夏といえども、早朝はそれほど暑くもない。
午前6時前、俺とタカトシは桜才学園を目指していた。
ハ「たく。二度寝するなよ」
タ「ご、ごめん」
今日は生徒会のメンバーで海水浴に出かける日である。
タ「でも、いくらなんでも6時集合って早すぎない?」
集合は朝6時に桜才学園校門前である。
ハ「まぁ遠い場所らしいからな」
横島先生が車を借りて俺たちがそれに乗る形である。
本当は横島先生も車を持っているのだが、軽自動車で、6人はさすがに乗れないらしい。
ハ「お、七条先輩と萩村だ」
タ「あ、本当だ」
ア「あ、二人とも来たのね」
ス「遅刻するかと思ったわ」
タ「眠いけど、なんとか」
ハ「二度寝したくせに」
ス「あ、やっぱり」
萩村がタカトシを呆れたように見る。
タ「と、ところで、会長は?」
ア「まだ来てないみたいだけど…」
シ「待たせたな!!」
噂をすれば何とやらというべきか、会長が現れた。ただ、その恰好は、海で遊ぶぞ、という様を全身で表現している。
シ「みんなこのイルカがいいのか?まぁ頼めば乗せてやるぞ。ただし、私が先だが」
いや、別に乗りたいとかではありません。
プップー
ナ「やぁ、皆お待たせ。さぁ乗った、乗った。ん?」
横島先生は会長のイルカが気になったようだ。
ナ「悪いけど、それ空気抜いてもらえる?」
こうして、車で目的地まで向かう。移動は高速を使うが、すいていれば2時間ほどで着くようだ。
ちなみに座席は、前から運転手の横島先生と、助手席の七条先輩。その後ろに、会長と萩村。さらに後ろに、俺とタカトシといった席順である。
タ「それにしても、どういうところなんだろう?」
ハ「楽しみだなぁ」
やがて、いくつかのトンネルを抜けると、そこはきれいな青い海が広がっていた。
全員「「「「「「おぉ~…」」」」」」
その美しさに、しばし見とれていた生徒会役員一同であった。というか、運転手さん、前見て!!
タカトシside
車から荷物をおろし、更衣室で水着に着替えると、さっそく砂浜に出る。
穴場なのか、人はいるものの、有名海水浴場にあるような、パラソルを立てる場所もないというほどの人はいなかった。
タ「う~ん、いい景色だ…」
青い空と白い雲。青い海と白い砂浜。それは見るものを感動させるだけの何かを持っているのか、俺は声に出してしまった。
ハ「そうだな。それにしても会長たち、遅いな」
タ「まぁ女の子だし、着替えに時間がかかるんでしょう」
ハ「まぁいいや。とりあえず場所だけでも―」
「こら、そこのあなた!!」
声をかけられ、振り向くと、監視員らしき人がいた。
タ「なんですか?」
監視員(以下監)「そこの女性はなんで水着の上を着てないで、しかも男物の水着を着ているんですか!!」
…どうやらハルカを女性だと思ってやってきたようだ。
ハ「いや、俺は男で…」
監「とりあえず、水着を貸すのでこちらに来てください!!」
ハ「いや、だからこっちの話も…」
監「いいからこっち来なさい!!」
…とりあえず、どうしよう。
結局、男だとわかってもらえたものの(どうやってとは聞かない)、上にTシャツを1枚羽織ることになってしまったハルカだった。
タカトシside out
ハ「屈辱だ…」
俺はそうとしか言いようがなかった。どうして正しい性別の水着を着て怒られなければいけないんだ…。あと真実がわかったときの監視員の反応が、信じられないものを見たという顔をしていた。…どうやって真実がわかったかは言わない。言いたくない。
ス「御堂はどうしたの?」
ア「なんか暗いよ?」
シ「なにかあったのだろうか?」
ハ「…聞かないでください。これ以上こころをえぐるのはやめてください…」
今になってやってきた女性3人が集まった。
ス「まぁいいや」
ア「それにしてもシノちゃん、赤い水着似合っているね」
ちなみに萩村がワンピースタイプ、会長と七条先輩がビキニタイプの水着を着ていた。ちなみに今言った通り、会長の水着は赤色である。
シ「ふっ、まぁな。この日のために用意しただけのことはある」
どうやらその水着は新しく買ったようだ。
シ「あの日が近いから」
ア「いつ来ても大丈夫だね」
……無視しよう。
俺たちは横島先生のところへいったん集まる。
シ「とりあえず、教師として何か一言お願いします」
ナ「そうね。羽目を外しすぎないようにかしら。ハメるのはいいけど」
タ「どっちもダメだろ!」
…とりあえず、海で遊ぶ俺たち。
シ「沖まで競争しようか?」
ア「いいわよ」
タ「やりましょう」
二人は乗り気のようだ。
ハ「もちろんやりますよ」
俺も当然受けて立つ。
ス「私、足がつかない場所では泳がない主義ですので遠慮します」
…ふと、なぜか小さい子が遊ぶビ―
ス「誰だぁ!!ビニールプールを連想した奴は!!」
そして全員が沖まで競争することになった。結局全員か。
戻って陸に上がる俺たち。
ス「何か飲む?私がおごるわ」
タ「ごちです」
ハ「サンキュー」
そして海の家で飲み物を注文する。その時、なぜか店員がタカトシを見ていた。
店員「450円です」
…どうやら、萩村はどこ行っても子供扱いされるらしい。
ス「ま、まぁこのくらいで腹を立てるほど子供ではないわ…」
ハ「そうだね」
このくらいで腹を立てては世の中やっていけない。現に俺がそうだから…。
ハ「ただ萩村。強く握ると容器壊れるよ」
とりあえず注意する。あ、ふたが外れた。
ふと前を見る。すると七条先輩がナンパされていた。
ア「あ、タカく~ん」
七条先輩が、俺たち、というよりタカトシに向かうと、腕に抱きつく。
ア「この人が、私の彼氏…」
ふと七条先輩が萩村と俺に向けられる。
ア「夫です!」
ハ・タ・ス「「「えぇ!!」」」
仰天発言だった。
ア「そしてこの人は―」
今度は俺を指差す。
ア「夫の愛人です!!」
ハ・タ・ス「「「えええっ!!!」」」
もっといい言い訳思いつかなかったの!?
