インストール@プリキュア!   作:稚拙

60 / 70
 ・詳細プロフィール:東堂りんく編

 年齢:13歳
 誕生日:20XX年2月1日(ふたりはプリキュア第1話放送日=プリキュアの日)
 星座:水瓶座
 身長:153cm
 体重:?kg
 血液型:A型
 髪の色:赤紫(変身時:濃いピンク)
 瞳の色・濃紅(変身時:ピンク)
 好きな食べ物:ミルクキャンディ(特に味が濃いのが好き)
 苦手な食べ物:もずく
 好きなもの:プリキュア!
 苦手なもの:視野の狭い人・食わず嫌い・運動全般
 得意な教科:国語・英語・社会
 苦手な教科:体育
 趣味:プリキュアアニメ鑑賞・キュアネットサーフィン
 特技:初めて触る電化製品を、説明書を読まなくても完璧に操作できる(ただし1分くらいいじらないといけない)
 好きな言葉:『愛は地球を救う』
 大事な物:はじめて映画に行った時にもらった『ミラクルモフルンライト』
 尊敬する人:おばあちゃん
 将来の夢:アニメ脚本家

 ――――――――――

 お久しぶりでございます!
 約11ヶ月お待たせしてしまい、申し訳ございませんでしたッッ!!!
 『インストール@プリキュア!』、本日2021年1月17日から更新を再開いたします!

 ……思えばいろいろありました……リアルビョーゲンことコロナでどこにも行けぬ日々……感染が怖くて未だに劇場版ゼロワンを見られておりませぬ……最悪、ネット配信待ちになりそうです……

 さてさて今回は、意外なヒトがキュアットタブに来るお話と、悩めるキュアピースのお話です。

 それでは……11ヶ月ぶりの……送信!


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 ――――――――――

 

 「…………………………」

 

 聖都大学附属病院に辿り着いた時には、とっぷりと日が暮れていた。

 CRへの廊下を歩く最中も、飛彩先生と大我先生は僕をじろじろと見ていた。突き刺さってくる視線が痛い……

 

 「お前……」

 「は、ひゃい!?」

 

 思わず声が裏返ってしまった。僕の顔を鋭く覗き込む大我先生……

 

 「…………男、だよな……」

 「そ、そうですけどっ……」

 「だがさっき……女になってなかったか?見た目も声も……」

 「え、え~っと……」

 《あ~、その辺りはアタシたちもわかんねぇんだ……あんましツッコむのはやめてくれ》

 「そう言うお前も理解しがたい……アンビリーバブルな存在だがな」

 

 僕が持つコミューンの画面の上に立っているデータを飛彩先生は訝しげに見やった。

 

 「コンピューター上のアバターにしては感情が豊かすぎる……本当にバグスターとは関係ないのか?」

 《関係ねぇって。"30分"ズレてんよ》

 「?30分……??」

 

 飛彩先生は「30分……何のことだ……?」と、顎に手を当て考え込んでしまった。

 そんなやりとりをしているうちに、CRの入り口まで戻ってきた。いろいろな意味で、この扉をくぐる気が重い……

 扉が両側へとスライドして開いた。

 

 「ポッキーパキパキ?」

 「ポッピーピポパポ!」

 「パペピプペポパポ?ロマンチックでコスモチックね

 「ち~が~う~よ~!」

 

 …………………………

 

 一瞬、何を見たのかわからなくなってしまった。

 ハデな衣装を着た、見覚えのあるピンクの髪の女の人と東堂さんが、なにやら言い合っているように見える、けど……

 

 「あ、ほくとくん!おかえり~♪」

 「と、東堂さん!?その……大丈夫なの!?『病状が変わった』って永夢先生から聞いたんだけど……」

 「一体どういうことだ、研修医―――――」

 

 困惑した表情で立っていた永夢先生を、飛彩先生はじろりと見やった。

 

 「ゲーム病に感染して、発病していながら……ここまで"健常"な患者は見たことがないぞ……?」

 「それが……目を覚ましたと思ったら、いきなりこんな調子で……」

 

 流石の永夢先生も戸惑いを隠せないようだ。

 相変わらず、東堂さんの体は時折オレンジ色に明滅している。これだけは、ここに搬送されてくるまでの彼女と何ら変わりない。でも―――――

 

 「じゃぁ次は神経衰弱やろうよ!()()()()さんが先攻でいいよ♪」

 「ポッピーだってばぁ!」

 

 あまりにも―――――『いつもの東堂さん過ぎる』。

 ゲーム病が発病すると、たいていはベッドから起き上がれないほどの苦痛にあえぐことになる。その様はドラマでもよく目にした光景で、今日の昼、最初に見た東堂さんもまさにそうだった。

 でも東堂さんは、キュアットタブの神経衰弱ゲームで、ポッピーさんと遊ぶことができるほどに元気だ。

 あ、ポッピーさん―――――ポッピーピポパポさんのコトも説明しとかなきゃいけないか。この病院で最初に僕と園長先生を案内してくれた看護士、仮野明日那さん―――――その本当の姿。『ドレミファビート』のバグスターで、パラドよりも前にCRに協力していた良性のバグスターだ。

 

 「でもま、それも納得の分析が出たぜ。今し方、な。とりあえず……コレ見て驚け」

 

 階段を上がってきた貴利矢先生が、紙の資料をテーブルに広げた。それに目を通した永夢先生たちの表情が、驚きのそれに変わる。

 

 「……おいレーザー……改竄なんざしてねぇだろうな?」

 「今更お前等に演技してもしゃーないだろ……自分だって半信半疑なんだよ」

 「とても普通の人の数値とは思えません……ぼく達のようにバグスターへの抗体を持ってる人か、それ以上の……」

 「あ、あの……いったい何が……?」

 

 僕の問いには、資料に目を落としたままの飛彩先生が答えてくれた。

 

 「東堂りんくの血液中のバグスター抗体……常人の10倍以上の数値だ」

 「……!?」

 「それだけじゃないぜ。電子顕微鏡でこんなのも撮れたとありゃ……な」

 

