だからだ。一流のゲームクリエイターである黎斗神さんと、天才ゲーマー"M"の異名を持ち、ゲームを愛してやまない永夢先生が、これを知らないはずがないのに―――――

 

 「レーザー……コレをどこで手に入れた?」

 「永夢から"カルテ"を受け取ってすぐに、患者の嬢ちゃんの家に行ってみたのさ。で、嬢ちゃんの部屋からコイツを見つけ―――――」

 「ちょっと貴利矢!!!」

 

 いきなり明日那さんが眉をつり上がらせ、貴利矢先生を睨み上げた。

 

 「アナタ、年頃の女の子のお部屋に勝手に入ったの!?」

 「ん゛な!?」

 「監察医……もしソレが本当なら品位を疑うぞ」

 「まったく……エグゼイドといいてめぇといい……」

 「揃いも揃って変人だなぁ~!!!ブゥ゛ェ゛ハハハハハハハ!!!!!」

 「うるッせーよテメーにだけは言われたくねぇ!こん中でダントツの()()が!!」

 「なんだと訂正しろ九条貴利矢ァッッ!!黎斗神だァァァァァァァ!!!」

 「変なのは否定しないんだな」

 「あ、あのぉ……みなさん……」

 

 端から見ていると、やはりというか何というか、トンでもない集団なんだなと改めて思う。個性だけなら平成どころかすべてのライダーシリーズの中でもトップクラスだ……

 こんな人達の中で頑張ってきた永夢先生って……

 

 「やっぱり……凄いな……」

 「……?ほくと君?」

 「あ、い、いえ……」

 

 こ、これは決して永夢先生以外の人達が奇人変人だって言ってるんじゃないんだ、ただ、その……

 緊張をごまかすように、僕は貴利矢先生に話題を振った。

 

 「そ、それで貴利矢先生、このゲームのことですけど……」

 「ちゃぁんと親御さんのOKはもらってる。園長先生からも連絡行ってたし、親御さんもじきここに来るだろうよ。……さて」

 

 ここからが本題とばかりに、貴利矢先生は永夢先生を見た。

 

 「このゲーム……お前だったらどうするよ?」

 「勿論!!この場で即・刻・分・解して内部構造の解析を―――――」

 「アンタにゃ聞いてねえ……「九条貴利矢ァァァァァ!!!!!」永夢、お前ならこのゲームを『活かせる』と踏んだが……どうよ?」

 

 どこかイタズラ小僧じみた貴利矢先生の表情に、永夢先生は笑い返しながら、

 

 「もちろん…………ノりますよ!」

 

 と、立ち上がった。

 

 「永夢センセーならノって来ると思ったぜ♪」

 「ゲーム機が……何かに使えるんですか……?」

 

 まさかと思って、僕は永夢先生を見た。このゲームから新たなガシャットが作れたり……なんて展開があるのだろうか……!?

 しかし永夢先生は、最も『彼らしい』、ゲームの活用法を語ったのだった。

 

 「このゲームを……『攻略』する!」

 「攻略って……クリアするってこと……ですか!?」

 「うん。このゲームの中に、あのバグスターのルーツや、倒すヒントが必ずあるはず……そのためには一通り、エンディングまでプレイしてみるのが一番って思ったんだ」

 

 その言葉に、他のドクターたちはすべてを理解しているかのように―――――

 

 「永夢ならそうするって思ってた!」

 「研修医らしい判断だな」

 「ま、エグゼイドの取り柄と言えばゲームかリプログラミング、それぐらいだしな」

 「それでこそ……宝生永夢だ」

 「ホント、期待を裏切らねぇ奴だよ。ノせたら予想通りか、それ以上にノっちまう。たまに暴走するけどな♪」

 「一時期迷走してた貴利矢さんほどじゃないですけどね♪」

 「コイツ、デカい口叩くようになりやがって!」

 

 彼らの間には、確かな信頼がある。

 誤解とすれ違いを乗り越えながら、一年間を駆け抜けたドクターライダーたちの絆を、僕は彼らの笑顔から感じ取っていた。

 

 「ほくと君……もう一度、きみに約束する。このゲームを必ず攻略して、ぼくが……いや―――――」

 

