Fate /Divinely Warriors   作:なんばノア

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prologue.1

 

―――2003年、11月。

 

サンタモリヤ。

ここは欧州に存在するとある中核都市。

その西部。人口が密集する東部の都市部とは、位置的にも意味的にも真逆。田園風景や自然が目立つ。このサンタモリヤにおいて田舎と呼ばれる過疎地、ウェストタウン。

人口は凡そ数千人。ここは自然と共存して暮らしを成している地域であり、主に農作業、放牧や家畜などの畜産業も盛んである。

西部地区の人間は皆この地区だけでの自給自足を可能としており、各々の家業に誇りを持って毎日を生きている。

 

そして、サンタモリヤ南部に位置する霊峰。イザヤ山の入口となるウェストタウンの北西部。ここに、とある東洋の魔術一派が治めている土地が存在する。

 

「えぇ、わかっています先生(ロード)

―――ご冗談を。私を送り付けたのは、単なる調査などでは無いでしょう?」

 

クローズエリア。

英語表記でCrows area.またはClose area.

この二つの名を併せ持つ土地。

森林に囲まれた樹海。一度入ると二度と帰れないかの如く霊気漂う、地元ではそれなりに名がしれた心霊スポットの一つだ。

霊峰へと通じる道を外れて一直線に進むと、このエリアに辿り着く。そして、この誰もが恐れる樹海の一本道を、躊躇なく進む黒塗りの高級車が一台。

後部座席が異常に長い、セレブ愛用の自家用車。その中に居座る1人の少女。絹のように可憐な黒髪を肩まで伸ばしており、長いまつ毛に大きな黒い瞳。その風貌はまさに大和撫子。東洋系の整った顔立ち。幼さを少しだけ孕んだ、大人気に溢れた女性である。

 

『やはり気づいていたか?』

 

「当然です。貴方のような賢者が、聖杯戦争などという非効率的(、、、、)な手段で根源に至る儀式に、調査など派遣する筈がありませんから」

 

電話越し、ロードと呼ぶ男性に淡々とした口調で応える女性。

その表情は実に冷静。その瞳には確かな熱が込められており、同時に、その口調は氷のような冷たさを思わせた。

 

「それで。実際のところ何故私を選んだのです。そして何が目的なのか、これを話して頂かないと納得がいきませんので」

 

電話越しの男は数秒の沈黙の後、その真意を語る。

 

『ノーンブランクだ。わかるな?』

 

「あぁ、あの優等生ですか。それが?」

 

ロードは重い口調でさらに語る。

 

『先日、我がエルメロイ教室の生徒の1人である“コネット・J・ノーンブランク”を名乗る男により、アトラス院現院長バロン・エルトナム・メルクリオが殺害された』

 

この瞬間、声が上がらなかったのは事実。

それ程までにおかしな事態を、ロードエルメロイは口にしたのだから。

アトラス院現院長の死。そしてそれが、時計塔の人間による物なのだ。これは、組織感の争いに発展するどころの騒ぎではない。

下手をすれば、世界が滅ぶほどの危険があるのだから。

いや。使用するとは思えないが、彼らには「世界を七度滅ぼす」と言われる程の最終兵器を有している。

それを使用するような状態にまで発展したとすれば、世界の破滅は避けられまい。

 

『丁度今から3ヶ月ほど前の話らしい。私も先週、尋問を終えたばかりでな。

そして時計塔とアトラスの間での協議の末、コネットの身柄を確保、協会への受渡しが議決された』

 

コネット・J・ノーンブランク。

欧州、特に英国では有名な貴族にして、由緒正しい魔術師として歴史ある一族、ノーンブランク家の8代目当主候補。

私と同じく時計塔・エルメロイ教室所属の秀才。近年祭位を獲得した優秀な魔術師だ。

それが何を思ってかアトラス院に喧嘩を売った。そして、あろう事か現院長を殺害してしまったのだ。

 

「話はわかりますが、何故私を派遣させたのです。それは執行者の役割でしょう」

 

『そうだ。通常なら君が動くべき案件では無い。

だが、今回は私の監督不行届。責任として、私自らと弟子1人の同行を強制されている』

 

弟子の不始末は師の責任。なるほど、実に分かりやすい理屈だ。

 

「なるほど。それで私を選んだと?」

 

『あぁ。すまないが、君を除いてこの案件を任せられる人材は居ない。それに君の家はその土地、由緒ある家ではないか。好都合だ。

あぁ、それと。協会からは手練の執行者が数名派遣された。私も、近い内にそちらへ向かうつもりだ。

サーヴァントを召喚するにあたって、聖遺物は既に用意している。安心したまえ』

 

準備のいい事。まぁ、こちらとしても問題はない。強いて言うなら―――

 

「サーヴァント召喚のための触媒・・・。一体、何を用意して頂けたのでしょうか?」

 

『―――君の祖国に名残深い英霊。

聖遺物は剣、その名を■■■―――。

彼の三種の神器が一角を誇る神造兵器だ』

 

「――!?」

 

魔術師、ヒナノ・カラスヤはただただ唖然としていた。

用意された聖遺物から連想した英霊の真名。それは、同時に今回の勝利を確実なものに思わせた。そんな聖遺物を用意した彼の手腕。そもそも、行方が全くの不明だった彼の聖剣を、発見した人物への畏怖。これら全てが重なり合って、絶句以外に反応が取れなかった。

 

「その聖遺物。どのような手段で発見したのですか?」

 

『私の知人。捜索特化の魔眼を有する魔術師に見つけてもらったのだ。そっちまで一週間もかからないだろうが、万が一と言う事もある。足場作りは万全な物としとくように。頼んだぞ』

 

 

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