 次に貴利矢先生は、モニターに視線を促す。それは、オレンジ色の球体の攻撃から、まるで何かを守るように動く細胞の映像だった。しかもその細胞は―――――

 

 「ハート型の……遊走*1細胞……!?」

 「おそらくは白血球の中の『好中球』が変異したヤツだ。結論から言って、嬢ちゃんの体ン中には、普通の人間が持っていない未知の抗体がある。……それもとびきり強烈なヤツがな。しかもこの抗体、攻撃性は全く無い。むしろ異常なほどの"防御性"がある……バグスターはもちろん、悪性のウイルスのほとんどから健常細胞をガードして、侵食を防いでる。バグスターウイルスに罹患して、かつ発病しても短時間しか症状が現れず、今はピンピンしてるカラクリがコレだ」

 

 信じられないモノを見せられたのは、僕も同じだ。

 まさか東堂さんの身体に、バグスターさえ寄せ付けない抗体があったなんて……

 

 「そうなると……ますますお前たちが怪しくなってくるな……」

 

 じろりと、大我先生が僕を睨んできた。

 

 「変異したバグスターと互角に戦える戦闘能力と、東堂りんくが持つ新型抗体……そしてバグスターに感染している携帯電話と同型のモノ、そこに棲んでいるアバター……」

 

 飛彩先生もまた、僕に疑惑の視線を向けてくる。

 最後に永夢先生が、僕と東堂さんを見て、真剣な顔つきで言った。

 

 「教えて、くれるかな―――――きみたちは一体……?」

 

 緊張した空気に包まれるCR―――――

 

「……??……ほぇ??」

 

 その中で東堂さんは、目を点にして、頭の上に『?』を浮かべていた。

 

 ――――――――――

 

 それから僕と東堂さんは、僕達の身の上について先生方に語ることとなった。

 ただ、『僕にとって永夢先生たちは"架空の人物"という認識だった』ことや、ゲーム機のこと―――――つまりは『現実とフィクションの境目』に関わることは出来る限り言及を避けた。これ以上、事態を複雑にしたくなかったこともあるけど……『何故か触れてはいけない気がした』ことが最大の理由だ。どうしてかは……わからないけど。

 説明の途中でうっかり東堂さんが口を滑らせかけることが何度かあったけど、何とか乗り切ることができた。

 さらには、データが記録―――――否、『記憶』していた、今までの『インストール@プリキュア』の戦いを即席で編集したという映像も見てもらった。時間はちょうど30分、アニメの総集編のようなノリの脚色は入っていたけれど、永夢先生をはじめ、CRのドクターたちは真剣な顔つきでそれに見入っていた。

 

 《……というワケで、アタシ達はジャークウェブの連中からこのリアルワールドを守るため、ンでもってキュアチップにされちまった先輩プリキュアたちを全員助け出してサーバー王国を復興させるため……キュアネットの中と外で八面六臂の大立ち回りの真っ最中……ッてトコさ》

 

 得意気に説明を終えたデータが胸を反る。

 しばしの沈黙―――――あまりにも現実離れした説明に、先生たちは閉口してしまったのか―――――

 たぶん、東堂さんのハート型の細胞も、プリキュアの力に由来するものだろう。……だとすると、僕の中にも……?

 

 「許せん……許せんぞ、ジャークウェブ……ッッ!」

 

 最初に声を上げたその人は、拳を握り、うつむき加減に歯を食いしばり、身体全体を小刻みに震わせていた。

 

 「ネットワークの中からこの世界を侵略しようなどと…………」

 

 意外だった。

 まさかこの人が、ジャークウェブの野望にここまで感情を高ぶらせるなんて。

 

 「この世界はァ!いずれこの檀・黎・斗・神!の足下に(ひざまず)くために存在しているのだァ!世界の(クァミ)の許可無く!!勝手に世界を横取りするなァァァァ!!!!」

 

 こんなにも堂々と世界征服宣言……ある意味、黎斗神さんらしいというかなんというか……

 

 「コイツの妄想はともかく……「またしても九条貴利矢ァァァァ!!!」ネットの中からの侵略者とは見逃せねぇな」

 「中学生の変身と戦闘を目撃した以上、真実としか捉えようがない……実にアンビリーバブルだが」

 「しかもアニメのキャラが、別の世界に実在していたとなると……どこまでが現実かそうじゃないか、区別がつかなくなるな……」

 

 大我先生は呆れたように言うけど、それは今の僕も同じ。この場所、そして僕の周りにいる人達……みんな、僕にとっては"フィクション"だと思っていた存在なんだから。

 

 「……よく、話してくれたね」

 「!……」

 

 永夢先生の優しい瞳が、僕を見ていた。

 

 「ぼくたちが、きみたちの戦いを手助け出来るかはわからない……ぼく達はあくまで、病気を治す『医者(ドクター)』だからね……でも―――――」

 

 永夢先生は、東堂さんに目を向けた。

 

 「りんくちゃんのゲーム病を治療することで、きみたちの戦う力になれるなら……ぼくは喜んで協力するよ。りんくちゃん、ほくと君……一緒にゲーム病と戦おう!」

 

 爽やかな笑顔が、僕にはとても眩しく見えた―――――

 僕や東堂さんに向けてくる視線、言葉……そのひとつひとつ、どれを取っても、彼は『ヒーロー』だった。いささか、完璧すぎるほどに。

 でも、だからこそ、子供たちは彼の戦いに喝采し、彼の怒りや悲しみに心を痛め、彼とともに一年間を過ごしたんだ。『仮面ライダーエグゼイド』という、番組とともに。

 そしてそれは―――――僕も同じで。

 

 「……ありがとうございます」

 

 感激とともに、深々と頭を下げていた。

 

 「……それで研修医、あのバグスターの攻略法が見つかったと言うが?」

 「……はい。皆さん、これを見て下さい」

 

