捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第103話

「八幡、何をへこたれているのですか!だらしがないですよ!」

「……んな事……言われてもな……」

 高校3年の夏休み。俺と海未は受験勉強の息抜きに……何故か山頂アタックをしている。山を登りきった達成感が受験勉強をより充実させるとか言っているが、絶対にμ's時代のリベンジだろう。東條さんと星空が言ってた。

 しかし、本人に尋ねようとしてもはぐらかされ、こうして4分の3くらいの場所に到着した。

「受験勉強で身体が鈍っているようですね。そんな体たらくではこの山の頂に辿り着くことはできませんよ」

「お、おう……」

 まあ、やたらハイテンションな彼女を見ていると、来てよかったとも思える。今も笑顔だし。

「そういや、他の二人はどうなんだ?」

「穂乃果とことりですか?ことりの方は留学が決まっているのでいいのですが、穂乃果は……」

「……いや、やっぱり言わなくていい」

「いえ、大した事ではないんですよ。ただ勉強の詰め込みすぎで、あちこちにほむまんが見えるだけで」

「想像以上の重症じゃねーか……」

「かもしれませんね。貴方の方はどうですか?」

「ああ……何とかなりそうだ。お前のスパルタ教育が効いたのかもしれん」

「それならよかったです」

 柵の所まで行き、さっきスタート地点と思われる場所を見下ろすと、雄大な景色が広がり、自分の歩いた距離に驚かされる。その速さに驚くのは、自分一人ではなく、大切な人と歩いてきたからかもしれない。

 そして、もっと高い場所へと二人で手を取り合い、喧嘩したり仲直りしたりしながら歩いていけば、さらに素晴らしい景色が見れるのだろう。

 気がつけば海未も隣に並び、同じ景色を見つめていた。

「八幡」

「どした?」

「少しじっとしててください…………ん」

 頬にひんやりとした唇の感触がする。不意打ちはよくあるのに未だに慣れないし、胸がとくんと高鳴る。

 甘やかな感触はすぐに離れていったが、くたびれた気力を回復させるには十分だった。

「海未……」

 名前を呼びながら、その細い腕をそっと引き寄せ、じっと見つめ合う。彼女はさっきの行為に照れているようで、頬がほんのりと紅い。青い空によく映える、俺の一番好きな色だった。そして、紅い色が少しずつ近づいて……

「まだダメです」

 しかし、いつかのように俺の唇に人差し指が添えられ、待ったをかけられた。海未は悪戯っぽく微笑んでいる。

「続きは山頂で……ね?」

「……ずるすぎる」

 苦笑する俺に背を向け、彼女はてくてく歩き出す。きっと、してやったりとでも言いたげな笑みを貼り付けているだろう。

 そして、楽しげな声で語りかけてくる。

「楽しみは最後まで残しておいた方がいいと思いませんか?」

「……かもな。でも……今も楽しいけどな」

 俺の言葉に対し、数歩先を歩く彼女は振り返って極上の笑みを見せた。

「ふふっ、さあ行きましょう!」

「ああ」

 早歩きで彼女の隣に並び、同じ歩幅を刻み出す。

 それだけで何処へでも、何処までも行けそうな気がする。

 そして、もっと先を見たくなる。もっと知りたくなる。触れたくなる。重ねたくなる。

 こんな温かな気持ちをくれた彼女に心の中で「ありがとう」と言い、一歩一歩噛みしめるように歩いた。

 

 

 

 




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