Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

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瞬く星の眼下。響く轟音。空気を揺るがす瞬速の拳。

虚空を硝子の如く粉砕したそれは、この場における静けさの全てを凌辱する。

――ゴウっ。

そう聞こえたのは決して幻聴ではない。錯覚ですらない。たんにその拳が、それだけの威力を有していただけ。

「――そらァ!!」

突き放たれた右の拳。セイジの眉間を目掛け穿たれる。凡そ時速なぞそんなものは皆目無意味。何せ、迫り来る拳は時速にして100キロの豪速。そんな余分な思考は反って逆効果と言えよう。ましてシラフであったとして、はたして時速100キロを超える接近体に、人間の動体視力が反応し切れるものか。

人間の動体視力、反応速度。――スポーツとして例えるならば野球。優れた投手であれば球速100キロを上回る豪速球を放ることすら容易い。だが、それに反応するバッターもまた、超人的な反応速度と言える。それならば、時速100キロで放たれた拳のそれなぞ反応出来ない速度ではない(、、、、、、、、、、、)と思えるであろう。――しかし、それは打者がボールを放たれてから反応していれば(、、、、、、、、、、、、、、、、)に限る。無論、そんな事は有り得ない。人間の動体視力、反応速度はそこまで上等に設定されてはいない。――であれば、セイジ・ハヤマの一秒後に命はあるまい。頭蓋を砕かれ、生命活動の停止を余儀なくされる。――はずなのだが、

「相変わらず一途な打ち筋だ。恐らく目を瞑ってても避けれるよ」

セイジは避けた。容易く。まるで当然の如く。それは真実、目で見てから反応する(、、、、、、、、、、)それであった。

本来なら不可能な芸当。そう、本来なら。そも、100キロを上回る筋肉の伸縮行動など無謀。相手が常識の埒外であれば、こちらもまたそれ、という訳だ。

そして、セイジ・ハヤマの反撃は、既に始まっていた。

「――我、動かずにして、敵、仕留めたり」

呪いのような一言の後の刹那。

跳ねる。跳ねる跳ねる跳ねる。

跳ねる。セイジの拳が跳ねる。銃弾の如く弾き出された拳が、収縮しきり開放されたバネの如き勢いで跳ねる。

跳ねる。タカオミの体躯が跳ねる。穿たれたセイジの拳が、タカオミの脇腹を抉り、勢いに任せ体躯が跳ねる。

「ぐぉっ―――――」

タカオミは必死に思考する。何が起きた。今、何故自分は宙に浮いている。

――答えは簡単だった。明白だった。論理的帰結、殴られた。ただそれだけだ。

『不動の型』

殺人空手とまで謳われた、究極の絶対拳法。

その技、不動にして不敗。動かずにして仕留めるは、敵の命。

――そうだった。これだ。これこそが、セイジ・ハヤマの殺人拳法。我が修験道と並ぶ武術の極み。

「――はは、」

不意に、笑みがこぼれ落ちる。

何故だろう。とか、どうしてだろう。とか、そんな無意味な思考は、すぐに無意味なものだと理解する。

笑っちまいそうだった。心底からの哄笑。高く笑い、叫び出してしまいそう。

何故かって、答えは簡単。

「これだよ.....これ、――やっぱこうでなくっちゃあ.....!」

追憶。遥かな昔。過去、幾度となく拳を交えた相手の実力。それを目の当たりに、自身の仇敵を前に、興奮を抑える事は不可能であった。

ようやく闘れる。ようやく決着がつく。これでようやく、本気でやりあえる!

――決して、これまでの全てが本気じゃなかったわけではない。

だがしかし、この日、この瞬間。この場においての闘争とは、命をかけた大一番のそれ。これまでの戦いとは格が違う、趣も違う。――そして、重みすらも。

ここでなら、お互いに本気を出せる。本気でぶつかり合い。本気で殺し合う。夢にまで見た、コイツとの殺し合い。学生時代からの悲願。それの成就を祝い、謳い、タカオミは嗤う。

「――喰らえ喰らいて、我が身に宿れ」

顕現せよ、――天を喰らう怪腕よ。

 

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