 永夢先生がモニターに視線を促す。すると、ゲーム画面をキャプチャーしたと思しき画面に、見覚えのある白と黒、二人の仮面の少女が映し出された。

 

 「これは……!?」

 「あのゲームのプレイ画面か」

 「『ベストフレンドプリキュア』……そのステージ6のボスキャラと、新種のバグスターがよく似ているんです。もっとも、ゲーム内では僕が操作していたキャラクターにそっくりな姿になって、あのバグスターとは違う姿になりましたけど……」

 「あ、それって……」

 

 画面を見ていた東堂さんに、ドクターたちの視線が集まる。

 

 「私とメモリアはキュアブラックとキュアホワイトでプレイしてたから、ばぐすたー?……あの怪人もブラックとホワイトそっくりになったのかも……」

 「ぼくも何回か同じステージを別のキャラクターでプレイしてみて、そのボスが操作しているキャラクターと同じ姿になったことを確認しました。……そうなると、あのバグスターの姿はりんくちゃんの操作キャラクターのイメージを反映していたことになる……りんくちゃん、あのボスキャラにどんなストレスを……?」

 「……倒せなかった……」

 「……え?(・ ・;)」

 

 東堂さんは目をつり上がらせていた。

 

 「あのボス強すぎ!!3時間も粘ってぜんっぜん勝てなかったんだもん!(▽ 皿 ▽♯)」

 《それで最後はおなか出したまま寝オチしちゃったんだよねぇ~》

 「メ、メモリア!?」

 《あ~……なるほどな。そりゃカゼひくわ》

 「む……ぐーの音も出ない~……」

 

 コミューンからメモリアとデータに茶々を入れられ、東堂さんはへこんでしまった。

 

 「疲れと寝冷えで抵抗力が弱まったところにバグスターが感染して発病、といったところか……」

 「発症経緯はともかく……エグゼイド、肝心の攻略法とやら……一体なんだ?」

 「これを見てください」

 

 永夢先生が、もう一度映像を再生する。永夢先生が操作しているキュアミラクルが、同じような姿の黒いシルエットに攻撃し、それが決まって体力ゲージが空になるのが見えた。しかし、その『黒いミラクル』は即座に起きあがり、体力ゲージが満タンになると、今度は味方のキュアホイップに攻撃を加えた。

 

 「……復活した……」

 「このボスはふたり一組なんです。でも、片方だけ倒しても、もう片方が残っていれば、瞬時に復活するんです。……そこで、CPU(コンピューター)操作の味方NPCとタイミングを合わせれば……」

 

 今度は、ミラクルとホイップが連携して、2体の黒いプリキュアの体力ゲージを均等に減らしていく。すると画面上の、キュアミラクルの体力ゲージの下のゲージが光った。クマのぬいぐるみみたいな妖精キャラが『いまモフ~!』と叫ぶと、ミラクルとホイップが並び立ち、黒いプリキュアにそれぞれの得物を向けた。眩い光線が黒いプリキュアを飲み込み、2本の体力ゲージが同時に空になり、ふたりの黒いプリキュアは霧散して消えた。

 

 《これで、ネガポジおうこくはへいわになったモフ~!》

 

 妖精キャラのセリフに続いて、『ステージクリア!』というメッセージがファンファーレとともに表示された。

 

 「す、スゴい!そーやってクリアするんだ!」

 

 東堂さんが驚きの声を上げる。

 

 「……これが、『攻略法(こたえ)』です」

 「なるほどね、『同時に仕留める』、か。そりゃいくら片方に集中攻撃してもムダなわけだ」

 「だが……これで上手く行く保証も無いな……」

 

 明確な攻略法が示されてもなお、飛彩先生は深刻な顔をしていた。

 

 「ああ……奴等が『ただのバグスター』なら、コレでカタがつくかも知れんが……」

 「……バグスター反応が消失して、別のウイルス……"バグッチャー"に変化する相転移現象……あれを使われると、仮面ライダーの攻撃は通用しなくなる……」

 「ありゃ"極性反転"だな……とんでもなく速度が速い上に、二つの姿に自由自在……まったくとんでもねぇな」

 「それって……?」

 

 聞き慣れない言葉だったから、思わず僕は永夢先生に訊ねた。

 

 「細胞が別の役割を果たす細胞に変化することだよ。もっともそれは、細胞生成の段階で起きることだから、今生きている生き物が起こす……まして、自分の意志で極性反転を起こすことは無理なはずなんだけど……」

 《『ウルトラマンメビウス*2』に『ディノゾール*3』って怪獣がいたろ?ソイツが頭吹っ飛ばされた後、逆立ちして『ディノゾールリバース*4』になったのも極性反転だぜ》

 「あ……!」

 

 データの注釈で納得した。確か、逆立ちした上に二又のシッポが頭になって、パワーアップして復活したんだっけ。

 

 「ウルトラマンってなんだ?」

 「え?あ、その……」

 

 大我先生が訝しげに訊いてくる。そういえばドラマで大我先生を演じていた俳優さん、『ウルトラマンX*5』にも出てたんだよな。もっとも目の前にいるのは俳優さんじゃなく、れっきとした『本人』なんだけど。

 ……というか、プリキュアは知ってるのにウルトラマンは知らないのか……

 

 「2つの姿を自在に使いこなす……まるでパラドクスだな」

 「そして"バグッチャー"に変異した状態で、二体を同時に切除することは……現時点では不可能、か……」

 「ぼくの"ハイパームテキ"も、未知のウイルスに通用する保証がありませんし、どのような作用をバグッチャーにもたらすのか、全く予想が出来ません……迂闊な使用は出来ないと判断します……」

 「そんな……」

 