 永夢先生はCRにいる全員を見回して、改めて言った。

 

 

 「りんくちゃんの運命は……"ぼく達"が変える」

 

 

 その笑顔に、目頭が熱くなるのを感じた―――――

 でも僕は、必死にこらえて―――――

 

 「は、はい……!東堂さんのこと……改めてよろしくお願いします!」

 

 椅子から立って、心から頭を下げた。

 

 ―――――彼らなら、きっと―――――

 

 そう思えるほどの、彼らが起こしてきた奇跡を、僕はすべて知って、目の当たりにしているのだから―――――

 

 「……ところで貴利矢、もうひとつの袋には何が入ってるの?」

 

 明日那さんが、テーブルに置かれた二つ目の紙袋に視線を移す。

 

 「あぁコレか?そのゲームほど重要じゃないかも知れないんだけどよ、どうにも気になってついでに持ってきたんだよ。……睨むなって、コレも親御さん了承済みだっての!」

 

 明日那さんの視線にたじろぎながらも、貴利矢先生が紙袋の中から取り出したモノが僕の視界に入ったその瞬間―――――

 心臓が口から飛び出しそうになった。

 

 「タブレット端末……のようだな」

 「オモチャじゃねぇのか、コレ?」

 

 飛彩先生と大我先生が口々に言うソレはまぎれもなくコb……じゃなく、キュアットタブだった……!!

 

 「まるでプリキュアに出てきそうなデザインね……ほくと君、これに見覚えは?」

 「い、いえ……」

 

 明日那さんの問いに、思わず首を横に振ってしまった……

 まさか貴利矢先生がキュアットタブに目を付けてしまうなんて……

 当然ながら、このタブの中にはピース以外のプリキュアたちが全員いるわけで……

 今は電源が切ってあるみたいだけど、下手に電源を入れられてしまうと―――――

 

 「研修医……この端末、患者が持っている携帯電話(スマートフォン)とデザインがよく似ていないか?」

 「言われてみれば……そうですね。そういえば、もう一つ気になったことがあって……りんくちゃんですけど、眠っている間もずっとスマホを握ったままなんです。検査の時に放してもらおうとしたんですけど、ぼくの力でも敵わなくて、結局スマホごと検査に……」

 「虚弱体質が……仮面ライダーが寝てる女子中学生の握力に負けんなよ」

 「すみません……でも、信じられないくらいに強く握りしめてて……飛彩さんでもダメだったんです。それから、スマホごと検査した結果なのかわからないんですけど、そのスマホからも、バグスターウイルスが検出されているんです。人間の患者さん同様に、『スマホがゲーム病に感染している』としか言いようのない状態で……」

 

 ……メモリアのことか。

 そう思うと同時に、ポケットの中が静かに振動するのを感じた。

 

 「元々バグスターはコンピューターウイルス……とはいえ、『電子機器がゲーム病を発症する』とは前例が無いな……」

 「バグスターに感染したスマホを握ったまま放さないって……こりゃ明らかに関係あるんじゃねぇの?」

 「そして、そのスマホとタブレットの見た目がそっくりなら、尚更怪しいな」

 

 マズい!!

 CRのドクターたちの視線が、一斉にキュアットタブに注がれている……!

 何故かはわからないけど、今永夢先生たちにプリキュアたちを見られちゃいけない気がする……!

 彼女たちを見た永夢先生たちがどんな反応をするか知れないけれど、余計にコトがこじれる可能性が高い。何より―――――

 

 「安心したまえ……この(クァミ)の手で、1バイトたりとも(のぉこぉ)らぁずぅぅ、隅から隅まで解析してやるぅぅ……何も心配は無ァい!!ヴェ゛ーーッハッハッハッハハハハァッ!!!!!!!!」

 

 ―――――倫理的にもこの小説の内容的にも、一番プリキュアと出会っちゃいけない、プリキュアに会わせちゃいけないヒト……否、(クァミ)がいるんだよなぁ~……ジェミニさんと同じコト言ってる……

 彼の毒牙にかかったが最後、プリキュアたちが何をされるか知れたものじゃない。でもキュアットタブに黎斗神さんの手がかかる、もはやこれまでか―――――

 その時だった。

 けたたましい警報音がCRに鳴り響いた。

 

 「バグスター発生の緊急通報……ここの近くよ!見境無しに暴れてるみたい!」

 

 これは……助かったと安堵していいのだろうか。

 とりあえずタブへの危険は遠ざかったけど、この近くにバグスターが出たわけだし……

 モニターに映し出された映像には、白と黒、ふたつのシルエット。コイツは……!

