生徒会室には、様々な人が訪れる。用事を頼みに来た先生方や、部活動や委員会の要望・意見を出しに来る生徒、相談にやってくる生徒などだ。
そしてこの日も、生徒会室に訪れる人がいた。
コンコンコン
タ「はーい」
ノックにタカトシが答え、扉を開けると、誰もいなかった。
タ「あれ?」
ハ「コンコンダッシュ?」
ス「なにそれ…?」
タ「何にしろ、イタズラだったのかな?」
しばらくして…。
コンコンコン
ア「はーい」
今度は七条先輩が答える。
七条先輩が扉を開けると、そこには三つ編みの女子生徒がいた。
「失礼します」
…もしかしてさっきノックしたのはこの人か?
その人はタカトシと俺に気が付くと、警戒するような目つきになる。
カエデ(以下カ)「風紀委員長の、五十嵐カエデです」
シ「あぁ、久しぶりだな」
ア「ほんとお久しぶりね」
風紀委員長だったのか、この人。
ス「椅子をどうぞ」
萩村が椅子をもって五十嵐先輩に勧める。
カ「あら、ありがとう」
タ「冷たいお茶をどうぞ」
今度はタカトシが麦茶をもって勧めてくる。
カ「あ、あり―なっ!!あ、ありがとう。きょ、今日はあ、あついものね…」
ハ「震えてますよ」
暑いという割にはさっきから足とかが震えている。タカトシが来た瞬間から。
…もしかしてタカトシが苦手なのか?
カ「えーっとですね。コホン。実は、風紀委員として、あなた方生徒会に査問にまいりました」
ス「査問?」
カ「はい。実はあなた方生徒会に、ある嫌疑がかけられています」
シ「何!?」
カ「これを見てください」
そういって、持っていた封筒から紙の束を取り出す。それは写真だった。それも―
ハ「海行った時のか」
カ「あなた方が夏休み中に、異性がいながら同じ部屋で外泊したと、ある情報筋からありましてね」
そう、それは海に行って、事情があって外泊になったときの写真だった。主に俺たちが旅館の中で歩いている写真などであった。
ス「結構あるわね」
タ「こんな写真、だれが提供したんですか?」
カ「この人です」
そういって指差した先には、畑さんがいた。
タ「言わない、記事にしないという約束だったじゃないですか」
ラ「別に記事にもしてませんし、誰にも告げていませんよ。ただ写真を見せただけで」
ハ「それはとんちじゃね」
というより揚げ足取りか?
カ「風紀委員としては、生徒会がこのような不埒な行動をとったことを、見過ごすわけにはいきません」
シ「それはつまり?」
カ「場合によっては、風紀委員会から不信任決議案を全校会議で出すことを検討します。最悪の場合、解任という可能性もあります」
解任…。
シ「ふむ…」
まさかあの件がここまで大きな規模になるとは思ってもみなかった。これにはさすがの会長も少し考え―
シ「別に懐妊なんてしていないぞ」
全然考えてなかったな。というよりどういう流れでそういう話になった。
タ「日本語って難しいね」
いや、この流れでそれに結びつくのはおかしいと思うぞ!
シ「しかし五十嵐。これには大きな誤解がある。酒癖の悪い横島先生がかくかくしこしこ」
ス「しかじかでしょ」
ア「そうだよ!不埒なんて言いがかりだよ!!」
カ「しかし、それを証明できますか?」
証明は難しいな。扉を閉めればそこは密室だし。
ア「もちろんできるよ!!」
どうやってだ?
ア「ちゃんと全員膜あるからトイレに行こう!!」
ハ「それ証明にならないと思います」
結局それか…。
カ「そんなことせずとも、私は洞察力に自信があります。話の真偽は、相手の目を見ればわかります」
タ「望むところです。会長たちのおっしゃる通り、俺たちは無実です!」
ハ「そうです!俺たちは―ってなんで顔そらすんですか?」
ア「あ、五十嵐さんって、男性恐怖症なの」
タ「さっきからさけられていたりしたのはそれか」
ア「そういえば、五十嵐さん的には、御堂君のような女の子みたいな男の子ってどうなの?」
…結局俺ってそう見られるのね。
カ「え、あの、えーっと…」
五十嵐先輩は俺の方に手を伸ばす。だが震えているし、近づくごとにそれは大きくなる。
カ「やっぱり無理――!!」
…俺ってどう反応すればいいの?男子と見られたことを喜ぶべき?悲しむべき?