 エグゼイドの"最強の力"も、バグッチャーには使えないのか―――――僕の心に暗雲が立ち込める。

 現時点で東堂さんは元気に見えるけど、いつまた病状が急変するかわからない。変身して戦うなんて到底無理だ。

 それに、いくら渾身の必殺技を叩き込もうとしても、命中する直前にもう片方の姿に変わられては全く意味がない。

 ライダーの攻撃と、プリキュアの攻撃。

 この『ふたつの要素』を、『二体同時』に叩き込む―――――最低限、プリキュアが『ふたり』必要なこの『勝利条件』を満たす手立ては、今は―――――

 沈鬱な空気がCRに立ちこめ始めた、その時だった。

 

 「フ……フフフフフッ……フハハハハハハハハハハ!!!」

 

 その場の全員がぎょっとして視線を刺した先には―――――

 

 「要は仮面ライダーがプリキュアの力を使えるようになればいいのだろう?」

 

 得意げに胸を反る"神様"がいた。

 

 「それがカンタンに出来りゃ苦労しないぜ。だいたい、『プリキュアの力』なんてどーやってライダーに落とし込むんだよ?」

 

 貴利矢先生の疑問に、黎斗神さんはテーブルに置かれたキュアットタブに目を落とし、

 

 「ククク……私に良い考えがある。この(クァミ)からの吉報を待つがいい……!」

 

 ……と、恐ろしく悪役めいた冷笑を浮かべたのだった。

 このヒトが笑うと……ロクな予感がしないんだよなぁ……

 

 ――――――――――

 

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 ――――――――――

 

 今日のところは解散、ということで、りんくとメモリアはそのまま入院、当直の永夢先生以外のCRのメンツは全員帰っていった。

 ほくともひとまずは家路についたけど、アタシは昏倒しちまったミラクルの様子が気になって、CRのキュアットタブに残ることにした。ほくとにはコミューンだけ持って帰ってもらえば、何かあってもすぐにコミューンに戻れるし、な。

 

 「……ミラクル、大丈夫か?」

 

 タブの中のミラクルの部屋を、アタシとマーメイド、トゥインクルとで見舞った。

 ミラクルはベッドに横になっていた。

 

 「……ありがとう……だいぶ楽になったみたい……ごめんね、力になれなくて……」

 「ミラクルのせいじゃねぇよ……アンタの想いをマジカルとスカーレットに『伝えきれなかった』アタシたちが、まだまだ弱っちかっただけだ……」

 「データ……あまり、自分を責めては駄目よ。……ミラクルもね」

 「……マーメイド……」

 「まだ終わったワケじゃないよ。データもあきらめてないんでしょ?」

 

 トゥインクルがアタシに笑いかける。それはもちろん―――――

 

 「ったりめーだ!何しろ仮面ライダーのセンセーたちが味方なんだぜ?それにあの"神サン"が、知恵を絞ってくれてる……大丈夫、きっと上手く行くさ……もちろん、他力本願にゃしないつもりだけどな」

 「データ……」

 

 負けたまんまじゃ―――――

 取られたまんまじゃ、終われねえ。

 

 「今度は、私達も力を貸す番ね」

 「トワっちとリコりんを助け出して、りんりんのビョーキも治して……みんないっしょに、りんりんのお家に帰ろっ!」

 「……おう!」

 

 このふたりだって、賭ける想いはミラクルと同じだ。

 次は必ず、アタシたちが―――――

 

 「データ……あのね、お願いがあるんだけど……いいかな?」

 「んあ?」

 

 ミラクルが上目遣いでアタシを見て、言った。

 

 「ピースの様子も……見てきてほしいの」

 「……そういや、タブん中にいなかったけど……どうしたんだ?」

 「あの子も……なんだか抱え込んじゃってるみたい……最初の時にあのバグスターに敵わなかったコト、気にしてるのかも……」

 「ああ、わかったぜ…………」

 

 実はあれから、ピースは自分の部屋(フォルダ)に閉じこもって、アタシがタブに来たら、入れ替わりに今度はりんくのコミューンに行っちまった。まさかアタシ、避けられてんのか?

 ともかく、"あの時"だってピースのチカラをフル活用出来なかったアタシとほくとに責任がある。ピースのせいなんかじゃない。

 

 その時―――――

 

 広間(デスクトップ)の方が妙に騒がしくなった。悲鳴混じりのプリキュアたちの声が、出入口を閉め切っているミラクルの部屋(フォルダ)にまで染み入ってきていた。訝しげに、マーメイドが振り返る。

 

 「……何事かしら?」

 「ヒトが養生してるってのに騒々しいな……ちょっくら、様子見てくる」

 

 まったく……マリンあたりが何かやらかしたのか……?半ば呆れながら、アタシは広間(デスクトップ)のドアを開けた。

 

 「おい、何の騒ぎ―――――」

 

ヴェ゛ッ゛ハハハハハハハハハハハハア゛ァ゛ア゛ッ!!!!!

 

 この、『プリキュアのドールハウス』みてぇなファンシーなフンイキのキュアットタブに、恐ろしいまでに似つかわしくない、汚ッたねぇ哄笑がこだまし、アタシの背筋がぞくりと(ふる)え、そして―――――

 

 「マヂかよ……」

 

 なんか、その……唖然とした。

 漆黒のスーツに身を包み、顔に薄ら笑いを浮かべる"ソイツ"に、ロゼッタとマーチが対峙していた。

 

 「まさか……キュアットタブのセキュリティを突破して侵入してくるなんて……!」

 「普通の人間……じゃないようだけど……!」

 「何者です……!?名を名乗りなさい!」

 

 エースが啖呵を切りながら前に出て、ラブキッスルージュをまっすぐソイツに向けると、ソイツは薄ら笑いの口角をさらに広げた。

 

 「……本来ならば、この(クァミ)を前にして先に名乗らぬという不敬千万たる行為だが……今日の私の機嫌は殊更上々だ……(クァミ)をも恐れぬその勇敢さを特別に買おう……異世界の伝説の戦士『プリキュア』の諸君!この私こそ、この世界を統べる、空・前・絶・後!にして全・知・全・能!!の(クァミ)!!!檀!黎!斗!s」

 

マリンシューーート!!!

