Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

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クローズエリア、最奥。カラスヤ一派が根城としている、一つの巨大な洋館が存在する。

洋館と言うより城と言った方がスケール的には正しいのだが、この建造物は城ではなく洋館である。

しかしながら、その広さや敷地面積は広大のそれを極める。何分クローズエリア、サンタモリヤの一区域まるごとが、この魔術一派の所有する私有地なのだから、とてもじゃないが広すぎる。

そして、その広大な敷地面積の一角をなす、森の中に作られた空き地。

樹海の只中に存在する、何も無い平地だ。地面には草花が生い茂っており、その所々にはベンチやちょっとしたオブジェ。実はこの場所、一昔前までは公園として使用されていた場所だ。この土地の霊峰イザヤ山を訪れた観光客や、地元の子供たちが使用していた遊戯スペース。しかし、この土地を管理する一派、カラスヤの分家である一つの家が、日本から帰国したのだ。瞬く間にこの場所は、人々で賑わうような所ではなくなる。人避けの結界や、嘗ては存在しなかった樹海により、物理的にも精神的にも封鎖されてしまい、現在ではカラスヤの魔術的実験場と化していた。

そして現在、誰も訪れなくなった公園の跡地に、6人の人間が存在している。

スーツ姿の女性が2人。同じくスーツを着用し、上から赤い布地のコートを羽織る男が1人。執事の正装を身に纏った男が2人。そして、あからさまに1人だけ纏うオーラが逸脱した、スーツ姿の人物が1人。

 

「本当にここで宝具を展開しろと仰るのですか、我がマスター?」

 

「無論です。結界を敷いており、森外への魔力的干渉を皆無にしている現在、他のマスターへの情報の漏洩はありませんので、貴女の宝具を確認しておきたい」

 

異様な空気を纏う女性、彼女はサーヴァント。クラスはセイバー。その最優の英霊に相応しい程の魔力量と、それを担うだけの器が、彼女には感じられる。

 

「・・・マスターの言い分を疑う訳ではありませんが、私も英霊の端くれ。顕界する際に聖杯からこの闘争における情報を幾分か得ているのですが、私の知る限り1人の魔術師の敷く結界など、そんな大規模な物ではない筈です。ですが、主人の命令は絶対だ。もしその場合、結界の不備が存在し、敵のマスターに情報を漏らすような事態になったとして、私は貴女に何も責め立てたりはしない。だからこれは最終確認です。本当に、よろしいのですね?」

 

「問題ありません。因みに、貴女の恐れている結界の不備による情報の漏洩ですが、そうですね。魔術師1人が設置する結界なんてたかが知れています。大凡この森全体(、、、、、)を囲う結果を敷くことなど不可能でしょう。ですが、我がカラスヤ一門に属する魔術師10名を用いての結界なら話は別です。故に、現在この森を覆う結界は万全です。疑念は晴れましたか?」

 

セイバーはコクリと頷き主人へと笑顔を向ける。

 

「なるほど。それではまず安心でしょう。私は魔術の知識に疎いですが、そんな私でも十全の状態と判断できます。流石は我がマスターだ」

 

そしてセイバーは自らの剣を構え、鞘を抜く。そこに、高密度な魔力を注ぎ込む。

誤解なきよう説明すると、現在セイバーは宝具に魔力を通している。これは適性存在を屠るために行う魔力放出ではなく、威嚇の様な物と例えるのが適当である。セイバーは言わずとも主の考えを理解している。如何な魔術師の数名を用いて展開する結界と言えど、英霊の放つ宝具の一撃を耐えられる筈が無いのだから。その為、セイバーに宝具の展開を要求した理由は、宝具の威力を確認することではなく、別の理由から起因している。

 

「なるほど。やはり、史実と性別は違えど、その真名は間違いでは無いのだな」

 

日の本の歴史において、最も勇敢とされる武人。それが彼女、セイバーである。その高密度な魔力放出やこの猛々しさは、女の身体と言えど、その真名に合致してると言わざるを得ない。しかし、

 

「しかし、彼は気性の激しい人物であったと言い伝えられています」

 

「その通りだ。だが、この儀式における先達として一つアアドバイスしておくなら、逸話や言い伝えだけでその真名の合否を決定づけるのは、些か性急すぎる。冬木で行われた四度目のそれにおいて、私が召喚した英霊ライダーも、逸話とは似て似つかぬ出で立ちをしていた。しかし実力や、その在り方は間違いなく彼の征服王その人であった。今回のそれも、私の時と同じように、何らかの事情があったのだろう。もしくは、編纂事象や剪定事象の絡みによる、ifの可能性の本人。彼女の場合、言い伝えや逸話伝承が多い。そのため、伝え行く過程で生まれた真実とは異なる伝承や、その不実を真実に書き換えた伝承から生まれたのが彼女では無いだろうか。気性が荒い訳では無いが、現に彼の逸話には女装の逸話。もしくは女性であった、と言う物も存在する」