カ「ま、まぁいいでしょう。今回は引率の不手際ということらしいので、この件にかんしては不問にしましょう」
どうやら事情を察してくれたようだ。
カ「ただし津田副会長と御堂総務は、女子生徒に手をだしたら覚悟してくださいね」
タ「しませんよ」
シ「そうだな。御堂はともかく、津田は攻めるより攻められる方が好きだからな」
カ「不届き者――――!!!」
…すっごく変わった人だな。素直にそう思った。まぁいいや。
ハ「まぁ、ああいう性格をした人からしたら、男子と外泊なんて不埒以外何でもないんでしょうね」
ス「そうね」
ア「そうかしら?」
タ「いや、あなたの意見は聞いてません」
ばっさり切ったな。
タ「そういえばふと思ったんですけど、ここって元女子高だからか、結構落ち着いていますね」
シ「そうか?」
ハ「そういえば、男子校ではジャージ下ろしが流行っているというもんなぁ」
男子校に行った友達からの情報である。
ス「ずいぶんと子供じみたことするわね…」
萩村が呆れたような声を出す。
シ「そうなのか。しかし、男子が入ってきたことで、今度は筆おろしが流行るかもしれん」
ハ「俺が話題を出してあれですが、もう終わりません?」
また変なこと言っている。
そう思って天井を仰ぐと、あることに気が付いた。
ハ「あれ、蛍光灯切れかかってますね」
シ「ん?あ、ホントだ」
ア「取り替えなきゃね」
ナ「おーっす、生徒会役員共」
横島先生が乱入してきた。
ナ「どうしたんだ?」
ア「蛍光灯が切れているので、交換しようと思っているのですが」
ス「でも、脚立がない以上、できなくないですかね」
この中で天井に背が届く人はいない。まぁいたらすごいけど。
ナ「じゃあ津田が肩車して交換すればよくねえ?」
ス「となると、体重が軽い人がいいですね」
ア「軽い人…」
シ「軽い女…。横島先生お願いします」
ナ「って、意味合い変わってね!?」
そしていろいろ言い始める横島先生。
タ(いつも思うんだけどさ)
タカトシが小声で俺に話しかけてきた。
ハ(何?)
タ(なんであの人生徒会の顧問になったんだろうな?)
ハ(というと?)
タ(自治組織の生徒会と言えど、顧問というのは指導員的なものだろう。なんでこの人が…)
ハ(…それはおそらく)
生徒会に所属する人たちを見る。
天草会長=完璧人間
七条先輩=優秀なお嬢様
萩村=IQ180の帰国子女
タ(あぁ、なるほど)
ハ(そういうことだ)
タ・ハ((必要ないからだ…))
ナ「なんだよ、その残念な人を見るような視線は。…興奮するだろう」
顔赤らめるな!