 

 スーツの神サンにあらぬ方角から高圧水弾が連続で命中、神サンは大の字にブッ飛んで倒れた。その場にいるプリキュアたちの視線が、その発射源たるキュアマリンに集中する。

 

 「…………ダサいし長い。」

 

 ―――――アンタがソレを言うか!?

 つーかソレ、ニチアサのヒーローとしちゃ一番のタブーだぞ!?ヒトが名乗りをキメてる時に攻撃加えるなんざ、アバレキラー*6くらいしかしたコトねぇぞ!?

 

 「ぐぅ……(クァミ)が崇高なる我が名を教示しているというのによもや乱入するとは……不敬に不敬を重ねるかァ……!伝説の戦士がなんたる―――――」

 「みんな、今だよ!!」

 「何ッ!?ま、待て!!話を―――――」

 

 よろめきながら立ち上がろうとする神サンの言葉はもはや届かず、無情にもハッピーが号令をかけた。途端、レモネードのプリズムチェーンが神サンを簀巻きに縛り上げ、そこへハッピーシャワーとマーチシュートとビューティブリザードとエースショットが立て続けに撃ち込まれて爆発、さらにはミュージックロンドとハートフルビートロックの光輪が神サンを縛り上げてさらに大爆発、コレで終わったと思ったら最後にオマケとばかりにロゼッタリフレクションが神サンの前後左右に、遮蔽物代わりとばかりに突き刺さった。

 

 「………………………………………………」

 

 神サンは尺取虫よろしく、ケツを突き上げてうつ伏せに突っ伏して、ピクリとも動いていなかった。

 『神の丸焼き』、一丁上がり。わずか20秒の爆速クッキングだった。

 

 「うっわ……」

 

 ……この光景を見たアタシと、画面の前の読者(アンタ)の思ってること……ピタリと一致すると思う。

 ……せーのっ、

 

 

 エ ゲ ツ ね ぇ

 

 

 ……神サンよ、アンタはこのキュアットタブへの『入り方』を間違えたんだ。

 いきなりアポも無しでノックもせずに、女のコだらけの"女子寮"に闖入(ちんにゅう)したとあっちゃ、そりゃおめーリッパな『不法侵入』だよ、アンタ。ただでさえ不審人物……いや、この場合は()()()なんだから、入り方は考えよーぜー。初対面の印象って後々まで引きずるからな、いやマジで。

 アタシは全身黒コゲでぶすぶすとケムリを上げている神サンに、しゃがみ込んで言った。

 

 「どーやって入ったかは敢えて訊かねえ……『檀黎斗神(アンタ)だから』って理由でどうとでも理解できらぁ……でもさ、ウチの先輩方にとっちゃ、そのキャラは黒酢ドリンクの原液並に濃くて酸っぺぇんだよなぁ……」

 「キュアデータ……お前は、一体……?」

 「(アンタ)信者(ファン)だよ」

 

 ……主に顔芸のな。

 

 「!うわ……!?……やれやれ……先走ったと思ったら、やっぱりこうなってたか……」

 「ちゃんと事情を話さないからだよ~……」

 

 そこへ、白衣を羽織った貴利矢センセーとポッピーピポパポが、キチンと玄関ドアを開けて登場してきた。そうそう、最初からそうやって入ってくればよかったんだよ。

 

 「コイツがビックリさせちまって悪かったな、お嬢ちゃんたち」

 「ごめんね……黎斗には後でオシオキしておくから!」

 

 ……もう充分オシオキされてると思うんだが……鬼か、ポッピーさんよ。

 

 「九条貴利矢先生と、仮野明日那さんですね?お話は先程から、このタブの中から伺っていました」

 「……でも、どうやってこのタブの中に?アナタたちは普通の人間では……?」

 「りんくお嬢ちゃんから、許可はもらってるぜ。別にハッキングしたわけじゃないさ」

 「ワタシたちは良性のバグスターだから、コンピューターの中と外を自由に行き来できるの!」

 

 そう、タブに入ってきた3人は全員、純粋なヒトじゃなく、ヒトならざるバグスターだ。もっとも、出自(オリジン)はそれぞれ違うがな。

 ポッピーピポパポは、神サンのお袋さんに感染して、その記憶をバックアップに実体化した、世界で最初に人類に味方したバグスター。

 でもって、貴利矢センセーと神サンは、ヒトの体をプロトガシャットにバックアップすることで、『人間の遺伝子を持ったバグスター』になって復活した存在だ。

 どちらも、バグスターっていう怪人同然の身でありながら世のため人のため―――――神サンはビミョーな線だが―――――に戦う、ポッピー曰くの『良性のバグスター』ってワケだ。

 ……説明がよくわからん?……ごもっとも。アタシもかいつまんで地の文綴ってるんだがな、前にも言ったけど『仮面ライダーエグゼイド』の設定は明らかに子供向けじゃないほどに複雑怪奇なんだよ。だから、Blu-rayや配信とかで実際に番組を見てもらった方が、こんな文字媒体の小説……それもどこの馬の骨ともしれんヤツが書いてる二次創作のプリキュア小説なんかよりもよくわかるってモンだ。

 ……と、アタシがそっぽ向いて地の文で語ってる間に、あちとらは盛り上がっているようだった。なんだかんだで、ポッピーはプリキュアと並んでても違和感ないし、貴利矢センセーは陽キャだし、神サンよりかは先輩方と馴染めるだろうしさ。

 

 「お話はここまで!ワタシたちは遊びに来たワケじゃないの!」

 「そういうコト。……あのバグスターとバグッチャーの"合併症"を倒すために、お嬢ちゃんたちの協力が必要なんだと。……ソコで焦げてる変質者サマが言うには、な」

 「!!!私は変質者ではなぁぁぁい!!黎斗神だァァァァァアッ!!」

 

 神サン復活。貴利矢センセーの言葉にはいちいち反応すんのな。

 