 

 「!りんくちゃんに感染している、新種のバグスター……!!」

 

 永夢先生も、驚きながらモニターを見つめていた。

 

 「……妙だな」

 

 黎斗神さんが呟くのが聞こえた。

 

 「バグスターは物理的に離れていても、感染者と電子的に接続され、その気になれば感染者のすぐ側に一瞬で移動が可能だ……だがこの個体は出現位置にズレが生じている……感染者の位置を正確に特定できない、特殊な状態に陥っているのか……?」

 「ぼくが出ます!」

 

 永夢先生は白衣の襟を直しながらCRを出ようとした。でも―――――

 

 「待て、研修医。俺が行く」

 

 永夢先生を制して、飛彩先生が立ち上がった。

 

 「飛彩さん……」

 「東堂りんくの担当医は俺だ。それにお前には、このバグスターの『攻略法』を探る役目があるだろう?お前はお前の仕事に集中しろ」

 「……現状、確実にこのバグスターを倒す方法はわかりません……それでも……?」

 「余計な気遣いはノーサンキューだ。……時間稼ぎにはなる。お前が攻略法を見つけ出す時間の、な。それに()()()に、何かの拍子で確実な切除術が見つかるかも知れん。やり方は幾らでもある……この一年、何度も言った筈だ―――――」

 

 飛彩先生は白衣を翻し、職員通用口に進みながら、永夢先生に背を向けたまま言った。

 

 「俺に切れないものはない」

 

 飛彩先生の背を見て、またひとり立ち上がるドクターがいた。

 

 「付き合うぜ」

 「開業医……」

 「二体いるんだ、頭数がいるだろ。それに新種のバグスターと直に()りあえるいい機会だ」

 「……一年前のお前に、今のお前の爪の垢を煎じて飲ませてみたいものだな」

 「抜かしやがれ」

 

 連れ立って、飛彩先生と大我先生はCRから出て行った。

 

 「さぁてお仕事お仕事!神サンよぉ、アンタにも永夢の攻略サポートと分析、手伝ってもらうぜ!」

 「私に指図するなァッ!!!……チッ、仕方が無い……タブレットは後回しだッ」

 

 苦々しげにキュアットタブを見やると、黎斗神さんはオレンジ色の粒子になって、ピンク色の一角の中へと消えていった。

 

 「ほくと君……」

 「……はい。病院の外には出ずに、ロビーで待ってます」

 

 CRは今から"戦闘態勢"に入る。そんな中で、何の力にもなれない僕がいても足手まといになるだけだ。キュアットタブをCRに置きっぱなしにするのがひどく心残りだけれど、僕は一旦、席を外すことにした。

 去り際、眠っている東堂さんが横目に入る。

 

 「……………………」

 

 ―――――本当に、僕は無力だ。

 仮面ライダーたちの横に並び立つ、そのラインにすら立てない僕は、所詮は半端者、未熟な見習いプリキュアなんだから―――――

 そう思った時、ふっと『腑に落ちた』。

 病院に着いてから、永夢先生や明日那さんたちを前にして、感動こそすれ興奮のひとつすら感じず、ただ鬱屈した『何か』が胸の内に溜まっていた、『厭な感覚』の正体―――――

 僕はCRの自動扉をくぐり、扉が閉じると同時に脱力して、廊下の壁にもたれかかった。

 

 「は……はは……」

 《……ほくと?》

 

 なんてコトはなかったんだ……

 僕はただ―――――

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()―――――

 

 

 東堂さんを助けようにも、助ける力が僕にはない。そんな時に現れた永夢先生に―――――

 僕が助けられない人を、助けられる力を持っているヒーローに―――――

 あろうコトに、僕は―――――

 