ア「ごめんなさいね。ナンパがしつこくて」
タ「いえ。俺でよければ相手役になりますよ」
ア「ありがとう」
ス「私はごめんなんだが」
ハ「同じく」
今俺はタカトシと手をつなぎ、タカトシは七条先輩との間に萩村を挟んで手をつないでいた。家族に見せかけるためらしいが、あきらかにおかしいだろ!
その後、波打ち際で遊ぶ俺たち。
タ「ふと思ったんだけど」
ハ「何を?」
タ「波で水着がさらわれるシチュってあるよな」
ハ「あれはさすがにこの場所じゃないだろう」
ス「…男ってみんなそんなこと考えるの?」
萩村にドン引きされていた。
ア「キャ!」
七条先輩の軽い悲鳴にそちらを向く。
ア「今の波はすごかったね。水が○に入っちゃったよ」
…妄想を絶した。
「ギャ――――!!」
男の悲鳴に、何事かと沖を見る。
さきほど七条先輩にナンパしていた男が、沖で何かに襲われていた。
ア「な、何?」
ハ「ひょっとして、サメ?」
ス「に、逃げなきゃ!」
ナンパ男「た、助けて!」
顔を水の上に出し助けを求めるナンパ男。しかしまたサメ…ではなく、横島先生に襲われ、水中へと消えていった。
「「「「……………」」」」
思わず黙ってしまう俺たち。
ハ「他人のふりしましょう」
「「「うん」」」
そして俺たちは陸地に上がって行った。
シ「おぉ、来たか」
やはりというべきか、横島先生はいなかった。代わりに会長が、いくつかの飲み物が入った容器を手にしていた。
シ「とりあえず休憩しようと思ってな。ついでにみんなの分の飲み物も買ってきたぞ。ただし全部スポーツドリンクだがな」
タ「ありがとうございます」
ア「さすがシノちゃん。気が利くわね」
みんなパーカーやシャツを羽織る。ちなみに俺はそれ用のTシャツを水着として使っているので、それができない。
ス「あれ、津田。シャツが裏返しよ」
タ「え、マジ。ありがとう」
シ「うっかりさんだな。まぁ、私も○○○○を裏返して大変な思いをしたがな」
タ「気持ちを共有できません」
そして休憩ついでに昼食をとることになった。
シ「あ!」
会長が驚きの声を上げる。
シ「しまった。飲み物をこぼしてしまった。水着にたれてしまったし、シミになってしまう」
タ「でもスポーツドリンクですし、大丈夫じゃないですか?」
シ「本当に、そう思うか?」
見てみると、濡れたのは股のあたりで、しかもスポーツドリンクだから白い。なので―
ハ「とりあえずタオル貸しますから隠してください」
その後、生徒会でビーチバレーをやったり(5人なので一人は審判を務める)、浜辺をのんびり泳いでいたりしているうちに、夕方になっていた。
シ「楽しかったな、海」
タ「そうですね」
久しぶりに海で遊んだが、結構楽しめるものだった。
シ「そういえば海に来るたびに思うのだが」
ハ「なんです?」
シ「巨大なサメが人を襲うシーンがあるだろう」
ハ「ありますね」
ジョ○ズとかだろうか。
シ「あれがもし巨大なタコやイカだったら、18禁映画になってしまうなと」
…それ来るたびに考えているのだろうか?
タ「今の俺ならあなたなら説教できそうです!」
しかしそういうがタカトシ。さっき似たようなものがあっただろう。
あれを思い出すとサメが怖くなくなってきたぞ。
ア「スズちゃん、眠いの?」
ス「…平気です」
そういうが、かなり眠そうだ。
シ「まぁ私もクタクタだ。早く帰ろう」
ハ「それはいいのですが…」
今になって大問題に気が付いた。
シ「どうした?」
ハ「横島先生が…」
パラソルの下で寝ているのだ。
シ「寝ちゃったのか。なら早く起こそ―」
問題は、その上に散らばったビールの缶である。
シ「…宿、探すか」
タ「…そうですね」