 「……兎も角、だ……私とて何処の誰とも知れん輩に私の許可無く勝手にゲームを作られ、勝手にバグスターを生み出され、さらにはジャークウェブなどという新参者に世界を横取りされようというこの事態を、(クァミ)として見過ごすわけにはいかんのだ……!君達も東堂りんくに感染したバグスターを放ってはおけまい?……私と君達の利害は一致している……さあ、異世界の伝説の戦士諸君……―――――」

 

 神サンは両腕を広げ、"なんとかざんまい"よろしく言い放った。

 

 「この(クァミ)たる私にィ、その大いなる力を委ねるがいいィッ!!フゥッハハハハハハハハハハハハァァッッ!!!!」

 

 で、こんな大々的な神託(パフォーマンス)を見せつけられた先輩方はというと―――――

 

 

 

 ―――――ドン引きだった。

 

 

 

 ――――――――――

 

 NPC CURE-PEACE

 

 ――――――――――

 

 

 あれから―――――

 

 ワタシはデータにも、ほくとくんにも顔向け出来なくなってた。

 少しでも、この世界のヒーローたちのことを勉強しようとして、張り切って戦ったのにあの結果。プリキュアの先輩として情けないよ……

 結局、データを避けるように、ワタシはりんくちゃんのネットコミューンに来てしまっていた。

 メモリアの病状が安定したのか、コミューンとの行き来もできるようになってたけれど……

 

 「やっぱり……今のままじゃ、ダメだよね……」

 

 いつになく……ワタシ、弱気になってる……

 あれから16年経っても、ワタシは変わらなかった……変われなかった。

 みゆきちゃんも、あかねちゃんも、なおちゃんも、れいかちゃんも……他の世界から来たプリキュアのみんなも……16年の間で、ちゃんとやりたいことも見つけて、夢も叶えて……だから……その『夢』と、『チカラ』を合わせて、『結晶』を作り出すことが出来たんだね……

 

 「ワタシ……どうしたら、いいんだろう……」

 

 『伝説の戦士』って呼ばれても……今のワタシは余りに無力で…………

 

 「…………う、うぅ………………」

 

 また……泣いちゃった……

 16年経っても、泣き虫は治んないよ……

 

 《……どうしたの?》

 

 急に声をかけられて、びっくりして声のした方を見上げると、そこには―――――

 

 「…………あ」

 

 当直医としてCRに残ってた永夢先生が、コミューンをのぞき込んでいて、涙目のワタシと目が合ってしまっていた。ワタシはあわてて涙をぬぐった。

 

 「……えと、あの……その……ワタシ……」

 《!……ごめん、起こしちゃったかな……?》

 「あ、いえ……ワタシは起きてましたから……メモリアは……ぐっすりです♪」

 

 念のため、ワタシはメモリアの部屋(フォルダ)とは別の部屋(フォルダ)にいた。その部屋(フォルダ)の明かりは消えていて、かすかに寝息が聞こえてきてた。

 

 「ワタシの方こそ……その、ごめんなさい……当直の最中なのに……」

 《気にならないよ。りんくちゃんもメモリアも、今は安定してる。ただぼくは、ふたりが一秒でも早く完治出来るように……頑張るだけだから》

 

 そう笑うと、永夢先生は視線を別の方向に動かした。気になって、ワタシはディスプレイの上に立ってみた。永夢先生が見ていたのは、ゲーム機が繋がれたテレビモニター。りんくちゃんとメモリアが遊んでいて、バグスターウイルスが仕込まれていたあのゲームを、永夢先生は真剣な眼差しでプレーしていた。

 

 「そのゲームって……」

 《……"あのバグスター"の攻略法はつかめたけれど、まだ何か、ヒントが隠されてるかもしれないからね。……遊んでるワケじゃないよ?》

 「知ってます。それが永夢先生にとっての"本気"ってことも」

 《……よく知ってるね?》

 「え!?……ど、ドキュメンタリーで見ました、から……」

 

 あ、あぶない……永夢先生たちには、永夢先生たちが『ドラマの中のヒト』だって言っちゃいけないんだった……思わず背筋がひやりとした。

 永夢先生は《テレビの取材なんて、CRに入ったことあったっけ……?》と首をかしげながらも、ゲームの画面に向き直った。

 

 「みんな……戦ってる……りんくちゃんとメモリアのために……マジカルとスカーレットのために…………でも、ワタシは……」

 

 ワタシだけ、何も出来ていない。

 "あの時"もそうだ。ワタシは何のチカラにもなれないままに、みんなの中で真っ先に、キュアチップに封印されてしまった―――――

 

 「ワタシ……カッコ悪い、ですよね……」

 

 涙といっしょに、弱音もこぼれてしまった。

 

 《……ぼくだって、そうだよ》

 「……?」

 《患者さんを不安にさせないためにも、せめて、患者さんの前ではしっかりしてないと……カッコ良くしてないといけないんだけど……どうにも、ね》

 「そ、そんなことないです!永夢先生はお医者さんとして、仮面ライダーとして、立派に戦ってるヒーローじゃないですか!そんな永夢先生がカッコよくないなんて、ワタシは思いません!」

 

 永夢先生は少し驚いたような顔をして、ふっと表情を緩めた。

 

 《……そう言ってもらえると嬉しいよ。世界を救ったことのある、きみに、ね》

 「え……?」

 《ぼくはまだ、何も終えられていないんだ……バグスターウイルスに感染して、プロトガシャット*7に閉じ込められてしまっている人達*8が、もう一度この世界に元気に帰ってこられる日は、いつになるかはわからないんだから……だから……ぼくにとって、きみ達プリキュアは『目標』なんだ……!最後まで戦い抜いて、人々の笑顔を取り戻すコトが出来たんだから……!》

 「……!」

 

 ―――――わっ……わわわ、ワタシが……目標……!?

