Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

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一方その頃、土地の所有者たる当の本人たちは、彼らの闘争など知る由もなく。こちらはこちらで、新たな衝突を産んでいた。

 

 

カラスヤの屋敷から離れること二十分。距離にして約2kmあるかないかの距離。樹海の中で、件の標的(てき)と対峙した。

 

「うぇ」

 

苦い表情を浮かべ、声を漏らしたのはロスタークである。

彼女が視界に収めたモノは異形。動物の体を成し、動物の枠に留まりながらも、とてもではないが、この世の生物とは思えない姿形。それを体現した合成獣(キメラ)の前では、人間の生き汚さなど皆無だとすら感じさせられる程の醜悪ぶりだ。実のところヒナノも、表情(オモテ)には出さないがその醜さに、噎せ返るほどの嫌悪感を抱いてた。

 

“―――っ、……何、これ”

 

彼女の所感は実にまっとう。寧ろこの外見に卒倒していない事実を賞賛すべきだろう。

―――…ソレ(、、)を見てまず初めに連想するのは脚である。ひたすらの脚。3mはあろう巨大な図体に際限なく角ぐむ改め蠢く、無数の、様々な人間の手足(、、、、、、、、)。脚を連想させる理由は言わずもがな。手足(それら)が収束して、巨獣の脚を担っていたからだ。

彼女たちの反応を悟ってか、魔術師は閉じていた口を開く。

「あら、私のコロに興味があって?」

どうやら獣の名は“コロ”というらしい。

「ふふふ、…可愛いでしょ?自慢の猫妖精(ケットシー)なんだから」

「はい?」

その一言に、ミスロスタークが憤りの念を示す。

「そんな不細工(ブサイク)がよくもまぁ妖精(フェアリー)を語れたわね。たかだかキメラ風情が、使い魔と呼ぶのすら烏滸がましい俗物に、幻想を重ねるのはどうなのかしらね?神秘を探求する者として」

後から知った事なのだが、ミスロスタークは無類の童話好きで妖精好きらしい。でもまぁ、たしかにこれを妖精と呼称するのは少々気が引けるヒナノであった。

「ふふふ…。価値観なんて人それぞれではなくって?それとも、貴女にとっては世界が自分中心に回って、何事も自分が基準だとでも思っているの?」

「はぁ?自分視点で世界を見ているんだから世界なんて自分中心に見えてなんら不思議でもないわ。それこそ価値観の違いね。後者は頭の悪い考えだけど、前者に至ってはそも考えを理解できない時点でお粗末なオツムだと憐れむべきね」

両者の間に奔る重圧は殺意ともとれる重い空気だ。もとより殺す気でいた彼女らは、その空気を当然なモノとして受け入れている。

「うん、みんな。一旦落ち着こう」

―――ある、一人の呑気者を除いては。

「―――キャスター(、、、、、)…」

うん、と侵入者Aの呼びかけに、侵入者B改め、キャスターと呼ばれる男が応える。

 

性別は男。身長はまぁまぁくらいの丈で、声色や雰囲気からして年はあまりとっていない。そのためか、威圧感などは感じられず、寧ろのほほんとした雰囲気が愛らしい程だ。そして、

「君たちは少々気が荒すぎる。もっと穏便にいこう」

などと平和惚けした感想を漏らす始末。残念なのか安心すべきことなのか、正直定かではないが、彼がセイバーより弱い(、、、、、、、、)という事実は、目に見えて伝わってきた。

英霊とは即ち神秘の具現である。境界記録帯(ゴーストライナー)とも呼ばれる彼らサーヴァントは、魔法を基盤として生み出されたシステムにより呼び出される高次の存在であり、同時に(おびただ)しいほどの神秘を纏うて然るべき存在なのだ。英霊はもともと、生前(はじめ)はただの人間であったケースが多い。中にはそうでもない者達も少なからずは存在するが、大部分は前者だ。ただの人間が、英雄と呼ばれるに値する偉業を成した結果、死後座に迎えられるのだ。故に英霊とは、それだけの威厳と圧力を秘めているのが常で、このキャスターはそれが皆無に等しい微弱なモノであるだけ。せいぜい、この時代の優れた魔術師がまとうそれと同等であろう。

然るに、彼がたいした英雄ではない事が明白であった。

 

「ほら、人死にはなにかと気が滅入る。なにより気分がいいものでもなし。無駄な疲労は避けるべきだろう?まぁ、もっとも、行き道にさんざん人を殺した我々が云う台詞ではないんだけどね!」

「あなたは黙っていなさい」

と主人の叱責。キャスターは悲しげに苦笑いを浮かべていた。

「まぁ話し合いなんてガラじゃないし。そちらもその気なんて塵ほどもないわけだし。潰し合いは当然よね。―――なにより、」

瞬間、暗かった樹海は瞬きの閃光に包まれる。

 

「私のコロを俗物呼ばわりしたそこの女を、生かして返すつもりはないもの」

女魔術師が奔る。魔術師、ましてや女には似合わない疾走。秒で10メートルは詰めそうな俊足。不覚ながら、ロスタークとヒナノはそれに反応できなかった。だが―――

瞬きの速度で繰り出された拳は、拳よりも軽い少女の影に阻まれた。

「―――流石はセイバークラス。直感スキルは伊達じゃないわね」

「今のは初動の時点でスキル云々関係なく対応出来た。武士の志として、不意を突いた卑怯は一度のみ目を瞑ろう。それをして忠告する、貴女は人の身でありながら英霊(わたし)を相手取るつもりか。もしそうなら、無駄死には避けられないぞ」

それには及ばない、と云わんばかりの笑みを浮かべ、女は後ろに後退する。

「キャスター、展開(、、)

やれやれ、とうんざり顔で頭を掻く。

「仕方ない、“開扉”、“我が絢爛なる研究所(シャトー・ド・シャンボール)”」

 

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