Fate /Divinely Warriors 作:なんばノア
変わってしまった人がいる。
取り戻したい人がいる。
無駄だってわかってる。
私がしようとしてる事は、全てが無駄。
―――だけど。万が一にでも、あの人を救える可能性があるのなら、私はこの手段に全てを託そう。
今この時、ジュリア・カリスト・ノーンブランクは、生涯の総てを賭けて、この争いに身を投じるのだから。
「素に、銀と鉄―――」
□□
「嘆かわしい」
少年は嘆く。少年の希望と願いはいとも容易く裏切られた。
少年の技術、知識、全てを以てしても、
故に最後の希望だった、全てを捧げる思いでこの場に訪れた。だが、キッパリと断言されてしまった。
「老害が、何故そうもお前達は完全に諦め切れるのだ」
世界を救いたい。人類の救済。
科学的、理論的に立証されてしまった人類、果ては星の滅び。
ポールシフト、太陽死、スノーボールアイス、エントロピー増加による宇宙の熱的死など、様々な仮説を建てられては、人類の滅亡が変えられぬ未来として語られて来た。
だが、コネット・ジョシア・ノーンブランクは認めない。決して、人類に滅びは齎さない。
僕がなんとしても人類の未来を保証してみせる。その為に、最後の希望を託しに来たのだ。ここ、巨人の穴倉と呼ばれる魔術協会・三大部門の一角。錬金術師達の生きた奈落、
少年にとって、用があったのはこの場所にただ1人。穴倉の長、アトラス院現院長、バロン・エルトナム・メルクリオその人だ。
アトラス最大の記憶媒体、
故に、他の錬金術師などは視界に入らなかった。自立型防衛礼装など全て蹴散らした。邪魔をする者は、例外なく後悔させた。
そして辿り着き、そして尋ねた。人類の滅びを避けるにはどうしたらいいか、と。
すると―――
“無理だ”
返ってきた答えには絶望が孕んでいた。
奴は更に口を開く。
“我々は人類の最後を観測した。
これは、変えられない真実にして結末なのだ。君の行動は正しい。人類を救いたいと述べるその思想も理解する。だが、それら全ての足掻きは無駄である。どうあっても、人類の滅びは避けられぬのだから。
人類の滅びは変えられない。ならば、そこに到達するまでを、何処まで引き延ばせるかが肝心なのだ”
ふざけるな。僕が聞きたかった答えはそんな事ではない。何故だ何故だ何故だ。何故お前達は全てを諦め切れるのだ。有り得ない、そんな未来は有り得ない。絶対に容認してなるものか。
「老害が、全てを諦め堕落し切った怠惰の権化め。貴様のような人間は特に不要だ」
人類の滅びを是とする異端はここで死ぬがいい。
院長、バロン・エルトナム・メルクリオは臨戦態勢に入る。
錬金術師は、他の魔術師とは一癖も二癖も違う魔術師達である。
彼らの基本理念は異質。
「自身が弱くても、作り出す物が最強なら構わない」
そう言った連中だ。
彼らは魔術回路の量が著しく少なかったり、様々な理由から魔術師としてはあまり優れているとは言えない人間ばかりだ。
故に、自然干渉等の魔術は行使できない。
魔術戦において、彼らの劣りは歴然だろう。
ならば、自身より優れた物を作り出せれば良いのだ。そのための魔術礼装。地上とは比べ物にならない程の量と質。
院長が両側に携えるは自立型攻性礼装。更には、この部屋の全てを覆い尽くす程の魔術礼装の数々だ。これら全てを以てして打ち滅ぼせぬ敵性生物など存在しない。
勝利するのは簡単。礼装を起動させるのみ。その奢りが、バロンの命を奪うとも知らずに。
「もうこの場所に用ない。お前を殺して別の手段にあたる」
少年の■■■■が起動する。
バロンはそれを理解していない。少年が目を見開いたこの場、そこは、この世で最も死に近い場所となる。
握った短剣を振るう。
概念武装、クラウ・ソラス。
放たれた斬撃はエーテル塊。触れれば消滅、斬撃である以上それは明確だ。自立型攻性礼装の硬さは
だが、魔力の斬撃はそれを豆腐の如く細切れの
これが、後に語られる“アトラスの悲劇”。その一端である。院長、バロン・エルトナム・メルクリオの死によって、その悲劇は連鎖する。