Fate /Divinely Warriors 作:なんばノア
“我が絢爛なる研究所”――シャトー・ド・シャンポール。
それは彼の宝具であり、同時に、彼の世界そのもの。
魔術世界における自異界形成、固有結界ではなく、またそれに近しい何か。
いや、宝具――そういった点で捉えれば、これもまた固有結界ではあるのだろう。
しかし――いや、しかしながら。これは、あまりにも痛烈に過ぎる。
呼び出されし彼の世界は空間を圧縮するだけに収まらず。
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「――ここは……?」
呟くように、ヒナノ・カラスヤが言う。
眩い光の浸食の後、現れたのはこの昏いホコリに塗れた空間。一瞬の出来事ながら、瞬時にこの現象のそれを理解した者が一人。
「これは――固有結界!」
ロード・エルメロイ。彼の召喚したサーヴァントもまた、それを宝具とする英霊であった。
固有結界――とは、心象風景の具現化。また、それによる世界の浸食。自身の内に眠る世界の風景を具現化し、一時的に現実世界を塗りつぶす、魔術世界きっての禁術。発動に際し莫大な量の魔量を要し、その維持にもまた、相応の魔力を強いられる、とても人間一人に再現可能な魔術ではない。故に、それを可能とする者もごくわずか。生きた人間でなら十も存在せず。死徒と呼ばれる吸血鬼ですらごく少数――その頂点と言われる、祖の連中でやっとのコト。神秘に片足を踏み込む者でなければ、その奇跡は発動すら許容されまい。――それこそ、彼のように、英霊でもなければ。
言ってロード・エルメロイは周囲を見やる。
サーヴァントであっても、その発動は安くは済まない。恐らく宝具。または、それに匹敵するモノ。これは相手の宝具と見て間違いないだろう。――であれば、この状況は非常にまずい。かの王のそれがそうであったように、宝具、固有結界は決して侮れる物ではない。
固有結界とは術者の心象だ。つまるところ、術者本人の世界。かぎりなく術者側にアドバンテージのある世界だ。向こうは有利であって不利でない。こちらはその全貌を知らぬだけ不利な状況。決して有利な点など存在しない。そういった点で考えるなら、こちら側の勝率は極めて低いものと言える。
――胃が、痛くなるな。
ただ、この程度の事で、彼の脳は考えるコトをやめたりしない。この程度、弟子のしでかした不始末の処理と何ら大差ない。胃は痛むがそれがどうした。この程度の壁、君主となり数多の試練に見舞われた彼にとっては児戯に等しい。
幸い、見方は全員近くに揃っている。何せここは未知の世界だ。迂闊に散らばるよりまとまった方が、何かと都合がいい。
「全員、一ヶ所に集まれ」
声と共に、皆が周囲を確認する。一的な面もあり、中央に位置するヒナノの傍に集合するコトとなった。
「先生。これからどうすれば?」
「さしあたっては相手の出方を待とう。下手に動くよりは幾分かマシだ」
了解、と一同言う。アルファ翁を置いてきたのは失敗だったと言わざるを得ないが、そこはそれ。それはもう仕方のない事。過ぎた事はどうにもならないのが世界の習わし。この状況を打開するために必要なコトとは、過去を悔いるコトなどではなく、今を見るコトだ。
現状をしっかりと見定め、整理し、光を見つける。――ホワイダニット。事象の起こりたる因果を見据えれば、自ずと答えは見えてくる。それは彼、ロード・エルメロイの得意分野に他ならないのだから。