 『仮面ライダー』が、こんなワタシなんかを、目標にしてくれているなんて……

 なんだか、照れくさくなっちゃった……たぶん、今のワタシ、顔が真っ赤になっちゃってる……と思う……

 

 《ぼくも、絶対に立ち止まらないし、諦めない……いつか、仮面ライダーじゃない『普通のドクター』に戻れるその日まで、ね。…………まだ研修も終わって……普通のドクターにすらなってないのに、ヘンな話なんだけど……あはは》

 

 力なく笑う永夢先生。でも、その目には、確かな決意が宿ってた。

 

 《……まさかぼくが、プリキュアみたいに変身して戦うことになるなんて、最初は夢にも思わなかったけど……でも、あの時のぼくは、明日那さんが持っていたゲーマドライバーに、自然に手が伸びてた……きみも……はじめて戦ったときのこと……まだ覚えてる?》

 「は、はい……」

 

 "あの日"のことは、昨日のように思い出せる。

 みゆきちゃんが転校してきて間もないころ、アカオーニが繰り出してきたアカンベェに苦戦していたハッピーとサニー―――――みゆきちゃんとあかねちゃん―――――

 ワタシのコトを励ましてくれたふたりのチカラになりたい、って心から願った―――――

 そんなワタシに、スマイルパクトが―――――戦うためのチカラが顕現した―――――

 

 永夢先生は、ワタシを見て安心したような顔になって。

 

 《それなら、きっと大丈夫……どうして戦うことを選んだのか、なんのために戦うのか……"どうありたい"のか……それが折れない限りは、何度倒れても立ち上がれる……!壁に当たったら、振り返ってみるのもいいかもしれないよ?……まぁ、これはぼくなりの解決法だけどね。……ぼくより先に目標にたどり着けたきみなら、必ず迷いを振り切れるはずだよ。ぼくも信じてる》 

 

 なんだか、絡まり合っていたココロの糸が、ふっとほどけた―――――そんな感覚が、ワタシの胸の中に広がっていく。

 

 「……ありがとうございます、永夢先生」

 

 思わず、ワタシはお礼を言っていた。そういえばワタシ、本当は永夢先生より年上、なんだよね……りんくちゃんの前で本当のトシのコトを言っちゃうと怒られちゃいそうだけど……

 でも、歳とか関係なく、永夢先生はワタシの憧れ、ホンモノの『仮面ライダー』のひとり。そんなヒトに、目標だって言ってもらって、アドバイスまでしてもらえちゃって…………

 ほくとくんやデータが聞いたら、うらやましがるだろうなぁ、きっと♪

 永夢先生は最後に、《それじゃ、おやすみ。体を冷やさないように、暖かくしてね》と笑いかけると、CRの照明を落として、イヤホンをテレビモニターにつないで、黙々とゲームの続きを再開した。真っ暗なCRには、モニターの輝きと、永夢先生がコントローラーを操作する、カチカチという小さな音だけが残っていた。

 ワタシはその姿を見届けて、コミューンの中に戻り、胸にそっと手を当てて、目を閉じる。

 

 「大丈夫…………きっと、大丈夫……」

 

 ワタシは何をしたいのか―――――

 

 ワタシはなんのために戦うのか―――――

 

 ワタシにとっての、『カッコいい』って、何なのか―――――

 

 

 

 

 

 

 16年。

 

 

 

 

 

 

 プリキュアになってから、今までのワタシを、記憶の奥底まで―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ―――――なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシ、最初からわかってたんだ。

 

 

 

 やりたいことはマンガ家で。

 

 戦うのは、みんなの笑顔を護りたいからで。

 

 『カッコいい』こと、それは―――――。

 

 

 

 

 

 16年の間、ワタシの『芯』は、折れずに残ってくれていたんだ―――――

 

 

 

 ワタシの中で、バラバラだった欠片(ピース)が、ひとつにつながって、あわさって、『カタチ』になっていく。

 

 

 

 ―――――みゆきちゃん。

 

 ―――――あかねちゃん。

 

 ―――――なおちゃん。

 

 ―――――れいかちゃん。

 

 ―――――キャンディ。

 

 ―――――ポップ。

 

 

 

 16年の間、ずーっと遠回りしちゃってたけど―――――

 

 

 

 

 ワタシ、見つけたよ。

 

 

 

 

 

 ワタシだけの―――――

 

 

 『黄瀬やよい』だけの、『最高』を―――――!

 

 

 

 SAVE POINT……

*1
細胞が細胞膜や血管等の境界をすり抜けて移動すること。白血球がこの性質を持つことがよく知られている。

*2
ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品。過去にウルトラマンが地球を守るために戦い、ウルトラマンが去ってから25年の間、怪獣や宇宙人が一切現れなくなった世界を舞台に、宇宙警備隊のルーキー・ウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライと、突貫気味に結成された新米防衛チーム・CREW GUYSの成長と活躍を描く。シリーズで初めて過去作との明確なクロスオーバーを展開し、過去作のウルトラマンやその演者たちも多数ゲスト出演、ファンを喜ばせた。また、物語の中盤でメビウスの正体がミライであるとGUYSの面々に知られるも、その後も共闘を続けたという、ある種シリーズの『タブー』を破った作品ともなった。

*3
『ウルトラマンメビウス』第1話で初登場した怪獣で、別名『宇宙斬鉄怪獣』。水素をエネルギー源としており、宇宙空間で少ない水素を取り込むために『断層スクープテイザー』と呼ばれる舌を使用、鞭のように振るって宇宙空間の水素を採取する。またこの舌は恐るべき切断能力を持つ上、長さ1万m、細さ1000万分の1mmという極めて特殊な構造をしており、放たれてから視認することはほぼ不可能で、近接戦闘では無敵といえる戦闘能力を持ち、あらゆる物体を不可視の鋼線で両断してしまう。地球に来襲後市街地を蹂躙、その後メビウスの初陣の相手となり、必殺光線『メビュームシュート』を頭部に受け爆発四散した。その後第5話と第11話で別個体が登場し、その内第11話の個体は後述の『ディノゾールリバース』にパワーアップして復活した。