 「どうにもこうにも……ガキじゃんかよ……」

 

 なまじ戦える力を持ってしまって、それが敵わず、でもって自分よりも格上の存在が現れて、それに素直に敬意も抱けず―――――

 

 《トーゼンじゃね?ソレ》

 

 思わず僕は、ポケットからネットコミューンを取り出した。

 

 《お前も、アタシも、まだ14年しか生きて無ぇんだ。格上なんざこの世にごまんといらぁ》

 「データ……」

 《アタシも最初は『最強のプリキュアになる』ってイキってたけど……ほくとのじーさんとか、エグゼイドとか、他の特撮のヒーローとか……サーバー王国にいたままだと、まず知らなかった『強いヤツ』を知れて、ちっとは身の程知ったんだぜ?》

 「……諦めたの?」

 《冗談!『最強のプリキュア』、まだ諦めちゃないぜ!》

 

 データは白い歯を見せて、ニカッと笑った。

 

 《アタシはさ、アタシだけの『最強のプリキュア』を目指す!力で最強とか、心で最強とか、今更ありきたりはナンセンスだしな。アタシ自身が納得する『最強』ってヤツを、必ず見つけるつもりだぜ!》

 「データだけの……『最強』……」

 《だからさほくと、強いヤツに劣等感抱いて嫉妬するってんのも、悪いコトじゃ絶対ねぇ!要はこれからどうするか、だ。このまま何もせずにズブッてくか、それ以外の道を進むか……その感情を活かせるか殺しちまうかはお前次第だぜ?》

 

 そうだ。

 何をやってるんだ僕は―――――

 何バカなコトを考えてたんだ―――――

 ついこの間戦い始めた僕が、歴戦の勇士であるドクターライダーたちに、全てにおいて劣っているのは当然じゃないか。

 そもそも僕は一人前ですらない、プリキュア『見習い』だ。比較するなんておこがましいことだったんだ。

 

 「……ありがとう、データ。お陰で吹っ切れた―――――」

 

 僕が本当の意味で、永夢先生たちと同じ場所に立つために、今僕ができることといったら―――――

 

 「行くよ、データ!」

 《行くって、お前!?》

 「本物のライダーの戦いを、少しでもこの目で見る……そこから先は、後で考える!」

 《……それでこそ、アタシが認めた最高のニンゲン、だぜ!……でも、ひとつだけ釘刺しとく》

 「何?」

 《間違っても、ライダーとバグスターの戦いに割って入るなよ。ありゃ他のライダーがタダの怪人と戦うのとはワケが違う。飛彩センセーが言ってるだろ?『バグスター切除手術』ってな。アレはただガムシャラに戦ってるワケじゃねぇ、専門知識や技術が必要な『手術』なんだ。アタシたちが素人療法でどうにか出来るレベルじゃねぇ。……いいか、絶対に『見るだけ』にするんだぞ。手を出すなよ、いいな!?》

 「……わかった」

 

 データはこうまで念入りに釘を刺すけど、僕だってわかっているさ。

 彼らの戦いは、必ず僕の糧になる。

 そして今僕に出来ることは、ただ―――――

 彼らが、東堂さんの運命を変えてくれることを、祈るしかないんだ。

 

 SAVE POINT……

*1
衛生省によって、聖都大学附属病院の地下に極秘裡に建造された対バグスターウィルス・ゲーム病専門医療施設。当初は院長以下ごく限られた者にしかその存在を知らされていなかったが、バグスターウイルスの大規模感染拡大を防ぐためにその存在を公表され、現在ではゲーム病医療・バグスター研究の中心地としてその名を知られている。

*2
ここでの『カルテ』とはバグスターとの戦闘記録を指す。CRのライダーたちがバグスターを相手に戦ったデータは、ゲーマドライバーやバグヴァイザーⅡに自動的に記録され、逐一衛生省のデータベースにリアルタイムで転送・保存される。このカルテは、CRをはじめとしたゲーム病治療の関係者ならば誰でも閲覧可能となっており、バグスターの解析や研究はもちろん、ゲーム病患者の治療にも役立てられる。尚、これは本作オリジナル設定であり、原作『仮面ライダーエグゼイド』にこのような設定は存在しないことを留意されたし。