今日は柔道場に異様な緊張感が漂っていた。柔道部のみんなは気合を入れて練習に臨んでいる。
それもそうだ。何しろ今日は、柔道部設立以来初となる他校との練習試合だ。そして俺たち生徒会は応援に来ていた。
シ「三葉、応援に来たぞ」
ム「あ、会長。それにみんなも。ありがとうございます!」
ス「これ必勝のお守り。今日のために用意してきたの」
萩村がお守りを渡す。
ム「うわぁ、感激!!ありがとう、スズちゃん!!」
ア「私も、今日のためにテルテル坊主たくさんつるしてきたよ」
ハ「それはいらないと思います」
というより、屋内なんだから関係ないと思う。
「いたっ!」
柔道部員から、悲鳴に近い声がした。
ム「どうしたの!?」
「ナナコが練習中に受け身を失敗して、手首がコキって…」
ム「手がコキ!?」
シ「手○キか!?」
シ「なら大丈夫だろう」
大丈夫じゃないよ。
タ「GO TO 保険室」
そして手をねん挫した柔道部員は、保健委員の手によって保健室へと搬送された。ただ困ったのは…。
ム「て、どうしよう!?ナナコがドクターストップじゃ欠員だー!!どうしよう!?」
それは困った。今更相手に帰ってもらうのもあれだし、一人だけ試合をしないのもあれだろう。
ム「そうだ、ハルカ君、柔道着を着て!!」
ハ「え、なんで!?」
ム「ハルカ君って、それなりに鍛えているらしいし、それに、私たちと同じ格好すれば、男子だとわからない!!」
ハ「ほー。表へ出やがれ」
喧嘩売ってるのか、こいつ。
シ「仕方があるまい」
会長の、決断したような声がした。
シ「私が代わりに出よう!!」
ス「って、着替え早っ!!」
ハ「というよりいつの間に!?」
全然わからなかったぞ!!
タ「大丈夫ですか、会長。受け身も知らないのに」
シ「君は何を言っている」
もしかして、経験者?
シ「小説では受け身のキャラに共感をしているぞ」
ハ「何の小説だ!」
まぁいろいろ言ったって、もう相手校の人が来ちゃったし、今更引けないか。
ちなみに相手校は一応県大会にも出場したことがあるほどの実力だ。…本当に会長大丈夫かな?
そして順番は、三葉が先鋒、会長が大将である。
「それでは、礼!」
「「「「「「「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」」」」」」」
審判役の先生の号令で、お互いに挨拶する。
ハ「あれ、畑さん」
周りを見渡した時、畑さんがいた。そばにカメラを持った人がいるところを見ると、新聞部の取材だろう。
タ「新聞部も来てたんですね」
ラ「ええ。こういうのはネタになるからね」
やっぱり、校内新聞でもこういう話は盛り上がるのだろうか?
ラ「女子高生同士のくんずほぐれつ。マニアにはたまらないのよ」
ハ(ズ○ネタ!?)
もしかして、売るのか!?
「始め!!」
1回戦が始まる。三葉は相手に摑まれるも、そこから一本背負いを決め込む。
「一本!!」
ム「次!!」
ス「ねぇ。点取り試合って何?」
ハ「5人の代表が順番に出て、3勝した方が勝ちってルールだな」
ス「…じゃあ次って?」
タ「勝ち抜き戦だと思っているのかな?」
ちなみに勝ち抜き戦は、勝った方がそのまま残り、チーム全員が負けたらそのチームは負けってルールである。
しばらくして。
ハ「現在は2勝2敗のイーブンです」
ス「…誰に説明しているの?」
ハ「いや、なんとなく」
ム「面目ない…」
いや、相手は県大会出場校だ。ここまで踏ん張っただけでもすごいと思うぞ。
シ「みんなよく頑張った。後は私に任せてくれ」
そういって、会長が出場していく。…本当に大丈夫だろうか?
タ「俺たちは信じるしかないよ」
…そうだな。今は会長を信じるしかない。
「始め!」
審判役の先生の合図で、試合が始まる。会長が組みかかり、押さえ込みをしようとするが、相手にかわされる。
今度は相手が投げた。これは…!
「有効!」
ダメだ。負けてしまう。
シ「ぬぉー!!」
あ、会長が抜けた。今度こそ、相手を押さえ込む!!
「押さえ込み!!」
相手は必死に抜けようとする。だが会長はまだ抑えたままだ。これならば…!!
「一本、それまで!!」
30秒後、会長が一本を取った。
「「「「勝ったぁ!!」」」」
柔道部全員で喜ぶ。もちろん、俺たち生徒会も。
ハ「よかったですね。…押さえ込み方に疑問が残りますが」
ア「ほんとよかったわ。この間貸した小説が役に立って」
タ「黒幕あんたか!!」
何はともあれ、試合終了!!