*4
『ウルトラマンメビウス』第11話に登場した、ディノゾールの強化形態。別名は強化前と同じく『宇宙斬鉄怪獣』。GUYSの攻撃で頭部を吹き飛ばされたディノゾールが逆立ち(Reverse)して立ち上がり、手を足に、足を爪状の部位に変化させ、二又の尻尾の神経節を肥大化させて新たな脳幹=頭部を形成、復活(Re:birth)した姿。ギリシャ神話の『オルトロス』を彷彿とさせる双頭の姿となり、前述の『断層スクープテイザー』も二本同時に放たれるなど、飛行能力を失って尚余りあるパワーアップを遂げた。攻めあぐねるメビウスとGUYSだったが、ウルトラマンヒカリが参戦して断層スクープテイザーを切断したことで形勢逆転、最後はメビウスとヒカリの必殺光線を同時に撃ち込まれて撃破された。

*5
2010年以降に制作されたウルトラマンシリーズ『ニュージェネレーションシリーズ』の第3作。怪獣が封印されたフィギュア『スパークドールズ』が、謎の宇宙線『ウルトラフレア』によって活性化、怪獣となって暴れ出した世界を舞台に、防衛チーム『Xio(ジオ)』に所属する若き隊員・大空大地と、彼と『ユナイト』して戦う戦士・ウルトラマンエックスの活躍を描く。『サイバー感に満ちた全く新しいウルトラマン』と銘打ち、主役のエックスを含め、スパークドールズから復元されたデータを基とした『サイバー怪獣』などには機械的、かつ電脳的な演出がなされている。ちなみに本作『インストール@プリキュア!』のイメージソースの一部もこの作品だったりする。

*6
『爆竜戦隊アバレンジャー』に登場した、天才外科医・仲代壬琴がダイノマインダーで変身する追加戦士。追加戦士の身でありながら、その独特のメンタリティからアバレンジャーの敵に回り、あろうことか敵組織・エヴォリアンのボスの座にまで上り詰めた、戦隊史上初の本格ダークヒーローである。アバレンジャーたちのスーツの試作型である0号スーツであり、アバレンジャーをはるかに上回るスペックを持つ。データが言及したのは、第20話『キラーオー、アバレ初め!』でアバレンジャーが名乗っている最中にアバレキラーが攻撃を加えた(レッドが被害に遭った)、文字通りの『掟破り』を指し、この暴挙に出たのは半世紀近くの長い歴史を持つスーパー戦隊シリーズの中でも(映像作品に限れば)彼のみである。曰く『ダサい』。ちなみに映像媒体以外では『小説 侍戦隊シンケンジャー 三度目勝機』で、アヤカシ修羅によってシンケンジャーが被害に遭っている(こちらはグリーンが攻撃を受け、ブルーが猛抗議していた)。曰く『長い。貴様らの様式美に付き合っている暇などない』とのこと。余談になるが、今の所(2021年1月現在)プリキュアシリーズで名乗り中に攻撃を受けた事例は無い。プリキュアシリーズの悪者は空気が読めるらしい。

*7
その名の通り、ドクターライダー達が使用しているライダーガシャットの試作型。全部で11本存在する。システム黎明期のモノである故、使用者の安全性を度外視した設計がされており、強大な戦闘能力を得られるが、使用者が人間であった場合は強烈な負担を強いられる。さらにこのプロトガシャットには、『とあるデータ』がセーブされていて……それは後述。

*8
実はプロトガシャットには、今までバグスターウイルスによって消滅させられてしまったすべての人々の『容姿』『人格』『遺伝子』……すなわち『命』が、データ化されてセーブされている。このデータが存在していれば、黎斗や貴利矢同様に『人間の遺伝子を持つバグスター』として蘇生させることが可能である。しかしデータのサルベージには『仮面ライダークロニクル』のマスターガシャットが必要で、それもテレビシリーズの最終決戦の際に破壊されてしまっており、現状、消滅してしまった人々のサルベージ="治療"は不可能な状態にある。しかし永夢は『たとえ今は救えなくても、消滅者達を救い出す為の"治療法"が将来見つかる可能性は決してゼロじゃない』と記者会見で語り、消滅者たち一人一人の名前を呼びかけるように読み上げた上(その中には黎斗や貴利矢も含まれていた)で、人々の命を真の意味で救うため、決意を新たにしていた。現在、プロトガシャットはCRによって厳重に管理されている。




 ・詳細プロフィール:八手ほくと編

 年齢:14歳
 誕生日:20XX年4月3日(『仮面ライダー』第1話放送日)
 星座:牡羊座
 身長:165cm(変身時:149cm)
 体重:43Kg(変身時:?Kg)
 血液型:AB型
 髪の色:濃紺色(変身時:ライトブルー)
 瞳の色:紺色(変身時:スカイブルー)
 好きな食べ物:中華料理全般
 苦手な食べ物:豆類
 好きなもの:特撮ヒーロー全般(特に仮面ライダー)
 苦手なもの:理不尽・無礼
 得意な教科:体育・家庭科
 苦手な教科:数学・理科
 趣味:拳法修行・自主トレ・特撮番組鑑賞・料理(ただしお菓子は作れない)
 特技:料理・初めて見た他人の動作をその場で完コピできる
 好きな言葉:『カッコいい理由は、『カッコいいから』』
 大事な物:妹・スーツアクターごとに動きのクセをまとめた研究ノート
 尊敬する人:師匠・スーツアクターのT岩S二氏とO元J郎氏
 将来の夢:仮面ライダーの主役スーツアクター

 ――――――――――

 ピースと永夢先生のやり取り……今回の執筆で悩みながら書いたところです。
 結果として、以前書いた予告の永夢先生のセリフはボツとなり、『嘘予告』となってしまったワケで……
 予告に擦り合わせようか迷ったのですが……今の稚拙の気持ちをストレートに書きました。

 あ、それと実は、12ある『クロスオーバー作品』なんですが、1作変更させていただくことといたしまして……
 今度、リストが表示される際の変化にご注目いただければ、と。

 それではまた!今年もインプリをよろしくお願いいたします!

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