 

セイバーの真名の伝承における性別は男。しかし、聖遺物を用いての召喚。それに応じ、召喚された英霊は女であった。ならば、彼の日本武人以外の、この聖剣にまつわる誰かである可能性も出てくる訳だ。故に、今回の宝具の確認はこの為。彼の英霊以外に、この聖剣を十全の力で振るう事が叶う人物は居ないのだから、彼女の真名は間違いなく彼自身のものである。

 

「回りくどい真似をしてしまって申し訳ありません。ですが貴女の実力や、それに伴うこの戦いの勝敗の是非も確認することが出来ました。我々に敗北は有り得ません」

 

「そうね。私の魔眼もそう言ってるし、間違いないわよね、ロード(、、、)?」

 

もう1人のスーツを着用した女性が高らかに声を上げる。

それに反応し、ヒナノの師たるロードエルメロイも声を荒らげる。

 

「お前は黙っていろ、イコール・スレイヤー(、、、、、、、、、、)

 

「ひどっ!なんで私にだけそんなに辛辣な態度をとるのかなぁ、ウェイバー君(、、、、、、)は!」

 

「だから、その名前で呼ぶなとあれほど―――!」

 

彼女、ロードエルメロイⅡを弄って遊ぶ、悪趣味な女性。彼女の名前はシャルロット・A・ロスターク。封印指定執行者だ。“魔獣使い(ビーストテイマー)”、“同属屠殺者(イコール・スレイヤー)”等、数々の異名を持つ彼女こそ、現時計塔における封印指定執行者最強の一角と謳われる内の1人だ。また、過去の先生(ロード)を知る、数少ない人物の1人なのだとか。今回の作戦には無理矢理ついてきたようで、先生からは疎んじられている模様だ。まぁ確かに、ウチの教室にもこんなテンションの生徒は幾らか居るが、どれも先生の悩みの種である事に間違いはないのだから、先生の苦悩も少しは理解できるかもしれない。

 

「まぁいい。ひとまず検証は終了した。フロワのご老体に連絡を。結界の担当を通常通りの5名に戻すため、彼には帰還するように伝えろ。屋敷に戻ったら今後についての会議だ」

 

「了解したわ。後でね、」

 

「今、早急に、迅速な連絡を、だ」

 

 

 

 

「本当に行くんですか、師匠?」

 

心配そうな表情で、師匠の出発を見守るジャージ娘。ハルキ・セト。今回の聖杯戦争のマスターである、セイジ・ハヤマの弟子にあたる人間だ。

 

「そうだよ。彼との小競り合いも長くなるし、まぁ、私が負けるはずないからね」

 

「それはそうですけど、アレは完璧に誘い(、、)です。万全の策を以て臨むべきです!それなのに単独で突入されるなんて」

 

「うん?いや、彼も一人だよ。一騎打ちなんだから、一対一。いや、正確には一対一&一騎対一騎だね」

 

そう。彼、セイジ・ハヤマはこれよりサーヴァント戦に向かうのだ。それは今朝届いた手紙の内容、宣戦布告というやつだ。差出人は彼の幼馴染みであり、同時に彼のライバルで、今回の聖杯戦争のマスターの1人、タカオミ・セト。この2人の関係は特殊のそれを極める。お互いに信じる宗教を違えておりながらも、互いをライバルとして意識しており、学生時代から小競り合いの様ないざこざを繰り返している。そして今回、痺れを切らしたタカオミが、セイジ宛に手紙を出した。

 

“決戦だ。宣戦布告。今夜、長年の小競り合いに終止符を打ち、どちらが上かを白黒つけよう。”

 

と、言った具合で、なんとも頭の悪い手紙を送り付けて来たのであった。そして、それに応じるセイジもそう。二人揃って愚の骨頂。なにせ、聖杯戦争の序盤から、お互いの手の内を明かそうとしているのだから。

 

「それじゃあ行ってくる。君の兄貴をボコボコにしてくるから、次に会ったら八つ当たりを喰らうかもだ。まぁ、そんな事する様なやつじゃあないと思うけど。―――えーと、たしか場所は―――close area、か。なるほど、コイツは面白い」

 

今夜、此度の闘争における、第一の衝突が成されるのであった。

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