Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

17 / 17
固有結界

 “我が絢爛なる研究所”――シャトー・ド・シャンポール。

 それは彼の宝具であり、同時に、彼の世界そのもの。

 魔術世界における自異界形成、固有結界ではなく、またそれに近しい何か。

 いや、宝具――そういった点で捉えれば、これもまた固有結界ではあるのだろう。

 しかし――いや、しかしながら。これは、あまりにも痛烈に過ぎる。

 

 呼び出されし彼の世界は空間を圧縮するだけに収まらず。

 時空をも(、、、、)、歪めてしまっているのだから――。

 

 

 1/

 「――ここは……?」

 呟くように、ヒナノ・カラスヤが言う。

 眩い光の浸食の後、現れたのはこの昏いホコリに塗れた空間。一瞬の出来事ながら、瞬時にこの現象のそれを理解した者が一人。

 「これは――固有結界!」

 ロード・エルメロイ。彼の召喚したサーヴァントもまた、それを宝具とする英霊であった。

 固有結界――とは、心象風景の具現化。また、それによる世界の浸食。自身の内に眠る世界の風景を具現化し、一時的に現実世界を塗りつぶす、魔術世界きっての禁術。発動に際し莫大な量の魔量を要し、その維持にもまた、相応の魔力を強いられる、とても人間一人に再現可能な魔術ではない。故に、それを可能とする者もごくわずか。生きた人間でなら十も存在せず。死徒と呼ばれる吸血鬼ですらごく少数――その頂点と言われる、祖の連中でやっとのコト。神秘に片足を踏み込む者でなければ、その奇跡は発動すら許容されまい。――それこそ、彼のように、英霊でもなければ。

 

 言ってロード・エルメロイは周囲を見やる。

 サーヴァントであっても、その発動は安くは済まない。恐らく宝具。または、それに匹敵するモノ。これは相手の宝具と見て間違いないだろう。――であれば、この状況は非常にまずい。かの王のそれがそうであったように、宝具、固有結界は決して侮れる物ではない。

 王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)。数多の英霊、その宝具の中でも最上位ランクを有するそれの威力を、ロード・エルメロイはその眼で、耳で、肌で感じ取っている。今しがた、あの英霊の発動した宝具が、王の軍勢に匹敵するほどのものだとするなら――敗北は必須。こちらに打つ手立てはない。

 固有結界とは術者の心象だ。つまるところ、術者本人の世界。かぎりなく術者側にアドバンテージのある世界だ。向こうは有利であって不利でない。こちらはその全貌を知らぬだけ不利な状況。決して有利な点など存在しない。そういった点で考えるなら、こちら側の勝率は極めて低いものと言える。

 ――胃が、痛くなるな。

 ただ、この程度の事で、彼の脳は考えるコトをやめたりしない。この程度、弟子のしでかした不始末の処理と何ら大差ない。胃は痛むがそれがどうした。この程度の壁、君主となり数多の試練に見舞われた彼にとっては児戯に等しい。

 幸い、見方は全員近くに揃っている。何せここは未知の世界だ。迂闊に散らばるよりまとまった方が、何かと都合がいい。

 「全員、一ヶ所に集まれ」

 声と共に、皆が周囲を確認する。一的な面もあり、中央に位置するヒナノの傍に集合するコトとなった。

 「先生。これからどうすれば?」

 「さしあたっては相手の出方を待とう。下手に動くよりは幾分かマシだ」

 了解、と一同言う。アルファ翁を置いてきたのは失敗だったと言わざるを得ないが、そこはそれ。それはもう仕方のない事。過ぎた事はどうにもならないのが世界の習わし。この状況を打開するために必要なコトとは、過去を悔いるコトなどではなく、今を見るコトだ。

 現状をしっかりと見定め、整理し、光を見つける。――ホワイダニット。事象の起こりたる因果を見据えれば、自ずと答えは見えてくる。それは彼、ロード・エルメロイの得意分野に他ならないのだから。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。