*3
『仮面ライダーエグゼイド』における有名ゲームメーカー。衛生省の依頼でゲーマドライバーやライダーガシャットを開発してバグスターへの対抗手段を提供したが、同時にバグスターウイルスの出所でもあった。さらには社長である黎斗がバグスターウイルスをばら撒いた主犯と発覚、その後に新社長に就任した天ヶ崎恋がこともあろうにバグスターだった(当然、社屋の一角はバグスターのアジトと化していた)、満を持して開発した新作ゲーム『仮面ライダークロニクル』がバグスターが人間を絶滅させるためのゲームだった、その後に新たに社長となった檀正宗自らが『仮面ライダークロニクル』の運営側に回ってしまう…………等々、その悪辣ぶりは枚挙に暇がない。果ては『従業員が出した退職届を社長が破り捨てる』という、人権侵害も甚だしい描写も劇中で見られているばかりか、武力攻撃を3度(冬劇場版・18話・22話)も受けており、経営状況もさることながら従業員の安全すら保障されていないという、平成ライダーシリーズに登場する『悪の企業』の中でもブッちぎりの『最悪のブラック企業』である。

*4
劇中では『檀黎斗→新檀黎斗→檀黎斗(シン)→クロトピー("ピー"は放送禁止音)→檀黎斗(ツー)』……と変遷した。ちなみにすべて自称。さらに『仮面ライダージオウ』客演時には『檀黎斗王』を自称していた。

*5
『仮面ライダーエグゼイド』の最終盤の敵『仮面ライダークロノス』の特殊能力。ゲームエリア内にいる自分以外の全ての人物の時を止め、一切の動きを停止させてしまう、文字通りの反則的能力である。

*6
フルネームは西馬(さいば)ニコ。『天才ゲーマー"N"』と呼ばれ、『天才ゲーマー"M"』(永夢)とeスポーツ界で並び称される女子高生プロゲーマー。かつて永夢(実はパラド)にゲームで手酷く負けたことを根に持ち、永夢に一泡吹かせるため、CRと敵対していた時期の大我に接触、永夢を倒すようあの手この手で大我をけしかけた。幾度かゲーム病にも罹患してしまうなど無茶をすることも多かったが、やがて成り行きから大我がCRと共闘するようになると、永夢の『真実』を知り、ドクターたちの戦いと医療にかける想いを間近で見たことで徐々に心境を変化させ、『仮面ライダークロニクル』発動後からは『ライドプレイヤー(本作における量産型ライダー)』を自らカスタマイズした『ライドプレイヤーニコ』に変身してドクターライダーたちとともに戦線に立ち、多くのバグスターを撃破する殊勲を挙げた。すべてが終わり、高校を卒業した後はゲーム大会の賞金を使って幻夢コーポレーションの大株主となって会社経営に携わりながら、大我の病院やCRにも度々顔を出している模様。何故ここで解説しているかというと、実は今回出番が無いから。ファンの方はゴメンナサイ。

*7
黎斗が開発していた『究極のゲーム』。劇中ではパラドが完成させ、幻夢コーポレーションから一般販売された。プレイヤー自身が量産型ライダー・ライドプレイヤーに変身し、バグスターを倒し、ヒーローになるために戦うリアル・サバイバルゲーム。しかしその実態は、バグスターに倒されてゲームオーバーになると、コンティニューもできずに消滅してしまう(しかもそれは実際にゲームオーバーになった直後に初めて説明される鬼畜仕様)というデスゲームであり、むしろバグスター側が『人類を攻略し、滅ぼすためのゲーム』だったのである。その無茶苦茶な仕様は筆舌に尽くしがたく、この注釈にはとても書ききれないため、読者の皆様で各自御検索頂きたい。ちなみにCEROは『A』(全年齢対象)である。




 ちなみに今回、約8割方はスマホで書きました。
 『Google keep』のおかげで、仕事の休憩中や外出先でもインプリが書けるようになったんです!
 神アプリですよ、これ……やるな、Google!!

 次回、ブレイブ&スナイプVSネガキュアバグスター……しかし、バグスターに異変が……!?
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